最強の滅竜士(ドラゴンバスター)と呼ばれた俺、チビドラゴンを拾って生活が一変する

八神 凪

文字の大きさ
上 下
64 / 116

その64 遭遇

しおりを挟む
「よし、それじゃ案内を頼む」
「あいあい、行きましょうかね!」
「二人とも気を付けてね」
「うん! 他の装備作成もよろしくねアイラさん!」

 早朝、陽が昇り始めたころに俺達は準備を終えて後は移動するだけとなった。
 セリカは作ってもらったアクアドラゴンメイルを身に着けている。
 鮮やかな蒼い色をした鎧は女性らしく丸みを帯びており、肩部分や胸のラインは攻撃を受けて流すといったようなことができる印象がある。
 脇の下は腕を回すため空いているものの、装備した後、胴回りや腰などは金具で追加の部分を止めることにより急所は守られている。
 フォルスの入るポケットまであって、ちょっとうらやましい。

「ではしゅっぱーつ!」
「それじゃまたね!」
「ぴゅーい♪」

 レスバの馬車がゆっくりと進み始め、続いて俺達も移動を開始する。セリカとフォルスが振り返ってアイラに手を振っていた。
 やがて姿が見えなくなったようでセリカがフォルスをクッションの上に載せながら言う。

「ふう、なんだかおねえちゃんができたみたいで嬉しいかも?」
「年齢的にそうかもしれないな。フォルスもアイラを気に入ったみたいだしよかった」
「ぴゅー」

 そうだと言わんばかりに、フォルスがぺちぺちと俺の太ももを叩く。その様子を見ながらセリカが続けた。

「というかこの鎧、着るとびっくりするくらい軽いわ。でも強度はかなり高い。武器はともかく、鎧は普通の魔物や人間相手で使う分には十分かも」
「魔力で軽くなるアイラ独特の技術が使われているからな。だから彼女と、もう亡くなった親父さん以外にはできないんだ」
「ふうん、ならやっぱり跡継ぎは欲しいわね……」

 自分の鎧を撫でながらなんとなく後ろを振り返るセリカ。探せば出来る人間はいるだろうけど、ここまで旅をしてきた中、若くしてこの域に達した職人を俺は知らない。

「他の装備も楽しみになったわ♪」
「でも気をつけろよ。俺達の魔力を使って防御力を高めるから、魔法はあまり使えなくなる。魔物と人間相手なら鎧本来の強度で十分だけど、ドラゴン相手は魔力を削られるからな」
「オッケー。そう考えるとますます便利ねえ」

 セリカが一瞬だけ後ろを振り返ってにこやかに笑う。無くてもドラゴンに勝てないというわけではないがあった方がもちろんいい、というところだ。

「……で、話は変わるけど、レスバは信用できる?」
「どうかな。現状だと面倒くさい性格をしていることくらいしか分かってない。もしこの情報が嘘で、なにか企んでいるなら拳骨だな」
「ま、確かにね。情報量に加えて、ドラゴンを倒したら素材を格安で売って欲しいと言っていたから打算しかなさそうかな?」

 昨晩、レスバからそういう提案があった。モノによるが相場よりは安くてもいいと答えている。フォルスの母親を倒した時にも村に素材を置いていったりしたが、情報量みたいなものだ。ドラゴンの目撃はあっても、俺のところまで話がくることがなかなかないためだ。
 聞いて駆けつけても間に合わなかった、なんてこともある。
 逆に嘘をついた場合、ドラゴンの痕跡がまるで見つからないためすぐ見抜ける。レスバはそこを把握したうえで提案してきたので、商人としての信用はできそうだと判断した。

「問題はどんなドラゴンがいるか、だな。毒をもつ個体も多い。それと語り掛けることができるかとか色々課題は多い」
「折角だし、なにかわかるといいけど――」
「だな」

 ――そして七日後、俺達は北西にあるランドル領へと到着する。

「雲行きが怪しいわ、町までどれくらいなの?」
「あと少しです。降る前には着きたいですねえ。バーバリアン、草を食べている場合じゃありませんよ」
「ぶひーん」

 領地内に足を踏み入れてからしばらく進むと、セリカの言う通り雲行きが怪しくなってきた。風はやや強く、雲は灰色を通り越して真っ暗である。
 まだ昼過ぎだというのに日没近くのような空模様だ。
 
 いくつか町を経由しているが七日は移動しっぱしなので馬達も疲労が激しい。呑気な顔をしたバーバリアンが鼻を垂らしながら草を食んでいた。滋養強壮の草だな。

「食わせてやれ。ジョーとリリアも食っているぞ」
「おお。でも雨が降る前に町に行った方がゆっくりできますよ」
「まあ――」

 と、俺が答えようとしたところで空になにか巨大なものが動いた気がした。
 すぐに顔を上に向けると、雲の中にうっすらと翼を広げて飛行するモノが存在していた。

「あれって……!?」
「ドラゴンだ……! 追うぞ!」
「あ、ま、待ってくださいよ!」

 馬達には悪いが先を急ぐため休憩を中断してもらい、空の影を追うことにした。
 どうやら飛行竜のようだが、もし本当にそうなら倒すのに苦労をする。セリカが参加して二回目でアレとはついていないな。

「ワイバーンですかね?」
「いや、それにしちゃ羽が大きい」
「ならドラゴンか……」
「ぴゅい」

 セリカがフォルスを抱きしめながら空を仰ぐ。緊張した面持ちだが、俺は二人に告げる。

「ワイバーンなら矢か魔法で対処できるが、飛行竜の場合は両方とも効果が薄い。場合によっては離れていてもらうぞ」
「えっと、空を飛んでいますけど……倒せるんですか?」
「まあな。っと、町が見えてきたな――」
「え、ちょ――」

 そう思った瞬間、空から火球が降って来た。そして数秒も経たないうちに、町から爆発音と煙が上がった。
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

処理中です...