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その95 新しい仲間は空を飛ぶ

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 というわけで翼竜《ワイバーン》を連れてグレリアの家へと戻っていった。
 道中、町の人間がこちらをみてざわついていたが、ギサーラさんの指示で一緒についてきてくれた冒険者が説明をして回ってくれていた。とてもありがたい。

「ありがとう」
「いえいえ、町の脅威を退けてくださったのですからこれくらいは! ではなにかあればギルドまでお願いします!」
「はーい!」
「ぴゅーい!」

 セリカと、セリカの胸ポケットに入っているフォルスが元気よく返事をし、冒険者達はほっこりとした顔で立ち去って行った。
 グレリアの家の庭は割と広いが、さすがに翼竜《ワイバーン》が入ると一気に手狭になった。

【人間の巣でっか? 窮屈そうな場所でんなあ。お、美味そうな馬……なんちゃって……】
「ぴぃー!? ぴぃ! ぴぃ!」
【おう!? なんやチビ助! 文句あるんかい!】
【その馬はジョーとリリアという。フォルスと仲良しだからな。それとその子はクィーンドラゴンの子だぞ】
【はへ!?】

 俺の手から降り立ったフラメが翼竜《ワイバーン》の前に立ち、腰に手を当ててから鼻を鳴らしていた。すると翼竜《ワイバーン》は変な声を上げてポカンと口を開きっぱなしにする。割と間抜けな顔だ。

「そうよー! ちっちゃくてもドラゴンなんだから!」
【ま、まあ、そうやけど……それにしてもなんでこんなことに……?】
「色々あってな」

 そう言っていつもの流れを語ると、翼竜《ワイバーン》は大泣きし始めた。

【あんさん素晴らしい人間やで……! わしらのために身を粉にしてくれるいうんやな! そらクィーンドラゴンも喜んでるちがいおまへん】
「よく分からないが、そうだといいな」
「というかなんか聞き取りずらいわねあんたの喋り」
【すまへんなあ嬢ちゃん。翼竜《ワイバーン》はみんなこんなんやけど】
「へえ、フラメとか落ち着いているのにね」

 そこは種族の差というところか。
 さて、これからどうするかな? そう思っていると、翼竜《ワイバーン》から話しかけてきた。

【フレイムドラゴン……フラメ様はこの人間としばらく一緒にいるんですかい?】
【そのつもりだ。やはり病が完全に治ったわけではないからな。お前も協力するのだ】
【そりゃかまいまへん。しかし、わしは小さくなれへんもんやからどうしたもんかなと】
「まあ、そのままでもいいと思うけどな。ジョー達を掴んで運ぶのは難しいか?」

 どうやらついてきてくれるらしい。
 足も羽も立派だし、馬二頭と荷台くらいなら持てそうだが……?

【うーん、持てるんやけど、バランスが悪くなるから危ないでっせ】
「なら移動中は飛んでもらおうかしら」
【それがいいか。せっかくだしフォルスやラッヘ、セリカに空の旅を楽しんでもらおうと思ったのだが】
「まあ機会はあるだろ。屋敷にジョー達を置いてとか? ……おや」
「おかえりー! うわ、でっかい!」

 庭で歓談していると、パティが家から出て来て驚いていた。そしてパティに続き、グレリアとテリーも出てきた。

「また変なのを拾ってきたなあ」
【変なのとはなんや!?】
「まあまあ。町を攻撃しようとした翼竜《ワイバーン》が正気になったんで連れてきたんですよ」
「ラッヘが居るからこれくらいじゃ驚かないけどね? それじゃなにがあったか聞かせてくれ――」

 グレリアが庭で酒でも飲もうと提案してきて、いま起こった出来事を話すことにした。
 ……実は空を飛び回るのは少し期待している。後で乗せてもらおう。


◆ ◇ ◆

「この馬鹿! ラッヘさんに勝てるわけねえだろうが!」
「ぐっ……」
「自信があるのは結構だが、相手の実力を見極めるのも実力の一つだ。ちなみにお前の倒したというドラゴンはあまり強くない種族らしいぞ」
「ば、馬鹿な……!? そこそこ強かったんだぜ!」

 ヒュージはギルドに運ばれてから回復魔法を受けて目を覚ましていた。しかし、その後はギサーラや冒険者達に詰め寄られていた。
 特にギサーラは、自分の指示を無視したということで明らかに不快な顔をして事実を突きつけていた。

「しかし翼竜《ワイバーン》も上位種のドラゴンに比べてそれほど強くないそうだ。それに勝てなかったんだ、滅竜士《ドラゴンバスター》を名乗りたいならもっと修行をすることだ」
「ぐっ……」
「とりあえず、言うことを聞かなかったお前はこの町での依頼は禁ずる。居るのは構わないが、仕事は無いと思え」
「牢に入れられないだけマシだと思うんだな」
「チッ……」

 納得のいかないヒュージだが、幸い自分が攻撃して焚きつけてから追われたというのはうやむやになったと胸中で安堵する。

「(……おっさんにくせに生意気な野郎だったな……だが、確かにあれは強い。強すぎると言っても過言じゃねえ……)」

 指を嚙みながらそんなことを考える。やがてヒュージは席を立ってから荷物を手に歩き出す。

「行くのか」
「ああ。ここにゃもう用はねえ。俺は必ずドラゴンを殺せるくらいに強くなってやる。その時、泣きついてきても助けねえからな?」
「ラッヘさんが居れば問題ない。……というより、我々は我々でドラゴンと戦う戦術を組むさ。一人で戦うなんて馬鹿な真似はせんよ、お前みたいにな」
「……! クソが」

 ヒュージはそう吐き捨ててからギルドを後にした。まずは装備を修理する……そう呟きながら――
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