パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
上 下
44 / 377
第四部:ルーナの秘密

その66 激怒

しおりを挟む
 「とりあえず起きるまでここに入れておくか。ボスに報告しないといけないしな」

 袋から出されて、乱暴に床へ転がされる私。
 いったあ……女の子には優しくしなさいよね……だから野盗なんかになるのよ……根拠は無いけど。

 バタン! ガチャ……


 ドアに鍵がかけられ、足音が遠ざかっていくのを確認して私は体を起こし、チェイシャを解放する。

 <……>

 「ちょ!? チェイシャ! チェイシャー!?」

 白目を剥いてぐったりしているチェイシャの背中を叩いたりして必死で起こすとむせながら目を覚ました。

 <ごほっ……ごほっ……びっくりした……気付いたらわらわ、河原みたいなところに立ってた>

 「それって……で、でも良かったわ目を覚ましてくれて!」

 <魔神としての威厳が……まあええ、潜入はできたようじゃな>

 「うん。見た感じ洞穴みたいな所だけど、ドアはしっかり取り付けてあるのね」

 ダンジョンみたいにキレイな「部屋」という感じではなく、掘った穴にドアをつけました! という感じなのだ。
 のぞき穴があるわね、外を見れないかな?

 <気を付けるんじゃぞ>

 「……向かい側にも部屋があるわね、通路は右と左に伸びているけど、連れてこられた時は揺られ方から、歩いて来た方向の右の部屋……こっちから見て左が出口ね」。

 <ほう……わらわを気絶させただけじゃなかったのじゃな>

 根に持つわね……一応目を瞑って機を配ってたんだから!

 「ダラムさんの娘さんがどこに居るか分かれば……すいませーん……ダラムさんの娘さんはいますかー……」

 のぞき窓から見張りは見えない。なので小声で声をかけてみると……。

 「……誰か居るのですか……?」

 向かいの扉の覗き窓からひょこっと顔が出て、私と目が合った。

 「ダラムさんの娘さんですか?」

 「は、はい……レーネと申します……あの、あなたは?」

 「私はルーナです。あなたを助けて、野盗達を捕まえるために来ました!」

 「本当ですか! ああ、諦めないで良かった……でもどうやって?」

 「私にはとっておきの魔法がありますのでそれで……シッ……誰か来た、寝たふりをしておいてください!」
 私はレーネさんにそう告げ、私も床へと寝ころぶ。チェイシャはドアの横で待機だ。
 だんだん奥からの足音が近くなってくる。二人か三人くらいかな……?

 「……ほう、悪くない子じゃないか。砂の国あたりに売ればいい金になるぜ」

 「ええ、ボスのツテを使えば簡単ですよ。でも、お楽しみになるんでしょう? おこぼれをあっし達にも欲しいんですが……」
 妙に声の高い男が嫌らしくボスとやらにねだっていた。うう、嫌だ……。

 「はっ、仕方ねぇ野郎共だな! まあいい、俺が遊んだらお前達にやる。その後は売りに行く、それでいいな?」

 「へえ! みな喜びますわ! では、今日はどちらから……?」

 「……」

 薄目で見ると、顔に傷を負った男がのぞき窓から私を見ていた。ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべて。

 「そうだな、こっちはまだ寝ているようだし村長の娘からだな……ほら、出ろ!」

 「い、いやあ!? た、助けて!」

 ……!? まさかこのタイミングで連れて行くなんて、ツイてない!?
 
 「それではあっしは入り口を見張っておきますので……」

 「おう、頼んだ。終わったら呼びに行くからよ」

 「ああ……」
 ずるずるとレーネさんが連れて行かれる音が消え、再び静寂が戻る。

 <むう、惜しいのう。こりゃ娘を諦めて野盗を先に全滅……>

 「魔神ー!!!」

 チェイシャの無残な提案に、私は首を絞めて抗議する!

 <おふ!? く、苦しい!? や、やめい! また、またあそこへ行ってしまうじゃろ!?>

 「ここでレーネさんを見捨てたら村は助かっても村長は助からないわ。レイドさんを待っている時間は……無いか、どの辺に居るかも分からないし……」

 <相手の人数次第でお主も捕まるかもしれんぞ?>

 「その時はその時よ……私には切り札がある……」

 <ほう?>

 「それじゃ、行くわよ!≪パワフルオブベヒモス≫! えい!」

 ドアノブをグリっと捻ると、ボキン! といい音がして取れた。
 鍵穴も意味を成さなくなったので、ドアは解放状態に。

 「それじゃ行くわよ!」

 チェイシャと共に、レーネさんが連れて行かれた方へと向かい歩き出した。





 ---------------------------------------------------




 
 洞穴の入り口に見張りが二人立っている。
 そこへ奥から野盗が一人現れ、見張り二人へと話し始める……。



 「ボスの許しが出た。あっし達も『お楽しみ』にあずかれるぜ!」

 「お、マジかよ! 連れて来たかいがあったな! もう一人可愛い子居たけどあの子はダメだったんだよな」

 「まあ二人居ればいいだろ、一五人相手はきついかもしれねぇけどな、ひひひ……」






 「……なるほど、全部で一五人か……」

 レイドが遠巻きに、聞こえた事を反芻する、ここで野盗の人数が聞けたのは僥倖だと思った。
 ふと、横を見るとフレーレがぷるぷると震えていた。

 「どうしたフレーレちゃん? 怖いかい? ここで待っ……」

 「……いいえ! これは怒りの震えです! あの人達は女の敵です! 即全滅させましょう! そしてちょんぎってやりましょう!」

 何を? と、レイドが聞く前にフレーレは洞穴に向かっていた。

 「え!?」

 レイドは驚いたが、止める間もなくフレーレはメイスを後ろ手に隠して男達に話しかける。


 「あ、あの!」

 「うお!? びっくりした……!」

 「と、友達が居なくなったんです!? 村長さんの家で介抱されていたと思ったら姿を消してて……宿にも居ないんですけど知りませんか!?」

 何故、洞穴が分かったのか? 何故、自分たちを野盗と疑っていないのかなど、明らかにフレーレがここに居る事自体おかしいのだが、先程の話で浮かれていた野盗達は『獲物がむこうから来た』とさらに浮かれ、疑問を抱かなかった。

 「そ、そうかい。あーそういやあさっきフラフラと歩いている所を保護された女の子がいたなあー。もしかしたらその子かも?」

 「本当ですか! 連れて帰りますので、案内してください!」

 「へへ、いいとも……それじゃこっちへ……」

 「(こりゃ得したな……)」

 「(ああ、先に食っちまうか!)」


 三人の野盗が後ろを向いたその瞬間、フレーレの目が光る。

 ゴッ! ガツ! ゴイン!


 「「「きゅう……」」」


 「成敗!!」

 そこに剣の柄に手をかけたレイドが暗闇から出てくる。

 「……あんまり無茶しないでくれよ? ルーナちゃんが二人になったみたいだ……」

 「そ、それは……すいません……」

 ロープで三人を縛り上げながら苦笑するレイド。フレーレの頭をくしゃりと撫で、

 「ま、いいさ。それじゃ先へ行こう。こいつらを見て俺達が中へ入ったのがライノスには伝わるだろう」

 「そうですね! ふふふ……アルモニア様の名において全滅ですよ……」

 ルーナが扉を破った頃と同時に、レイド達も洞穴へと突入した。




 ---------------------------------------------------


 「きゅーん!」

 「こっちか!」

 シロップがルーナの匂いを辿り、ライノスと共に林の中を駆ける。
 シルバに力では及ばないが、嗅覚はシロップの方が上なので、先頭を走り案内を買って出ていたのだ。

 「(しかしこの狼達……本当にただの狼か? 主人を守るためとはいえ賢すぎると思うんだが……)」

 「きゅん!」

 「……あれか!」

 狼達が洞穴の前で縛られている野盗を見つけ吠える。

 「わふ! わおん!」

 「え? あ、おい!」

 道案内は終わりだと言わんばかりに、レジナ達は洞穴へと走っていった。
 レイドの匂いはまだ濃いので、すぐ合流できると判断したためである。

 「えー……」

 一人残されたライノスは慌てて洞穴へと入っていくのであった。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。