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第五部:終わりの始まり
その117 集合
しおりを挟む「私とウェンディ、イリスは左端の首を狙う! 来いお前達!」
「承知であります!」
「はいー!」
敵はケルベロスとかいうワンちゃんに、ゲルス。そして国王のみ!
戦力は少ないような気がするけど、頭は三つあって体が大きいケルベロスに、ゲルスの未知の能力があるので、決して油断ができない。特に回復魔法を反転させるあの魔法を食らうわけにはいかないのだ。
まず、アンジェリアさんが自分の部下を集めて頭の一つへ攻撃を仕掛け始めた。
毛は硬いが、目と鼻、そして眉間の辺りは毛が無かったり、薄かったりするので狙いをそこに集中するようだ。
「僕達はこっちだっ! いけるか! お前達!」
「「「「勿論です!」」」
「先程の回復魔法、見事でした。ありがとうございます!」
エリックの言葉を受け、先程のリザレクションで回復しきった騎士達が槍や長剣を持って右の首へと仕掛け始めた。
流した血は回復しないので、精神力で体を動かしていると思うと負けていられない。
ウォォォォォン!!
「ガウゥゥゥ!!!!」
真ん中の首はレジナ達と私、フレーレが受け持っていた。
同じ種族だからか、レジナがすごく威嚇をしていた。シルバとシロップも噛みつきを回避しながら引っかいている。
「わぉぉぉぉん!!」「きゅきゅんー!」
「フレーレ、いざという時の回復があるから少し下がってて! 私が行くわ、レジナ達! 補助魔法よ!」
エリック達にもかけたいが今はそっちに行く余裕が無い。アンジェリアさんたちにはかけているから早く終わらせる事が助ける事に繋がるだろう。
グルルルルル……グォォォォア!
「ガオォォォォォォォォン!!」
ザブッ……!
グォ!?
噛み付くために下げた口を避けながら下唇に噛み付くレジナ。私は下がったままになった頭、その眉間に剣を突き立てる。
「この! シルバ!」
「わんわん!!」
私を踏み台にして鼻に噛み付くシルバ! ギリギリと肉が締まる音がこちらまで聞こえてきた。修行でもしてきたのかしら……身体能力がまるで違う。
「かったいわね!?」
厚い毛に覆われた顔に剣を刺すが、毛が刈り取られるだけでダメージが無さそうだ。
そこへ懐に潜り込んできたフレーレがメイスでケルベロスの顎をかち上げる!!
「聖魔光スマァァッシュ!!」
ギャウン……!?
勢いよく首が跳ね上がりレジナとシルバも空中へと投げ出される。が、姿勢を変えてレジナがシルバを咥えてきれいに着地した。
「きゅんきゅーん♪」
「何あれ!? フレーレ修行でもしてきたの!? 私出遅れてないかしら!?」
「何言ってるんですか? 浅かったみたいですね……来ますよ!」
アォォォォォォォン!!!
目を血走らせ、口からは泡を吹いていた。怒り心頭と言った感じ……まだまだ元気みたいね!
でも攻撃が効いていないわけじゃない、毛が再生する事も無さそうだし、いつかは倒せる!
「私は毛を刈り取るわ、レジナ達は目や鼻みたいに柔らかいところを!」
「わおん!!」
「わふー!!!」
レジナとシルバが呼応し、体をよじ登るため懐へ入る。
一方、私達の近くで戦うベルダーはゲルスと死闘を繰り広げていた。そしてゲルスの口から驚愕の言葉が飛び出すのを聞く事になる。
---------------------------------------------------
バシッ! ドガガガガガガガ!! バシュ!
ベルダーのダガーがゲルスを貫くため高速で振られ、そして突く。だが致命打には程遠く、膠着状態が続いていた。
ゲルスも防御一辺倒ではなく、トンファーと蹴り、そして魔法を巧みに操り、すでにお互い傷だらけになっていた。
「つぉぉぉりゃあああ! 死ね! ゲルス!」
「!? 《クリエイト》《リバースシールド》」
隙をついてベルダーのダガーが心臓へと向かう! しかし魔法障壁のようなものでブロックされて、パリン、と何かが割れる音と共にベルダーの体が後方へ吹き飛んだ。
「ぐう……奇妙な技を……体術といい、魔王戦では使っていなかったはずだ……」
「ふう……まあそうですね。すでにあの頃は使えていましたが、手の内を見せるのは得策ではないと思いましてね」
チャリン……
ゲルスが話すのを立ち上がりながら聞き、先程の失敗を教訓にシュリケンを投げつける。
「ほっほ、そうです。油断無く攻撃するのは賢いですよ? 《マジックアロー》!」
「ふっ! では最初から裏切るつもりだったということか」
ガッ!!
「ほっほっほ、そうですねぇ。あなた方が魔王に敗れれば私の実験材料にするつもりでした」
ドゴッ!
「しかしそうはならなかった」
「ええ、しかし知ってのとおり面白い事がありましたしね……うぐ!?」
初めてベルダーの攻撃がクリーンヒットした瞬間だった! さらに畳み掛けるベルダー!
「そのおかげで、魔王の遺言である、女神を葬り去る事ができなくなった! 言え! 貴様の本当の目的は何だ!!」
ザシュ! ザクッ!
ベルダーの猛攻により、防御一辺倒になるゲルス。血まみれになりながらも致命傷は避けていたのは流石だというところか。
ドガッ!
ズザザ……と自分から後ろへ飛び転がるゲルス。
「ぐぐ……やはりまともにぶつかっては……「そのために俺が居るんだろうが。代われ、ここからは俺だけで殺る」
「? 何だ……?」
独り言を呟くゲルスに違和感を覚えるベルダー。傷だらけのゲルスが立ち上がり、ベルダーを睨みつける。
「(雰囲気が変わった……?)」
「あーあ、いてぇ! 実に痛ぇよ。てめぇ! よくもここまでやってくれたもんだ……」
刹那、ベルダーの目の前にゲルスが現れていた。
「頂心肘!」
「何!?」
咄嗟に左腕でガードするが、グキリと嫌な音を立て、そのまま後ろへと下がらされる。
ゲルスの攻撃はまだ続いていた! スッと回り込みベルダーの背中に両手の掌を添え、吼える!
「双撞掌!」
「がぁぁぁぁ!?」
体の中を『何かが』通り、その場で崩れ落ちる。
倒れないようゲルスがベルダーの頭を掴み、喋りだす。
「どうだぁ、効くだろ?」
「ぐほ……な、何だ……見た事も聞いた事も無い技……ゲルス……お、お前は一体」
「あー? ああ、そうか見た目じゃわからねぇから仕方ないか。俺の名は『神裂 学』別世界の人間だ」
「べ、別世界だと?」
「あぁ、元々居た世界で俺は死んでなぁ。その後、別世界に転生だか生まれ変わるだかを選ばされる場所に行ったんだが……そこでちとやらかしてな? ぎゃははは、肉体が無いまま魂だけこの世界へ迷ったって訳だ! で、たまたま近くに居たゲルスに憑依して……もう何年になるかなぁ」
「ぐああああああ!?」
軽い口調で、ベルダーの頭を握りつぶそうとするゲルス。その顔は愉悦に歪んでいた。
「ま、俺についてはいいだろ? ここで死ぬお前に言っても意味が無いし」
ベルダーはゲルス……神裂の手を振り払おうとするが恐るべき力でまるで外すことができない。
このまま頭を潰されるのか、ベルダーが考えたその時だ!
ボウン!!
「ん!?」
<行け! レイド!>
神裂の顔に魔法弾が飛んできてそれを振り払った。しかし視界を遮ったその一瞬を見逃さず、彼は渾身の一撃を放つ!
「食らえぇぇ!!」
「何!? 貴様は!?」
光り輝く刀身の剣を振りかぶったのは……
「レ、レイドか……!?」
呟くベルダーから手を離し、振り下ろされた剣の横を手で叩いて逸らす。
「小癪な!」
レイドとベルダーから距離取り半身で構える神裂。
「こいつ早い……! おい、生きてるか?」
「チッ……お前に助けられるとはな……」
それを聞いてレイドはポーションを持った手で頬をぶん殴った!
「ぶあ!? ……これは、ハイポーションか」
かばった腕が治っていくのを感じるベルダー。
「今のはこの前のお返しだ。もっと殴ってやりたいが……敵はとりあえずあの犬とゲルス、そうだな?」
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「ああ、気をつけろ今はカンザキとかいうやつらしい。まともに技を食うと動けなくなるぞ」
「……よく分からんが、今はお前と戦っている場合じゃなさそうだな」
ベルダーがダガーを拾い直し、レイドが剣を両手で構える。
「面白ぇ、まとめてかかってこい!!」
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