最強の滅竜士(ドラゴンバスター)と呼ばれた俺、チビドラゴンを拾って生活が一変する

八神 凪

文字の大きさ
上 下
56 / 116

その56 伝説の鍛冶師

しおりを挟む
 ――ということで嫌な人には会ったがその後は商店街を散策し、土産の食料品や雑貨などを買って満足の行くショッピングができた。

「ぴゅいぴゅい♪」
「今日はお昼寝しないわね」
「よほどこのポケットの居心地がいいんだろうな」
「そうね。お母さんの鱗がついてるからなにかあるのかも?」

 セリカがそう言って微笑む。そう言われると母ドラゴンの鱗に包まれているから安心しているのかもしれないなとふと思う。
 いつもなら衣料品の店に居たくらいの時間で寝ているはずだからな。

「さて、陽も落ちてきたしそろそろ戻るか。明日は早いしな」
「うん。おかみさんがご飯を作ってくれているはずよね。フォルスもミルクが飲めるわよ」
「ぴゅーい♪」

 そんな会話をしつつ人通りが少なくなりつつある通りを歩き、宿へと戻っていく。

「戻ったよ」
「おう、おかえり……ってまたすげえ荷物だな……」
「山に居る友人のものなんだ」
「山? ……ああ、あの変わり者か。確かにどうやって暮らしてんのかわかんねえなあ」
「たまに町に来るんだけどな。宿は使わないから親父さん達じゃわからないか」

 その言葉に親父さんが肩を竦めて『俺達は外に出ないからなと』笑っていた。
 するとそこでおかみさんがフロントへやってくる。

「おや帰って来たのかい? ご飯はどうする?」
「もらおうかな。食べてからすぐ寝るよ、明日は早いしな」
「オッケー。なら部屋に荷物を置いてから手を洗ってきなよ。その間に準備しておくから」
「ありがとうございます!」
「そのチビちゃんのご飯はどうするんだい?」
「牛のミルクと俺達が食うのと同じのでいい。量は少なめで」
「ぴゅー!」
「はいよチビちゃんは大盛が良さそうだけどねえ」

 おかみさんはフォルスを見ながらくっくと笑い奥へと戻っていく。俺達も部屋に荷物を置いてから食堂に向かい早めの夕飯をいただいた。

「ぴゅーい!」
「喉に詰まらせないでね?」
「ぴゅい♪」

 興奮気味だったフォルスがご飯を力いっぱい食べているのが可愛かった。
 そのままお湯をもらって体をキレイにしてから就寝した。

 そして翌日――

「これで全部かな?」
「ああ、ありがとうカルバーキン。昨日の内に必要なものを運んでおいてよかった」
「はは、こっちは倉庫を貸しているだけだからね。礼はいらないよ」

 俺が礼を言うとカルバーキンが笑いながら返してくる。だが、すぐに表情を変えて尋ねてきた。

「そういえば昨日、君を尋ねてきた人がいたんだけど会ったかい?」
「あー……」

 話の内容は昨日の女性のことだった。あまり思い出したくない話だがセリカが口尖らせて言う。

「会いましたよ! ラッヘさんの顔も知らない女がラッヘさんと付き合うみたいなこと言ってました!」
「え!? 会ったのに顔を知らないのかい!? 物凄く自信満々でラッヘさんを探してたけど……特にどういう顔をしているとか聞かれてないよ」
「なんて恐ろしい……」

 顔を知らないのに人を探していたのか……しかも特徴とかを聞いているわけでもないとは、探す気があるのかと思ってしまう。

「喋らなくていいですからね?」
「まあ、ちょっと調べたところ厄介そうな商人だったからね。どうせ今日、町を出るなら会うこともないと思うけど」
「厄介……?」
「ああ。……本当は他の人間の情報は教えないんだけど、どうも『悪の十字架のレスバ』と呼ばれているらしい」
「なんだそりゃ」

 俺が奇妙な二つ名に呆れていると、カルバーキンは手を上げて続けた。

「でも彼女は一人で行商をしているんだ。護衛もつけずにね」
「へえ、それじゃ商人なのに戦闘力もあるってこと?」
「まあ噂だけどね。変な技を持っていると言っている人もいたね。通り名はアレだけど、一人で旅をしているのは間違いないよ」
「盗賊や魔物相手ができるなら確かに強いか。ま、付き合いたいのもどこまで本当かわからないし、関わらない方がいいだろう」
「そうね。それじゃ行きましょうか」
「ああ。ではまた来るよ」
「ドラゴンの情報が入ったらまた伝えるよ」

 俺達は馬車に乗り込み、手を振るカルバーキンから離れていく。ドラゴンの情報はいくらあってもいいからよろしくとだけ言って片手をあげて応えた。

「ぴゅい」
「なんだ?」
「ジョーとリリアがどうかした?」

 少し移動したところでフォルスがジョー達を指してなんか鳴いていた。セリカが尋ねると、セリカのポケットをポンポンと叩いた後、馬を見る。

「もしかしてジョー達にもポケットが欲しいのか?」
「ぴゅー♪」
「そうみたい。さすがに服を着せるわけにはいかないから駄目かな」
「ぴゅ」
「そんな顔をしてもダメだぞ」

 なんかアースドラゴン戦以降、大きさもそうだが知性も上がった気がするな?
 そんなことを考えながら町を後にする。
 
 ふむ、ジョーの首にカバンでもぶら下げたら喜ぶだろうか……?

◆ ◇ ◆

「ふむ、この町には居るようですがまったく会えませんねえ。一人くらい知っていてもおかしくないと思うのですが……? バーバリアン、どう思いますか?」
「ぶるふん……」

 そんなことを言われてもと言った感じで鼻を鳴らす。特に答えを期待していたわけではないのでそのまま独りごちる。

「顔を知らないというのは致命的ですね。せめて知っている人間を……あのギルド職員は知っているようですが……」

 そこでポンと手を打ってニヤリと笑う。

「宿には泊っていたはずですから一つずつ聞いてみますか。居るかどうか――」

 そうしていくつかある宿を探すこと数時間――

「ラッヘさんなら今朝出て行ったぞ」
「なんと……!? タイミングが悪いですねえ! どこへ行ったかわかりますか?」
「一旦ギルドへ行ってから山へ向かうと言っていたな。知り合いがいるとかで、大荷物を持ってたぞ」
「山……なるほど、変わり者の鍛冶師のところですか」
「知ってんのか嬢ちゃん」
「ええ、凄腕の鍛冶師は商人の間でも有名ですよ。ただ、気に入った相手にしかちゃんとした装備を作ってくれないという……」

 宿の親父は『そいつと知り合いとはやっぱすげえな』と口にした。

「で、わたしはラッヘさんを探しているのですが、顔を知りません。どういった風貌か聞いても?」
「ああ、別に構わんが……彼女とペットと一緒に居るからすぐわかると思うぜ?」

 山にいきゃわかるだろと肩を竦めながら親父は言うのだった――
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...