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第五部:終わりの始まり
その118 迎撃
しおりを挟む「レ、レイドさんまで!?」
ケルベロス戦っている間、ベルダーの方もチラ見していたが、瀕死のベルダーを助けたのは何とレイドさんとチェイシャだった。
「ルーナちゃん! 無事か! とりあえず話は後だ、こっちは任せてくれ! そのでかい魔物は任せるよ!」
「分かりました!」
うーん、久しぶりに見たけどいいところで来るレイドさんはかっこいい。勇者って感じよね!
でもゲルスは武器を持っていないのにレイドさんとベルダー相手に一歩も引けを取らない。ホントに嫌なやつだわ……。
さて! こっちは任されちゃったから頑張らないとね!!
するとフレーレが
「ルーナ、エリックの所が危険なので行ってきますね!」
「うん、お願い! レジナ、シルバ、シロップ! こっちは私たちで終わらせるわよ」
「ガオォォォォォン!」
「わぉぉぉぉん!」
「きゅきゅぅぅぅん!」
「シロップは無理しないでいいからね?」
咆哮をあげる親子。そこへケルベロスの頭……アマンダが攻撃を仕掛けてきた!
アオォン!!
フレーレが助けに行ったエリック達は頭だけでいいと判断したのか、私たちに手を使って攻撃を仕掛けてきた。毛を私が刈り取り、フレーレが脳を揺らし、レジナ達が目や鼻などを虎視眈々と狙うため頭だけでは対処できないのだろう。
「パワーは上げてるんだから!」
剣で爪を受け止めて、それを受け流した後に見えた肉球へ剣を突き刺すと簡単に通った。やはり肉球は柔らかいらしい。
アオゥ!?
「わふ……」
レジナ達がそれを見て痛そうに耳を下げるがここはチャンス。足を土台にして、軽いシルバが体を駆け上り、ついにアマンダと呼ばれた頭の左目を抉る事に成功した!
「わん……わおぉぉん!!」
ギャン!?
顔を手で引っかき、シルバを叩き落す。
「きゃん!?」
「シルバ!」
空中を舞うシルバをキャッチし、地面へ降ろす。
「わおん♪」
ご機嫌なシルバは一旦おいておき、再度アマンダへと向き直ると、痛そうに頭を振るアマンダ。
レジナとシロップが追撃に走ろうとした所で、私は嫌な予感を覚えた。
『ふふ、危ないかもね?』
嫌な予感はあんたのせいか!? 私はレジナ達を抱きかかえるようにタックルし、地面に転がった。
その直後……
ゴァァァァァァァ!!
アマンダの口から炎のブレスが吐き出されたのだ! 突っ込んでいれば丸焦げにされていたかもしれない……!!
アォォォォォン!!!
私を生かしておけというゲルスの言葉を守っていたのだろう、恐らく手加減をしていたのだ。
しかし、身の危険を感じそれどころではなくなったため、なりふり構わない攻撃を仕掛けてきたに違いない。
「正面はダメよ、レジナとシルバは左、私とシロップは右から行くわ」
「がう!」
一鳴きして、レジナとシルバは左へ動く。向こうにとって脅威は私よりレジナだ。しかし左目を潰しているのでレジナ達の動きは見えづらいはず、そこが狙い目だ!
案の定、ガウガウわんわんと死角から攻撃をしてアマンダの顎や頬の肉が削げ、血がボタボタと流れ出した。毛を刈ったのも無駄じゃなかった!
噛み付きや引っ掻きをするが遠近感が狂っているみたいで、直撃は無かった。
それでも振ってくるアマンダ。
「こっちも居るわよ!」
剣が通るようになり、懐へ飛び込んで首を狙いに行く。ザクっと手ごたえがあり噴出すような血が出ていた。
「いける、早く倒さないと……」
アンジェリアさんの首は氷のブレス、エリックとフレーレの首は雷を吐くようだった。イリスが早いのでアンジェリアさんの所は一進一退だが、身軽なものが居ないエリックのチームは苦戦を強いられている。
「シルバ! こっちはいいからフレーレの所へ!」
「わおん!」
私の指示でシルバが後ろを向いて走ろうとしたその時……!
アオ……!
シルバに向かって炎を吐こうと口をカパっと開けたのだ。
「きゅきゅーーん!」
すると私の背中に張り付いていたシロップが事もあろうにその口の中へ飛び込んだ!?
何やってるのシロップ!?
「ガウ!?」
これにはレジナも驚いたのか
シロップが口の中へすっぽり収まった瞬間、喉の辺りでボン! と鈍い音がした。
アゲェアァァァァァ……!
そしてアマンダの目から光が消え、首が項垂れた。
「ちょ!? シロップ! シロップ!」
慌てて口を押し広げると、真っ黒になったシロップがコロンと転がって出てきた。
唾液と煤で黒くなった体をぶるぶると震わせ、鳴いた。
「きゅきゅーん♪」
「もうー! 危ない事はしないでよ……死んだかと思ったじゃない……」
頭を撫でるとその反動で首のスカーフがボロボロと崩れていった。
「きゅ!? きゅーん……」
「ええ……それが焼けたのがそんなにショックなの……また買ってあげるから元気出しなさい!」
「きゅんきゅん♪」
大きく尻尾を振るシロップをもう一回撫でて、私は仕上げにかかる。
「こいつはまだ死んでいない……止めを刺すわよ」
「ガウ!」
レジナが鼻骨を折り、私が眉間から脳へ剣を刺し貫く。一瞬首がビクッとなった後、呼吸を止めた。
「ふう……完勝とはいかないけど、とりあえず一つね……次に行くわよ、レジナはシルバを追って」
「ガウわふ!」
サッとエリック達の所へ向かうレジナ。私はシロップを拾ってアンジェリアさんの下へと向かった。
そうだレイドさんは……!
振り向いた先にあった光景に私は息を呑んだ。
---------------------------------------------------
「つ、強い!?」
<魔法弾をこうも簡単に避けるか!>
レイドは防戦が精一杯。チェイシャの援護はあるが、ギリギリの所で薄皮一枚を斬る事ができるかどうかという有様だった。
「勇者って言ってもこの程度か! ディクラインにはおよばねぇな」
「貴様、神裂とか言ったな。 ゲルスと同じくお前の目的も女神の力を手に入れることか!」
二人がかりで攻撃しているにも関わらず、神裂に直撃を入れることができないで居るレイドとベルダー。
ゲルスの意思と神裂の意思が同居している目の前の男にベルダーは質問をしていた。
ドガッ!
二人に蹴りを食らわせ間合いを取り、神裂は語りだした。
「まあ半分当たりだなぁ。ゲルスは協力者だから正確には『俺が』『女神の力を全て取り込んだルーナが欲しい』だな」
「ルーナちゃんそのものも目的のに入っているのか……?」
「理由はベルダーなら分かるかも知れねえなー。何せまお……」
神裂が喋ろうとした所でベルダーが先程までとまるで違う動きで神裂に迫っていた!
手にしたダガーによる一撃で神裂の肩が抉れていた。
「がああああああ!? べ、ベルダーぁぁぁぁ!」
「はあ、はあ……それ以上は言わせん。聞かせるにはまだ早い!」
「こいつ防具を……!」
レイドが床を見ると、ベルダーは防具を全て外し身軽になったのだと把握した。
そしてベルダーは顔を覆っていた布も取り去っていた。
「防具をつけていると安心感で受身になってしまう……ニンジャの真骨頂は守り無き攻めにあるのだ、神裂とやら……もう遅れは取らんぞ……」
<あやつ……顔が……>
「俺が実験していた時に逃げ出した時のままか! ぎゃはははは、間抜け面め!」
布の下にあったのは猫のような髭と口から出ている長い牙だった。
「ディクラインが気づいてくれなかったら、あの三つ首の犬や野盗の頭みたいに恐らくお前の作品になっていただろうな」
「へ、へへ。中途半端も嫌だろう? 今ならタダで完成させてやるぜ?」
「ほざいたなクズめが!」
肩を抑えながらもニヤニヤと笑う神裂。ベルダーが追撃を行い、レイドも神裂へと斬りかかる。
「真の理由は分からんが、ルーナちゃんを狙っているのならここで引導を渡してやる」
「お前もディクラインやベルダーの目的を聞いたら黙ってはいられないと思うがな! こういうのはどうだ《リバース・アビリティ》そして《マジックアロー》!」
神裂は自分の傷ついた肩にマジックアローを打ち込んだ。 気でも狂ったかとベルダーが叫ぶが、その直後に、なんと傷口が塞がっていった!
「これは……!?」
「おもしれぇだろ? 見物リョウはお前らの命だけどな!」
回復した神裂が尚も襲い掛かってきた!
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