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第二章
第54話 騎士二人
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「……」
謁見の間から客室らしき部屋に移された俺達はひとまず泊まれる部屋が用意されるまで待機となった。
お通夜のような空気で誰も口を開かない。ま、頼りにしようとしていた国が救援拒否だから仕方がないけどな。
「お、お姉さま、そんなに落ち込まないで。後はあたし達でなんとかしよう? リクも居るし、師匠と協力すれば大丈夫よ!」
「シャルの言う通りだ。ダメだったなら次の手を考えるしかないって。俺達もあいつらに強襲された時はボロボロだった。何千万人も死んだ」
「何千万……!? そ、そんなに多いのリクの世界って」
「まあな。で、そこから俺達は立て直しを図った。ヴァイスの前身であるヴァッフェリーゼを約五年で起動にこぎつけ、反抗できるまでにな」
生きている限り策を練ればいい。それと魔兵機《ゾルダート》を鹵獲できているからアレを生産することも視野に入れて動く。
「……年数はかかるかもしれないが、戦争はそういうものだ。手札がない状態でいきなり反撃ができないんだ」
「リク様……はい、そうですね。本当は少しわかっていたんです。こうなることも。だけど縋りたかった……」
「お姉さま……」
困った顔で笑うアウラ様に、タブレットをテーブルに置いたシャルが抱き着いた。
自分が言われても即決ができない状況だと思っていたらしい。
「……姫様、よろしいでしょうか」
「ビッケ、どうしましたか? そういえば先ほどなにかを言いかけていましたね?」
ビッケと呼ばれた騎士が手を上げて発言の許可を求めてきた。彼はドワーフの話があった際、なにか考えていた男だ。
「姫様とリク殿は一度、砦町のイワンへ戻ると思います。申し訳ありませんが私はここで別行動を取らせていただきたいのです」
「それは構いませんが、理由を聞いても良いですか?」
するともう一人、ビッケの横に立っていた男が前へ出て口を開く。
「ハッ、私とビッケの二人でドワーフの国へ行きたいと考えています。リク殿がおっしゃったように、魔兵機《ゾルダート》が無ければ我々騎士もあまり役には立てません。であればグライアードから奪取したあれを修復すべきでしょう」
「さらに出奔した二人が操縦技術をレクチャーできます。リク殿が言っていたようにドワーフに制作を依頼し、数を増やすことも重要でしょう。私とモーリアの二人で向かいたいのですが許可をお願いします」
もう一人はモーリアと言うらしい。ビッケと共にここまでよく目にしていた騎士達だ。その二人が言うだけ言った後、後ろ手に組んで回答を待つ態勢になった。
「あたしは賛成ね。どちらにしても先の長い戦いになりそうだし」
「……」
シャルがアウラ様を見ながらそう口にし、アウラ様は目を閉じて考え始めた。
しかし、それほどの間を置かずに二人の目を見てから小さく頷いた。
「わかりました。あなた達の馬を借りれるようお願いします。それくらいなら融通を利かせていただけると思います。……ドワーフの国までここからかなりあります。二人だけの旅は厳しいですが、大丈夫でしょうか……」
「提案を許可していただきありがとうございます! 私達もエトワール王国の騎士。姫様達の苦労に比べればなんのことはありません」
「むしろお守りできずに心苦しいのですが……そこはリク殿、お願いいたします」
「ん。了解だ。死ぬんじゃないぜ、二人とも」
「もちろんです。リク殿が居なければこの提案はできませんでした、あの時の出会いに感謝します」
ビッケが笑いながら敬礼してそんなことを言う。そこでアウラ様が外にいるメイドさんへ早速馬の手配ができないか聞いていた。
さて、局地戦力ではあるけど、現状エトワール王国奪還の鍵はヴァイスが握っている。ジョンビエル達と戦った感じ、4機くらいまでならなんとかなりそうだ。
近接しかできないので機動力に分があるから広いところならなおのこといい。
プラズマダガーはあるけどエネルギーを食うから長時間戦闘は避けたい。宇宙空間の方が燃費がいいんだけどな……
ヴァッフェリーゼだったら正直ここまでの活躍は出来なかったからそこは不幸中の幸いか。
「失礼、今よろしいでしょうか」
「どうぞ」
騎士二人を労っていると、扉がノックされ声がかかった。この声は宰相らしき人か。シャルが応対して扉を開けるとやはりあの人だった。
「馬二頭の手配は問題ないそうです。大変な中、協力ができないのは心苦しいですが察していただけると……それと鍛冶師などに声をかけているので、結果が分かるまで泊まっていかれてくださいと陛下が申しておりました」
「お気遣い感謝いたします。では二日だけ待たせていただいてよろしいでしょうか。それ以降は見つかっても見つからなくても出発します」
「……承知しました」
宰相らしき人は表情を変えずに頭を下げると部屋を出て行った。アウラ様も意気消沈している場合ではないとハッキリ口にしていたな。
「では、馬の用意ができれば我々はすぐにでも」
「お願いします。あまり多くはありませんが資金です。持って行ってください」
「恐れ多いですよ!?」
「いえ、今の私達には次に繋がることの方が必要です。それを成してくれる二人に渡すのは当然でしょう」
「……必ずや使命を……」
アウラ様の前で膝をついてお金の入った袋を受け取るビッケとモーリア。
程なくして彼等は出発し、俺達は少しの間休息をすることになった。
鍛冶師か……見つかるといいがなあ……
謁見の間から客室らしき部屋に移された俺達はひとまず泊まれる部屋が用意されるまで待機となった。
お通夜のような空気で誰も口を開かない。ま、頼りにしようとしていた国が救援拒否だから仕方がないけどな。
「お、お姉さま、そんなに落ち込まないで。後はあたし達でなんとかしよう? リクも居るし、師匠と協力すれば大丈夫よ!」
「シャルの言う通りだ。ダメだったなら次の手を考えるしかないって。俺達もあいつらに強襲された時はボロボロだった。何千万人も死んだ」
「何千万……!? そ、そんなに多いのリクの世界って」
「まあな。で、そこから俺達は立て直しを図った。ヴァイスの前身であるヴァッフェリーゼを約五年で起動にこぎつけ、反抗できるまでにな」
生きている限り策を練ればいい。それと魔兵機《ゾルダート》を鹵獲できているからアレを生産することも視野に入れて動く。
「……年数はかかるかもしれないが、戦争はそういうものだ。手札がない状態でいきなり反撃ができないんだ」
「リク様……はい、そうですね。本当は少しわかっていたんです。こうなることも。だけど縋りたかった……」
「お姉さま……」
困った顔で笑うアウラ様に、タブレットをテーブルに置いたシャルが抱き着いた。
自分が言われても即決ができない状況だと思っていたらしい。
「……姫様、よろしいでしょうか」
「ビッケ、どうしましたか? そういえば先ほどなにかを言いかけていましたね?」
ビッケと呼ばれた騎士が手を上げて発言の許可を求めてきた。彼はドワーフの話があった際、なにか考えていた男だ。
「姫様とリク殿は一度、砦町のイワンへ戻ると思います。申し訳ありませんが私はここで別行動を取らせていただきたいのです」
「それは構いませんが、理由を聞いても良いですか?」
するともう一人、ビッケの横に立っていた男が前へ出て口を開く。
「ハッ、私とビッケの二人でドワーフの国へ行きたいと考えています。リク殿がおっしゃったように、魔兵機《ゾルダート》が無ければ我々騎士もあまり役には立てません。であればグライアードから奪取したあれを修復すべきでしょう」
「さらに出奔した二人が操縦技術をレクチャーできます。リク殿が言っていたようにドワーフに制作を依頼し、数を増やすことも重要でしょう。私とモーリアの二人で向かいたいのですが許可をお願いします」
もう一人はモーリアと言うらしい。ビッケと共にここまでよく目にしていた騎士達だ。その二人が言うだけ言った後、後ろ手に組んで回答を待つ態勢になった。
「あたしは賛成ね。どちらにしても先の長い戦いになりそうだし」
「……」
シャルがアウラ様を見ながらそう口にし、アウラ様は目を閉じて考え始めた。
しかし、それほどの間を置かずに二人の目を見てから小さく頷いた。
「わかりました。あなた達の馬を借りれるようお願いします。それくらいなら融通を利かせていただけると思います。……ドワーフの国までここからかなりあります。二人だけの旅は厳しいですが、大丈夫でしょうか……」
「提案を許可していただきありがとうございます! 私達もエトワール王国の騎士。姫様達の苦労に比べればなんのことはありません」
「むしろお守りできずに心苦しいのですが……そこはリク殿、お願いいたします」
「ん。了解だ。死ぬんじゃないぜ、二人とも」
「もちろんです。リク殿が居なければこの提案はできませんでした、あの時の出会いに感謝します」
ビッケが笑いながら敬礼してそんなことを言う。そこでアウラ様が外にいるメイドさんへ早速馬の手配ができないか聞いていた。
さて、局地戦力ではあるけど、現状エトワール王国奪還の鍵はヴァイスが握っている。ジョンビエル達と戦った感じ、4機くらいまでならなんとかなりそうだ。
近接しかできないので機動力に分があるから広いところならなおのこといい。
プラズマダガーはあるけどエネルギーを食うから長時間戦闘は避けたい。宇宙空間の方が燃費がいいんだけどな……
ヴァッフェリーゼだったら正直ここまでの活躍は出来なかったからそこは不幸中の幸いか。
「失礼、今よろしいでしょうか」
「どうぞ」
騎士二人を労っていると、扉がノックされ声がかかった。この声は宰相らしき人か。シャルが応対して扉を開けるとやはりあの人だった。
「馬二頭の手配は問題ないそうです。大変な中、協力ができないのは心苦しいですが察していただけると……それと鍛冶師などに声をかけているので、結果が分かるまで泊まっていかれてくださいと陛下が申しておりました」
「お気遣い感謝いたします。では二日だけ待たせていただいてよろしいでしょうか。それ以降は見つかっても見つからなくても出発します」
「……承知しました」
宰相らしき人は表情を変えずに頭を下げると部屋を出て行った。アウラ様も意気消沈している場合ではないとハッキリ口にしていたな。
「では、馬の用意ができれば我々はすぐにでも」
「お願いします。あまり多くはありませんが資金です。持って行ってください」
「恐れ多いですよ!?」
「いえ、今の私達には次に繋がることの方が必要です。それを成してくれる二人に渡すのは当然でしょう」
「……必ずや使命を……」
アウラ様の前で膝をついてお金の入った袋を受け取るビッケとモーリア。
程なくして彼等は出発し、俺達は少しの間休息をすることになった。
鍛冶師か……見つかるといいがなあ……
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