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第1話 いきなり村の危機
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村長このままでは百体からなるゴブリンの群れに村は蹂躙されてしまいます!」
「分かっておる。急に集まってきたゴブリンが我が村の食糧や女を狙っていて、この村を起点として他の町や村に襲うつもりなのは百も承知。心配はいらぬ、手は打っておるわ」
と、言い聞かせるように細かい説明をする村長と、その息子の話を深刻な表情で見守る俺たち。
ここは村の集会場。
ほんの一週間くらい前から地域最弱の魔物であるゴブリンをよく見かけるようになり、対策を迫られていたのだ。
地域最弱とは言っても、戦う力のない村人では手に余る。よしんばひとりふたりが武装したところで焼け石に水というやつである。
そして先日、洗濯のため川に出ていた女の子が襲われた。
「うう……」
「泣くな、運が悪かったんだよ」
当事者の女の子は泣き崩れ、父親に慰められていた。
その時の状況を詳しく聞いてみたところ、川で洗濯をしているといつの間にか背後に立っていたというのだ。
焦った女の子は濡れたシャツをゴブリンの顔に巻き付け、もがいている間にもう一枚のシャツでゴブリンの首を絞め、動かなくなったところで逃げ帰ったそうだ。
あわや、というところだったというわけである。女の子の恐怖ははかりしれない。一匹でなければどうなっていたか……
その日から、村の周辺ではゴブリンをやたら見かけるようになり、このままでは村に被害が出そうだということで策を立てた。それで――
「――い、オルグ、聞いているのか? きちんと伝えてきたのだろうな?」
「うへ!? あ、はい! ギルドにはだいたいの目撃数を教えています。腕利きを派遣してくれると言っていました。それと謝礼は魔物を片づけた後で構わないとのことです」
「そうか。ゴブリンの数が多いとなると、報酬も上下するからやむ得まい」
急に名前を呼ばれたので、慌てて思考を中断し答えると、村長は深刻な顔で顔の前で手を組んだ。
そう、俺ことオルグは昨日町へ赴き、この事態を収束させることのできる冒険者を探しに出かけていた。
すぐに町へ行き事情を説明すると、請け負ってくれる人達がいるとの返事をもらい、依頼を完了させてきた次第。
ただ、準備のため後から村に来るということなので、俺は先に村へ戻り、今こうして説明に駆り出されているというわけだ。
ゴブリンとの緊張状態が続くと野草や狩りができないので、物資は町で買えるもの頼みになってしまう。できれば早い内に始末してほしいものだ。
それに村が襲われれば、俺たちの命や女性陣の貞操も危うい……俺はこの村一番の美人で幼馴染で村長の娘でもあるクレアに目を向ける。
「ふふ」
微笑みながら小さく手を振ってくるクレア。でへへ、可愛いなあ。俺は彼女と結婚するため、ここで死ぬわけにはいかないのだ。
そんなことを考えていると、集会場のドアが勢いよく開けられ、村の入り口を見張っていた村人その一が駆け込んでくる。
「き、来た! 冒険者だ!」
「おお……!」
「よかった……これで助かるわね……!」
色めき立つ村人たちが矢継ぎ早に集会場を出ていき、俺も早速出迎えに入口へと向かう。集会場から村の入口まではそう遠くないのですぐに到着すると、見慣れない人影が視界に入った。
喜びの表情を浮かべながら近づいていくが、だんだん雰囲気が異様なことに気づき、俺や村人はごくりと息を吞む。
そこに居たのは熊かと見紛うほどに体が大きく、丸太のような腕をしたスキンヘッドの男が四人。
剃髪か天然かは分からないが四人とも見事なスキンヘッドで、その内ひとりは大剣。もうひとりは槍を持ち、防具はしっかりとした鉄の鎧を着こみ、残るふたりは緑色のローブに白いローブをまとっていた。
見た目はアレだが、戦士二人に魔法使い、回復術士というパーティのようで、バランスはとれているといえるだろう。
その異様な風体に戦慄した村長が俺に目配せをしてきた。えーっと……なになに……
(お前が依頼してきたんじゃから、お前が最初に話せ)
なるほど、一理ある。しかし、俺もあれは怖いので、ウインクをバチバチして伝える。
(こういうのは村長の役目でしょう? 俺は俺の仕事を果たしましたよ。次は村長の番でしょうが)
……と、目配せをすると鬼のような形相でバチバチとウインクしてくる。
(クレアとの交際を認めんぞ? やれ)
(はい)
クソが。
クレアを引き合いに出されたら従わざるを得ない。クレアと結婚したら次の村長は……クレアの兄さんか。
冷静な判断をした俺は、とりあえず心の閻魔帳に村長の名前を付けて一歩前へ出る。そして迫力のあるスキンヘッド軍団へと話しかけることにした。
「あー……俺がゴブリン退治の依頼をしたオルグです。えっと、その、依頼で来られたということでいいでしょうか?」
俺が恐る恐る尋ねると、戦士の男がさわやかに笑って握手を求めてきた。
「ああ、君がそうか! 話は聞いている。俺はソダン。戦士だ。ゴブリン退治、協力しよう」
ぐっと手を握られると物凄い力強さを感じる。これならきっと根絶やしにしてくれるはずだ。俺が安心感を覚えていると、隣の戦士が握手を求めてきたのでそれに応じる。
「よろしく頼む。俺はサダンで、職業は戦士だ。なあに、俺たちが来たからには安心だぜ? はははは!」
「あ、はは、どうも……期待しています」
……兄弟だろうか? スキンヘッドのせいでソダンさんとよく似ている気がする。すると今度は緑のローブを着た男と握手をする。
「俺はセダンという。職業は戦士だ。数からすると、もしかしたらリーダー格のゴブリンが指揮している可能性が高い。しかし俺たちが来たからには安心だぞ」
車みたいな名前だなと思う俺。
あ、なんで車が分かるかっていうと俺はいわゆる転生者ってやつで、気づいたらこの世界に生まれ落ちていたのだ。なんでここにいるのかは当時の記憶がおぼろげでよくわからないし、もう生まれて17年も経つので興味もない。
いやいや、それはともかくこの緑ローブハゲ、おかしなこと言わなかった!?
「えっと、戦士、ですか?」
「ああ」
「でも、そのローブって魔法使いのやつですよね……?」
「このローブ、おしゃれだろ? 俺に合うサイズがなかったから特注で作ってもらったんだ。この下には帷子を着込んでいるから心配しないで大丈夫。戦士といえどオシャレにも気を配るべきだと、緑のローブを作ってもらったのさ!」
うんうんと得意げに頷くセダン。セダンなら白だろうと思っていると、俺の肩に手が置かれた。
ゴキュ! っという小気味よい音が俺の肩から鳴り響き、俺は悶絶する。
「ああああああああああああああ!? 肩が!? 肩が脱臼したぁぁぁぁ!?」
「む、すまん。力が入りすぎたか。……むん!?」
「ひぃん!?」
涙と鼻水をまき散らしながら変な声をあげてしまう俺。しばらく蹲って痛みに耐えた後、半泣き状態で話を続ける。
「す、すごい力ですね。これなら安心してお任せできますよ」
「うむ。改めて名乗る、俺は――」
スキンヘッドその4が名乗ろうとしたので、俺は先に言う。
「名前はあれでしょ? 『スダン』か『シダン』ではないですか?」
フフフ、さすがに三人の自己紹介を聞いてきたのでここは読める。俺がドヤ顔で、どうだと言わんばかりに目配せをすると、白ローブの男は首を傾げて口を開いた。
「いや、俺の名はステファンだ。職業は戦士、よろしくな」
チクショー!
そこは流れに乗っとけよ!? どや顔した俺赤っ恥じゃん! 見ろ、村人がクスクス笑ってんだろうが! で、お前も戦士かよ!
ツッコミどころしかない状況だが村を救出しに来てくれたのだ、それに見た目はアレだが彼らも悪気があってのことじゃない。ここはフランクに話を続けよう。
「そ、そうなんですね。よろしくお願いします。皆さんはご兄弟なんでしょうか? よく似ていますけど」
「いや、全然」
「違うけど?」
二秒で会話が終了した。
じゃあなんでみんなハゲなんだよと言いたいが我慢だ、我慢!
「そ、そうでしたか……失礼しました。では、四人で討伐していただけるということで――」
もう面倒くさくなったので話を締めようとしたところ、ハゲが(誰かはご想像にお任せする)にこりと笑い口を開いた。
「いえ、実はもう一人いまして……」
「?」
ハゲがスッと横にずれると、そこには14,5歳くらいの女の子がもじもじしながら立っていた。シャツに肩当てと胸当て、腰にも鎧をつけている。武器はショートソードが腰に一振り下げられていた。
胸の大きさが俺の好みではないが可愛らしい顔立ちをしている。……そして猫耳。獣人か。
俺がそんなことを考えていると、女の子が一歩前へ出てぺこりと頭を下げる。顔を上げた後に自己紹介を始めてくれた。
「えっと、シノブって言いますにゃ! 今回、このパーティのリーダーをやらせてもらえることになりましたにゃ!」
満面の笑みでそういう猫獣人のシノブ。小柄で胸も小さいが、リーダーとは凄いなと思い、興味本位で尋ねてみる。
「へえ、まだ若いし、女の子なのにリーダー? もしかしてすごく強いとか?」
「えっとねえっとね! わたしじゃんけんに勝ったのにゃ! で、今回はわたしがリーダーなのにゃ! あ、職業は戦士にゃ」
「は? じゃんけん……?」
俺が眉を顰めるとハゲたちが笑いながら言い合う。
「今回はシノブの一人勝ちだったからなあ」
「うむ。じゃんけんなら仕方ない。公平なジャッジだ」
「シノブの指揮が楽しみだな」
「次は負けられないな! はっはっは!」
そこでついに、俺の中でなにかが切れた。
「村の存続をかけた依頼にじゃんけんでリーダー決めてんじゃねぇよ!? そんでもって、なんでみんなハゲマッチョなんだよ! 見た目全く同じなのに兄弟じゃねぇの? 名前もひとりだけ違うとか舐めてんのか!? 職業も全員戦士だし格好もおかしいだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は力いっぱいツッコミを入れた。
村人はみんなそう思っていたらしく、うんうんと頷いてくれたことで村のみんなと一つになれた気がした。
「いや、そういわれても……」
「なあ?」
「俺が悪ぅございましたね!?」
困惑するハゲたちにイラっとするが話が進まないので、俺たちは現在の状況を詳しく伝えるため再び集会場へ戻った。
「分かっておる。急に集まってきたゴブリンが我が村の食糧や女を狙っていて、この村を起点として他の町や村に襲うつもりなのは百も承知。心配はいらぬ、手は打っておるわ」
と、言い聞かせるように細かい説明をする村長と、その息子の話を深刻な表情で見守る俺たち。
ここは村の集会場。
ほんの一週間くらい前から地域最弱の魔物であるゴブリンをよく見かけるようになり、対策を迫られていたのだ。
地域最弱とは言っても、戦う力のない村人では手に余る。よしんばひとりふたりが武装したところで焼け石に水というやつである。
そして先日、洗濯のため川に出ていた女の子が襲われた。
「うう……」
「泣くな、運が悪かったんだよ」
当事者の女の子は泣き崩れ、父親に慰められていた。
その時の状況を詳しく聞いてみたところ、川で洗濯をしているといつの間にか背後に立っていたというのだ。
焦った女の子は濡れたシャツをゴブリンの顔に巻き付け、もがいている間にもう一枚のシャツでゴブリンの首を絞め、動かなくなったところで逃げ帰ったそうだ。
あわや、というところだったというわけである。女の子の恐怖ははかりしれない。一匹でなければどうなっていたか……
その日から、村の周辺ではゴブリンをやたら見かけるようになり、このままでは村に被害が出そうだということで策を立てた。それで――
「――い、オルグ、聞いているのか? きちんと伝えてきたのだろうな?」
「うへ!? あ、はい! ギルドにはだいたいの目撃数を教えています。腕利きを派遣してくれると言っていました。それと謝礼は魔物を片づけた後で構わないとのことです」
「そうか。ゴブリンの数が多いとなると、報酬も上下するからやむ得まい」
急に名前を呼ばれたので、慌てて思考を中断し答えると、村長は深刻な顔で顔の前で手を組んだ。
そう、俺ことオルグは昨日町へ赴き、この事態を収束させることのできる冒険者を探しに出かけていた。
すぐに町へ行き事情を説明すると、請け負ってくれる人達がいるとの返事をもらい、依頼を完了させてきた次第。
ただ、準備のため後から村に来るということなので、俺は先に村へ戻り、今こうして説明に駆り出されているというわけだ。
ゴブリンとの緊張状態が続くと野草や狩りができないので、物資は町で買えるもの頼みになってしまう。できれば早い内に始末してほしいものだ。
それに村が襲われれば、俺たちの命や女性陣の貞操も危うい……俺はこの村一番の美人で幼馴染で村長の娘でもあるクレアに目を向ける。
「ふふ」
微笑みながら小さく手を振ってくるクレア。でへへ、可愛いなあ。俺は彼女と結婚するため、ここで死ぬわけにはいかないのだ。
そんなことを考えていると、集会場のドアが勢いよく開けられ、村の入り口を見張っていた村人その一が駆け込んでくる。
「き、来た! 冒険者だ!」
「おお……!」
「よかった……これで助かるわね……!」
色めき立つ村人たちが矢継ぎ早に集会場を出ていき、俺も早速出迎えに入口へと向かう。集会場から村の入口まではそう遠くないのですぐに到着すると、見慣れない人影が視界に入った。
喜びの表情を浮かべながら近づいていくが、だんだん雰囲気が異様なことに気づき、俺や村人はごくりと息を吞む。
そこに居たのは熊かと見紛うほどに体が大きく、丸太のような腕をしたスキンヘッドの男が四人。
剃髪か天然かは分からないが四人とも見事なスキンヘッドで、その内ひとりは大剣。もうひとりは槍を持ち、防具はしっかりとした鉄の鎧を着こみ、残るふたりは緑色のローブに白いローブをまとっていた。
見た目はアレだが、戦士二人に魔法使い、回復術士というパーティのようで、バランスはとれているといえるだろう。
その異様な風体に戦慄した村長が俺に目配せをしてきた。えーっと……なになに……
(お前が依頼してきたんじゃから、お前が最初に話せ)
なるほど、一理ある。しかし、俺もあれは怖いので、ウインクをバチバチして伝える。
(こういうのは村長の役目でしょう? 俺は俺の仕事を果たしましたよ。次は村長の番でしょうが)
……と、目配せをすると鬼のような形相でバチバチとウインクしてくる。
(クレアとの交際を認めんぞ? やれ)
(はい)
クソが。
クレアを引き合いに出されたら従わざるを得ない。クレアと結婚したら次の村長は……クレアの兄さんか。
冷静な判断をした俺は、とりあえず心の閻魔帳に村長の名前を付けて一歩前へ出る。そして迫力のあるスキンヘッド軍団へと話しかけることにした。
「あー……俺がゴブリン退治の依頼をしたオルグです。えっと、その、依頼で来られたということでいいでしょうか?」
俺が恐る恐る尋ねると、戦士の男がさわやかに笑って握手を求めてきた。
「ああ、君がそうか! 話は聞いている。俺はソダン。戦士だ。ゴブリン退治、協力しよう」
ぐっと手を握られると物凄い力強さを感じる。これならきっと根絶やしにしてくれるはずだ。俺が安心感を覚えていると、隣の戦士が握手を求めてきたのでそれに応じる。
「よろしく頼む。俺はサダンで、職業は戦士だ。なあに、俺たちが来たからには安心だぜ? はははは!」
「あ、はは、どうも……期待しています」
……兄弟だろうか? スキンヘッドのせいでソダンさんとよく似ている気がする。すると今度は緑のローブを着た男と握手をする。
「俺はセダンという。職業は戦士だ。数からすると、もしかしたらリーダー格のゴブリンが指揮している可能性が高い。しかし俺たちが来たからには安心だぞ」
車みたいな名前だなと思う俺。
あ、なんで車が分かるかっていうと俺はいわゆる転生者ってやつで、気づいたらこの世界に生まれ落ちていたのだ。なんでここにいるのかは当時の記憶がおぼろげでよくわからないし、もう生まれて17年も経つので興味もない。
いやいや、それはともかくこの緑ローブハゲ、おかしなこと言わなかった!?
「えっと、戦士、ですか?」
「ああ」
「でも、そのローブって魔法使いのやつですよね……?」
「このローブ、おしゃれだろ? 俺に合うサイズがなかったから特注で作ってもらったんだ。この下には帷子を着込んでいるから心配しないで大丈夫。戦士といえどオシャレにも気を配るべきだと、緑のローブを作ってもらったのさ!」
うんうんと得意げに頷くセダン。セダンなら白だろうと思っていると、俺の肩に手が置かれた。
ゴキュ! っという小気味よい音が俺の肩から鳴り響き、俺は悶絶する。
「ああああああああああああああ!? 肩が!? 肩が脱臼したぁぁぁぁ!?」
「む、すまん。力が入りすぎたか。……むん!?」
「ひぃん!?」
涙と鼻水をまき散らしながら変な声をあげてしまう俺。しばらく蹲って痛みに耐えた後、半泣き状態で話を続ける。
「す、すごい力ですね。これなら安心してお任せできますよ」
「うむ。改めて名乗る、俺は――」
スキンヘッドその4が名乗ろうとしたので、俺は先に言う。
「名前はあれでしょ? 『スダン』か『シダン』ではないですか?」
フフフ、さすがに三人の自己紹介を聞いてきたのでここは読める。俺がドヤ顔で、どうだと言わんばかりに目配せをすると、白ローブの男は首を傾げて口を開いた。
「いや、俺の名はステファンだ。職業は戦士、よろしくな」
チクショー!
そこは流れに乗っとけよ!? どや顔した俺赤っ恥じゃん! 見ろ、村人がクスクス笑ってんだろうが! で、お前も戦士かよ!
ツッコミどころしかない状況だが村を救出しに来てくれたのだ、それに見た目はアレだが彼らも悪気があってのことじゃない。ここはフランクに話を続けよう。
「そ、そうなんですね。よろしくお願いします。皆さんはご兄弟なんでしょうか? よく似ていますけど」
「いや、全然」
「違うけど?」
二秒で会話が終了した。
じゃあなんでみんなハゲなんだよと言いたいが我慢だ、我慢!
「そ、そうでしたか……失礼しました。では、四人で討伐していただけるということで――」
もう面倒くさくなったので話を締めようとしたところ、ハゲが(誰かはご想像にお任せする)にこりと笑い口を開いた。
「いえ、実はもう一人いまして……」
「?」
ハゲがスッと横にずれると、そこには14,5歳くらいの女の子がもじもじしながら立っていた。シャツに肩当てと胸当て、腰にも鎧をつけている。武器はショートソードが腰に一振り下げられていた。
胸の大きさが俺の好みではないが可愛らしい顔立ちをしている。……そして猫耳。獣人か。
俺がそんなことを考えていると、女の子が一歩前へ出てぺこりと頭を下げる。顔を上げた後に自己紹介を始めてくれた。
「えっと、シノブって言いますにゃ! 今回、このパーティのリーダーをやらせてもらえることになりましたにゃ!」
満面の笑みでそういう猫獣人のシノブ。小柄で胸も小さいが、リーダーとは凄いなと思い、興味本位で尋ねてみる。
「へえ、まだ若いし、女の子なのにリーダー? もしかしてすごく強いとか?」
「えっとねえっとね! わたしじゃんけんに勝ったのにゃ! で、今回はわたしがリーダーなのにゃ! あ、職業は戦士にゃ」
「は? じゃんけん……?」
俺が眉を顰めるとハゲたちが笑いながら言い合う。
「今回はシノブの一人勝ちだったからなあ」
「うむ。じゃんけんなら仕方ない。公平なジャッジだ」
「シノブの指揮が楽しみだな」
「次は負けられないな! はっはっは!」
そこでついに、俺の中でなにかが切れた。
「村の存続をかけた依頼にじゃんけんでリーダー決めてんじゃねぇよ!? そんでもって、なんでみんなハゲマッチョなんだよ! 見た目全く同じなのに兄弟じゃねぇの? 名前もひとりだけ違うとか舐めてんのか!? 職業も全員戦士だし格好もおかしいだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は力いっぱいツッコミを入れた。
村人はみんなそう思っていたらしく、うんうんと頷いてくれたことで村のみんなと一つになれた気がした。
「いや、そういわれても……」
「なあ?」
「俺が悪ぅございましたね!?」
困惑するハゲたちにイラっとするが話が進まないので、俺たちは現在の状況を詳しく伝えるため再び集会場へ戻った。
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