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第五部:終わりの始まり
その122 魔王城
しおりを挟む「パパ!?」
私は思わず叫んでしまった。女神のアイテムを集めてから会おう、という条件を残したまま消えたパパが目の前に居るからだ。
「またでかい魔物だなあ。お、そこに倒れているのは国王か? いやあついに死んじゃったかあ」
「あ、あのーあなたは一体?」
エリックがパパを見て呆然としていた。無理も無い、この状況で軽口を叩けるのはパパくらいなものだろう。
「俺はルーナの父でディクラインだ、一応昔魔王を討伐したって事で有名のはず……有名だよな?」
「知るか。それよりお前が来るとは意外だな」
ベルダーが顎をさすりながらパパへと近づく。え? え?
「……ルーナちゃんのお父さん……ディクラインさん、やはりあなたが」
「あ、言ってなかったな。そう、俺も勇者だ。そしてベルダーとゲルスは魔王討伐をした時の仲間でな、便利だから色々やってもらってるんだよ。ゲルスはまあ残念だったけど」
「ほ、ホントに? あの……狩人だって」
「あれは嘘だ」
「ええー……」
キリッとして言われてもなあ……。そこでフレーレが猫っぽいのを抱いて近づいてくる。足元ではシロップがぴょんぴょんジャンプしていた。
「どうしてそんな嘘を? 親が勇者だと誘拐されるとか、ですか?」
「んー……それを話すにはここじゃアレだな。ちょっと来てもらいたいところがある。ルーナとレイド君は絶対だ。後、行きたい人ー」
軽い……!
「わたしは行きます! フォルサさんはどうしますか?」
フレーレが聞くとゴナティソの遺体を見ていたフォルサさんがこちらへ向き直り、返事をした。
「……そうね、私もいいかしら?」
『ボクも行くよ?』
「まあエクソリアも構わんか……。それじゃ後は俺とベルダーで決まりだな?」
「わふわふ」
「わん!」「きゅんきゅん」
「ああ、お前らもな。でかくなってないかお前ら?」
ポカンと一部始終を見ていたエリックとアンジェリア、そしてライノスがこちらへ来て頭を下げた。
「どうしたの?」
「いやークーデターが成功したからね。そのお礼だよー。来てくれなかったら、あの魔物にすら勝てたか怪しいしねー……。そっちの狼達もねー」
「まあ今からが大変なんだがな。ともかく、これでこの国は変わる……と信じたいな。国王には子供が居なかったから、これから大臣達と話し合いになるだろうな。我々を断罪しようとするものも居るだろうが……」
エリックとアンジェリアさんがそう言っていると、今度はライノスさんとエレナが寄ってきた。
「ルーナさん、今回は本当に申し訳なかった。そしてありがとう……これで、国王に殺された人たちも少しは……」
「わたしは~何も出来なかったけど~……ルーナさんと友達になれて良かったかな~? 助けに来てくれてありがとう~!」
「ま、喉元過ぎればって言うしね! もう終わったんだから、いいんじゃないかしら?」
「もう……ルーナはそれだから巻き込まれるんですよ!」
「わふ!!!」
フレーレとレジナが抗議の声をあげる。
「ま、無事でよかったよ本当に……」
<(ここに来る途中は大変じゃったがのう……)>
「え、なにそれ?」
レイドさんが見慣れない剣をサヤに納めながら私を見ていた。
そしてチェイシャに呆れた目で見られていた……何があったんだろ……?
みんなと挨拶をし終わった所でパパから声がかかった。
「それじゃそろそろ行くかー」
「あ、うん! 結構遠いの?」
「かなり遠いな……でも一瞬だから」
「?」
パパがそういうと、行くと宣言した人たちの足元に魔方陣が出てきた。
少しずつ文字に光が灯っていく。
「これは転移陣……」
レイドさんが呟く。段々光が強くなっていくと、アンジェリアさんが近づいてきた。
「どうやらここでお別れのようだな。またここに来る時は是非顔を見せてくれ……歓迎させてもらうよ」
「はい! あ……」
握手をしようと手を伸ばしたが、それは叶わず、目の前が暗くなった。
---------------------------------------------------
「はっ!?」
目の前が暗くなったと思った次の瞬間、私は薄暗い部屋の中で立っていた。
横を見ると、レイドさんにフレーレ、フォルサさんとレジナ達とチェイシャが居た。
何となく安堵していると、フッとパパ、ベルダー、エクソリアさんがどこからともなく現れる。
「成功っと」
「……楽でいいなこれは……」
『で、ここで何を話すんだい?』
「ま、とりあえずこっちへ来てくれ」
パパに案内されながら周りを見ると、薄汚れてはいるけどどうやら城のようね。
「レイドさん?」
横をあるくレイドさんを見ると、険しい顔をして歩いていた。
「あ、ああ……どうしたんだい?」
「い、いえ……」
何となく気まずくなったところでフレーレ。
「(どうしたんですかね?)」
「(わかんないわ……ここ、どこなのかしら)」
「にゃーん……」
眠いのか、フレーレの胸へと顔をうずめるナイトメアキャット。そこに胸元にいたと思われるジャンナが叫びながら飛び出てきた!
<ぴーー!? 何よ猫じゃない! 鳥に猫はダメでしょう!?>
「にゃにゃ♪」
パタパタと飛び出てフォルサさんの頭へと着地し、安堵していた。
猫ちゃんはパタパタと手を振っていた。
<流石にこの人数になると騒がしいのう……ん? この気配……>
チェイシャがやれやれとため息をついていると目的の場所へ到着し、ギギギ……と扉が開いた。
そしてパパが私達に振り返り言った。
「ようこそ魔王城へ。レイド君は久しぶりってとこかな?」
「……」
「ま、魔王城……!?」
「な、何でそんなところに来たの!? 話なら別に家でいいじゃない」
「……ここで無いとダメなんだ。俺達の目的、エクソリア達の確執、レイド君の妹……そしてルーナ、お前の事も」
「私? 女神の力はもう知ってるじゃない?」
「そこじゃない。いや、それも入っているか……まあいい。まずはエクソリア達の確執、そしてルーナ、レイドの妹……最後に俺達の目的を話そう」
パパが私達をテーブルへと案内した。よく見ればここは謁見の間……?
「ほら、ルーナ。早く座るんだ」
「う、うん」
全員が着席した瞬間、別の扉がバーン! と開き、そこから人が出てきた
「うわ!? びっくりした!」
メイドさんの格好をしたキリッとした女性がティーセットを持ってきていた。
「茶だ! 存分に味わえ!」
「……カルエラート、どこでそんなものを……」
パパが疲れたような声でその女性に声をかけた。
「似合うか? 暇だったから城を探索していたのだ。その時に見つけた」
<勇者、この女めちゃくちゃにゃ……どこかへ行く時は私も連れて行ってほしいにゃ……>
よく見れば足元に二足歩行で歩く猫が居た。それを見てチェイシャが叫ぶ。
<バステト! お主バステトではないか!>
<にゃにゃ!? チェイシャじゃないかにゃ!? ど、どうしてこんなところに!? お前も捕まったのかにゃ?>
二匹はひしっと抱き合って再会の喜びを表していた。
「あー……話、進めていいか……?」
パパがカルエラートさんにお茶をもらいながら、疲れた声でそういっていた。
女神の確執……一体どんな事が?
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