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第三章
第81話 すべきこと
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「うわーい! 家だ家だ!」
「わたしの部屋があるー」
「ほら、まだ他の人達のも作るんだから手伝えよ」
「「はーい!」」
拠点作成は順調に進んでいた。
とはいえ、家に関しては千五百人越えの何世帯あるか把握できていないのでまだまだである。
現状できたのはまず、物見やぐら……いわゆる監視塔だ。俺達はまだ追われる側の身なので監視は怠らないようにしないといけない。
魔兵機《ゾルダート》よりも高い木の上にいくつか設置。もちろん不安定にならないよう木と木の間に落ちないようしたり、昇る梯子には気を使っている。
もらった鉄を加工して木枠に打ち付けて防御力も上げていた。
続いて作成中ではあるが、アウラ様の屋敷(しょぼいけど)を中心二キロの範囲を円状に柵をぐるりと作成した。
「これはなに?」
「鳴子と言ってな。この紐に絡んだらカラカラと音がするんだ。侵入者が居ればこの音でわかる」
「リクが居れば大丈夫じゃないの?」
「サクヤの索敵をアテにするのは問題ないけど、出撃していて俺が居ない可能性もあるだろ?」
「あ、それもそうね」
魔兵機《ゾルダート》なら音で分かると思うが、人間が単体で攻めてきた場合には分かりにくい。
子供もいるため、この前の三人組じゃないけどこっそり人質にされないよう外側からの侵入は厚くしておきたいんだよな。
原始的ではあるけど音で敵の侵入を防ぐ方法はこの世界だと一般的ではないらしいため作ってもらった。
「穴も掘るのですね」
「お、アウラ様。ああ、なんだかんだ有用性は高いからな。子供たちが落ちないように注意は必要だけどさ」
「そうですね。あと、私のお家が色々と広かったりするのですが……いいのでしょうか」
俺が鳴子の説明をしながら穴を掘っていると、そこへアウラ様がやってきた。実はまだ建造中で、大工の人間が何人も張り切って作っているらしい。
「いいんじゃない? サクヤが作戦指令室も作りましょうっていうから居住スペースと作戦スペースが近いからよ」
<もちろんプライベートはばっちり守られる設計です>
「お前の仕業か」
どうやらサクヤが入れ知恵をしたらしい。
アウラ様、シャルそれと護衛の騎士がローテーションで住み込めるタイプだとか。
<外壁装甲は厚さ2cmの鉄で、屋根に大岩が落ちても潰れません。さらに奥の隠し通路から山を抜けて別の場所へ抜けられるようにもしています>
「要塞かよ……でも、隠し通路はワクワクするな……」
「できたらタブレットで一緒に行こうよ」
シャルが笑顔でそう言い、俺は了承する。するとアウラ様も拳を握って言う。
「わ、私も一緒に行きますからね!」
「そりゃもちろん。二人の屋敷だもんな」
「はい!」
「むう。……ま、でもあたし達は王族だし、なんとでもなるかな?」
「ん? 何の話だ?」
シャルが意味深な笑みを浮かべていたので聞いてみるとシャルはハッと気づいた顔で手を振っていた。
「なんでもない! それじゃリクの仕事の邪魔になるし向こうへ行きましょ」
「そうですね!」
「気を付けてなー」
<後でタブレットに行きますね>
……なるほど、サクヤが大人しい時は向こうにいっているのか。
妙なことをやらなければいいなと俺はまた穴を掘る。
水の確保は井戸を掘るとか言っていたが、みんなでやればなんとかなるかね。
とまあ、そんな調子で徐々に……本当に少しずつできることを増やしている。
畑も意外と早い段階で耕し始めたみたいだしな。種から育てるので収穫できるようになるまで近くの町か村に行くしかないけど。
順調は順調なのだが、いくつか問題点もある。
それは――
「南側に魔物が出たぞ!」
「承知した。ワシが出るぞ、三人ほどついてこい。後は拠点防衛を」
「ハッ!」
「キラーアントのようです、お気をつけて」
「問題ないわい」
――そう、魔物だ。
先住民とも言える魔物の出現頻度は現状それなりに多い。ガエイン爺さんや騎士が迎撃に出るが昼夜問わずなので交代制で対応している状況だ。
戦える人間が百人前後の騎士とヘッジ、ビッダー、イラス、シャルのみなので大勢で来られると厳しい。
まあ、それはグライアードの軍勢が来た時も同じだ。冒険者をギルドが管理して魔物を倒すという仕事が上手くいく理由が分かった気がする。
「……戦力か」
今はまだバレていないので平和的にことが進んでいるけど逐一攻められるようになると圧倒的に戦力が足りない。
それはクレイブの町で防衛線をやってわかっている。
「魔兵機《ゾルダート》相手には俺が居る。山を登ってくる機体を倒すのはそれほど難しくない。しかし対人間にはライフルが無いから厳しいんだよな……」
いわゆる飛び道具と呼ばれる兵器が欲しい。無差別に殺すというのはあまり考えたくないが、ジョンビエル達のような人間ばかりなら手足の一本はと思ってしまう。
「なにかいい方法はないか」
殺傷力が低く相手の戦力を削ぐ方法。俺はぶつぶつと言いながら穴を掘っていく。
ちなみに人が増えて土地を拡張しなければならないことを考えてクレイブの町よりも浅めにしてある。
「イラスー! あんた暇でしょ、魔兵機《ゾルダート》の腕を作るの手伝いなさい」
「うう……人使いが荒い姫……」
「ほら、働かざる者食うべからずよ」
「わ、わたしもリク様と話したいのに……」
「……ダメよ」
「ひぃ怖い……」
「なにやってんだあいつら……?」
イラスはシャルの従者みたいになっているな。何故か怖い顔を度々するのが気になるが。
「おーい、リク殿。ちょっと手伝ってくれ」
「お、ギャレットさん? オッケー」
ま、とりあえず安定するまで頑張っていきますかねえ。俺はそう思いながら腰を上げてギャレットさんの話を聞くことにした。
「わたしの部屋があるー」
「ほら、まだ他の人達のも作るんだから手伝えよ」
「「はーい!」」
拠点作成は順調に進んでいた。
とはいえ、家に関しては千五百人越えの何世帯あるか把握できていないのでまだまだである。
現状できたのはまず、物見やぐら……いわゆる監視塔だ。俺達はまだ追われる側の身なので監視は怠らないようにしないといけない。
魔兵機《ゾルダート》よりも高い木の上にいくつか設置。もちろん不安定にならないよう木と木の間に落ちないようしたり、昇る梯子には気を使っている。
もらった鉄を加工して木枠に打ち付けて防御力も上げていた。
続いて作成中ではあるが、アウラ様の屋敷(しょぼいけど)を中心二キロの範囲を円状に柵をぐるりと作成した。
「これはなに?」
「鳴子と言ってな。この紐に絡んだらカラカラと音がするんだ。侵入者が居ればこの音でわかる」
「リクが居れば大丈夫じゃないの?」
「サクヤの索敵をアテにするのは問題ないけど、出撃していて俺が居ない可能性もあるだろ?」
「あ、それもそうね」
魔兵機《ゾルダート》なら音で分かると思うが、人間が単体で攻めてきた場合には分かりにくい。
子供もいるため、この前の三人組じゃないけどこっそり人質にされないよう外側からの侵入は厚くしておきたいんだよな。
原始的ではあるけど音で敵の侵入を防ぐ方法はこの世界だと一般的ではないらしいため作ってもらった。
「穴も掘るのですね」
「お、アウラ様。ああ、なんだかんだ有用性は高いからな。子供たちが落ちないように注意は必要だけどさ」
「そうですね。あと、私のお家が色々と広かったりするのですが……いいのでしょうか」
俺が鳴子の説明をしながら穴を掘っていると、そこへアウラ様がやってきた。実はまだ建造中で、大工の人間が何人も張り切って作っているらしい。
「いいんじゃない? サクヤが作戦指令室も作りましょうっていうから居住スペースと作戦スペースが近いからよ」
<もちろんプライベートはばっちり守られる設計です>
「お前の仕業か」
どうやらサクヤが入れ知恵をしたらしい。
アウラ様、シャルそれと護衛の騎士がローテーションで住み込めるタイプだとか。
<外壁装甲は厚さ2cmの鉄で、屋根に大岩が落ちても潰れません。さらに奥の隠し通路から山を抜けて別の場所へ抜けられるようにもしています>
「要塞かよ……でも、隠し通路はワクワクするな……」
「できたらタブレットで一緒に行こうよ」
シャルが笑顔でそう言い、俺は了承する。するとアウラ様も拳を握って言う。
「わ、私も一緒に行きますからね!」
「そりゃもちろん。二人の屋敷だもんな」
「はい!」
「むう。……ま、でもあたし達は王族だし、なんとでもなるかな?」
「ん? 何の話だ?」
シャルが意味深な笑みを浮かべていたので聞いてみるとシャルはハッと気づいた顔で手を振っていた。
「なんでもない! それじゃリクの仕事の邪魔になるし向こうへ行きましょ」
「そうですね!」
「気を付けてなー」
<後でタブレットに行きますね>
……なるほど、サクヤが大人しい時は向こうにいっているのか。
妙なことをやらなければいいなと俺はまた穴を掘る。
水の確保は井戸を掘るとか言っていたが、みんなでやればなんとかなるかね。
とまあ、そんな調子で徐々に……本当に少しずつできることを増やしている。
畑も意外と早い段階で耕し始めたみたいだしな。種から育てるので収穫できるようになるまで近くの町か村に行くしかないけど。
順調は順調なのだが、いくつか問題点もある。
それは――
「南側に魔物が出たぞ!」
「承知した。ワシが出るぞ、三人ほどついてこい。後は拠点防衛を」
「ハッ!」
「キラーアントのようです、お気をつけて」
「問題ないわい」
――そう、魔物だ。
先住民とも言える魔物の出現頻度は現状それなりに多い。ガエイン爺さんや騎士が迎撃に出るが昼夜問わずなので交代制で対応している状況だ。
戦える人間が百人前後の騎士とヘッジ、ビッダー、イラス、シャルのみなので大勢で来られると厳しい。
まあ、それはグライアードの軍勢が来た時も同じだ。冒険者をギルドが管理して魔物を倒すという仕事が上手くいく理由が分かった気がする。
「……戦力か」
今はまだバレていないので平和的にことが進んでいるけど逐一攻められるようになると圧倒的に戦力が足りない。
それはクレイブの町で防衛線をやってわかっている。
「魔兵機《ゾルダート》相手には俺が居る。山を登ってくる機体を倒すのはそれほど難しくない。しかし対人間にはライフルが無いから厳しいんだよな……」
いわゆる飛び道具と呼ばれる兵器が欲しい。無差別に殺すというのはあまり考えたくないが、ジョンビエル達のような人間ばかりなら手足の一本はと思ってしまう。
「なにかいい方法はないか」
殺傷力が低く相手の戦力を削ぐ方法。俺はぶつぶつと言いながら穴を掘っていく。
ちなみに人が増えて土地を拡張しなければならないことを考えてクレイブの町よりも浅めにしてある。
「イラスー! あんた暇でしょ、魔兵機《ゾルダート》の腕を作るの手伝いなさい」
「うう……人使いが荒い姫……」
「ほら、働かざる者食うべからずよ」
「わ、わたしもリク様と話したいのに……」
「……ダメよ」
「ひぃ怖い……」
「なにやってんだあいつら……?」
イラスはシャルの従者みたいになっているな。何故か怖い顔を度々するのが気になるが。
「おーい、リク殿。ちょっと手伝ってくれ」
「お、ギャレットさん? オッケー」
ま、とりあえず安定するまで頑張っていきますかねえ。俺はそう思いながら腰を上げてギャレットさんの話を聞くことにした。
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