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その30 怒りのフォルスちゃん
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「謁見は終わりましたか」
「……ええ」
「なにかありましたか……?」
「なんでもありません!」
城内から出てきた俺達に受付の女性がにこやかに声をかけてきた。
しかし、表情がすぐれないため困惑する。セリカは明らかに怒って返事をしていた。
「ありがとうございました」
「ええ……また、どうぞ……」
それでも礼をしないわけにはいかないかと挨拶をする。受付の女性に頭を下げられるが次があるか分からない。
俺達はそのまま馬車を回収しにいく。
「すまない、帰るので馬車を出してもらえるか?」
「あいよ、お疲れ様でしたー」
厩舎に行くとだらけきったジョーを目にする。俺に気が付くと慌てて立ち上がった。
「ぶるる」
「『早いね』って言ってる気がする……」
「だな。元々、城で世話になる予定じゃなかったからこんなもんだぞ。見ろ、リリアはすでに準備ができている」
「ひひん」
「ぶるる……!?」
裏切ってはいないからな? お前がだらしないだけだ。すると懐からフォルスが顔を出した。
「ぴー! ぴゅーい!」
「ぶ、ぶるる……」
ジョーの鼻先をぺちぺちと叩きながらなにか言っている。さっきの出来事を話しているのだろうか?
そこでリリアが寄ってきてフォルスに鼻を擦り付けていた。
「ぴゅーい」
「ひひん」
「まあまあ、それくらいにして。とりあえず出発するわよ」
まだなにか言いたそうだったがセリカがフォルスをだ懐から取り出して抱っこした。大人しくなったところで二頭を出して荷台に繋げ、町中を目指す。
門番に挨拶をして町中へ。
買い物はとりあえずいいかと、そのまま大通りを真っすぐ進んできた道を戻っていく。
「あれ? ラッヘさん」
「もう町を出るのか……?」
で、町に入るときに声をかけられた門番二人が困惑していた。
「色々あって用事は終わったから出ていくよ。また買い物で寄るかもしれないけどな」
「そっか。それじゃまた寄ってくれ」
「ああ」
というわけでフォルゲイトの王都を後にすることになった。
まあ、さすがに頭が冷えてきたので陛下達には申し訳ないなとも思う。
しかし、フォルスを研究材料にするのは容認できないのだ。俺がこいつを利用するのと似ているが、そこは責任をもってやる。嫌がることはしない。
「まだ怒っているのか?」
「……うん。フォルスを研究したいというのはわからなくないの。もしかしたらフォルスが病気になっちゃうかもしれないし、なんのお薬が効くかとか判明するかもしれないでしょ?」
「確かにな」
そんなことを考えていたらしい。
だけど『道具』として見ている感じがしたので怒ったのだそうだ。特に王子の言い方が気に入らなかったと。
「まあ、王都に足を運ぶことはあまりないだろう。研究とはちょっと違うが、魔物に詳しい人間は知っているからそこへ行こう」
「知り合いが多いわね、さすがラッヘさん」
「ドラゴンは倒すのは準備が必要なんだ。剣技、装備、道具……そういう人達に協力をもらってなんとか生きているのさ」
そう言うとセリカは『ちゃんとお礼を言えるからみんな手助けしてくれるんだよ』と言ってくれた。
……師匠は厳しい人だったがな。一度こいつを見せに行かないといけないな。
「ぴゅ!」
「あ、フォルス危ないわよ!」
そんなことを考えているとセリカの膝に乗っていたフォルスがおもむろに身を乗り出してジョーの尻に手を伸ばす。
もちろん届かないのでセリカがすぐに回収するが、まだなにか話し足りないようである。
生後十日と少しなのでもうここまで感情を表しているのはさすがドラゴンというべきか?
「とりあえず森の入口で野営をするか。少しゆっくり休んでから次の目的地を決めよう」
「はーい! 装備かなやっぱり?」
「ドラゴンがすぐ出てくるとは限らないが、いざって時に武器は必要だな」
そんな感じで王都を離れてひとまず野営をすることにした。
テントや飯を作っている間、ジョーとリリアにずっと話しかけているフォルスが可愛いとセリカが笑っていた。ジョーはげんなりしていた気もするが。
ま、少しゆっくりしようか。
◆ ◇ ◆
――早朝
「よし! 行くぞ!」
「大丈夫ですか? ちゃんと騎士団長の言うことを聞くのですよ」
「はい、母上。これも経験。母上も昔は騎士として強力な魔物と戦っていたと言っていましたよね」
――エリードはストレス発散のため狩りに出かけることにしていた。魔物は夜行性が多く、朝早くならそれほど危険もないためラクペインが念のためこの時間にした。
「そうですね。昨日のこと、ごめんなさいね」
「大丈夫です! 僕はちゃんとわかっていますから。では行ってきます!」
「気を付けてな。ラクペイン、頼むぞ」
「ハッ! 行くぞ!」
騎士団長は部隊によって数人おり、その一人がラクペインである。王子と仲が一番いいので昔から無茶振りをお願いされることが多いので今回も随伴は彼である。
それに二十人ほどの騎士を連れ、城を出発。
「ベロウラビッツなどが居るといいですね」
「馬鹿な。僕の実力ならジャイアントタスクくらいはいけるさ! みんな頑張って探してくれよ」
「承知しました」
騎士達は張り切る王子を頼もしいような急いているような感じを抱えながら、返事をした。
しかし、アクシデントは事前にわかるものではないものだ。
森に入った彼らが見たものは――
「……ええ」
「なにかありましたか……?」
「なんでもありません!」
城内から出てきた俺達に受付の女性がにこやかに声をかけてきた。
しかし、表情がすぐれないため困惑する。セリカは明らかに怒って返事をしていた。
「ありがとうございました」
「ええ……また、どうぞ……」
それでも礼をしないわけにはいかないかと挨拶をする。受付の女性に頭を下げられるが次があるか分からない。
俺達はそのまま馬車を回収しにいく。
「すまない、帰るので馬車を出してもらえるか?」
「あいよ、お疲れ様でしたー」
厩舎に行くとだらけきったジョーを目にする。俺に気が付くと慌てて立ち上がった。
「ぶるる」
「『早いね』って言ってる気がする……」
「だな。元々、城で世話になる予定じゃなかったからこんなもんだぞ。見ろ、リリアはすでに準備ができている」
「ひひん」
「ぶるる……!?」
裏切ってはいないからな? お前がだらしないだけだ。すると懐からフォルスが顔を出した。
「ぴー! ぴゅーい!」
「ぶ、ぶるる……」
ジョーの鼻先をぺちぺちと叩きながらなにか言っている。さっきの出来事を話しているのだろうか?
そこでリリアが寄ってきてフォルスに鼻を擦り付けていた。
「ぴゅーい」
「ひひん」
「まあまあ、それくらいにして。とりあえず出発するわよ」
まだなにか言いたそうだったがセリカがフォルスをだ懐から取り出して抱っこした。大人しくなったところで二頭を出して荷台に繋げ、町中を目指す。
門番に挨拶をして町中へ。
買い物はとりあえずいいかと、そのまま大通りを真っすぐ進んできた道を戻っていく。
「あれ? ラッヘさん」
「もう町を出るのか……?」
で、町に入るときに声をかけられた門番二人が困惑していた。
「色々あって用事は終わったから出ていくよ。また買い物で寄るかもしれないけどな」
「そっか。それじゃまた寄ってくれ」
「ああ」
というわけでフォルゲイトの王都を後にすることになった。
まあ、さすがに頭が冷えてきたので陛下達には申し訳ないなとも思う。
しかし、フォルスを研究材料にするのは容認できないのだ。俺がこいつを利用するのと似ているが、そこは責任をもってやる。嫌がることはしない。
「まだ怒っているのか?」
「……うん。フォルスを研究したいというのはわからなくないの。もしかしたらフォルスが病気になっちゃうかもしれないし、なんのお薬が効くかとか判明するかもしれないでしょ?」
「確かにな」
そんなことを考えていたらしい。
だけど『道具』として見ている感じがしたので怒ったのだそうだ。特に王子の言い方が気に入らなかったと。
「まあ、王都に足を運ぶことはあまりないだろう。研究とはちょっと違うが、魔物に詳しい人間は知っているからそこへ行こう」
「知り合いが多いわね、さすがラッヘさん」
「ドラゴンは倒すのは準備が必要なんだ。剣技、装備、道具……そういう人達に協力をもらってなんとか生きているのさ」
そう言うとセリカは『ちゃんとお礼を言えるからみんな手助けしてくれるんだよ』と言ってくれた。
……師匠は厳しい人だったがな。一度こいつを見せに行かないといけないな。
「ぴゅ!」
「あ、フォルス危ないわよ!」
そんなことを考えているとセリカの膝に乗っていたフォルスがおもむろに身を乗り出してジョーの尻に手を伸ばす。
もちろん届かないのでセリカがすぐに回収するが、まだなにか話し足りないようである。
生後十日と少しなのでもうここまで感情を表しているのはさすがドラゴンというべきか?
「とりあえず森の入口で野営をするか。少しゆっくり休んでから次の目的地を決めよう」
「はーい! 装備かなやっぱり?」
「ドラゴンがすぐ出てくるとは限らないが、いざって時に武器は必要だな」
そんな感じで王都を離れてひとまず野営をすることにした。
テントや飯を作っている間、ジョーとリリアにずっと話しかけているフォルスが可愛いとセリカが笑っていた。ジョーはげんなりしていた気もするが。
ま、少しゆっくりしようか。
◆ ◇ ◆
――早朝
「よし! 行くぞ!」
「大丈夫ですか? ちゃんと騎士団長の言うことを聞くのですよ」
「はい、母上。これも経験。母上も昔は騎士として強力な魔物と戦っていたと言っていましたよね」
――エリードはストレス発散のため狩りに出かけることにしていた。魔物は夜行性が多く、朝早くならそれほど危険もないためラクペインが念のためこの時間にした。
「そうですね。昨日のこと、ごめんなさいね」
「大丈夫です! 僕はちゃんとわかっていますから。では行ってきます!」
「気を付けてな。ラクペイン、頼むぞ」
「ハッ! 行くぞ!」
騎士団長は部隊によって数人おり、その一人がラクペインである。王子と仲が一番いいので昔から無茶振りをお願いされることが多いので今回も随伴は彼である。
それに二十人ほどの騎士を連れ、城を出発。
「ベロウラビッツなどが居るといいですね」
「馬鹿な。僕の実力ならジャイアントタスクくらいはいけるさ! みんな頑張って探してくれよ」
「承知しました」
騎士達は張り切る王子を頼もしいような急いているような感じを抱えながら、返事をした。
しかし、アクシデントは事前にわかるものではないものだ。
森に入った彼らが見たものは――
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