魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

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第三章

第84話 魔石

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「結構硬いな」
「頑張れ頑張れリクさん!」
「旦那、ファイトだ」

 さて、鉱石堀りをするため活動を開始。
 彼らと離れた場所へ移動し、鉱脈らしき場所はサクヤの探索《サーチ》で概ねの範囲を補足している。
 まずは坑道を掘るためちょっと縦長だが山を掘り進めている。足元ではバスレーナとヘッジが応援してくれているのだが――

「若い女の子の声援ならいいけどヘッジみたいな男に言われてもなあ……」
「シャルル様に告げておくぜー」
「なんでシャルの名前が出てくるんだ?」
「あ、これはいけませんね。鈍感野郎にもほどがあります」
「体が戻ったら百叩きだろうなあ」
「なんで俺、そんなに罵倒されているの?」
「アウラ様に聞いてみるといいですよ?」

 ヘッジとバスレーナに呆れた感じでそう言われて首を傾げる俺。
 さらにアウラ様だときたか。よくわからんが、スルーしておいた方が良さそうだと話を変える。

「そういや、町の人の中に鉱山経験者は居るのか?」
「何人かいるみたいだぜ。旦那がちょっと掘ったらこっちに来てもらおうぜ」
「そっか。ならその人たちが教えてくれればいいな」

 そのあたりの知識は無いので現地人がやってくれるとありがたい。するとそこでサクヤが声を上げた。

<マスター、少し手を止めてください>
「ん? どうした?」
<右方向に岩とは違う物質を確認しました>

 そう言われて俺とバスレーナ、ヘッジがそちらを向くと確かにちょっと色の違う部分があった。

「あ、魔石ですよこれ」
「こいつがか。割と早く見つかったな」
「でも、この位置だと掘りにくいんじゃねえか? 一旦、掘った土を外に出さないといけねえしよ」
「そうだな……」

 掘り進めているため俺は前後移動しかできない。
 とりあえず、だいたい500メートルくらいの位置まで来たので外に戻ることにした。少しずつ外に出してはいたが土がそれなりに溜まってきた。
 ひとまず二人をコクピットに乗せてから土をもって外へと向かう。

「土を運ぶのも大変ですよねえ」
「ビッダーも連れてくりゃ良かったな」
「あー、そうだな。向こうの世界だと土木用の機械があるくらいこういうときは重要だ」
「キカイ……興味ありますね……!」
「女の子のする顔かよ」

 目を光らせてにゅふふと笑うバスレーナを見てヘッジが苦笑していた。実際、親父さんであるギャレットさんレベルでこういうのが好きみたいだしなあ。

「未知のアイテムに心を躍らせるのは男女関係ありませんよ? それが冒険家というものです!」
「お前は鍛冶師だろ?」
「いえ、先月から冒険家です」
「ええー……」

 どうもその都度職名が変更されるらしい。冒険者となればギルドに登録が必要だが、冒険家はその限りではないとのころ。
 ……違いが分からんが、そういうものらしいや。

「お、戻って来たぞ」
「リク殿、どうでしたか?」
「なんか魔石があったらしい。突きあたりに行って右を見ると俺の腰あたりのがそうだ」
「なるほど、見に行ってみますよ」
「土がまだあるぞ」
「まあ、運べばなんとかなるからちょっと休んでいてくれ」

 天井は叩いて固めてあるし、そこそこ高いので大丈夫とは思う。そんな穴の中へ鉱夫達が入れ替わりに入っていった。

「親父ー、あたいも行くよー?」
「お? 休んでろって。ここは任せておけ!」
「オッケー! よろしくー!」

 コクピットから顔を覗かせてバスレーナがギャレットさんに声をかけると、親父さんはサムズアップをしながらつるはしを抱えて坑道へ入っていった。

「元気な親父さんだな」
「体だけは丈夫ですからねえ。ま、それでも自慢の親父ですけど」

 コクピット内でそんな話をするヘッジとバスレーナ。年頃の娘が親父さんにそう言うってのは恥ずかしがるものだがしっかりしているなと思う。

「さて、と」
「お、動いた? どうしたのさリクさん?」
「鉱洞の方をちょっとな」

 直立に立って先ほどの連中の方へカメラを向ける。ズームしてみるとせわしなく働いている様子が伺えた。

「どうだい旦那?」
「まあ、平常運転って感じだな。……お、こっちに気付いたのがいるな」
「でかいですからね。というか、初めて町の人達に断られましたけど、これからどうするんです?」

 バスレーナが不思議そうな感じで尋ねてきた。そこを決めるのは俺じゃないから何とも言えないんだけども。

「どうなるかな。ひとまず鉱山を切り開いて自力で手に入れるか接収するしかない。金があればってところだが、金策ってできるもんなのかね」
「そこよな。王族は税金で暮している側面が強いから、稼ぐ手段がない。自給自足か冒険者として稼ぐか……だけどよグライアードの連中との戦争でそれはできねえ」
「となるとやっぱり町の人に協力をしてもらうのが一番なんですよね」
「だな。ま、一日待ってみよう。あの人達は俺達はここに居るのを知っているし、町の人間がどういう結果を出すか教えてくれるだろ」

 俺がそう言うとヘッジが『ちがいねえ』と笑う。コクピット内での喫煙はご法度なのでそいつはやんわり止めて置く。

「姫様が乗るから煙草はダメか。とにかく戦力の増強は必須なんだよなあ、エトワール王国の騎士がどうなっているか……王都で全滅したとも考えにくいし、集まれないかねえ」
「危なっ!?」
「大丈夫だって」

 ヘッジがコクピットから飛び出しながら煙草に火をつけていた。焦るバスレーナに意地悪く笑いながら答えていた。
 下手に募集をかけるとグライアードに見つかるしな……うーむ、やることはまだまだあるな……
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