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第五部:終わりの始まり

その104 ひとまずの休息とレジナ達の戦い

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 「こちらですよぉ~」

 エレナさんに連れられ城の中を歩く私とアンジェリアさん。特に何の変哲もない城……といってもお城に入った事なんかない……あれ? そうだっけ? 子供の頃……居た、ような……。

 「到着しました~今日からここがわたし達のお部屋になります~」


 「はっ!?」

  私の思考はエレナさんの声で中断された。

 「どうぞ~」と開けられた部屋を見てつい感嘆の声を上げてしまった……!

 「わあ! これが部屋!? 宿の一角を改造したみたいな広さね!」

 「これはすごいな、私も城の客室に来たことは無いから初めて見るが、宿舎の部屋3人、いや4人分はあるな!」

 アンジェリアさんも興奮気味に声をあげる。
 真ん中のにリビングがあり、さらに部屋の中に部屋という感じで、寝室が区切られていた。
 ベッドは4人分(元々そう言う部屋何だと思う)があり、テーブルどころか鏡台も完備。
 共同だけどお風呂も……! 

 「うふふ~、わたしは部屋から荷物を持ってきますからくつろいでいてくださいね~」

 「手伝いましょうか?」

 「ううん~あまり物がないから大丈夫ですよ~ありがとうございます~! それよりもルーナさん、敬語でなくていいですよ~? 歳も近いと思いますし、わたしはメイドですから~」

 エレナさんがほんわかしたオーラでにこにこしながら言ってくる。
 うーん、フレーレとはまた違った可愛さ……。

 「分かりました! あ、分かったわエレナ! 私もルーナでいいわ!」

 「うーん、それは困りますから~、ルーナさん、で!」

 「なら敬語だけ変えてもらえるかしら? 私はそんなに偉くないからこそばゆくて……」

 「それくらいならいいかな~? 分かったわ~。 それじゃあすぐ戻るね~」

 そう言って手を振って出て行った。そういえば国王に狙われてるんだっけ? 一人で大丈夫かしら?
 ふかふかのソファでぼよんぼよんしていたアンジェリアさんに聞いてみる。

 「エレナ、一人で大丈夫ですかね?」

 「ああ、彼女は大丈夫だろう。この国の基盤はほぼライノスの父でもある大臣、ロージーが把握している。かれが居なくなるのは痛いからな、国王も手は出さないのだ。下手にエレナを襲えばライノスとロージーが謀反を起こすだろう。二人を始末するのは簡単だが、損失の方が大きいという訳だ」

 「あー。逆に言えば人質にするのが精一杯って事ですね」

 「そういうことだ。さて、それでは私達の部屋を決めておこう!」

 アンジェリアさんがそう言いながら、部屋へ入って行った。

 ……アンジェリアさんが一番ノリノリなのは気のせいかしら?



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 しばらくするとエレナが無事に戻ってきてしばらく談笑をしていた。

 エレナは19歳で私より二つ上で、子供のころに大臣のロージーさんに拾われてからは殆ど城で暮らしており、外にはあまり出たことが無いとか。いわゆる箱入り娘というやつだ。
 
 でも……

 「いつもはお掃除や城の人達のご飯を作ったりしていますね~」

 「お嬢様って訳じゃないのね?」

 「お父様は大臣ですが~わたし達は元々孤児だったからじっとできないの~だからお仕事させてもらってるのよ~」

 「なるほどな、ライノスも元は平民だから国王の風当たりも強いという訳か」

 「そのあたりは~あまり分からないんですけどね~?」

 エレナには優しいらしい国王は何を考えているか分からない。だが国の惨状を見る限りあの男が国王で居るのは好ましくないと私は思う。
 
 さて、まだ日も高いし少し探りを入れるかな? ベルダーがゲルスを見かけたら教えてくれって言ってたけど……。

 「ねえエレナ。あなたお掃除とかで部屋にあちこちに行くわよね? どこか怪しい部屋って無い?」

 「怪しい部屋? そうねぇ~あ、西に塔があるんだけど~そこに出入りしていた人が国王様と仲が良いみたい~。賢者様らしいけど、最近見かけないわ~」

 賢者、ねえ?
 それはかなり怪しい……国王と仲がいいというのはエレナの感想なのであまりアテにできないけど調べてみる価値はありそうね。
 
 後は脱出経路か、とすればとりあえず……。

 「エレナ、少し城の中を案内してくれないかしら? 興味あるの!」
 
 私が微笑むと、エレナは嬉しそうにこくんと頷いた。

 エレナが居れば城を歩き回ってもおかしくない……アンジェリアさんを信用しているからか監禁もされていない……罠かも、とは思うけど今はこの状況を活かすのが先決だ!

 まずは構造を把握するため、外周から歩き回ることにした。




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 <北の森>


 グォォォォン!

 「ガウゥゥゥゥゥゥ!!」

 「き、きゅん! きゅーん!」

 デッドリーベアの攻撃を紙一重で避けながら、爪や噛みつきで攻撃を仕掛けるレジナ。それでも相手は魔物、それも一級品の敵だ、傷が増えていくレジナ。
 
 そして足元でシロップが怯えながらも、吠えていた。


 グオゥ!!

 「ガウ!」

 デッドリーベアが荒々しい攻撃をかけてくる。レジナの毛が赤く染まるが致命傷には遠い。
 そして狙いすました一撃をレジナが放つ!

 「ガォウ!」
 
 ベキベキ!!

 グォ!?

 「わふ!?」

 鼻に噛みつき、そのまま骨ごと噛み砕く!
 たまらずデッドリーベアが着地前にレジナをその剛腕で吹き飛ばし、木に叩きつけていた!
 
 グ、グォ……

 鼻を潰され嗅覚が使えなくなったデッドリーベアが焦る。視覚よりも嗅覚を頼る熊にとってこの一撃は致命的であった。

 「ガウ……! わふ! わんわん!」

 逃げ腰になるベアを見て勝機とみたレジナがシロップへ声をかけていた。
 そしてデッドリーベアへと駆ける!

 「きゅ……きゅん!」

 そしてシロップもデッドリーベアへと駆けだした!

 グォォォォ!

 シロップなら殺せる、そう判断したベアは狙いをシロップへと切り替える。
 小ぶりだが腹を満たすことはできそうだ、と。

 「きゅん! きゅーん!」

 ベアへ突っ込むシロップ! 口を開けて迫るベアを見て一瞬怯むが、そのまま滑り込むようにベアの懐へ潜り、裏へ回りこんだ。

 グォ!?

 急停止し、振り向こうとして足をもつれさせ転んでしまうベア。
 
 「きゅんきゅーん!!!」

 「ガウゥ!!」

 そこに母娘がそれぞれの爪でベアの両目をえぐっていた!

 グォ……! グォォォォォン!!?

 両目から血が吹き出し悶える!

 「ガウ!!!」

 そしてレジナがうしろから首筋に噛みつき力を加える。毛皮は固いが、これなら首の骨を折れると確信していた。

 グ、グォ……

 ベキ……ベキキ……

 グググ……と徐々に力が入り、嫌な音が響く。暴れて外そうとするが、シロップがベアの足にしがみ付いて離さない。

 やがて……

 ベキン! 

 グアォアォアォォア!!!!!

 首の骨と脊髄を断たれ、デッドリーベアは息絶えた。
 

 「わふ……わふ……アォォォォォォォン!!」

 レジナもギリギリだった、傷を負い、体力も限界に近かった。後少しで倒せないようであればシロップを連れて逃げることも考えていたのだ。

 「きゅん、きゅーん……」

 「わふ……」

 シロップがレジナの傷を舐めて心配そうな声をあげていた。
 レジナはそれを受け入れて静かに横たわる。




 一方、崖に降りたシルバ。

 「きゅん!」

 今、目的のモノを持って崖を駆けあがっている最中だった。
 だが崖を降りた時に傷を負ってしまいシルバもまた血を流しながら帰っていた。

 その目的のモノとは……
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