106 / 377
第六部:救済か破滅か
その128 再会
しおりを挟むルーナです!
ついにレイドさんの仲間に会う時がやってきました!
パパが玉座の後ろにある隠し扉を開け、先に進んだところで階段があり、そこを降りた。
地下通路を進んだ先にいくつか部屋があり、一つの扉の前で足を止めパパが振り返る。
「ここにセイラが……?」
「ああ。さ、入ってくれ」
カチャ、と普通に開き全員で中に入る。中は広く三つのベッドが並べられていた。そのベッドを取り囲むようにガラスか水晶のような箱? に、覆われていた。
駆け寄ったレイドさんが透明の壁に手を当てて呟いた。
「確かにセイラだ……こっちはソキウス……チェーリカも……生きているのか?」
「間違いなく、な」
少し涙目になりながら、レイドさんが再びセイラさん達へと向き直る。
そこでフレーレが手を上げて疑問を口にした。
「それでどうやって目を覚まさせるんですか?」
私も気になっていた事を口にする。
「そうね、この箱? これも、どうやって外すんですか?」
するとパパが眉間にしわを寄せながら呻いた。
「……そういや、そうだな……あの時は自分から出てきたし……眠りに就くときも覗いたらダメだって見せてくれなかったし。アイディール、知ってるか?」
「ディクラインが知らないのに知ってるわけ無いじゃない!?」
ゲルスから助けてもらった時は皆一緒だし、それは仕方がないと思う。
「何か言い残している事とか無いの? レイドさんが叫ぶとか」
「それは何か恥ずかしいな……」
「男が何を言うか! 堂々としろ堂々と」
顔をしかめるレイドさんの背中をカルエラートさんがバンバン叩く。
でも、このままだと折角会えたのに肩透かしだよ。
すると、部屋のあかりが急にフッと消えた。
「きゃあ!?」
「なに、どうしたの!?」
フレーレとママがびっくりしていた。でもすぐに明かりがつき、皆で安堵していたところでレイドさんが叫ぶ。
「あれ!? セイラが居ない!?」
「ええ!?」
私も慌ててレイドさんの隣に行くと、確かにベッドにはセイラさんは居なかった。残り二人は居るのに……。
すると、どこかで女性のすすりなく声が聞こえてきた。
(うう……恨めしい……)
「この声はセイラ! どこにいるんだ!」
(わたしは薄暗い地下でずっと待っているのにお兄ちゃんは女の子と旅……)
「くっ……そんな事は……俺はお前が、お前達が死んだと思って……」
(でも死んだって決まったわけじゃなかった……いつかまた強くなって来てくれる……そう思っていたのに……)
セイラさんはレイドさんを追い詰めてくるが、私達はある程度事情を知っているので、すごく茶番感がある。だけど真面目なレイドさんには効果が抜群だ。
「す、すまなかった……」
(お兄ちゃんはわたしが大切……?)
「勿論だ! 生きていてくれて……あれ? 生きてるんだよな?」
ようやく気づいたレイドさん。
そして……
「なーんてね!! 久しぶり、お兄ちゃん!」
「うわ!?」
レイドさんの目の前に転移してきたのは……セイラさんだった!
---------------------------------------------------
「まったく……お前は……」
「いいじゃない、普通に再会したんじゃ面白くないでしょ? あ、あなたルーナね? まさかお兄ちゃんと一緒にくるとは思わなかったけど」
セイラさんが私を見てそんな事を言う。あ、そうか。お父さんに挑んだ時からこの城にいるなら知ってるわよね。
「ルーナです! あの、正直あまり覚えてないんですけど……」
「そうでしょうね。ルーナと会ったのは水晶を埋め込まれた時の一回だけだし、わたしもずっと眠っていたしね。でもおかげで……体は17歳のまま……!!」
くるりとその場で回り、何かをアピールするセイラさん。ママとカルエラートさんが何故かぐぬぬとしていた。
そしてニコっと微笑み、奥にある怪しげなボタンを押すと、残り二人の透明な箱がゴゴゴと天井へ吸い込まれていった。どういう仕組みなのか気になる……。
「んあ……? こ、ここは……? か、体がうごかねぇ……」
「そ、ソキウス? あれ? チェーリカは魔王に殺されたんじゃ……」
意識を取り戻した二人がそれぞれ口を開く、意識は10年前に戦ったときのままのようで、少し混濁している。
そこにレイドさんが越え尾をかけた。
「ソキウス、チェーリカ! お前達も無事で……」
「おう!? なんだおっさん!? いきなり泣き出して!」
「ですです、チェーリカたちにおじさんの知り合いは居ないですよ?」
という二人は確かに若い。私やフレーレよりも幼い感じがする。セイラさんもそうだけど、もしかして歳をとってないんじゃ……?
「俺だ、レイドだよ! ああ……あれから10年だ、見た目が違うのも仕方が無いか」
「え!? れ、レイドさんですか!? でも確かにチェーリカの好きだったレイドさんの面影は確かにある……」
「え!?」
ソキウスがチェーリカを見て驚く。幼馴染は自分が好きだと思い込んでいる典型だと思った。村にも居たのよねそういう人……で、今『好き』って言わなかった……?
「ああ、俺だ! すまなかったな、あの時は」
チェーリカの肩に手を置いて微笑むレイドさん。それを見て顔を赤くするチェーリカ。
「い、いえ……(渋さが出てかっこいい……これはこれで……アリ!)」
なんだか嫌な予感がする……チェーリカを見てそう思ったけど、ソキウスが続けて話し始めていた、
「いてて……体がバキバキだ……それにしても10年ってすげぇな……じゃあレイドはもう28……俺も25かよ……」
何とか起き上がり、ベッドに腰掛けてレイドさんを見ながらため息をつく。
見た目は14、5歳なんだけどね。
「それで? お前がここに居るってことは魔王は倒されたのか?」
「それにそちらに居る方達は……?」
「それじゃ、二人にも話さないとね。まあ、協力はしなくてもいいんだけど……」
ママが、戸惑うソキウスとチェーリカに事の経緯を説明し始めた。
---------------------------------------------------
「ふーん」
ソキウスは全てを聞いた後、それだけ言った。
「相変わらず軽いなあ。だからアホだって言われるんだぞ?」
レイドさんが呆れてソキウスの頭を撫でる。こういうレイドさんを見るのははじめてだなあ。やっぱり、元の仲間だから気兼ねしないのかな?
「う、うるさいな!? とりあえずそこに居る兄ちゃん達が俺達が負けた後魔王を倒してくれた勇者パーティで、レイドの隣に居る可愛い姉ちゃんが魔王の娘……」
「で、フレーレさんはレイドさんとルーナさんとパーティを組んでいるんですね。そして、元凶は女神でそれを殺すために奮闘……でもルーナさんの体に女神が宿っていてそれを助けるために今から作戦を……」
「そう。あなた達には選択が二つあるわ。このまま生き延びた事を喜んで、冒険者に戻るか私達を手伝うか」
ソキウスが腕を組んで考える、
「でもそれだったら、レイドが俺達を助けた時点でレイドもセイラも戦わなくてもいいじゃないか? なんで俺達だけなんだよ」
「わたしは魔王から頼まれたからね。それに世界が滅ぼされるのを黙ってみているのも嫌だからディクラインさん達に協力するの」
ソキウスの疑問にセイラさんが答える。続いてレイドさんも話す。
「俺はセイラが生きていると、お父……ディクラインさんに聞いてルーナちゃんに着いてきた。でも、真実を知った今、次にやるべきことはルーナちゃんを女神から切り離して助ける事だと思うんだ。パーティはそういうもんだろ?」
「今、お父さんっていいかけた……!? ま、まさか……ルーナさんとお付き合いを……!?」
「どうしてそうなる!? チェーリカは昔からそういうところがあるよな……」
それを聞いてほっとしているチェーリカ。ううむ……。
そしてソキウスが目を開いて答えた。
「よし決めた! 俺もここで助けられた身だ手伝うぜ。それに世界が滅ぶって聞いてのんびり冒険者をやってもいられねぇだろうしよ」
「チェーリカも! またレイドさんと旅が出来るならお安い御用ですよ!」
能天気そうな二人がそれぞれ手伝うと言い、レイドさんがそれを聞いて真剣な顔で告げた。
「遊びじゃないからな? それだけは覚悟をしておくんだ……まあ、二人ともそう言うと思っていたけどな。また、よろしく頼むぞ!」
「おう! 任せとけ、魔王にゃ負けたが女神はばっちり倒してやる!」
「ですです! 今度は負けませんよ!」
レイドさんと握手をするソキウスに、ぶんぶんと手を振るチェーリカ。それを見てセイラさんが笑いながら、話を進めていた。
「もちろん私も参加! ディクラインさん、今後の予定は?」
「やれやれ……この魔王城も大所帯になってきたな……魔王を倒しに行こうとするような奴らばかりだし、仕方ないか……」
パパがはあ、とため息をついた後、みんなを見渡して真剣な顔になる。
その表情に私も緊張が走る……。
ゴクリ……誰かが喉を鳴らした後、パパはその口を開いた。
「……明日から城の大掃除だ! まずは寝床を各自確保する事! 空いている部屋はいったぱうんだけど掃除が行き届いていないんだよ。なあに、この人数なら大掃除なんてすぐ終わるさ」
ははは、と笑うパパに、ゆらりとママが近づいた。
「みんな! 伏せて!」
私が叫ぶと、パパ以外は一斉にしゃがんだ。どうやら、意図を汲んでくれたらしい。直後……。
「みんなが真剣に出した答えの後に大掃除はないでしょうぉがぁぁぁ!!」
「ぶべら!?」
またしても壁にめりこむパパであった。
0
お気に入りに追加
4,221
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。