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その28 種を撒いて育てよう!
しおりを挟む「さて、それじゃ畑仕事と大工だな」
「みゅー!」
「みゃー!」
というわけで、今日は一日空いているためエルフ村で過ごすため、母猫のシュネの背に乗って村まで来た。
あっという間に到着したので危ないこともなく今はネーラとフローレと共に村の畑がある場所に立っている。
「さて、と、まずはこいつからだな。族長もあっさりOKしてくれて助かったよ」
「スミタカはお猫様の使いだからおじいさまも断れないわよ。それに、あの美味しいご飯を食べているから何ができるか期待しているのかもね」
「そうなるといいけどな、これだけで変わるとは思えないし」
「それは?」
フローレが中腰で袋の封を切っている俺に声をかけてくる。子ネコ達も興味津々と言った様子で俺の足元にいるが、封が開いた瞬間、悲鳴を上げた。
「みゅ!?」
「みゃー!!」
「あら、どうしたかしら?」
「う……これはうん――」
「それ以上はダメだぞ、フローレ?」
開けていたモノ、肥料袋からでた臭いによって子ネコ達はネーラの下に逃げ出し、抱きかかえられていた。残念美少女フローレからいけない言葉がでようとしたので制止し、持ってきたスコップで少し堀った穴に肥料を撒いていく。
顔を顰めながら、ネーラとフローレは俺の動向を見守っていた。一面に敷き詰めた後元の土と一緒に混ぜ合わせて畑を作っていく。
「畑にうんこを撒いてどうするんですか?」
「言っちゃったよこの子!? ……まあ、確かに臭いがこれは土に栄養を与える意味で重要なんだぞ? 見た感じ家畜はニワトリくらいしかいないみたいだし、糞を集めて肥料を作ったりしていないだろ?」
「そうね、腐葉土なんかは使っているみたいだけど、私は狩りの方がメインだから良く知らないのよね」
ネーラがそう言い、フローレはうんうんと頷く。肉は狩りでしか摂取せず牛の家畜が居るわけではないし、野菜は痩せた土地となれば腐葉土が関の山なのがよくわかる。腐葉土は栄養にはなりにくいと聞いたことがある。花を育てるにはいいみたいだけど。
だからこの牛糞肥料畑を試してみたかったのだ。
『これが種かしら?』
「種はナスとトマトと玉ねぎでいくか……。それと、余った肥料をこっちの痩せた畑にちょっと撒いてジャガイモと、と」
「色々ありますね! わたし、もやしとヨモギばかり食べていたので楽しみかも……」
「エルフの村はソラマメやもやし、後は雑草だからね。木の実と果実くらいはあるけど」
種のパッケージをみたフローレの目が輝き、ネーラも村の状況を口にしながらトマトに目を奪われていた。
栄養が偏っているのと、食料を全員に行き渡らせられないのが原因となれば野菜でもいいからとにかく食べ物を増やすことが先決だ。トウモロコシなんかも作れるとエルフの子供達あたりが好きになりそうだ。
醤油を塗って焼きとうもろこし……いかん、涎がでる……
「こうでいいの?」
「あ、土と混ざって臭いが少しマシに……でも、やはりうんこは臭い……」
「無理しなくていいんだぞ? あ、遠くへ行くなよ」
『大丈夫よ、私が見ているから』
子ネコ達は俺達が遊んでやれないことを悟ると、その辺の草むらで虫などをおっかなびっくりしながら突いて遊び始めたので、シュネに任せて俺達はせっせと種を捲く。
三人でやったのでそれほど時間もかからず撒き終わり持ってきたタオルを二人にも手渡し汗を拭う。
「わ、柔らかい布ですね。ふかふかしてます♪」
「スミタカの家はもっと色々あるわよ、私にかけてくれていた毛布はアレ一枚で冬を越せる」
「へえー……」
ネーラが自慢気に鼻を鳴らすと、フローレがジト目で俺を見ながらにやりと笑う。
「ネーラ、余計なことを言うな……さ、さて、次は家の補修をするかな」
「くくく……今度連れて行ってもらいましょうかねえ……」
「スミタカを困らせたらだめよ……あう!?」
「みゅー」
お前のせいだとこめかみを指でぐりぐりしてやり、とりあえず窘めておく。そのまま子ネコを拾い上げて寝床へと向かった。
「ふむ……時にフローレ」
「なんですか?」
「俺が居ない間、シェラフに入っていないだろうな?」
「……」
「黙るな!? まあいいけど、嫌じゃないのか?」
「わ、私はその、同じ屋根の下で寝たことがあるし」
「お前もか!?」
昨日一日で随分使われたものだ……とりあえず隙間を補修するために買ってきた板をいい大きさに切って釘で打ちつけていく。蛇とか入ってきたら嫌だし、異世界なら子ネコが簡単に食われたりする可能性も捨てきれない。
「ウチはこんなもんでいいかな? 後はネーラの家とフローレの家もやろう。板がある限り、順番に直すつもりだ。だけど、将来的に――」
「将来的になんだい? スミタカが来ていると聞いて寄ったんだ、お邪魔するよ」
と、俺が説明をしているとベゼルさんが尋ねてきた。丁度いいかと思いそのまま続ける。
「ああ、ちょうどいいベゼルさんに言いたかったんだ。今後、この村の家をもう少しいいものにしたいと思ってるんだ。こういうのって見たら何となくわかるか?」
俺は家の設計図らしきものを見せると、ベゼルさんは目を細めてそれを受け取った。さて、木はいっぱいあるし、人手があればできそうだけど……?
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