パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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第五部:終わりの始まり

その101 潜入、ビューリック城

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 レイドとフレーレが旅立ち、それぞれのアクシデントや訓練が終わるころ、ルーナの状況も進展していた。

 ルーナの現在地はビューリック城。

 その敷地内にある騎士団の宿舎へとやってきていた。




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 「ほう……その娘が……」

 「そうそう、例の子だよーこの子を起爆剤にして事を起こすよー」



 はい、ルーナです……。

 ついに私は城に引き渡されることになりました……エリックに連れられ、まず隊長に会ってもらうって事で連行。
 きっと隊長はゴツイ大男で、味見と称してあんなことやこんなことをされるに違いないと、とぼとぼと俯いて歩き、通された部屋のソファに座っています。

 そしてさっきのセリフを聞いて私は顔をあげると、そこにはプラチナブロンドの髪をセミロングにした女性が座っていました。

 「女性!?」

 「ん? どうした、急に声をあげて?」

 腕を組んだ、フレーレよりも小柄そうな女性が首を傾げて疑問を口にしていた。
 そこにエリックが爆笑しながら言う。

 「ははは、ルーナちゃんこう思ってるんでしょ? 女だてらに騎士団の隊長なんかしちゃって! ってさ!」

 ガツン!
 
 言うが早いか、女性が立ち上がりエリックの頭に拳骨が決まっていた。

 「お前たち男性がだらしないから私が隊長をやる羽目になっているんじゃないか! 精進をしろ精進を!」

 「あはは……女性の隊長さんなんですね」

 「ああ、名乗っていなかったな。私はオリビエ。ビューリック城の騎士達の隊長を務めている」

 「あれ? 女の子同士なんだから本名でいいじゃないー? アンジェリア?」

 名前可愛っ!

 「うるさい、早く用件を言え」

 「はいはい、せっかちだねー。それじゃ本題に入ろうー。アンジェリアには僕とライノスと一緒に、ルーナちゃんを城に引き渡す役をして欲しい」

 「概要は?」

 「ルーナちゃんには城を調査してもらう役をやってもらおうと思ってねー。でも、そのまま引き渡したら、あのクソ野郎の事だからがっつくに決まっている。だからアンジェリアに牽制してもらいたいんだよねー。いやーウチチの隊長が女性で良かった」

 「具体的にはどうする? 騎士団の宿舎に泊めるか? 女性用騎士の宿舎は空いているぞ」

 「そんなのがあるんですねー」
 
 女性騎士と聞いて気になったので私はつい口に出していた。

 「ん? そうだな、戦闘や魔法の恩恵がある者が食堂で働くのも変な話だろう? 150人くらい居る騎士の内、30人くらいは女性騎士だ。一応私が隊長を務めているが、男性はエリックが指揮することも多いから実質隊長は二人という感じだな」

 そっか、私の補助魔法も他の職業じゃ使いにくいよね。ウェイトレスには使ってたけど……。
 そんな事を考えているとエリックが話題を戻してきた。

 「話が逸れちゃったけど、ルーナちゃんを騎士の宿舎に置くのはあのクソ野郎がさせないと思う、なにせ夜這いなんかもできなくなるからねー。だから『女神の力を狙っている者が居る』とかで護衛役を買って欲しいんだよねー。ルーナちゃんと一緒の部屋で寝泊りして欲し……」

 するとアンジェリアさんが口を尖らせて言った。

 「……私が襲われるかもしれないじゃないか」

 「ぶは! 無い無い! あのクソ野郎がアンジェリアを襲う事は絶対にないよ! ぎゃああああああああ!?」

 目が光ったと思ったら、すでにエリックに飛び掛かっており、ゴロゴロと転がってマウントを取っていた。
 全然見えなかった……。

 「エリック、アンジェリアさんこんなに美人なのに失礼じゃない!」

 するとエリックをぼこぼこにしながら私の方を振り向くと顔が赤かった。そして一言。

 「あ、ありがとう」

 可愛っ!

 「さて、それじゃ僕は野暮用があるから帰るよ。今日はライノスも居ないし、面会は明日にしよう」
 
 マウントを取られていたハズなのに、いつのまにやらするりと抜けて入り口へと向かうエリック。
 
 「まったくお前はいつまでも子供じみたことを……ライノスを見習え……」

 「あれはあれでライノスは問題あると思うけどねー? アンジェリアと一緒なら相性はいいのかね? 後、できればエレナちゃんをルーナちゃんのお付人にして欲しい所なんだよねー。これはライノスに頼ませてみようかと思うけど。それじゃ仲良くねー」

 そのまま出て行き、私はアンジェリアさんと二人になる。

 「そういえば聞きそびれたんですけど、エリックとライノスさんは……」

 「まったくあいつは……ん? エリックとライノスは学生時代の同級生だ。首席で出たのにライノスは騎士にならず、エリックはちゃらんぽらんだから隊長に向かないと、先代隊長から私が任命されたんだ。まあ悪友ということやつだな」

 フフフろ笑いながらアンジェリアさんがソファに座りなおす。

 「話はだいたいエリックから聞いている。私は味方だから安心してくれ」

 「そうだ、さっき聞きたかったんですけど、クーデターはアンジェリアさんも良しとしているんですね?」

 「……頼むから皆の前ではオリビエで頼むぞ? エリックの両親の話は聞いたか?」

 「はい、ご両親が亡くなった事も理由も聞きました」

 するとアンジェリアさんが悲しそうな顔をして、語り始めた。

 「聞いていたか……私の両親も同じなんだ、国王のおもちゃにされて亡くなったよ。私を差し出さなかったことが気に入らなかったらしい」

 アンジェリアさんが言うには、12歳くらいまでは普通のお嬢様だったらしい。
 ある日、貴族達が一堂にお城に集まるパーティで国王の目に止まり、アンジェリアさんを差し出せと要求されたそうだ。
 流石に結婚相手としても夜の相手としても年齢が離れすぎているためお断りした(そりゃそうだ!)とのこと。

 その後、両親がお城へ呼ばれてそのまま帰って来なかったということだった。
 
 当時、執事をしていた人が経緯を知っており、アンジェリアさんにそれを告げた後、わざと家を没落させて片田舎に逃げた。
 そこから18歳まで過ごし、騎士を目指すことを決意した。

 ……登り詰めて国王を殺す為に。

 「……バレなかったんですか?」

 「私も成長して、見た目がかなり変わったからな。後、あのクソ野郎は自分に興味が無い事はまるで見向きもしない。それが幸いしたな……まあ、もし夜の相手を指名されたらその時に殺してやるくらいの覚悟はあるよ」

 実際には身体検査をされるから武器は持っていけないけど、と補足していた。

 「みんな、国王に迷惑をかけられているんですね……」

 「そうだな、ルーナと言ったか? 君もその一人だろう。恐らくこの国で役職があればあるほど、被害にあっているものは多いだろうな。逆に市民は興味が無いから被害は少ないんだよ、引きこもっているから城下町に出ることも無いしね」

 なるほど……だから騎士の人達はクーデターに協力的なのね。

 「さて、今日は君を任されたから私が騎士の訓練などの見学を案内しよう。これを使って変装してくれ」

 「あ、ありがとうございます! ……眼鏡?」

 「ああ」

 「これだけ……なんですか?」

 「ああ」

 「これじゃ全然だめですよ!? かつらとかもっと部分的な所を変えないと、いざって時にバレます! それならじっとしていた方が安全じゃないですか……」

 「む、そ、そうか……すまない、こういう事に慣れていなくてな……」
 
 あまり慣れる事でもないと思うけど……何か不器用と言うか可愛い人だなあ……。

 「分かりました、ちょっと髪型を変えて眼鏡をかければかなり変わると思いますからそれでいきましょう! 私も騎士の訓練って興味ありますし」

 「わ、分かった。フフフ、訓練は期待していいぞ?」

 こうして私は城へ潜りこむことになった。

 本格的な調査は明日からになりそうだけど……早く帰れるように頑張らないとね!



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 <北の森>


 「きゅん!」「きゅんきゅん!?」

 「わふ!」
 
 深い崖の前に狼の親子が立ち、何やら鳴いていた。
 そして、シルバが意を決して崖を飛び降りた! 

 「きゅん!」

 「きゅんきゅーん……」

 シロップが駆けだしたシルバを見て心配そうな声をあげ、母親のレジナを見上げるがレジナは黙ったまま崖の下を見ている。

 「わふ、わふわん」

 そして今度はシロップの方を見て鳴く。
 
 「……きゅんきゅーん!」

 それを聞いたシロップは、周辺をくまなく何かを探し始めていた。
 よく見ればレジナの首にあったスカーフが無くなっていた。

 
 ……あの日、油断したとはいえ薬を盛られてケージに入れられたレジナは、野生の勘や嗅覚が衰えていることに気付く。

 あそこで眠ったりしなければルーナを連れて行かれる事も無かったであろう、もっと強かったら……としばらく小屋の中で落ち込んでいた。
 
 もちろん匂い消しのおかげで追跡も出来なかったし、ルーナが強く着いてくるなと行っていたのも要因だ。

 しかし……

 『ご主人と離れるのは嫌だ』

 シルバとシロップがそう言い、子供たちのやる気を見てレジナは修行することを決意したのだ。

 この、生まれ育った北の森で……。
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