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その59 スミタカ、不可解だと考える
しおりを挟む「ネーラやフローレはドワーフのこと知ってるのか?」
「私達は村から大きく離れることは無いから会ったことはないわね」
「同じく」
「一緒にこの大陸へ逃げて来たのに親交は無いんですねえ」
「みゅー♪」
俺の質問にネーラ達が答えると、シュネの上で子猫と遊んでいた黛が不思議そうにつぶやくのが聞こえてきた。
「ワシらはお互いできるだけ不干渉を決めておるからのう。別の仲違いしているわけではないが、人間との戦いで疑心暗鬼になっておったから、なるべく自分たちの種族だけで生きて行こうという暗黙のルールがいつの間にかできたというわけじゃ」
「オーガ達も友好的だったし、こっちの人間は一体なにを考えているんだろうな……」
「確かに町や村、衣服に食べ物……それにルールなど、人間の発展や考え方などは凄かった。故に自分たちが一番偉いと考えてもおかしくはないとワシは思っておるがな。今どうなっているのかさっぱりわからんが!」
「仲良く人間同士で暮らしているんじゃないですかね?」
フローレが肩を竦めて言うが、俺はそれに対し考えを述べる。
「いや、多分そこまで発展はしていなんじゃないかな。こっちの人間はそうじゃないかもしれないけど、争いってやつは基本的に絶えないものなんだ。エルフたち亜人を迫害して大陸を手に入れた後、今度は自国民のためと言い、領地争いが必ず起こる。最初は亜人という共通敵がいたから協力関係にあったけど、それが居なくなったら次の敵は――」
「同じ人間、というわけか。エルフは争いを好まぬから理解できん感情じゃわい」
「人を磔にしたくせに……」
「あ、あれはワシではないぞ!? それにあれは防衛手段じゃ、うん」
<私が助けに入れて良かったわ……スミタカがあそこで亡くなっていたら、私も精霊としてエルフへの加護ができなくなっていたし>
さらりとシュネが怖いことを言ってミネッタさんやベゼルさんが青い顔で冷や汗をかいて俯いていた。
「ま、まあ、無事だったし、俺もこういうキャンプみたいなのは楽しいからいいけどな」
「う、うむ! さすがはスミタカ殿、懐が深いっ!! ……さて、ドワーフの集落へ急ぐぞ!!」
「誤魔化しましたね……」
「あの日のことはエルフの汚点とも言えるものね……」
フローレとネーラがため息を吐いて首を振るとミネッタさんが話題を変えてくる。
「そういえばあの杖、一応まだ力は残っているようじゃがドワーフ達でなんとかなるかのう」
「ああ、わかるんだ? 手に持った時、神秘的なものを感じたからまだ希望はあるかな? このまま湖の精霊に持って行ってもいいと思うけどどうだ?」
「まあ、どうせドワーフ達の様子を見に行くし、そこでどうにもなりそうにないとなればそのまま返そうぞ」
「ですね。ボクたちの世界で出てくる物語のドワーフ達は鍛冶に精通しているって設定ですし、期待したいです!」
黛がシュネの上でそんなことを言う。
しかし、俺はまたなんらかの理由で鍛冶ができないのでは、という疑心を持っていた。
なにかがおかしい……俺がここに来たのは偶然だけど、逆に言えば俺が来なかったらゆっくりと死んでいた可能性も捨てきれない。
驕りたくはないけど、野菜畑ができなかったらエルフも繁栄どころか、という感じだし。
ミネッタさんに聞いたところ、エルフ、ドワーフの他にはやっぱりよく聞くノームという種族と、ミニマムなシルフがいるはずとのこと。
人間達は徹底的に亜人を排除したがっていたらしく、獣人という俺にとっては夢のある種族も恐らく根絶やしにされているか奴隷になっているのではと言う。
シュネが復活して結界が強固に戻ったと聞いているが、人間が上陸してこないかが目下の心配事だ。
「……ここか?」
「みたい、ですね。やっぱり寂れたみたいな感じになってますよ」
「ともかく声をかけてみよう。ドワーフ達はわしらみたいに村ごとではなく、この集落だけで生きているはず――」
と、ミネッタさんが声をかけようとしたところでシュネが俺達を咥えてその場を飛びのいた!
「どわ!?」
「みゅー!?」
「みゃーん……」
<ごめんなさいね、子供達。にしてもご挨拶じゃない、ドワーフの精霊さん?>
「え?」
<……ふん>
俺達が立っていたところに大きな犬が立っていて、シュネの言葉に鼻を鳴らす。犬、とはいえ精霊だけあって威厳がある。あるのだが……
「わ! 先輩、柴犬ですよ柴犬!! 大きいですねー!!」
<うお!? な、なんだ!? 人間だと? い、いつの間に懐に……!? こら、顎を撫でるな!>
渋い声に似合わず、つぶらな瞳が黛を魅了していた。あ、いいなあ……
「みゅー!!」
「みゃー!!」
「あ、お前達の方が可愛いって」
さて、少し順番が変わったけどまずは精霊に話を聞いてみるか?
応援ありがとうございます!
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