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第二章
第53話 応じられない要求
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「ロイードよ、彼女達には悪いがそれはできないのだ」
「なぜです……!」
「友好国ではあるが、エトワール王国は奪われた。そこでヘルブスト国が救援をしたとなればどうだ? 次は我が国が狙われる」
「それは……」
救援の拒否をしたロイッツァ国王陛下。
思ったとおり、次の標的にされる危惧をしていたようだ。さらに言葉を続ける。
「……人間同士の戦いならまだ話を聞けるのだが、魔兵機《ゾルダート》なる巨人はあまりにも強力すぎる。勝ち目の薄い戦いに民を危険に晒すわけにはいかない」
「う……」
実際ロイッツァ国王の言うことは正しい。
未知の戦力である魔兵機《ゾルダート》相手に奇襲とはいえほぼなにも出来ずに敗北しているのだから迎え撃ったとしても大量の機体を投入されれば危うい。
士気を削ぐのも悪いし、救援してくれる可能性もあったからなにも言わずにここまで来たけど結果はおおよそ予測通りだったと言える。
それはそうなのだが――
「し、しかしこのままではエトワール王国の民がどうなるかわかりません……戦いに参加しないまでも、避難民の受け入れはできないでしょうか……?」
「……心苦しいが、協力をしていると取られたらどうなるかわからない」
「そんな……! なんとか国民だけでも……」
アウラ様とシャルは懇願するが、ロイッツァ国王は首を振った。その瞬間、二人の顔が青ざめる。
――国のトップとしては正解だ。
自国民を危険に晒す奴はいないだろう。腰抜けと言われても犠牲を出さない施策は問題ないと言える。
これを決定できたのは、先に伝令を出した人達のおかげだろう。急に言われたら感情的に手助けをする可能性がある。
しかし、World Defense Mechanismで兵士としてやっていた俺としては一応、口を挟んでおきたい。
「……無礼を承知で一言だけいいですか?」
「リ、リク?」
「おう!? ……こ、小人?」
「誰ですか?」
「申し遅れました。俺……私は神代凌空といいます。このような姿で申し訳ございません」
驚くロイッツァ国王とロイード王子に頭を下げて自己紹介をする。そのまま続けて考えを述べることにした。
「私は外にあるヴァイスという魔兵機《ゾルダート》に似た兵器のパイロット……操縦者です。ここまで彼女達を護衛してきました」
「おお……! あなたが……!」
「はい。そして私はこの世界の人間ではありません」
「「なんと……!?」」
「リク様、それは……」
驚く二人。
困惑気味のアウラ様が俺になにかを言おうとするが、それを制止して続けた。
「私の世界ではこういった地上ではなく、別の星からの侵略を受けて戦争をしていました。いや、今でもやっていると思います」
「別の星……」
「あたしも初めて聞いたんだけど?」
「ガエイン爺さんには話していたけどな。まあ、面白い話でもないし」
シャルが口をとがらせていたが、解決もしないしあえて話さなかったと言っておく。
「星……あの天にあるあれに別の人間がいるというのか?」
「そうです。それで地球という星が私の故郷ですが、別の生命体に襲われたわけですね。そこで地球にある国家は総動員し、協力して対応に当たっています」
「それは理解しました。ですが、それとアウラ様達となにか関係が……?」
「まだ続きがあります。ちょっと立場は違いますが、力を持っている相手は一つの目的を達しただけでことが済むだろうか? ということです」
「……」
そこでロイッツァ国王が俺の言いたいことに気づいたらしく、片眉が上がる。
「エトワール王国への進撃理由がわからないのでなんとも言えませんが、ここまであっさりと占領できたということは他国にも同じことができるということ――」
「……だから協力して討たねば、エトワール王国に与するまでもなく襲われる。そう言いたいのだな」
「ご明察の通りです」
「リク……!」
「リク様!」
意図を理解したロイッツァ国王に頷くと、救援の援護を促す話と思ったアウラ様とシャルが歓喜の声を上げる。
「リク殿の言いたいことはわかる。だが、魔兵機《ゾルダート》なる兵器と戦う愚策を今ここで決断するわけにはいかない。私とて心苦しいが分かって欲しい」
「ああ……」
「お姉さま……!? どうしてもだめなのかしら……」
やはり無理だと返してきたロイッツァ国王の言葉にアウラ様が倒れそうになる。まあ、それでも今後に期待できそうな話にはなった気がする。
後もう一芝居打っておくか?
「仕方ないさシャル。自国民を守る決断ってのもトップには必要だ。お前も見た通り、俺のヴァイスは魔兵機《ゾルダート》よりも数段上の機体だ。なんとか頑張ってみようじゃないか」
「リクぅ……」
「俺の世界の技術レベルは高い。腕のいい技師さえいれば鹵獲した魔兵機《ゾルダート》を使えるようにできるはず。年数はかかるかもしれないがそこから生産も可能になるかもしれないだろ」
「……」
半ば泣きそうな顔で俺に目を向けるシャルにそう言ってやる。慰めの意味もあるが、もう一つ。
「……ふむ、我々としても自国を防衛するため魔兵機《ゾルダート》という兵器がどんなものか確認する必要はあるか。対抗策を考えねばならない。ガーディン、表にあるリク殿のヴァイスのことを鍛冶師たちに伝えてくれ。興味を持つ技師が居ればクレイブの町に派遣してどのようなものか確認させるのだ」
「よろしいので?」
「うむ。問題ない。鍛冶師は旅の途中でクレイブの町に行くのだからな?」
ロイッツァ国王はそう言って指示を出した。だいたいだが、双方にとっての落としどころができたという感じか。
「承知しました」
「父上……?」
「ありがとうございます。陛下」
困惑するロイード王子。そこへ俺が頭を下げるとロイッツァ国王はため息を吐きながら肘をつく。
「協力はできんが、こちらの利になる行動はさせてもらう」
「それでいいと思います」
「まったく……異世界の人間とは……謁見はこれで終了だ。アウラ殿とシャルル殿はこの国に残ってもらっても構わないが?」
「……いえ、私の国が窮地なのです。戻らないということは有り得ません。お話を聞いてくださいましてありがとうございます。お気遣い、感謝いたします」
「今日は休んでいくといい。女官とメイドに案内を頼む」
「ハッ! ではアウラ様、ひとまずこちらへ――」
ヘルブスト国の騎士に案内され、俺達は謁見の間から退場する。
「なぜです……!」
「友好国ではあるが、エトワール王国は奪われた。そこでヘルブスト国が救援をしたとなればどうだ? 次は我が国が狙われる」
「それは……」
救援の拒否をしたロイッツァ国王陛下。
思ったとおり、次の標的にされる危惧をしていたようだ。さらに言葉を続ける。
「……人間同士の戦いならまだ話を聞けるのだが、魔兵機《ゾルダート》なる巨人はあまりにも強力すぎる。勝ち目の薄い戦いに民を危険に晒すわけにはいかない」
「う……」
実際ロイッツァ国王の言うことは正しい。
未知の戦力である魔兵機《ゾルダート》相手に奇襲とはいえほぼなにも出来ずに敗北しているのだから迎え撃ったとしても大量の機体を投入されれば危うい。
士気を削ぐのも悪いし、救援してくれる可能性もあったからなにも言わずにここまで来たけど結果はおおよそ予測通りだったと言える。
それはそうなのだが――
「し、しかしこのままではエトワール王国の民がどうなるかわかりません……戦いに参加しないまでも、避難民の受け入れはできないでしょうか……?」
「……心苦しいが、協力をしていると取られたらどうなるかわからない」
「そんな……! なんとか国民だけでも……」
アウラ様とシャルは懇願するが、ロイッツァ国王は首を振った。その瞬間、二人の顔が青ざめる。
――国のトップとしては正解だ。
自国民を危険に晒す奴はいないだろう。腰抜けと言われても犠牲を出さない施策は問題ないと言える。
これを決定できたのは、先に伝令を出した人達のおかげだろう。急に言われたら感情的に手助けをする可能性がある。
しかし、World Defense Mechanismで兵士としてやっていた俺としては一応、口を挟んでおきたい。
「……無礼を承知で一言だけいいですか?」
「リ、リク?」
「おう!? ……こ、小人?」
「誰ですか?」
「申し遅れました。俺……私は神代凌空といいます。このような姿で申し訳ございません」
驚くロイッツァ国王とロイード王子に頭を下げて自己紹介をする。そのまま続けて考えを述べることにした。
「私は外にあるヴァイスという魔兵機《ゾルダート》に似た兵器のパイロット……操縦者です。ここまで彼女達を護衛してきました」
「おお……! あなたが……!」
「はい。そして私はこの世界の人間ではありません」
「「なんと……!?」」
「リク様、それは……」
驚く二人。
困惑気味のアウラ様が俺になにかを言おうとするが、それを制止して続けた。
「私の世界ではこういった地上ではなく、別の星からの侵略を受けて戦争をしていました。いや、今でもやっていると思います」
「別の星……」
「あたしも初めて聞いたんだけど?」
「ガエイン爺さんには話していたけどな。まあ、面白い話でもないし」
シャルが口をとがらせていたが、解決もしないしあえて話さなかったと言っておく。
「星……あの天にあるあれに別の人間がいるというのか?」
「そうです。それで地球という星が私の故郷ですが、別の生命体に襲われたわけですね。そこで地球にある国家は総動員し、協力して対応に当たっています」
「それは理解しました。ですが、それとアウラ様達となにか関係が……?」
「まだ続きがあります。ちょっと立場は違いますが、力を持っている相手は一つの目的を達しただけでことが済むだろうか? ということです」
「……」
そこでロイッツァ国王が俺の言いたいことに気づいたらしく、片眉が上がる。
「エトワール王国への進撃理由がわからないのでなんとも言えませんが、ここまであっさりと占領できたということは他国にも同じことができるということ――」
「……だから協力して討たねば、エトワール王国に与するまでもなく襲われる。そう言いたいのだな」
「ご明察の通りです」
「リク……!」
「リク様!」
意図を理解したロイッツァ国王に頷くと、救援の援護を促す話と思ったアウラ様とシャルが歓喜の声を上げる。
「リク殿の言いたいことはわかる。だが、魔兵機《ゾルダート》なる兵器と戦う愚策を今ここで決断するわけにはいかない。私とて心苦しいが分かって欲しい」
「ああ……」
「お姉さま……!? どうしてもだめなのかしら……」
やはり無理だと返してきたロイッツァ国王の言葉にアウラ様が倒れそうになる。まあ、それでも今後に期待できそうな話にはなった気がする。
後もう一芝居打っておくか?
「仕方ないさシャル。自国民を守る決断ってのもトップには必要だ。お前も見た通り、俺のヴァイスは魔兵機《ゾルダート》よりも数段上の機体だ。なんとか頑張ってみようじゃないか」
「リクぅ……」
「俺の世界の技術レベルは高い。腕のいい技師さえいれば鹵獲した魔兵機《ゾルダート》を使えるようにできるはず。年数はかかるかもしれないがそこから生産も可能になるかもしれないだろ」
「……」
半ば泣きそうな顔で俺に目を向けるシャルにそう言ってやる。慰めの意味もあるが、もう一つ。
「……ふむ、我々としても自国を防衛するため魔兵機《ゾルダート》という兵器がどんなものか確認する必要はあるか。対抗策を考えねばならない。ガーディン、表にあるリク殿のヴァイスのことを鍛冶師たちに伝えてくれ。興味を持つ技師が居ればクレイブの町に派遣してどのようなものか確認させるのだ」
「よろしいので?」
「うむ。問題ない。鍛冶師は旅の途中でクレイブの町に行くのだからな?」
ロイッツァ国王はそう言って指示を出した。だいたいだが、双方にとっての落としどころができたという感じか。
「承知しました」
「父上……?」
「ありがとうございます。陛下」
困惑するロイード王子。そこへ俺が頭を下げるとロイッツァ国王はため息を吐きながら肘をつく。
「協力はできんが、こちらの利になる行動はさせてもらう」
「それでいいと思います」
「まったく……異世界の人間とは……謁見はこれで終了だ。アウラ殿とシャルル殿はこの国に残ってもらっても構わないが?」
「……いえ、私の国が窮地なのです。戻らないということは有り得ません。お話を聞いてくださいましてありがとうございます。お気遣い、感謝いたします」
「今日は休んでいくといい。女官とメイドに案内を頼む」
「ハッ! ではアウラ様、ひとまずこちらへ――」
ヘルブスト国の騎士に案内され、俺達は謁見の間から退場する。
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