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第四章
第137話 曇りのある見誤った目
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『……こいつらは私を侮辱してくれたのでな。この手で潰すつもりだったからだが? 報告をすれば他の部隊が呼び寄せられる。一度負けている私は編成されないかもしれないだろう』
『な……!? 貴様はそんな私事でついてきたのか!?』
『当然だろう……? お前は強い。その白い魔兵機《ゾルダート》を相手にしてもらっている間に生身の人間をズタズタにする』
動きを止めたディッターが左腕のボウガンを騎士達に向けながらそんなことを口にしていた。ニヤついているなとすぐにわかる喋り方で。
<なるほど、道理で戦力が少ないと思いました>
「クソみたいなプライドで仲間を危険な目に遭わせたってわけか」
サクヤがコクピット内で俺にそう言い、それに対して返答をする。もちろん俺のは外に聞こえている。
『貴様……!!』
「そうやって最初の目的を見失うのは三流だってガルシア隊長が言ってたぜ……!! なるべく殺しはしないつもりでいたが……てめえはコクピットごと潰す」
『死ね……!』
先にボウガンの矢を射出し、そのまま前に出てきたディッターは長剣を構えて突っ込んでくる。
<……! 以前より速い!>
「いや、これが本来のスピードなんだろう。ヘッジ達から聞いたよりちょっと速いかもしれないけどな」
長剣の攻撃を捌きつつ、プラズマダガーの出力を上げていく。エネルギーはなるべく抑えておくか。
装甲を貫く瞬間に出力を上げればいいだろう。
『チィ……!』
「直線の動きには対応できそうだが、シンプルな接近戦は苦手そうだな?」
『ぐぬ!?』
ディッターの剣を避け、時にプラズマダガーで逸らして蹴りを入れる。俺なら速度を活かすため、遠距離からボウガンを撃ちまくる戦法を取るだろう。
『おい、リント! 貴様も仕掛けろ! ジョンビエルを倒したのはこいつだ! グライアードの騎士が敵前で呆けているつもりか!』
『……!』
長剣を振り回しながらリント機へ怒声を浴びせる。呆然としていたリント機がそれを聞いてガクンと機体を揺らした。
『くっ……納得はいかないが今は貴様の言葉を聞いてやろう。手に余りそうだしな……』
「二機で来るならこっちも全力で行くぜ?」
『この距離で槍斧《ハルバード》の一撃を避ける……!』
右側面から俺の頭に繰り出された槍斧《ハルバード》を紙一重で回避する。一瞬動揺するがそれでもリントは俺の首を獲るため刃を横にする。
それを機と見たディッターはこちらの胴体へ剣を振る。
『避けるのが精一杯のくせ――』
「まあ、それで止まるなら俺が一人でお前達を相手にしないって」
『な……!?』
リントの刃を屈んで回避し、長剣をプラズマダガーで受ける。中腰状態から俺はブースターを起動させる。
「うらぁぁぁぁぁ!!」
『う、おおおおおお!?』
『ディッター! ……馬鹿な、あれは私達につけられた新装備……なぜあれを……』
遠ざかるリントがなにか言っていたが、俺はディッターを丘陵の崖に叩きつけるために押しこむ。
『舐めるな……!!』
「お」
ディッターもブースターを起動して俺を押し返そうとしてきた。確かに似たようなものがついているが、俺の足にはブースターが4基だ。ディッター機は2基なので、明らかな出力不足。
しかし、こいつの意図は押し返すことではなかったようで、ブースターを少し傾けて横に滑るようにして俺の前から抜けた。
『くっ……これほどのパワーがあるのか……!?』
「仕切り直しは――」
<マスター、背後から接近する機体があります>
「あいよっと」
『……!?』
サクヤの索敵もあり、レーダーもあるため不意打ちは俺には効果が薄い。横っ飛びで回避をすると息を呑む声が伝わって来た。
攻撃の鋭さは今まで会った中でも一、二を争うな。こっちも戦闘不能にしておくべきかと横っ飛びをした後、リント機へ向き直る。
「あんたに恨みはないが攻撃してくるなら容赦はしない」
『チィ……!』
プラズマダガーを一文字に振ると、リント機はブースターを上手く使い一気に後退した。
<やりますね>
「ディッター機をこいつが乗った方がいいんじゃないか?」
『隙を見せたな!』
「そう思うか?」
離れたところからブースターを使い、ディッター機が接敵してくる。通常の魔兵機《ゾルダート》なら脅威だが、ヴァイス相手には追いつけない。
「お前達の機体は柔軟性が足りないからな」
『なん……!? だがまだ……!』
ホバー移動とは違い、ステップしながら足が地についていない時にブースターで急激に接近する、という移動方法なので、その地上に足をついた時に石でも投げれば当然バランスを崩す。
すぐにボウガンを俺に放ってくるが大きく逸れた。
『馬鹿め……エトワールの騎士達を巻き込んでやったぞ……! あ――』
「傲慢にならず、味方を連れてくれば少しは違ったかもしれないが……残念だ」
『――』
直後、転がるように俺の前に来たディッターは無防備なままたたらを踏む。
そして吸い込まれるように出力を上げた俺のプラズマダガーがコクピットに埋まっていく。断末魔の声など、無く。
飛んでいったボウガンはビッダー機が弾き、グライアードの魔兵機《ゾルダート》にぶち当たった。
『……! こいつは……強すぎる……撤退だ! 本国へ報告する!』
「させると思うか……!」
『やらねばならぬ……白い魔兵機《ゾルダート》!』
<今のを見て撤退をさせるため前へ出るのは尊敬できますね>
『早く移動しろ! こいつは私が止めておく』
「そう上手くはいかないのが人生ってやつだ!」
『なに!? 戦いを避けるだと!? それでも騎士か!』
俺はリントを無視してエトワールの騎士達に救援に向かう。怒声を浴びせてくるが無視だ無視。
<さて、第二ラウンドというところですか>
「そう大層なもんじゃないさ」
『うお……!?』
「部品取りにいただくぜ?」
「リク殿! ありがとうございます! キャラバンの方達は後退してもらっています!」
魔兵機《ゾルダート》に乗っているエトワールの騎士、アデリーの前に居た機体の足を落とすとその場に崩れ落ちた。
彼の言う通りキャラバンはチラホラいるくらいで丘陵の上に撤退しているようだった。
『逃がすか!』
「いいのか? 乱戦になると困るのはお前の方じゃないのか?」
『くっ……』
「遅い」
迫るリント機にプラズマダガーで斬り裂き、槍斧を真ん中から破断する。そのまま腕を持っていくため肩から当たり、距離を取ってからリント機の左ひじを切断した。
『これほど簡単に斬られるとは……! 光の剣、お前は勇者とやらなのか……!』
「そんな大層なものじゃないさ。とりあえず捕縛させてもらうぜ」
『くっ、武器を……!』
崩れ落ちた魔兵機《ゾルダート》の斧で迎え撃とうとするが、すでにその状況は終わっている。
グライアードの騎士達も撤退を始めているが、エトワール側はそれを許さない。
報告をされていない以上、俺という有利をとるためにはここで全員止めておく必要がある。
「ディッターは危険だったからああしたが、悪いようにはしない。大人しく――」
『リント……様……!!』
<警告、ディッターにコクピットを破壊された機体が突撃してきます>
「マジか、あれで動くとは……!」
視線を一瞬そちらに合わせると、ブースターを使って接近してきていた機体が俺とリント機の間に割り込むように入って来た。
『ティアーヌ!』
『こ、ここはわたくしが……! リント様はこのまま下がってください! ごほっ……』
『し、しかし……』
「離せって!」
『な、長くは持ちません……は、やく……報告、を……』
『……撤退する! ついて来れる者だけ、こい!!』
「ビッダー! イラス!」
「分かっています……!」
「いきます!」
ティアーヌとかいう女性の機体が絡みつき、外すのに手間どってしまう。下手に動くと衝撃で死ぬかもしれない。俺は二人に指示を出して向かってもらうが――
『ブースターを展開。魔力回路最大出力……!!』
「速っ……!?」
リントは自身の機体のブースターを一気にふかし、ビッダーとイラスの範囲外へと消えて行った。
「……逃がしたか」
「まずいですね」
「責任は俺が取る。とりあえずこのパイロットを助けよう。死なれるのも困る」
俺はそう言ってコクピットを無理やりこじ開けてティアーヌをそっと取り出した。
『な……!? 貴様はそんな私事でついてきたのか!?』
『当然だろう……? お前は強い。その白い魔兵機《ゾルダート》を相手にしてもらっている間に生身の人間をズタズタにする』
動きを止めたディッターが左腕のボウガンを騎士達に向けながらそんなことを口にしていた。ニヤついているなとすぐにわかる喋り方で。
<なるほど、道理で戦力が少ないと思いました>
「クソみたいなプライドで仲間を危険な目に遭わせたってわけか」
サクヤがコクピット内で俺にそう言い、それに対して返答をする。もちろん俺のは外に聞こえている。
『貴様……!!』
「そうやって最初の目的を見失うのは三流だってガルシア隊長が言ってたぜ……!! なるべく殺しはしないつもりでいたが……てめえはコクピットごと潰す」
『死ね……!』
先にボウガンの矢を射出し、そのまま前に出てきたディッターは長剣を構えて突っ込んでくる。
<……! 以前より速い!>
「いや、これが本来のスピードなんだろう。ヘッジ達から聞いたよりちょっと速いかもしれないけどな」
長剣の攻撃を捌きつつ、プラズマダガーの出力を上げていく。エネルギーはなるべく抑えておくか。
装甲を貫く瞬間に出力を上げればいいだろう。
『チィ……!』
「直線の動きには対応できそうだが、シンプルな接近戦は苦手そうだな?」
『ぐぬ!?』
ディッターの剣を避け、時にプラズマダガーで逸らして蹴りを入れる。俺なら速度を活かすため、遠距離からボウガンを撃ちまくる戦法を取るだろう。
『おい、リント! 貴様も仕掛けろ! ジョンビエルを倒したのはこいつだ! グライアードの騎士が敵前で呆けているつもりか!』
『……!』
長剣を振り回しながらリント機へ怒声を浴びせる。呆然としていたリント機がそれを聞いてガクンと機体を揺らした。
『くっ……納得はいかないが今は貴様の言葉を聞いてやろう。手に余りそうだしな……』
「二機で来るならこっちも全力で行くぜ?」
『この距離で槍斧《ハルバード》の一撃を避ける……!』
右側面から俺の頭に繰り出された槍斧《ハルバード》を紙一重で回避する。一瞬動揺するがそれでもリントは俺の首を獲るため刃を横にする。
それを機と見たディッターはこちらの胴体へ剣を振る。
『避けるのが精一杯のくせ――』
「まあ、それで止まるなら俺が一人でお前達を相手にしないって」
『な……!?』
リントの刃を屈んで回避し、長剣をプラズマダガーで受ける。中腰状態から俺はブースターを起動させる。
「うらぁぁぁぁぁ!!」
『う、おおおおおお!?』
『ディッター! ……馬鹿な、あれは私達につけられた新装備……なぜあれを……』
遠ざかるリントがなにか言っていたが、俺はディッターを丘陵の崖に叩きつけるために押しこむ。
『舐めるな……!!』
「お」
ディッターもブースターを起動して俺を押し返そうとしてきた。確かに似たようなものがついているが、俺の足にはブースターが4基だ。ディッター機は2基なので、明らかな出力不足。
しかし、こいつの意図は押し返すことではなかったようで、ブースターを少し傾けて横に滑るようにして俺の前から抜けた。
『くっ……これほどのパワーがあるのか……!?』
「仕切り直しは――」
<マスター、背後から接近する機体があります>
「あいよっと」
『……!?』
サクヤの索敵もあり、レーダーもあるため不意打ちは俺には効果が薄い。横っ飛びで回避をすると息を呑む声が伝わって来た。
攻撃の鋭さは今まで会った中でも一、二を争うな。こっちも戦闘不能にしておくべきかと横っ飛びをした後、リント機へ向き直る。
「あんたに恨みはないが攻撃してくるなら容赦はしない」
『チィ……!』
プラズマダガーを一文字に振ると、リント機はブースターを上手く使い一気に後退した。
<やりますね>
「ディッター機をこいつが乗った方がいいんじゃないか?」
『隙を見せたな!』
「そう思うか?」
離れたところからブースターを使い、ディッター機が接敵してくる。通常の魔兵機《ゾルダート》なら脅威だが、ヴァイス相手には追いつけない。
「お前達の機体は柔軟性が足りないからな」
『なん……!? だがまだ……!』
ホバー移動とは違い、ステップしながら足が地についていない時にブースターで急激に接近する、という移動方法なので、その地上に足をついた時に石でも投げれば当然バランスを崩す。
すぐにボウガンを俺に放ってくるが大きく逸れた。
『馬鹿め……エトワールの騎士達を巻き込んでやったぞ……! あ――』
「傲慢にならず、味方を連れてくれば少しは違ったかもしれないが……残念だ」
『――』
直後、転がるように俺の前に来たディッターは無防備なままたたらを踏む。
そして吸い込まれるように出力を上げた俺のプラズマダガーがコクピットに埋まっていく。断末魔の声など、無く。
飛んでいったボウガンはビッダー機が弾き、グライアードの魔兵機《ゾルダート》にぶち当たった。
『……! こいつは……強すぎる……撤退だ! 本国へ報告する!』
「させると思うか……!」
『やらねばならぬ……白い魔兵機《ゾルダート》!』
<今のを見て撤退をさせるため前へ出るのは尊敬できますね>
『早く移動しろ! こいつは私が止めておく』
「そう上手くはいかないのが人生ってやつだ!」
『なに!? 戦いを避けるだと!? それでも騎士か!』
俺はリントを無視してエトワールの騎士達に救援に向かう。怒声を浴びせてくるが無視だ無視。
<さて、第二ラウンドというところですか>
「そう大層なもんじゃないさ」
『うお……!?』
「部品取りにいただくぜ?」
「リク殿! ありがとうございます! キャラバンの方達は後退してもらっています!」
魔兵機《ゾルダート》に乗っているエトワールの騎士、アデリーの前に居た機体の足を落とすとその場に崩れ落ちた。
彼の言う通りキャラバンはチラホラいるくらいで丘陵の上に撤退しているようだった。
『逃がすか!』
「いいのか? 乱戦になると困るのはお前の方じゃないのか?」
『くっ……』
「遅い」
迫るリント機にプラズマダガーで斬り裂き、槍斧を真ん中から破断する。そのまま腕を持っていくため肩から当たり、距離を取ってからリント機の左ひじを切断した。
『これほど簡単に斬られるとは……! 光の剣、お前は勇者とやらなのか……!』
「そんな大層なものじゃないさ。とりあえず捕縛させてもらうぜ」
『くっ、武器を……!』
崩れ落ちた魔兵機《ゾルダート》の斧で迎え撃とうとするが、すでにその状況は終わっている。
グライアードの騎士達も撤退を始めているが、エトワール側はそれを許さない。
報告をされていない以上、俺という有利をとるためにはここで全員止めておく必要がある。
「ディッターは危険だったからああしたが、悪いようにはしない。大人しく――」
『リント……様……!!』
<警告、ディッターにコクピットを破壊された機体が突撃してきます>
「マジか、あれで動くとは……!」
視線を一瞬そちらに合わせると、ブースターを使って接近してきていた機体が俺とリント機の間に割り込むように入って来た。
『ティアーヌ!』
『こ、ここはわたくしが……! リント様はこのまま下がってください! ごほっ……』
『し、しかし……』
「離せって!」
『な、長くは持ちません……は、やく……報告、を……』
『……撤退する! ついて来れる者だけ、こい!!』
「ビッダー! イラス!」
「分かっています……!」
「いきます!」
ティアーヌとかいう女性の機体が絡みつき、外すのに手間どってしまう。下手に動くと衝撃で死ぬかもしれない。俺は二人に指示を出して向かってもらうが――
『ブースターを展開。魔力回路最大出力……!!』
「速っ……!?」
リントは自身の機体のブースターを一気にふかし、ビッダーとイラスの範囲外へと消えて行った。
「……逃がしたか」
「まずいですね」
「責任は俺が取る。とりあえずこのパイロットを助けよう。死なれるのも困る」
俺はそう言ってコクピットを無理やりこじ開けてティアーヌをそっと取り出した。
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