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第四部:ルーナの秘密
その78 復活
しおりを挟む「それでは俺はルーナを追う。早まるんじゃないぞ?」
「分かってるよー。ライノスも悪いんだけど頼むよ。ルーナちゃんに理由は言っちゃって構わない。ただこちらの敵に回る事だけは避けて欲しいねー」
エリック、ライノス、ベルダーの三人は山を下りながらこの先の話をしていた。
結論として、ベルダーはエリックへ協力することに決め、ライノスはルーナを逃がしているため帰る訳にもいかず、ベルダーへ着いて行くことにした。
「ビューリックがどうなろうが知ったこっちゃないが、ゲス……おっとゲルスは野放しにはできないからな」
「一体あいつは何をやったってのさー?」
「ふん、お前が国王を殺したい理由に近いな。お喋りはここまでだ、行くぞ」
「あ、ああ……」
ビューリック国へ向かう道とエクセレティコへ向かう分かれ道でベルダーとライノスはエクセレティコへと歩き出した。
「……さて、忙しくなるかなー? 君にも出番をあげるから頼むよー?」
「できればそんな事にはなって欲しくねぇがな。ゲルスは文字通り悪魔だぞ?」
「さてねーどちらにせよ選択肢は無いから、ラトムス君は出番が来たら出てもらうだけさ」
エリックは荷台に居る野盗のボス、ラトムスへ目を細めて事実だけを告げ、これからの事に想いを馳せてニヤリと笑っていた。
「(こいつは一体何なんだあ? しばらくは従うしかねぇが……気味が悪いぜぇ」
---------------------------------------------------
ペロペロ……
ん……
ペロペロ……
んん……シルバかな? シロップはフレーレが連れて行ったし……。
尚も私の顔を舐めるので、薄目をあけるとそこには……。
「わふ!」
「レジナ!? 目が覚めたの!」
まどろみが一気になくなり目の前の狼に抱きつくと、尻尾を大きく振ってひと声鳴いた。
「わふわふ!」
<置いてきた家から駆けつけて来たそうじゃ、匂いでここに居るのが分かったと>
一緒にチェイシャも来ていたらしく、ドアの向こうから姿を現していた。
あれ? ファウダーとジャンナさんは来ていないのかな?
<あの二人は、息を吹き返した者についておる。わらわ達も戻るぞ>
そっか、息を吹き返したんだ。良かったー。
「……って息を吹き返したの!? もう!?」
「わふー!?」
思わずレジナを抱きしめすぎて首を絞めてしまった。
「ああ、ごめんごめん!」
「きゅん!?」「きゅーん♪」
レジナを撫でているとチビ達が声を聞きつけたのか、私の部屋へ入って来た。
母親を見つけると凄い勢いで飛び掛かってくる。
「わふわふ♪」
レジナに頭を擦りつけている二匹を毛づくろいしているのを見て心底助かってよかったと涙が出てきてしまう。
「もう……心配させないでよね?」
「わふ!」
「あ! レジナ! 目が覚めたんですね!」
親子を眺めているとフレーレも起きだしてきて喜びの声をあげる。
まだパジャマだけど、十字架は首にかけたままだった。
「それ、寝る時もつけてるの?」
「え? これですか? はい! これがあると何か安心するんですよ」
女神の力が作用してるのかな? まあ私だけ特別って訳じゃないと思うし……。
フレーレが元気そうだしいいか。
「あ、そうそう。メルティちゃんとアントンも目が覚めたらしいよ?」
「ホントですか!? 早いですね……それじゃ会いに行きましょうか!」
フレーレが着替えに戻り、私も支度を始める。あ、レイドさんを起こさないと!
---------------------------------------------------
「こんにちはー!」
ソフィアさんの家に到着し、玄関を開けながら挨拶するとソフィアさんがニコニコしながら迎えてくれた。
「いらっしゃい♪ メルティもアントンさんも目を覚ましましたよ! ……本当にありがとうございました。このお礼はいつか……」
「いいんですよ、あのままじゃメルティちゃんが可哀相でしたし、アントンには聞きたい事もありましたからね!」
泣きながらニコッと笑って、私達を部屋まで案内してくれた。今はお医者さんを呼んで体調を見てもらっているそうだ。
近くまで来た所で中から声が聞こえてきた。ジャンナさんが喋っているようだ。
<あたしの血の作用で病気も治っているみたいね、良かったじゃない>
「う、うむう……いいことなんじゃが、医者としては凄く納得いかんから何とも言えんわい……」
ガチャリと扉を開け、中へ入ると、メルティちゃんのベッドの横にお医者さんが。布団の上にジャンナさんが乗って話していた。ジャンナさんはかなり小さくなったので、メルティちゃんがふわふわの毛を嬉しそうに撫でていた。
「あ! 狼さん!」
「わふ」
こちらに気付いたメルティちゃんがレジナを見て手を振り、それに応えるレジナ。
起きた時に一緒だったから仲良くなったのかな?
「どうですか、メルティの体は」
「どうもこうもないわい、一度死ぬ前にあった症状は全部消えておる! 健康そのものじゃ」
<あたしの血は、ケガ人には完全治療で死人は蘇生って事で通ってるけど、実際はただ生き返るだけじゃないのよね。ま、面倒だからそこは省くけど……>
ジャンナさんが面倒になったのか、メルティちゃんの手の中で眠る姿勢に入ってしまった。
お医者さんと色々話をしていたみたいだけど、普通に喋っていいのかしら?
そんな中、レイドさんは眠っているアントンを起こしていた。
「起きろ、お前には聞かないといけないことがある」
「んあ……何だ? げ!? レ、レイド……さん」
「ちゃんと目が覚めたんですね、良かったですね!」
レイドさんに揺さぶられ目が覚めたアントンはレイドさんを見てびびり、フレーレが喜びの言葉をかけると、アントンは布団から出て立ち上がり私達三人を前にして深々と頭を下げた。
「メルティの母親から聞いた、俺達を蘇生させてくれたって。そ、その……あ、ありがとう、ございます……」
「聞いたフレーレ!?」
「はい! ありがとうって! ふふ、初めて聞いた気がしますね」
顔を赤くしたアントンがお礼を言う場面を見る事が出来るとは!私は驚き、フレーレは少しいじわるをした。
心配したんだからこれくらいはいいわよね。
「で、俺に話だな? 俺も話が……特にルーナに言わないといけない話がある。ここじゃちょっと……」
アントンはソフィアさんとメルティちゃんをチラリと見、レイドさんが察して頷いた。
そういえばファロスさんとイルズさんが生き返ることができたら話をするような事を言っていた気がする。
「そうだな……ギルドへ行こう。動けるか?」
「ああ、身体の調子はすこぶるいいんだ。勇者の恩恵が戻ったみてえでな、持て余してるくらいだ。早い所行こうぜ、俺は顔を隠すけど……」
アントンが腕を回しながら上着を羽織ると、すぐにギルドへ向かった。
『お前を狙っている』というあの言葉の真相を聞くときが来たのだ。
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