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その89 悪手を重ねる
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「諸君らに集まってもらったのは他でもない。大規模な討伐作戦を敢行することになりそうだからだ」
翌朝。
酒が抜けきらないヒュージ達がギルドに行くと、非常招集ということでギルドマスターや職員に集められた。
ひとまず町に常駐する冒険者と、ヒュージのような流れの冒険者が話に参加。
開口一番で耳にしたのは重要な話だった。
「することになりそう……ってことは確定じゃないんですか?」
「今、調査に向かわせているがどうもドラゴンらしき影が森に現れたとの情報が入った」
「なんだって……」
「そりゃ人数が必要だな……」
ギルドマスターの言葉に不安げな声で顔を見合わせる冒険者達。しかし、一人だけ目を輝かせている者がいた。
「凄い偶然だな! 俺が居れば余裕な案件だぜ!」
そう、ヒュージである。
ドラゴンという言葉に、酔っていた頭が覚めていた。
「そういえばお前はドラゴンを倒したことがあると言っていたな」
「おうよ!」
「ならば期待させてもらおう。とはいえ、空を飛ぶ個体のようだからこの地から離れることがあるかもしれない。その時は追わないこととする」
「ええー? 倒しちまえばいいだろ」
消極的な案にヒュージが口を尖らせるが、ギルドマスターは首を振った後、諭すように言う。
「お前が倒せたとしても、他の者はそういう経験が少なかったり、そもそも無い者が多い。犠牲は極力避けたいからな」
「討伐したほうがいいだろ?」
「言いたいことは分かるが、下手に刺激して撤退した場合、ドラゴンが追いかけてくる。そうなると町に被害が及ぶんだ」
「チッ……」
名声を上げるチャンスなのに弱腰な、と舌打ちをする。
「諦めろって。お前が弱いってわけじゃねえと思うがリスクを減らさないと死人が出る」
「そうそう。みんなで戦って安全に倒すってのがセオリーってもんだろう?」
そこで他の冒険者達も無理はするなと諭していた。ヒュージはひとまず椅子の背にもたれかかり、傾けながら頭の後ろに手を組んで話が終わるのを待つ。
「話が逸れたが、現在ドラゴンがどこへ行ったか確認をさせている。動きによってはこちらから倒しに出るつもりだ。ヒュージといったな、それまで我慢しろ」
「わかったよ」
ギルドマスターの言葉に渋々頷いた。ヒュージはそう対応しながらも、胸中では別のことを考えていた。
「(ふん、俺が倒せるんだから問題ねえだろ。手柄を分散されちゃたまらねえし……)」
下唇を舐めてから傾けた椅子を元に戻してギルドマスターに質問を投げかけた。
「森の中ってのは間違いないんだな?」
「そうらしい。まあ、空を飛ぶ個体は飛び回るからすでに居ない可能性もあるがな。ま、王都に行くようなことがないよう討伐に」
「どの辺とかあたりはあるのかい?」
「それを探しに行っているんだろうが。ひとまず話は終わりだ。申し訳ないが、ここに居ない知り合いの冒険者に声をかけておいてくれ。数は多い方がいい」
「「「了解」」」
その場にいた全員が声を揃えて返事をした。これから忙しくなるぞなどと準備に回るする冒険者達。
ヒュージもギルドを後にしてそのまま商店街へと向かった。
「ポーションのいいやつと解毒薬を10本ずつくれ」
「毎度! なんか町が慌ただしいけどなにかあったのかね?」
「いや、平和なもんだぜ」
ヒュージはそういうとカバンを背負って町の出口へ。
「お、今から狩りか?」
「ああ、ちょっと急ぎで」
「気をつけろよ?」
「ああ……」
まだ門兵にはギルドで待機という情報は伝わっていないかと安堵しながら外へ出ると、真っすぐ街道を進んでいく。
「ま、なんとかなるだろ」
森であるという情報からおおよその位置を予測してそんなことを呟く。
それは勝手に出たことでのことか、それともドラゴンに出会った時のことかは本人にしかわからない。
ヒュージはしばらく街道を歩いていたが、やがてそこからはずれて森の中へと侵入する。
そして茂みをかき分けて少しずつ奥へと向かっていく。
「ふう……」
歩くこと数時間――
休憩を挟みつつ、昼間だというのに薄暗い道をヒュージは一人で進み続ける。
「こりゃ見つからねえかな……?」
流石に森も広いため推測だけでは無理かと肩を竦めていた。見つかれば幸運程度に考えていたのでそれほど落胆はしていなかった。
「そろそろ戻るかねえ……」
収穫は無かったが、体力を消耗してもつまらないと踵を返す。
しかし――
「……ギルドマスターへ報告するぞ」
「今なら全員でかかれば倒せるだろう。……しかし見たことが無いドラゴンだったな。なんか小さくなかったか?」
「なんでもいい。脅威には違いないからな――」
――ヒュージの潜んでいる茂みの近くで冒険者が二人そんなことを話しながら通り抜けて行った。
その瞬間、ヒュージは二人が来た方向へと進む。
「こりゃラッキーってやつか! はは! この先にドラゴンがいる……!!」
嬉々とした表情で歩く速度を速めた。一応、はやる気持ちを抑えて音があまり鳴らないよう慎重に。
二人組と出会ってから数十分後、
「……見つけたぜ」
【……】
緑の鱗を持つドラゴンが静かに横たわっているのを発見した。ヒュージは舌なめずりをしながら剣を抜き、首を狙って駆け出した!
翌朝。
酒が抜けきらないヒュージ達がギルドに行くと、非常招集ということでギルドマスターや職員に集められた。
ひとまず町に常駐する冒険者と、ヒュージのような流れの冒険者が話に参加。
開口一番で耳にしたのは重要な話だった。
「することになりそう……ってことは確定じゃないんですか?」
「今、調査に向かわせているがどうもドラゴンらしき影が森に現れたとの情報が入った」
「なんだって……」
「そりゃ人数が必要だな……」
ギルドマスターの言葉に不安げな声で顔を見合わせる冒険者達。しかし、一人だけ目を輝かせている者がいた。
「凄い偶然だな! 俺が居れば余裕な案件だぜ!」
そう、ヒュージである。
ドラゴンという言葉に、酔っていた頭が覚めていた。
「そういえばお前はドラゴンを倒したことがあると言っていたな」
「おうよ!」
「ならば期待させてもらおう。とはいえ、空を飛ぶ個体のようだからこの地から離れることがあるかもしれない。その時は追わないこととする」
「ええー? 倒しちまえばいいだろ」
消極的な案にヒュージが口を尖らせるが、ギルドマスターは首を振った後、諭すように言う。
「お前が倒せたとしても、他の者はそういう経験が少なかったり、そもそも無い者が多い。犠牲は極力避けたいからな」
「討伐したほうがいいだろ?」
「言いたいことは分かるが、下手に刺激して撤退した場合、ドラゴンが追いかけてくる。そうなると町に被害が及ぶんだ」
「チッ……」
名声を上げるチャンスなのに弱腰な、と舌打ちをする。
「諦めろって。お前が弱いってわけじゃねえと思うがリスクを減らさないと死人が出る」
「そうそう。みんなで戦って安全に倒すってのがセオリーってもんだろう?」
そこで他の冒険者達も無理はするなと諭していた。ヒュージはひとまず椅子の背にもたれかかり、傾けながら頭の後ろに手を組んで話が終わるのを待つ。
「話が逸れたが、現在ドラゴンがどこへ行ったか確認をさせている。動きによってはこちらから倒しに出るつもりだ。ヒュージといったな、それまで我慢しろ」
「わかったよ」
ギルドマスターの言葉に渋々頷いた。ヒュージはそう対応しながらも、胸中では別のことを考えていた。
「(ふん、俺が倒せるんだから問題ねえだろ。手柄を分散されちゃたまらねえし……)」
下唇を舐めてから傾けた椅子を元に戻してギルドマスターに質問を投げかけた。
「森の中ってのは間違いないんだな?」
「そうらしい。まあ、空を飛ぶ個体は飛び回るからすでに居ない可能性もあるがな。ま、王都に行くようなことがないよう討伐に」
「どの辺とかあたりはあるのかい?」
「それを探しに行っているんだろうが。ひとまず話は終わりだ。申し訳ないが、ここに居ない知り合いの冒険者に声をかけておいてくれ。数は多い方がいい」
「「「了解」」」
その場にいた全員が声を揃えて返事をした。これから忙しくなるぞなどと準備に回るする冒険者達。
ヒュージもギルドを後にしてそのまま商店街へと向かった。
「ポーションのいいやつと解毒薬を10本ずつくれ」
「毎度! なんか町が慌ただしいけどなにかあったのかね?」
「いや、平和なもんだぜ」
ヒュージはそういうとカバンを背負って町の出口へ。
「お、今から狩りか?」
「ああ、ちょっと急ぎで」
「気をつけろよ?」
「ああ……」
まだ門兵にはギルドで待機という情報は伝わっていないかと安堵しながら外へ出ると、真っすぐ街道を進んでいく。
「ま、なんとかなるだろ」
森であるという情報からおおよその位置を予測してそんなことを呟く。
それは勝手に出たことでのことか、それともドラゴンに出会った時のことかは本人にしかわからない。
ヒュージはしばらく街道を歩いていたが、やがてそこからはずれて森の中へと侵入する。
そして茂みをかき分けて少しずつ奥へと向かっていく。
「ふう……」
歩くこと数時間――
休憩を挟みつつ、昼間だというのに薄暗い道をヒュージは一人で進み続ける。
「こりゃ見つからねえかな……?」
流石に森も広いため推測だけでは無理かと肩を竦めていた。見つかれば幸運程度に考えていたのでそれほど落胆はしていなかった。
「そろそろ戻るかねえ……」
収穫は無かったが、体力を消耗してもつまらないと踵を返す。
しかし――
「……ギルドマスターへ報告するぞ」
「今なら全員でかかれば倒せるだろう。……しかし見たことが無いドラゴンだったな。なんか小さくなかったか?」
「なんでもいい。脅威には違いないからな――」
――ヒュージの潜んでいる茂みの近くで冒険者が二人そんなことを話しながら通り抜けて行った。
その瞬間、ヒュージは二人が来た方向へと進む。
「こりゃラッキーってやつか! はは! この先にドラゴンがいる……!!」
嬉々とした表情で歩く速度を速めた。一応、はやる気持ちを抑えて音があまり鳴らないよう慎重に。
二人組と出会ってから数十分後、
「……見つけたぜ」
【……】
緑の鱗を持つドラゴンが静かに横たわっているのを発見した。ヒュージは舌なめずりをしながら剣を抜き、首を狙って駆け出した!
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