パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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第六部:救済か破滅か

その127 考察

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 チーン


 「おいたが過ぎたようね」

 「あ、あああ……」

 振り向いた直後、ディクラインの後頭部にメイスがスマッシュヒットして派手にふっとばされた。
 アイディールが近づき、リザレクションで回復させていた。

 「(飴と鞭)」

 「(飴と鞭ですね……)」

 「ふう、とりあえずこれで良し。で、何の集まりなの?」

 アイディールがテーブルを見渡し、ルーナと目が合ったところで驚いた。

 「ルーナ!? ルーナじゃない! どうしてここに! 記憶が……戻ったの?」

 「ええっと……ひ、久しぶり……ママ……」

 アイディールがルーナの元へ近づき座ったままのルーナを思いっきり抱きしめる。
 ルーナも懐かしい匂いがして思わず涙が出そうになった。

 「元気そうで良かった……私はあまり一緒に居られなかったから」

 そこにフレーレがアイディールに声をかける。

 「あ、あの初めまして。ルーナの友達でフレーレと言います! いつもルーナにはお世話になってます」

 「どちらかと言えば私のほうが世話になってるわよ?」

 「あら! お友達! よろしくね。ルーナの母代わり兼、姉のアイディールよ。少し見ない間に色々あったみたいね。……というより、ここに連れて来た時点でそれはお察しか……」

 アイディールがディクライン、そしてエクソリアを見てだいたいの流れは把握したようだった。
 そして壁にめり込んでいたディクラインが席に戻ってくる。

 「いてて……相変わらずの馬鹿力だな……とりあえず今まで保留にしていた女神の封印は4つ解けた。残り3つをどうするかってところだ」

 その時、黙って話を聞いていたエクソリアが口を開いた。

 『ルーナにデッドエンドが渡ったのは偶然だけど、まさかそんなことになっているとはね。魔王が水晶を盗んだ時、恐らく神裂が開けた転移から遡ってきたんだろうね? それと、ボクの意見を言わせてもらうと、人間を滅ぼすのは保留にしていいと思っている。元凶はボクにもあるけど、だいたいは姉さんのせいだからね。倒すというなら協力しないでもないよ?』

 エクソリアが不意にそんなことを言い、勇者メンバーは面食らう。まさか倒す対象が協力を申し出てくるとは思わなかったからだ。

 「……信用できんな」

 「うむ、私もベルダーに同意だ」

 するとフォルサが口を挟んできた。

 「その女神様はとりあえずおいといて、アルモニアを復活させるとルーナちゃんにその力が宿り復活するのよね? あなたたちの目的は女神を殺す事、すなわちルーナちゃんを殺す事になる……ルーナちゃんを助けるアテは見つかったのかしら?」

 「それは……」

 「俺もそれが気になっている、過去は聞いたとおりだとして、問題は今だ。ルーナちゃんを殺すような事であれば俺は協力できないし、集めさせるわけにもいかない……」


 レイドも重々しく口を開いた。ここに居るメンバー全員を相手に勝てるとは思えないが、それでも抵抗するつもりである。

 <主殿は何か手が無いのかや?>

 『おや、チェイシャ。久しぶりだね』

 <ぴー。私をあの姿に戻して、女神を殺した後、血を使ってルーナを蘇生とかはどうなの>

 『ジャンナか。不死鳥にするのは難しくないけど、一緒に姉さんが蘇生する可能性があるから解決はしないね。試すのは吝かではないけど』

 <神裂ってヤツがやってたみたいに融合ができるなら、分解もできるんじゃ?>

 <そうにゃ。私達も似たような作り方をしているなら、アルモニアだけ分離もできんじゃないかにゃ?>

 ファウダーとバステトもエクソリアの元へ行き意見を言う。

 うーんと唸るエクソリアにはいいアイデアが出なさそうだった。

 「女神の割には対応力が無いわね? まあそういうことだから、解決策が見つかるまで協力はできかねるわね」

 「そうですね。だいたい女神様が発端なんですから、何とかしてくださいよ」

 フレーレが女神相手にも物怖じせず、言い放った。エクソリアはそれを聞いて「う」と呻く。痛いところを突かれた形だ。

 「み、みんな……ありがとう、私の心配をしてくれて……最近、話しかけてこないんだけどね。アルモニアさん」

 『ヴァイゼが死んで、魔王の力がルーナに宿ってるから簡単に操れないんだろうね』

 「え!? それってどういう事ですか?」

 「……あー、俺から話そう。ヴァイゼが生前言ってたんだ、魔王の恩恵は自分が死ぬと子に移るってな。子が居ない場合はヴァイゼの時みたいにランダムで誰かにいくんだとか。そうだな?」

 『ああ、それでいい。子が居ない時死んで魔王の恩恵が途切れるのは嫌だったからね。姉さんの勇者の恩恵みたいにバンバン作れるわけじゃないからさ、ボクは』

 肩をすくめてエクソリアが目を閉じ、ディクラインは話を続けた。

 「で、お前は記憶を失った代わりに魔王の力を持った。でも、村で暮らすにはそんな力は必要が無いから黙っていたんだが……」

 アイディールが口ごもるディクラインに代わり話を続ける。

 「でも、何かあった時に身を守る術が無いのはまずいと思って、私が補助魔法を教えたのよ。それが恩恵だと言い聞かせてね。後は、偽装魔法で髪を黒くしておいたの、私とおそろいだし、身内に見えるでしょ?」

 「じゃ、じゃあルーナは魔王としての力も持ってて女神の力もあるんですか、今?」

 「そういうこと。こうなったら魔王の力を高めて女神を内側から消滅させるとかも視野に入れたほうがいいかもしれないわね」

 「デッドエンドで髪が白くなるのは……」

 「偽装魔法はルーナの魔力を媒介してるから、デッドエンドを使うと魔力が無くなるでしょ? だから偽装魔法が解けるってわけ。魔王の恩恵があるルーナなら、攻撃、回復、属性魔法何でもござれ状態よ。覚えれば!」

 ルーナが「はわわ」と開いた口が塞がらない状態になっているのを尻目に、ベルダーは席を立つ。

 「……だいたいの話は終わったか。すまんが俺は少し休ませてもらおう、融合とやらが解けた後遺症か分からんが酷く眠くてな。戦闘で疲れたのもあるしな。逃げるなよエクソリア」

 「ああ、また何か決まったら教える。今回は助かった」

 『今のボクは君達を倒す事くらいは出来るから逃げる必要はないよ、折角だから話を聞いているだけさ』

 ふん、と鼻を鳴らし、片手をあげて出て行くベルダーをルーナが引きとめた。

 「昔のことはちょっとしか思い出せていないけど、肩車は……嬉しかったわ。あの時はありがとう」

 「……! ふん……」

 ニコっと笑うルーナ。
 だが、ベルダーは何も言わずルーナを押しのけ、頭をかきながら謁見の間を出て行った。

 「ルーナの件はとりあえずまた考えよう。次はレイド君の番だな」

 「俺? ……セイラの事ですか」

 「言ったろう、妹の事を教えると。まあ話の流れからこの城に居るのは分かっていると思うけど」

 レイドは頷き、ディクラインを見る。

 「それじゃあ会わせてくれるんですね」

 「ああ、どちらにせよ彼女の力は必要になる。今後の事を踏まえて、目覚めてもらわないといけないしな……早速行こう、こっちだ」

 レイド、ルーナ、フレーレが立ち上がる中、フォルサはそのまま座っていた。エクソリアも立ち上がらない。

 「? フォルサさん?」

 フレーレが振り向くと、ニコリと笑ってフォルサが言う。

 「私は知らないからここで待つわ。お茶でも飲んで、ね」

 「そうですか? 喧嘩しないでくださいよ?」

 「私を何だと思ってるのかしら君は」

 「自分で考えてくださいね? それじゃ」

 そしてその場に残ったのはフォルサとエクソリアだった。目を瞑ってお茶を飲むフォルサに、エクソリアが話しかけていた。

 『……君は、少し面白いね。長生きをするとボク達に近くなっていくのかね? 興味深い……』

 「それは分からないけど。で、ルーナちゃんと女神を分離させる手段、本当に無いのかしら?」

 フォルサはジャンナの話を聞いた時に表情が変わったのを見逃さなかった。恐らく何か思いついたか思い出したかしたのだろうと推測し、話を聞きたかったのだ。

 『いや、これはまいった。まさか気づかれているとは。……無いわけじゃない』

 「厄介なの?」

 『どちらにせよ姉さんの力は集めないといけないからね。ルーナを助ける方法だけどボクはこう考えている……』

 「……!」


 どこまで協力するつもりか分からないが、フォルサへその方法とやらを話すと、フォルサが驚いていた。
 
 そして二人の会話が盛り上がる中、レイド達はセイラの居る部屋へと入ったところだった。
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