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その68 ようやく始まる杖修理
しおりを挟む――オーガ村、ドワーフの集落の畑を潤してから早一週間。
収穫量は絶好調で、仕事の合間に様子見に行くと物凄く感謝されるのも慣れてしまった。
そんな感じで俺達はそろそろ杖をなんとかするためドワーフの集落に来ていた。柴犬精霊と遊びたい黛の意向である。
「ふかふかですねえ……」
「みゅーん……」
「みゃーん」
「お、コテツもちょっと鳴き声が変わったぞ。成長しているなあ」
<平和ねえ>
<ふあ……俺の体を枕にするのは止めて欲しいんだがな……>
<嬉しいくせに>
「どれ、俺もちょっと――」
と、口は悪いが優しい柴犬精霊の尻尾を借りて枕にしようとしたところで、グランガスさんに声をかけられた。
「こりゃ、スミタカ! お主はわしらに山のことを聞くんじゃなかったのか」
「そうだぜ、道路の話もしたいしよ」
「そうだったな……」
俺もモフりたかったが黛と子ネコ、それとネーラとフローレに任せよう。丸太の椅子に座り直し、後から声を出したリュッカに返答する。
「道路に関しては俺の持ってきた道具を使って草を刈って歩きやすく整地してくれるだけでいい。出来るだけ村と村を最短にして、荷車が移動しやすくなればいいからな。こう、木槌とかで地面を叩くといいんだっけ」
「あー、なるほどな! そういう力仕事なら任せてくれ。狩りもできるくらい皆元気になったからすぐにつながるぜ」
「オッケー、じゃあ道路は……というか山に行くのも多分お願いすることになるんだけど、グランガスさん、山にこの杖を修理する鉱石があるんだな?」
「うむ。ムーンライトは山頂付近で採れる鉱石だ。しかし魔物も多いし、確実に採れるとは限らんのがネックじゃ」
すると一緒に来ていたミネッタさんが俺の持ってきたお茶菓子を食べながら口を開いた。
「ふむ、確か満月の夜にひと際光を浴びている石を掘ると出てくる、という話じゃったな。この神具を修理すれば湖の水を各村に伸ばすことができるかもしれん。やってみる価値はあろう。魔物はエルフの精鋭を出すぞ」
「ま、それもそうか。スミタカには世話になりっぱなしだし、ドワーフも手伝うぞ」
「俺達もな。満月ってことは……二日後だな」
リュッカが空を見てそう口にし、俺は眉をひそめながら三人に尋ねる。
「おっと早いな、険しい山か?」
「ああ、荷車なんかは無理だから徒歩になる。見ての通り高い山だから登りと下りで一泊ずつ覚悟した方がいい」
「なら女性は留守番かな」
「ボクは行きますよ! 最近お仕事が忙しくて先輩と一緒に居ませんもん! ねー」
「みゃー」
「みゅー」
子ネコを両脇に抱えて口を尖らせる黛に苦笑する俺。
「まあ、丁度休みだしたまには体を動かすか? 魔物はまあ、なんとかなるだろ」
「我々が居ますからね!」
「ええ!」
エルフとオーガとドワーフの若い衆が筋肉を見せながら鼻を鳴らす。暑苦しい……が、頼もしいことに変わりは無いか。
とりあえず山登り組と道路、ログハウス作りのチームを編成し、計画が実行されることになる。
その日の夜はドワーフの集落で寝泊りすることになり、早速出来た一軒のログハウスを使わせてもらうことに。
――そしてみんなが寝静まった頃、俺は外に出る。
向かう先は――
「おい、起きているか?」
<む? スミタカか? こんな夜更けにどうした>
<どうしたの?>
でかい犬と猫が寝そべっているのは中々壮観だと思いながら、俺は二人に話を持ちかける――
「頼みがある――」
そして二日後、俺達は鉱石を掘るため登山を開始するのだった。
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