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第四章
第123話 大規模改革
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「そっちを持ってくれ! せーの……っしょい!」
「俺がやるのに」
「いえ、こいつの改修は我々ができるようになっておかないと。倒れた時に起き上がらせる手段も考えないといけませんしね」
「なるほどな」
「考えているわね」
俺は視察のためシャルと北の町ルルムへとやってきた。
鉱山の町、というだけあって鉱石を加工したりする施設が多くあり、ちらほらと煙突から煙の出ている家屋が見える。
ちなみに今しがた会話していたのはエトワールの騎士と数人の町人だ。一機の魔兵機《ゾルダート》の部品取りで、ギャレットさんの操る機体と一緒に作業をしていた。
ギャレットさん曰く、移動中は恐ろしくバランスが取れていて転倒しにくいが、倒れると脆いこと。
コクピット内に誰も居ない状態で、コクピットを下にしてしまうと乗れなくなるという弱点もあるという。
「乗っていれば立ち上がれるけどね」
「だけど上手く使えば有用な妨害ができるよな」
<とりあえずビッダー様の機体に関しては背面からでも乗れるように実験機にするようです>
「あー、いいかもな」
で、俺は基本的に手伝わない方向でみなが動いていたりする。知識に関しては代表者がサクヤに伺いを立てる形になるが、出来る作業は自分達でとのこと。
どうしてか? というのを聞いてみたのだが――
『今回、ルルアの町奪還ではリク様はいませんでした。今後も、こういった状況は続くはず。それと、言いにくいのですが突然現れたリク様が突然居なくなるということも想定されるのではとの意見があり、出来る限り自分達でやりたいとのことです』
――という言葉がアウラ様から返って来た。
俺自身、この世界に馴染みつつあったので突然いなくなるという話は割とドキッとさせられた。確かに突然来たのだから同じことが起こってもおかしくないのだ。
「みんな、前向きに頑張っているよ。凄いな」
「でも、その一旦はリクが居るからだと思うわよ?」
町の中を外壁越しに覗き込みながら感慨深いと口にする。そこでシャルがタブレットの俺にそんなことを言う。
「どうしてだ?」
「だって、リクが居なかったらお姉さまもあたしもどうなっていたか分からないわ。グライアードに追いつかれる前にゲイズタートルに踏み潰されていたかもしれないし」
「まあ……」
「その後も魔兵機《ゾルダート》を倒し、町を助けた。全部リクが居なければ無理だったもの」
にこりと微笑むシャルの顔は初めて見た気がする。しかし、俺が居なくなった時のことを考えているならそうでもないのではと聞いてみた。
「頼るのは簡単だけど、やっぱり自分達のことだからね。土台はリクが作ってくれたからこれくらいはやらないとって思っているのよ」
「なるほどな……」
<素晴らしいです。いくらマスターが強いといっても単独では出来ることが限られます。ヴァイスや魔兵機《ゾルダート》では斥候は難しいですし、王都を奪還するなら人数は必要です。各人ができることをしなければ勝てません>
「あら、随分とお喋りじゃない?」
<……申し訳ございません。少々喋りすぎましたね>
珍しく流暢に言葉を発し、俺とシャルが少し驚く。すぐに謝罪をされたけど、別に悪いことではないのでシャルが返す。
「別にいいじゃない。サクヤって『キカイ』なんでしょ? なのにあたし達みたいに喋れて考えられるのは凄いわよ」
<光栄です。……おや、ザナック様ですね>
「え?」
ヴァイスの首が動き、コクピット内のモニタにズームされた映像が表示される。そこにはこちらに向かってくるザナックとヘッジの姿があった。
「シャルル様! リク殿! 話し合いの準備ができました。ご足労願えますか?」
「オッケー、今行くわ」
「いよいよか。ま、ここはシャルに任せる形だな」
ザナックの呼び声に応えてシャルはタブレットを持ってから下へ降りる。ヴァイスはサクヤが動かして周囲の状況を逐一把握するようにした。
マーカーが出れば警戒もできるからな。
「こちらです」
「随分壊れているな」
「オレとザナックがちょっとな。くっくっく」
ヴァイスを降りたシャルはザナックに連れられて大きな屋敷へとやってきた。
入り口を含めてあちこち壊れているホールはヘッジ達が戦ってぶっ壊したと語っていた。
やがて到着した場所はいかにもな応接室で、長いテーブルには左右でキレイに分かれて人が座っていた。
拘束された人間と監視するエトワールの騎士。逆サイドにはシャルや町の人間と思わしき者が。
拘束された人間の中には俺が捕らえたトルコーイもいる。
「シャルル様、ようこそおいで下さいました」
「こういう場なら当然来ますわ。姉のアウラは安全のため姿を見せませんが、あたしの言葉は同様のものとお考え下さい」
「は、恐縮です」
すると拘束されている髭の男が口を開く。
「王女様ですかね? 小娘が徒党を組んでもグライアードには勝てんよ。降伏した方が身のためだと思いますがね? ……ぎゃあああ!?」
「口を慎め。シャルル姫の御前だ」
「き、傷口は卑怯だろうが……!」
「今のはお前が悪いな、カン・ガン」
ザナックに腹の傷を殴られガチで悶絶するカンと呼ばれた男。そいつがトルコーイに怒鳴りつける。
「貴様も捕まっておきながらその言いぐさはなんだ!? あ、いたたた……」
「まあ、話しを聞こうじゃあないか。とは言っても、逆に質問攻めにあいそうだがねえ?」
「そうね。では、始めましょう」
シャルが席につくと、厳かな雰囲気を出して会談をスタートさせた。
「俺がやるのに」
「いえ、こいつの改修は我々ができるようになっておかないと。倒れた時に起き上がらせる手段も考えないといけませんしね」
「なるほどな」
「考えているわね」
俺は視察のためシャルと北の町ルルムへとやってきた。
鉱山の町、というだけあって鉱石を加工したりする施設が多くあり、ちらほらと煙突から煙の出ている家屋が見える。
ちなみに今しがた会話していたのはエトワールの騎士と数人の町人だ。一機の魔兵機《ゾルダート》の部品取りで、ギャレットさんの操る機体と一緒に作業をしていた。
ギャレットさん曰く、移動中は恐ろしくバランスが取れていて転倒しにくいが、倒れると脆いこと。
コクピット内に誰も居ない状態で、コクピットを下にしてしまうと乗れなくなるという弱点もあるという。
「乗っていれば立ち上がれるけどね」
「だけど上手く使えば有用な妨害ができるよな」
<とりあえずビッダー様の機体に関しては背面からでも乗れるように実験機にするようです>
「あー、いいかもな」
で、俺は基本的に手伝わない方向でみなが動いていたりする。知識に関しては代表者がサクヤに伺いを立てる形になるが、出来る作業は自分達でとのこと。
どうしてか? というのを聞いてみたのだが――
『今回、ルルアの町奪還ではリク様はいませんでした。今後も、こういった状況は続くはず。それと、言いにくいのですが突然現れたリク様が突然居なくなるということも想定されるのではとの意見があり、出来る限り自分達でやりたいとのことです』
――という言葉がアウラ様から返って来た。
俺自身、この世界に馴染みつつあったので突然いなくなるという話は割とドキッとさせられた。確かに突然来たのだから同じことが起こってもおかしくないのだ。
「みんな、前向きに頑張っているよ。凄いな」
「でも、その一旦はリクが居るからだと思うわよ?」
町の中を外壁越しに覗き込みながら感慨深いと口にする。そこでシャルがタブレットの俺にそんなことを言う。
「どうしてだ?」
「だって、リクが居なかったらお姉さまもあたしもどうなっていたか分からないわ。グライアードに追いつかれる前にゲイズタートルに踏み潰されていたかもしれないし」
「まあ……」
「その後も魔兵機《ゾルダート》を倒し、町を助けた。全部リクが居なければ無理だったもの」
にこりと微笑むシャルの顔は初めて見た気がする。しかし、俺が居なくなった時のことを考えているならそうでもないのではと聞いてみた。
「頼るのは簡単だけど、やっぱり自分達のことだからね。土台はリクが作ってくれたからこれくらいはやらないとって思っているのよ」
「なるほどな……」
<素晴らしいです。いくらマスターが強いといっても単独では出来ることが限られます。ヴァイスや魔兵機《ゾルダート》では斥候は難しいですし、王都を奪還するなら人数は必要です。各人ができることをしなければ勝てません>
「あら、随分とお喋りじゃない?」
<……申し訳ございません。少々喋りすぎましたね>
珍しく流暢に言葉を発し、俺とシャルが少し驚く。すぐに謝罪をされたけど、別に悪いことではないのでシャルが返す。
「別にいいじゃない。サクヤって『キカイ』なんでしょ? なのにあたし達みたいに喋れて考えられるのは凄いわよ」
<光栄です。……おや、ザナック様ですね>
「え?」
ヴァイスの首が動き、コクピット内のモニタにズームされた映像が表示される。そこにはこちらに向かってくるザナックとヘッジの姿があった。
「シャルル様! リク殿! 話し合いの準備ができました。ご足労願えますか?」
「オッケー、今行くわ」
「いよいよか。ま、ここはシャルに任せる形だな」
ザナックの呼び声に応えてシャルはタブレットを持ってから下へ降りる。ヴァイスはサクヤが動かして周囲の状況を逐一把握するようにした。
マーカーが出れば警戒もできるからな。
「こちらです」
「随分壊れているな」
「オレとザナックがちょっとな。くっくっく」
ヴァイスを降りたシャルはザナックに連れられて大きな屋敷へとやってきた。
入り口を含めてあちこち壊れているホールはヘッジ達が戦ってぶっ壊したと語っていた。
やがて到着した場所はいかにもな応接室で、長いテーブルには左右でキレイに分かれて人が座っていた。
拘束された人間と監視するエトワールの騎士。逆サイドにはシャルや町の人間と思わしき者が。
拘束された人間の中には俺が捕らえたトルコーイもいる。
「シャルル様、ようこそおいで下さいました」
「こういう場なら当然来ますわ。姉のアウラは安全のため姿を見せませんが、あたしの言葉は同様のものとお考え下さい」
「は、恐縮です」
すると拘束されている髭の男が口を開く。
「王女様ですかね? 小娘が徒党を組んでもグライアードには勝てんよ。降伏した方が身のためだと思いますがね? ……ぎゃあああ!?」
「口を慎め。シャルル姫の御前だ」
「き、傷口は卑怯だろうが……!」
「今のはお前が悪いな、カン・ガン」
ザナックに腹の傷を殴られガチで悶絶するカンと呼ばれた男。そいつがトルコーイに怒鳴りつける。
「貴様も捕まっておきながらその言いぐさはなんだ!? あ、いたたた……」
「まあ、話しを聞こうじゃあないか。とは言っても、逆に質問攻めにあいそうだがねえ?」
「そうね。では、始めましょう」
シャルが席につくと、厳かな雰囲気を出して会談をスタートさせた。
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