82 / 377
第五部:終わりの始まり
その104 ひとまずの休息とレジナ達の戦い
しおりを挟む「こちらですよぉ~」
エレナさんに連れられ城の中を歩く私とアンジェリアさん。特に何の変哲もない城……といってもお城に入った事なんかない……あれ? そうだっけ? 子供の頃……居た、ような……。
「到着しました~今日からここがわたし達のお部屋になります~」
「はっ!?」
私の思考はエレナさんの声で中断された。
「どうぞ~」と開けられた部屋を見てつい感嘆の声を上げてしまった……!
「わあ! これが部屋!? 宿の一角を改造したみたいな広さね!」
「これはすごいな、私も城の客室に来たことは無いから初めて見るが、宿舎の部屋3人、いや4人分はあるな!」
アンジェリアさんも興奮気味に声をあげる。
真ん中のにリビングがあり、さらに部屋の中に部屋という感じで、寝室が区切られていた。
ベッドは4人分(元々そう言う部屋何だと思う)があり、テーブルどころか鏡台も完備。
共同だけどお風呂も……!
「うふふ~、わたしは部屋から荷物を持ってきますからくつろいでいてくださいね~」
「手伝いましょうか?」
「ううん~あまり物がないから大丈夫ですよ~ありがとうございます~! それよりもルーナさん、敬語でなくていいですよ~? 歳も近いと思いますし、わたしはメイドですから~」
エレナさんがほんわかしたオーラでにこにこしながら言ってくる。
うーん、フレーレとはまた違った可愛さ……。
「分かりました! あ、分かったわエレナ! 私もルーナでいいわ!」
「うーん、それは困りますから~、ルーナさん、で!」
「なら敬語だけ変えてもらえるかしら? 私はそんなに偉くないからこそばゆくて……」
「それくらいならいいかな~? 分かったわ~。 それじゃあすぐ戻るね~」
そう言って手を振って出て行った。そういえば国王に狙われてるんだっけ? 一人で大丈夫かしら?
ふかふかのソファでぼよんぼよんしていたアンジェリアさんに聞いてみる。
「エレナ、一人で大丈夫ですかね?」
「ああ、彼女は大丈夫だろう。この国の基盤はほぼライノスの父でもある大臣、ロージーが把握している。かれが居なくなるのは痛いからな、国王も手は出さないのだ。下手にエレナを襲えばライノスとロージーが謀反を起こすだろう。二人を始末するのは簡単だが、損失の方が大きいという訳だ」
「あー。逆に言えば人質にするのが精一杯って事ですね」
「そういうことだ。さて、それでは私達の部屋を決めておこう!」
アンジェリアさんがそう言いながら、部屋へ入って行った。
……アンジェリアさんが一番ノリノリなのは気のせいかしら?
---------------------------------------------------
しばらくするとエレナが無事に戻ってきてしばらく談笑をしていた。
エレナは19歳で私より二つ上で、子供のころに大臣のロージーさんに拾われてからは殆ど城で暮らしており、外にはあまり出たことが無いとか。いわゆる箱入り娘というやつだ。
でも……
「いつもはお掃除や城の人達のご飯を作ったりしていますね~」
「お嬢様って訳じゃないのね?」
「お父様は大臣ですが~わたし達は元々孤児だったからじっとできないの~だからお仕事させてもらってるのよ~」
「なるほどな、ライノスも元は平民だから国王の風当たりも強いという訳か」
「そのあたりは~あまり分からないんですけどね~?」
エレナには優しいらしい国王は何を考えているか分からない。だが国の惨状を見る限りあの男が国王で居るのは好ましくないと私は思う。
さて、まだ日も高いし少し探りを入れるかな? ベルダーがゲルスを見かけたら教えてくれって言ってたけど……。
「ねえエレナ。あなたお掃除とかで部屋にあちこちに行くわよね? どこか怪しい部屋って無い?」
「怪しい部屋? そうねぇ~あ、西に塔があるんだけど~そこに出入りしていた人が国王様と仲が良いみたい~。賢者様らしいけど、最近見かけないわ~」
賢者、ねえ?
それはかなり怪しい……国王と仲がいいというのはエレナの感想なのであまりアテにできないけど調べてみる価値はありそうね。
後は脱出経路か、とすればとりあえず……。
「エレナ、少し城の中を案内してくれないかしら? 興味あるの!」
私が微笑むと、エレナは嬉しそうにこくんと頷いた。
エレナが居れば城を歩き回ってもおかしくない……アンジェリアさんを信用しているからか監禁もされていない……罠かも、とは思うけど今はこの状況を活かすのが先決だ!
まずは構造を把握するため、外周から歩き回ることにした。
---------------------------------------------------
<北の森>
グォォォォン!
「ガウゥゥゥゥゥゥ!!」
「き、きゅん! きゅーん!」
デッドリーベアの攻撃を紙一重で避けながら、爪や噛みつきで攻撃を仕掛けるレジナ。それでも相手は魔物、それも一級品の敵だ、傷が増えていくレジナ。
そして足元でシロップが怯えながらも、吠えていた。
グオゥ!!
「ガウ!」
デッドリーベアが荒々しい攻撃をかけてくる。レジナの毛が赤く染まるが致命傷には遠い。
そして狙いすました一撃をレジナが放つ!
「ガォウ!」
ベキベキ!!
グォ!?
「わふ!?」
鼻に噛みつき、そのまま骨ごと噛み砕く!
たまらずデッドリーベアが着地前にレジナをその剛腕で吹き飛ばし、木に叩きつけていた!
グ、グォ……
鼻を潰され嗅覚が使えなくなったデッドリーベアが焦る。視覚よりも嗅覚を頼る熊にとってこの一撃は致命的であった。
「ガウ……! わふ! わんわん!」
逃げ腰になるベアを見て勝機とみたレジナがシロップへ声をかけていた。
そしてデッドリーベアへと駆ける!
「きゅ……きゅん!」
そしてシロップもデッドリーベアへと駆けだした!
グォォォォ!
シロップなら殺せる、そう判断したベアは狙いをシロップへと切り替える。
小ぶりだが腹を満たすことはできそうだ、と。
「きゅん! きゅーん!」
ベアへ突っ込むシロップ! 口を開けて迫るベアを見て一瞬怯むが、そのまま滑り込むようにベアの懐へ潜り、裏へ回りこんだ。
グォ!?
急停止し、振り向こうとして足をもつれさせ転んでしまうベア。
「きゅんきゅーん!!!」
「ガウゥ!!」
そこに母娘がそれぞれの爪でベアの両目をえぐっていた!
グォ……! グォォォォォン!!?
両目から血が吹き出し悶える!
「ガウ!!!」
そしてレジナがうしろから首筋に噛みつき力を加える。毛皮は固いが、これなら首の骨を折れると確信していた。
グ、グォ……
ベキ……ベキキ……
グググ……と徐々に力が入り、嫌な音が響く。暴れて外そうとするが、シロップがベアの足にしがみ付いて離さない。
やがて……
ベキン!
グアォアォアォォア!!!!!
首の骨と脊髄を断たれ、デッドリーベアは息絶えた。
「わふ……わふ……アォォォォォォォン!!」
レジナもギリギリだった、傷を負い、体力も限界に近かった。後少しで倒せないようであればシロップを連れて逃げることも考えていたのだ。
「きゅん、きゅーん……」
「わふ……」
シロップがレジナの傷を舐めて心配そうな声をあげていた。
レジナはそれを受け入れて静かに横たわる。
一方、崖に降りたシルバ。
「きゅん!」
今、目的のモノを持って崖を駆けあがっている最中だった。
だが崖を降りた時に傷を負ってしまいシルバもまた血を流しながら帰っていた。
その目的のモノとは……
0
お気に入りに追加
4,221
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。