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その108 チビドラゴンとのこと
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「なんだと……!」
「まだなにも言ってないよ父上!?」
俺達が庭へ降り立ったその時、誰かが報告をしたのか陛下と王妃様がすでに待っていた。
王子の言う通りまだなにも言っていないのだが陛下がいきなり驚いた声を出す。
「そ、そうだな。シュネル君でここまで来たから大変なことがあったのかと思って」
「その勘はあっているよ父上。かくかくしかじか――」
俺の代わりにエリード王子が陛下達に説明をしてくれた。すぐに口をへの字にして唸る。そこで王妃様が口を開いた。
「黒いドラゴンが人型に……今までは大きいものが空や地上から来ると思っていましたが考えを改めないといけませんわね」
「ええ。暴走状態だと、フラメ達のように小さくなれないですが、正気であれば隠れようはいくらでもあるということです」
【まあ人になるのは稀だけどね】
そこでセリカが抱っこしているヴィントがそう言うと、陛下と王妃が目を丸くしていた。
「む? おや、よくみると見慣れないドラゴンが……?」
「ああ、ヴィントと言います。午前中に冒険者をある町に連れて一旦ですが、そこで遭遇戦になりまして……」
それで正気に戻して連れてきたことを報告する。黒いドラゴンの件もそうだが、ヴィントのことを話すためにも来たので丁度いい。
「なるほど。それにしても最近、出現頻度が高いな。ひと月前にはアースドラゴン、少し前にフレイムドラゴン、隣だがワイバーンにウインドドラゴン……」
「確かにちょっと驚きますね」
「……」
「ぴゅい?」
俺は話を聞きながらフォルスの背中を撫でる。それはさっき俺も思っていたことで、やはりというか他の人もそう感じていたようだ。その時期は……フォルスと出会ってから増えた気がする。
いや、別にこいつのところに来ているわけではないけど『行った先』で出没することが多い。
「お前はなんも考えていないだろうしなあ」
「ぴゅーい♪」
なんかよくわからないけど撫でられたことが嬉しかったのか俺の指を甘噛みしてきた。少し大きくなったけどまだ歯は生えてこない。
「とりあえず顔はこのレスバという者が知っているので、似顔絵でもと思っているんだけど、どうかな?」
「いい案ね、エリード。ではすぐに」
「え? え? なんでわたし両脇から掴まえられているんですかね!?」
「連れて行ってくれ」
「なんでえぇぇぇぇぇ!? ラッヘさんんんん!?」
罪人みたいな連れていかれ方をしたけど、悪いようにはならないだろう。むしろ報酬をもらえるんじゃないか?
「ということで、数日中にはまず王都に似顔絵が出回ると思う」
「ありがとうございます。それではレスバのこと、よろしくお願いします。屋敷に帰ってくるように言っておいてもらえると。俺達は先に戻ります」
「え!? もう帰るのか!?」
「? あまり長居をするのも良くないでしょう?」
陛下が名残惜しそうに引き留めようとするが、まだ仕事があるはずではと返したところ、二人は視線を逸らして押し黙った。
【なら屋敷へ戻りまっせー】
「頼むわねシュネル! それでは、陛下、王妃様!」
「あああ! フォルスちゃんー!」
「ぴゅ? ぴゅーい♪」
「あああああああ!」
「僕は結構遊んだからね」
飛び立とうとするシュネルに王妃様がフォルスを呼ぶ。するとフォルスは見送ってくれたと思ったらしく俺のポケットから顔を出して、覚えた手を振るという行動を王妃様にしていた。
逆に手痛いダメージを与えたフォルスは大物になるに違いない。
そのままシュネルに乗って屋敷に戻った。
「ふむ、国王様とここまで親しいとはさすがだねラッヘさん」
すると、フェークがシュネルの背中から降りて言う。いきなりなんだと首を傾げていると話を続けた。
「はは、他意はないよ。ただ、黒いドラゴンを探すにはかなりいい条件が揃っているなと思ってさ。ドラゴンがこれだけ集まっていて、監視下に置かれないのは一言、凄い」
「まあ、ウチのフォルスの魅力には勝てないからね!」
「ふむ」
そういえば王妃様達がフォルスを可愛がってくれているからこの関係も続いているのか。フォルスになにか秘密が……?
「ぴゅい! ぴゅい!」
【慌てなくてもジョー達は逃げないぞ】
【あ、僕も挨拶をしておくよ】
「元気ねえ。フォルスも屋敷の庭なら結構動けるようになったかしら」
……秘密は無さそうだ。ただ可愛いだけの生き物っぽい。
クイーンドラゴンも本当は子を殺してくれなんて言いたくなかったのだと思う。
本当なら竜鬱症なんてなく、穏やかに暮らせていた未来もあったはずだ。
そんな子を助けた俺にドラゴンに関する運が上がっている、くらいはあったりしてな?
「とにかく、レスバと実情を報せてくれて助かった。これからどうするんだ?」
「そうだね。僕もその黒いドラゴンを倒すのに協力させてほしい」
「え? でも、フェークは関係ないんじゃ……」
「まあまあ、ここまで話を聞いたら興味深い。それにラッヘさんには借りがあるんだ」
「……? 俺はあんたを知らないぞ?」
「ふふ、知らないところで人を助けたりしているもんさ。僕はそういう類のものでね。ああ、もちろん宿は取るから屋敷には泊まらない」
フェークは俺が旅をしている中で助けたことがある人物らしい。俺は覚えがないので怪しいがそういうこともあるかもしれない。
俺やドラゴンを利用しようということなら断るが、純粋に興味があるとのこと。
「ならよろしく頼むよ」
「よろしく! 素早さには自信があるから、任せてくれ」
フェークと握手をして頷き合う。
そして、夜は王子が言ったように陛下が夕食を持ってやってきた。レスバもなんか疲れた顔で帰ってきた。
「まだなにも言ってないよ父上!?」
俺達が庭へ降り立ったその時、誰かが報告をしたのか陛下と王妃様がすでに待っていた。
王子の言う通りまだなにも言っていないのだが陛下がいきなり驚いた声を出す。
「そ、そうだな。シュネル君でここまで来たから大変なことがあったのかと思って」
「その勘はあっているよ父上。かくかくしかじか――」
俺の代わりにエリード王子が陛下達に説明をしてくれた。すぐに口をへの字にして唸る。そこで王妃様が口を開いた。
「黒いドラゴンが人型に……今までは大きいものが空や地上から来ると思っていましたが考えを改めないといけませんわね」
「ええ。暴走状態だと、フラメ達のように小さくなれないですが、正気であれば隠れようはいくらでもあるということです」
【まあ人になるのは稀だけどね】
そこでセリカが抱っこしているヴィントがそう言うと、陛下と王妃が目を丸くしていた。
「む? おや、よくみると見慣れないドラゴンが……?」
「ああ、ヴィントと言います。午前中に冒険者をある町に連れて一旦ですが、そこで遭遇戦になりまして……」
それで正気に戻して連れてきたことを報告する。黒いドラゴンの件もそうだが、ヴィントのことを話すためにも来たので丁度いい。
「なるほど。それにしても最近、出現頻度が高いな。ひと月前にはアースドラゴン、少し前にフレイムドラゴン、隣だがワイバーンにウインドドラゴン……」
「確かにちょっと驚きますね」
「……」
「ぴゅい?」
俺は話を聞きながらフォルスの背中を撫でる。それはさっき俺も思っていたことで、やはりというか他の人もそう感じていたようだ。その時期は……フォルスと出会ってから増えた気がする。
いや、別にこいつのところに来ているわけではないけど『行った先』で出没することが多い。
「お前はなんも考えていないだろうしなあ」
「ぴゅーい♪」
なんかよくわからないけど撫でられたことが嬉しかったのか俺の指を甘噛みしてきた。少し大きくなったけどまだ歯は生えてこない。
「とりあえず顔はこのレスバという者が知っているので、似顔絵でもと思っているんだけど、どうかな?」
「いい案ね、エリード。ではすぐに」
「え? え? なんでわたし両脇から掴まえられているんですかね!?」
「連れて行ってくれ」
「なんでえぇぇぇぇぇ!? ラッヘさんんんん!?」
罪人みたいな連れていかれ方をしたけど、悪いようにはならないだろう。むしろ報酬をもらえるんじゃないか?
「ということで、数日中にはまず王都に似顔絵が出回ると思う」
「ありがとうございます。それではレスバのこと、よろしくお願いします。屋敷に帰ってくるように言っておいてもらえると。俺達は先に戻ります」
「え!? もう帰るのか!?」
「? あまり長居をするのも良くないでしょう?」
陛下が名残惜しそうに引き留めようとするが、まだ仕事があるはずではと返したところ、二人は視線を逸らして押し黙った。
【なら屋敷へ戻りまっせー】
「頼むわねシュネル! それでは、陛下、王妃様!」
「あああ! フォルスちゃんー!」
「ぴゅ? ぴゅーい♪」
「あああああああ!」
「僕は結構遊んだからね」
飛び立とうとするシュネルに王妃様がフォルスを呼ぶ。するとフォルスは見送ってくれたと思ったらしく俺のポケットから顔を出して、覚えた手を振るという行動を王妃様にしていた。
逆に手痛いダメージを与えたフォルスは大物になるに違いない。
そのままシュネルに乗って屋敷に戻った。
「ふむ、国王様とここまで親しいとはさすがだねラッヘさん」
すると、フェークがシュネルの背中から降りて言う。いきなりなんだと首を傾げていると話を続けた。
「はは、他意はないよ。ただ、黒いドラゴンを探すにはかなりいい条件が揃っているなと思ってさ。ドラゴンがこれだけ集まっていて、監視下に置かれないのは一言、凄い」
「まあ、ウチのフォルスの魅力には勝てないからね!」
「ふむ」
そういえば王妃様達がフォルスを可愛がってくれているからこの関係も続いているのか。フォルスになにか秘密が……?
「ぴゅい! ぴゅい!」
【慌てなくてもジョー達は逃げないぞ】
【あ、僕も挨拶をしておくよ】
「元気ねえ。フォルスも屋敷の庭なら結構動けるようになったかしら」
……秘密は無さそうだ。ただ可愛いだけの生き物っぽい。
クイーンドラゴンも本当は子を殺してくれなんて言いたくなかったのだと思う。
本当なら竜鬱症なんてなく、穏やかに暮らせていた未来もあったはずだ。
そんな子を助けた俺にドラゴンに関する運が上がっている、くらいはあったりしてな?
「とにかく、レスバと実情を報せてくれて助かった。これからどうするんだ?」
「そうだね。僕もその黒いドラゴンを倒すのに協力させてほしい」
「え? でも、フェークは関係ないんじゃ……」
「まあまあ、ここまで話を聞いたら興味深い。それにラッヘさんには借りがあるんだ」
「……? 俺はあんたを知らないぞ?」
「ふふ、知らないところで人を助けたりしているもんさ。僕はそういう類のものでね。ああ、もちろん宿は取るから屋敷には泊まらない」
フェークは俺が旅をしている中で助けたことがある人物らしい。俺は覚えがないので怪しいがそういうこともあるかもしれない。
俺やドラゴンを利用しようということなら断るが、純粋に興味があるとのこと。
「ならよろしく頼むよ」
「よろしく! 素早さには自信があるから、任せてくれ」
フェークと握手をして頷き合う。
そして、夜は王子が言ったように陛下が夕食を持ってやってきた。レスバもなんか疲れた顔で帰ってきた。
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