最強の滅竜士(ドラゴンバスター)と呼ばれた俺、チビドラゴンを拾って生活が一変する

八神 凪

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その98 王都のお庭

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「ぴゅーい♪」
「なんだかご機嫌ね?」
「また旅になったからだろうか」
【元気なのはいいことだな】

 というわけで俺達は再び国境を越え、フォルゲイト国へと戻って来た。
 パティが少しぐずったがまた来ることを約束しているから案外早くフォルスを離してくれた。後は師匠が戻ってきたらよろしく伝えておいてほしいとだけ告げてエムーン国を出た。

 さて、手土産は少ないが、貴重な研究成果とシュネルが居るので話としては面白いと思う。
 問題は低空飛行をしているこいつを受け入れてもらえるかどうかって感じだな。
 国境を越える時は高く飛んでもらった。

「シュネルがダメだった場合はどうするの?」
「うーん、その時は適当に山で暮らすとかになるかな。アイラの居た工房に戻るとか」
「ああ、それもいいかもね」
【自然の中も悪くない。オレ達はそういうものだ】

 俺やジョーも旅暮らしが長かったから別に気になるほどでもない。
 そんな話をしつつフォルゲイト国の王都へと凱旋すると――

「あ、お城の人たちがまた待っているわね」
「シュネルが降りて来たから目についたんだろう。とにかく話をしに行くぞ。シュネルは大人しくしててくれ」
【あいあいさー】

 ――騎士や兵士たちが町の外に勢揃いしているのが見えた。そのまま町へ近づくと、騎士団長のラクペインが手を振ってきた。

「おおーい! やはりラッヘ殿か!」
「戻ってきましたよラクペインさん。こいつのせいで集まっていた感じかな?」
「ははは、その通りだ。地上の馬車を襲わずに飛行していたからそうじゃないかと思ったんだが、当たっていたようでなによりだ」

 ラクペインさんは笑いながら現状について語ってくれた。そして視線をシュネルに向けてから口を開く。

「……で、こっちのもドラゴンってことでいいのかな?」
「ああ。翼竜《ワイバーン》という種らしい。名前はシュネル。挨拶をしてくれ」
【わしはシュネル言いますねん。ラッヘ様に名付けてもらったケチな翼竜《ワイバーン》や。なんちゃら症とやらがまた発症せん限りは暴れたりせえへん。今後ともよろしゅう頼んますわ!】
「あ、ああ……よく喋るな」
【せやろか? わしはこれで普通なんやけどなあ。まあ確かに他の仲間とおったらやかましいかもしれん。フラメ様もあんまり喋らへんしなあ】
「……まあ、こういう奴だが話はわかる。よろしく頼む。というより、こいつを入れてもいいものだろうか?」

 ひとまずやたらと喋るシュネルはさておき、屋敷に戻りたい旨を伝える。するとラクペインさんは笑顔で頷いた。

「問題ない。ただ、その体じゃ門は通れなくないか?」
「ああ、それなら空から入らせてもらうから大丈夫だ。セリカ、シュネルに屋敷を案内してやってくれ。俺は馬車で戻る」
「オッケー。フラメも連れて行くわね」
【うむ。お目付け役というやつだな】
【なんもしまへんって……】

 ひとまずセリカとフラメにシュネルを任せることにした。程なくしてシュネルの背にセリカが乗ると、ゆっくりと上昇していく。

「おお、人を乗せても軽々と……!」
「飛んだ……!」
「そういえばフラメはまだ翼が回復していないから飛べないんだよな。お前の母親も翼はあったからその内はえてくるか?」
「ぴゅーい?」

 クィーンドラゴンには羽があった。素材をはぎ取った際に売ってしまったが。
 宝玉は残しているから良かったが、売らなければ良かったなと少し後悔している俺も居る。

「それじゃ後から謁見を申し込むかもしれない」
「承知した。彼は小さくなれないのかな?」
「どうやらダメらしい。だからあのサイズでずっとついてきてもらった」
「ふむ……分かった。また後で会おう」

 ラクペインさんはそう言って町中まで一緒に入った後、城へ戻っていった。
 俺はとりあえず屋敷を目指してジョー達を走らせる。

「今後、シュネルの背に乗っていくならお前達も楽ができるかもしれないな」
「ぶるふー」
「ひひーん」
「ぴゅーい!」
「なんだ?」

 俺がジョー達に語り掛けるとなんだか三頭とも抗議の声を上げたような気がした。
 置いて行かれるのが嫌なのだろうか? 休めると思うんだが……
 
「お、到着しているな」

 しばらくして屋敷に到着すると、庭にセリカとアイラが話していた。シュネルは周囲を見ながら落ち着かない様子を見せていた。

「ただいま、アイラ」
「あ! おかえりラッヘ! セリカから聞いたけど、またドラゴンを連れて帰ったみたいね」
「一応な」
「病が発症しないって確定すれば、連れて来なくてもいいんだけどね。ほら、挨拶しなさいよ」
【……】

 セリカが苦笑しながらアイラに説明をする。そんな中、挨拶を促すもやはり落ち着かない感じだった。

「どうした?」
【あ、いやあ……ちょっと庭が狭いと思ったんや……】
「あー」
【確かにグレリアのところはもっと広かったからな。工房が建ったからそのせいかもしれん】
【これやと文字通り羽を休めるところがあれへんなあと。わしだけ外っちゅうわけにはいかんやろか?】
「まあ、フォルスとフラメを連れて行けばキャンプだな」

 俺がそう口にすると、セリカがうーんと首を傾げて呟いた。

「まあ私はそれでもいいけど……アイラの工房まで往復するのは無駄な感じがするわねえ。やっぱり山に戻る?」
「そうねえ。折角だけど、あっちの方が広い――」
「「待ちたまえ!」」
「ん?」

 俺達がデルモンザ近くの山に戻るか話をしていると、入り口から慌てた声が聞こえて来た。
 振り返るとそこには陛下と王子が馬車から降りてくるところだった。
 いや、流石に何度も城から出るのはまずいのでは……?
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