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第四章
第129話 疑惑
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「リント・アクア、スプレンディド出ます」
「副隊長ティアーヌ、ヘリファルテ行きます。騎士団は私に続け」
「「「ハッ!」」」
――真司との会話から約三時間ほど経過したころ、ブースターを装着したリントの機体がグライアードから出撃した。
部隊数は最多で五十名。全員が魔兵機《ゾルダート》に乗っているわけではなく馬車を伴っての移動となる。
ジョンビエルとディッターが失った人員補充、それとアウラとシャルルの捜索を目的としたものだった。
「ディッター・オーメル。ジズ、再度行かせてもらう」
そしてディッターもリントに続き、左手に新装備をつけた魔兵機《ゾルダート》・ジズを駆って後に続く。
部下はエトワール王国に置いてきたので修復のため戻った魔兵機《ゾルダート》部隊のみ。
「ディッター様、これからどうなさるのです? あの白い魔兵機《ゾルダート》のこと……報告しないで良かったとは……」
「くく……構わないさ。次は討ち取る。それでいいだろう? 次は負けん」
「しかし、アレは常軌を逸しています。リント様と共に攻撃をした方が――」
部下である騎士が困惑したように告げる。ディッターはそれに対して、表情を険しくして言う。
「それは考えてある。エトワール王国に入った時点でリントへ進言する。なに、フレッサー将軍には上手く言ってある」
「左様ですか。……では、必ず倒しましょう」
「ああ、頼むよ。今度は逃がさない……」
――そう、ディッターは返すが実のところリクのヴァイスに興味は無かった。
「(私から逃げた裏切者とエトワール王国の騎士達。一番の目標は奴等を殺すこと……白い魔兵機《ゾルダート》は二の次でいい。立ちはだかるだろうが、まともにやり合わなければジズのスピードについて来れるはずはない)」
目を細めて魔兵機《ゾルダート》用に作られた城門を出る一行。
そこで魔力通信具《マナリンク》からの連絡が入った。
『私達はこのまま国境を越えた後はエトワール王国へ向かうが、貴殿はどうするのだ?』
「その件について話をするつもりだったんだ。フレッサー将軍からのお達しがあってね、私と一緒に姫が居た地域を探索するという任務をやってもらう」
『なに? そんな話があるならなぜ集会の時に言わなかった』
「みんな知っているし、私から伝えているからさ。とりあえず国境についたら書状を見せるからまずエトワール王国の国境を目指そう」
『……承知した』
魔力通信具《マナリンク》を切るとディッターはニヤリと笑う。嘘ではない。そのための準備もしてきた。
「……次は殺す。待っていろ愚物共――」
◆ ◇ ◆
『……どう思います?』
「なにがですかティアーヌ?」
周波数を変えて副隊長のティアーヌがリントへ回線を開き疑問を口にする。リントがなんのことかと返していた。
「ディッター様のことです。フレッサー将軍の命令と言っていましたが……」
「書状は本物だったから問題ないのではなかったかしら?」
「そこはいいんですが、どうして我々を導いているのか、ということです。そもそもわたしはジョンビエル様とディッター様が敗走していることに納得していません」
不満を露わにするティアーヌにリントが少し間を置いてから口を開いた。
「……それは私も考えた。ジョンビエルのまさかの戦死。魔兵機《ゾルダート》が居たにも関わらず、というのはどう考えてもおかしい」
「ええ」
奪われたという魔兵機《ゾルダート》で戦ったとしても操縦したことがない人間が隊長を倒せるだろうか? リントはその部分に疑問を持っていた。
「裏切り者が居る。もしかしてジョンビエル様だったりしませんかね?」
「それはないでしょうね」
あっさりとそう返されティアーヌは言葉を詰まらせた。そのことがわかったリントは話を続ける。
「ジョンビエル殿は最悪の性格をしているが、そう簡単に裏切るような性根はしていない。ザラーグド様に拾われて騎士になった男だ。それにエトワール王国に手を貸す理由も無い」
「なるほど……」
「粗野だが忠義はある。だから誰が裏切ったのかは気になるところね。どちらにせよ、負けたディッターが意趣返しをするために私達の部隊を使うという図式ができてしまったと思う。少なくとも彼等が負けたという事実はある油断はしないように」
「承知しました」
ティアーヌは気を引き締めてやりますと言い残して通信を切った。そこで前方を見ながらリントは一人呟く。
「ディッター殿はなにかを隠しているのは間違いない。それを探るのも私の仕事の一つ。この戦争、ただエトワール王国を占領するだけで終わらない……そんな気がするな――」
エトワール王国に入ってから進路を向かって東に取るリント一行。その方角はリク達の居るザラン山がある方向だった――
◆ ◇ ◆
「魔兵機《ゾルダート》は結局何機使えるんだ?」
「都合7機ですね。二部隊分とビッダー、イラス機がある感じです。一機は完全にパーツ取りにしましたから」
<予備パーツが少しでもできたのであれば良かったかと思います>
「ええ。それでは報告はこれで」
「ありがとう」
エトワールの騎士が北の町と南の町の状況、それと使用可能な魔兵機《ゾルダート》を報告してくれた。
なんだかんだでここ最近の敵は拠点と鉱山に近づく魔物ばかりなのでそこまで困った状況ではないのが助かる。
おかげでビッダーの機体と腕が無かったイラスの機体が復元できた。これでなんとか戦いになるレベルになったと言えるだろう。
「町の方も落ち着いたみたいだし、なんとか態勢を整えられそうね」
「そうだな。だけど食料や物資の往来は慎重にやらないといけないから、神経は使うと思う」
「まあね。グライアードの連中、どこまで広がっているのかしら」
とりあえず現状は鬼気迫るような事態ではないから偵察を出してもいいかもしれないな。ガエイン爺さんとアウラ様と相談してみるか?
「副隊長ティアーヌ、ヘリファルテ行きます。騎士団は私に続け」
「「「ハッ!」」」
――真司との会話から約三時間ほど経過したころ、ブースターを装着したリントの機体がグライアードから出撃した。
部隊数は最多で五十名。全員が魔兵機《ゾルダート》に乗っているわけではなく馬車を伴っての移動となる。
ジョンビエルとディッターが失った人員補充、それとアウラとシャルルの捜索を目的としたものだった。
「ディッター・オーメル。ジズ、再度行かせてもらう」
そしてディッターもリントに続き、左手に新装備をつけた魔兵機《ゾルダート》・ジズを駆って後に続く。
部下はエトワール王国に置いてきたので修復のため戻った魔兵機《ゾルダート》部隊のみ。
「ディッター様、これからどうなさるのです? あの白い魔兵機《ゾルダート》のこと……報告しないで良かったとは……」
「くく……構わないさ。次は討ち取る。それでいいだろう? 次は負けん」
「しかし、アレは常軌を逸しています。リント様と共に攻撃をした方が――」
部下である騎士が困惑したように告げる。ディッターはそれに対して、表情を険しくして言う。
「それは考えてある。エトワール王国に入った時点でリントへ進言する。なに、フレッサー将軍には上手く言ってある」
「左様ですか。……では、必ず倒しましょう」
「ああ、頼むよ。今度は逃がさない……」
――そう、ディッターは返すが実のところリクのヴァイスに興味は無かった。
「(私から逃げた裏切者とエトワール王国の騎士達。一番の目標は奴等を殺すこと……白い魔兵機《ゾルダート》は二の次でいい。立ちはだかるだろうが、まともにやり合わなければジズのスピードについて来れるはずはない)」
目を細めて魔兵機《ゾルダート》用に作られた城門を出る一行。
そこで魔力通信具《マナリンク》からの連絡が入った。
『私達はこのまま国境を越えた後はエトワール王国へ向かうが、貴殿はどうするのだ?』
「その件について話をするつもりだったんだ。フレッサー将軍からのお達しがあってね、私と一緒に姫が居た地域を探索するという任務をやってもらう」
『なに? そんな話があるならなぜ集会の時に言わなかった』
「みんな知っているし、私から伝えているからさ。とりあえず国境についたら書状を見せるからまずエトワール王国の国境を目指そう」
『……承知した』
魔力通信具《マナリンク》を切るとディッターはニヤリと笑う。嘘ではない。そのための準備もしてきた。
「……次は殺す。待っていろ愚物共――」
◆ ◇ ◆
『……どう思います?』
「なにがですかティアーヌ?」
周波数を変えて副隊長のティアーヌがリントへ回線を開き疑問を口にする。リントがなんのことかと返していた。
「ディッター様のことです。フレッサー将軍の命令と言っていましたが……」
「書状は本物だったから問題ないのではなかったかしら?」
「そこはいいんですが、どうして我々を導いているのか、ということです。そもそもわたしはジョンビエル様とディッター様が敗走していることに納得していません」
不満を露わにするティアーヌにリントが少し間を置いてから口を開いた。
「……それは私も考えた。ジョンビエルのまさかの戦死。魔兵機《ゾルダート》が居たにも関わらず、というのはどう考えてもおかしい」
「ええ」
奪われたという魔兵機《ゾルダート》で戦ったとしても操縦したことがない人間が隊長を倒せるだろうか? リントはその部分に疑問を持っていた。
「裏切り者が居る。もしかしてジョンビエル様だったりしませんかね?」
「それはないでしょうね」
あっさりとそう返されティアーヌは言葉を詰まらせた。そのことがわかったリントは話を続ける。
「ジョンビエル殿は最悪の性格をしているが、そう簡単に裏切るような性根はしていない。ザラーグド様に拾われて騎士になった男だ。それにエトワール王国に手を貸す理由も無い」
「なるほど……」
「粗野だが忠義はある。だから誰が裏切ったのかは気になるところね。どちらにせよ、負けたディッターが意趣返しをするために私達の部隊を使うという図式ができてしまったと思う。少なくとも彼等が負けたという事実はある油断はしないように」
「承知しました」
ティアーヌは気を引き締めてやりますと言い残して通信を切った。そこで前方を見ながらリントは一人呟く。
「ディッター殿はなにかを隠しているのは間違いない。それを探るのも私の仕事の一つ。この戦争、ただエトワール王国を占領するだけで終わらない……そんな気がするな――」
エトワール王国に入ってから進路を向かって東に取るリント一行。その方角はリク達の居るザラン山がある方向だった――
◆ ◇ ◆
「魔兵機《ゾルダート》は結局何機使えるんだ?」
「都合7機ですね。二部隊分とビッダー、イラス機がある感じです。一機は完全にパーツ取りにしましたから」
<予備パーツが少しでもできたのであれば良かったかと思います>
「ええ。それでは報告はこれで」
「ありがとう」
エトワールの騎士が北の町と南の町の状況、それと使用可能な魔兵機《ゾルダート》を報告してくれた。
なんだかんだでここ最近の敵は拠点と鉱山に近づく魔物ばかりなのでそこまで困った状況ではないのが助かる。
おかげでビッダーの機体と腕が無かったイラスの機体が復元できた。これでなんとか戦いになるレベルになったと言えるだろう。
「町の方も落ち着いたみたいだし、なんとか態勢を整えられそうね」
「そうだな。だけど食料や物資の往来は慎重にやらないといけないから、神経は使うと思う」
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