魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

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第四章

第134話 戦力との兼ね合い

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「オンディーヌ伯爵の物資がグライアードに……!?」
「そのようです。言葉を少し交わしただけですが嘘ではないかと」
「参ったわね」
「だな」

 拠点に転がり込むように戻って来た騎士がアウラ様へ報告を申し出た。
 そこで聞いた内容はかなり危機的状況を示している。

「どう戦うか、だな」
<そうですね。荷物を運んでいる人間を人質にする可能性があります>
「やっぱりリクとサクヤもそう思うわよね。まーた面倒くさい状況だわ」

 サクヤとシャルの言う通り今回はまた戦いの条件が違う。もし、シーフの男が単独で斥候をしてグライアードの軍勢を発見したのならこちらから打って出て倒せばいい。
 だけどキャラバン丸ごとが相手に拘束されているので、相手によっては皆殺しの選択をする。

「誰が来たのかが気になりますね」
「お前が言うのかよ」

 一緒に居るトルコーイの副隊長であるゼルシオがそんなことを口にし、ヘッジが呆れた顔で言う。
 
「ここに囚われている以上、誰が来るかはこちらとしても重要だ。救助された時の人物によっては救助されない方がいいこともある。お前達ならわかるのではないか?」
「まあ、ジョンビエル隊だったからな俺達は」
「そうだろう」
「面倒くさいわねグライアードの騎士って。統率……は、フレッサーだから無理か」
「それで騎士としてやっていけるのかしら……」

 ゼルシオとヘッジ、ビッダーの話を聞いてシャルとアウラ様が顔を顰めていた。
 
「俺達の世界でも部隊や組織が一環していないと混乱をきたすから、不穏分子は落としていくのが常だ。国王さんはどんな……いや、今はそれどころじゃないな。作戦を立てないと」
<そうですね。ガエイン様は?>
「南の町で防衛ね。呼び戻してもいいけど?」
「いえ、ガエインにはそのまま居てもらいましょう。ここは申し訳ありませんがリク様を中心にお願いできますか?」
「わかった」

 アウラ様がハッキリとそう指示して来た。今回はハッキリと敵の位置、数が分かっているので人質のことを考えなければ迎撃は可能だろう。

「我々も出ますか?」
「お願いします。ビッダーさんとヘッジさん、リク様は確定で。魔兵機《ゾルダート》に乗れる者といくつ使えるか教えてもらえますか?」
「現状、ビッダー機とイラス機、それとリリアの町から2機は持って来れると思います」
「リク様と合わせて5機……相手の戦力は?」

 アウラ様が地図を広げてさらに問う。すると、シーフの男から話を聞いてきた騎士が敬礼をして口を開く。

「……申し上げにくいですが、敵の魔兵機《ゾルダート》は全部で7機。その内2機は意匠が違うらしく、恐らく隊長機かと」
「ひゅう、隊長二人かよ。まあ、リク殿を知っている奴がそろそろ居てもおかしくねえか」
「……そうですね」
「それでもヴァイスに勝てる機体はないでしょ?」
<それは間違いないですね。向こうがパワーアップをしない限り負けないです>
「ハッキリ言ったな……」

 ゼルシオが口をへの字にして不機嫌そうにする。だが、サクヤの言っていることに反論はできないようでそれ以上はなにも言わなかった。

「こちらに4機あるならなんとかなりそうですね。目下、心配事はキャラバンの方たちでしょうか。色々考えているのですが、人質にされる可能性が考慮されますね……」
「騎士の数は?」
「そちらは正確にはわからないそうです。ざっと三十名ほどだと言っていましたが……」

 騎士が首を振りながら力なく答えてくれた。緊張の中抜け出しただけでも十分な成果だと思うのでそこはアドリブで行くしかねえか。

「オッケー、ちょっと前から考えていたことがある。シャルは魔兵機《ゾルダート》のパイロットになれそうな人を連れて来てくれるか? ビッダーとヘッジはセットで動いてもらえると」
「リク様の欲しい人材は使ってもらって構いません。騎士達は何名ほど使いますか?」
「ん? それはありがたいけど、俺が隊長でいいのか? 騎士の誰かじゃないのか?」
「現状、最強戦力であるあなたが居れば問題ないのでは?」

 騎士の一人が首を傾げたけど、俺の考えはちょっと違っていた。

「確かにそうなんだが、こと戦闘が始まると俺は前線で暴れることになる。通信ができればそれでもいいんだけど全体を把握するのが難しいと思うんだよな」
「あー、サクヤは?」

 俺の言っている意味にすぐ気づいたらしいシャルがサクヤの名を口にする。

「サクヤは索敵だ。レーダーとかで潜んでいる敵を調べてもらう」
「なるほどね」

 俺はエトワールの騎士は騎士達で指揮官を持った方がいいと考えている。
 撤退などの判断は人間同士がいいと思う。
 それと俺の作戦がハマれば人質のことは気にしなくてよくなる可能性が高いからだ。

「それじゃ、魔兵機《ゾルダート》を揃えたら出撃といこう」
「それじゃあたしは騎士達に声をかけてくるわ。鉱山の人たちはどうする?」
「急ぎですし今回は拠点に居る者で対応しましょう。それにバスレーナさんが乗り込むと言い出しかねませんから」
「ありそう。それじゃ後でね」

 シャルはそう言ってクレールと共に会議室を出て行った。あの親子はやらかすからアウラ様の判断は正しいな。

「さて、それじゃ作戦だが――」
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