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第二章
第52話 謁見
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「ああ、リク様! お身体が治ったのですか? でも小さい……」
「意識だけこっちにもってきた感じだな。このタブレットはなくさないでくれよ?」
「凄い魔道具よねえ」
「魔道具?」
聞きなれない言葉が出てきたので尋ねてみると、魔力で動く便利道具とのことらしい。例えば料理をする際、火をつけるがコンロみたいなものが存在するとか。
そんな話をしながら馬車に乗り込み、アウラ様とシャルが並んで座る。
座席は対面式で、前には護衛であるエトワール王国の騎士と先ほどの宰相らしき人物が並んでいた。
「とりあえずこの石板があればリクとお出かけができるわ。絶対になくさないって!」
「ちょっと私にも貸してくださいシャル」
「ま、まだ、ダメ!」
なぜか不穏な表情でタブレットを貸してくれと言うアウラ様から慌てて離れるシャル。どっちでもいいんだけどな。
すると前に座っているヘルブストの人間が困惑気味に口を開く。
「巨人の次は小人ですか……おとぎ話の住人が本当に現れるとは、まったく驚きですな」
「本体はヴァイスの中にあるけどな。そういうのは居ないんだな。エルフとか居るのか?」
「ほう、ご存じですか。他にも異種族がいますが、概ね自分達でコロニーを形成しています。稀に姿を見かけることがありますがそれほど人里に来る者はおりませんな」
ということらしい。
魔道具もそうだけど、エルフも興味があるな。マンガとかでしか見たこと無いし。
そこでふと思い当たることがあったので聞いてみる。
「ドワーフってのは居るのか?」
「ええ、居ますよ」
「居るのか……ふむ」
「なにか気になるの?」
俺が顎に手を当てて考えているとシャルが覗き込んで来た。そこで考えを述べてみる。
「俺の知っているドワーフは鍛冶に強い。もしかしたら魔兵機《ゾルダート》をなんとかしてくれるんじゃないかと思ってな」
「……! 確かにそれは名案ですね!」
「ちょ!? どさくさに紛れて石板を持って行こうとしないでよお姉さま!?」
「私もリク様を見たいんです……!」
本音が出ているぞアウラ様……
俺の顔なんて普通だから見ても面白くないと思うけどな?
「そうか、それなら……」
「? どうしました?」
お姫様二人が争っていると、前に座っていた騎士がポツリと呟く。アウラ様がそれに気づき声をかけると、
「あ、いえ。謁見が終わってからお話します」
「そうですか。では後程」
「……」
謁見と聞いて一瞬、渋い顔を見せる宰相に気付く俺。
対応は真摯だが、あまり歓迎されている感じはしないかと俺は窓の外に目を向けながらそう思っていた。
「ではこちらへ」
「ありがとうございます」
程なくして馬車は大きな城へ入っていき、城内へと案内された。
入り口はホールのようになっていて、奥の方に大きな扉が見えた。
周囲に階段と別の建物に行くためであろう廊下があり、ここはあくまでも謁見のためにある施設って感じがするな。
「エトワール王国のアウラ様とシャルル様がお見えになられました」
「案内ご苦労。扉を開けてくれ」
宰相さんがノックをして聞くと、中からくぐもった声で返事があった。厚みのある扉かと分析していると扉が開かれていく。
「よく来てくれた」
ゲームなどでよくある絨毯。その先には三段ほどの階段があり、二つの玉座には厳つい顔の男と、端正な顔立ちの男が座っていた。
アウラ様とシャルが中央付近まで案内されたところで、国王であろう厳つい男が口を開く。
「久しいですな、アウラ王女にシャルル王女。大きくなられた」
「お久しぶりです、ロイッツァ王」
「お久しぶりです」
わずかに微笑む国王に挨拶をする二人。同行している騎士は膝をついて頭を下げていた。そこで国王の隣に座る若い男が喋り出した。
「お二人とも美しくなられましたね! 最後に会ったのは三年前のエトワール王国で行われた舞踏会でしたか」
「ロイード王子も息災でなによりですわ」
「あの時は――」
「ロイード、今は昔を振り返っている場合ではない」
「あ、はい……申し訳ありません父上」
国王に窘められて小さくなるロイード王子。久しぶりの再会ならやや口が軽くなるのもわかるけどな。しかし国王様の言う通り、今はその時じゃない。
「話は少し伺っている。大変なことになってしまったな」
「はい……両親も生死不明で、着の身着のまま脱出してきました」
「うむ。グライアードめ、なにを考えているのか……ともあれ、お二人でも無事でなによりだ」
「ありがとうございます。それで――」
労いは十分受け取り、先の話をしようとするアウラ様。しかしロイッツァ国王はそれを遮り、難しい顔で言う。
「アウラ姫、申し訳ないがヘルブストからの救援は……できない」
「「!?」」
「……」
アウラ様とシャルはその言葉を聞いて驚愕の表情を見せた。俺はというと、有り得なくない話だったため特に気にならない。
だが、どうしてそう結論づけたのかというのは気になるところだ。
「父上! どうしてそのようなことを! エトワール王国とは友好国。こういう時にこそ助け合いをすべきでは?」
そして俺の聞きたいことを王子が口にしてくれた。さて、答えは……どうだ?
すると少し間を置いてからロイッツァ国王は口を開く。
「意識だけこっちにもってきた感じだな。このタブレットはなくさないでくれよ?」
「凄い魔道具よねえ」
「魔道具?」
聞きなれない言葉が出てきたので尋ねてみると、魔力で動く便利道具とのことらしい。例えば料理をする際、火をつけるがコンロみたいなものが存在するとか。
そんな話をしながら馬車に乗り込み、アウラ様とシャルが並んで座る。
座席は対面式で、前には護衛であるエトワール王国の騎士と先ほどの宰相らしき人物が並んでいた。
「とりあえずこの石板があればリクとお出かけができるわ。絶対になくさないって!」
「ちょっと私にも貸してくださいシャル」
「ま、まだ、ダメ!」
なぜか不穏な表情でタブレットを貸してくれと言うアウラ様から慌てて離れるシャル。どっちでもいいんだけどな。
すると前に座っているヘルブストの人間が困惑気味に口を開く。
「巨人の次は小人ですか……おとぎ話の住人が本当に現れるとは、まったく驚きですな」
「本体はヴァイスの中にあるけどな。そういうのは居ないんだな。エルフとか居るのか?」
「ほう、ご存じですか。他にも異種族がいますが、概ね自分達でコロニーを形成しています。稀に姿を見かけることがありますがそれほど人里に来る者はおりませんな」
ということらしい。
魔道具もそうだけど、エルフも興味があるな。マンガとかでしか見たこと無いし。
そこでふと思い当たることがあったので聞いてみる。
「ドワーフってのは居るのか?」
「ええ、居ますよ」
「居るのか……ふむ」
「なにか気になるの?」
俺が顎に手を当てて考えているとシャルが覗き込んで来た。そこで考えを述べてみる。
「俺の知っているドワーフは鍛冶に強い。もしかしたら魔兵機《ゾルダート》をなんとかしてくれるんじゃないかと思ってな」
「……! 確かにそれは名案ですね!」
「ちょ!? どさくさに紛れて石板を持って行こうとしないでよお姉さま!?」
「私もリク様を見たいんです……!」
本音が出ているぞアウラ様……
俺の顔なんて普通だから見ても面白くないと思うけどな?
「そうか、それなら……」
「? どうしました?」
お姫様二人が争っていると、前に座っていた騎士がポツリと呟く。アウラ様がそれに気づき声をかけると、
「あ、いえ。謁見が終わってからお話します」
「そうですか。では後程」
「……」
謁見と聞いて一瞬、渋い顔を見せる宰相に気付く俺。
対応は真摯だが、あまり歓迎されている感じはしないかと俺は窓の外に目を向けながらそう思っていた。
「ではこちらへ」
「ありがとうございます」
程なくして馬車は大きな城へ入っていき、城内へと案内された。
入り口はホールのようになっていて、奥の方に大きな扉が見えた。
周囲に階段と別の建物に行くためであろう廊下があり、ここはあくまでも謁見のためにある施設って感じがするな。
「エトワール王国のアウラ様とシャルル様がお見えになられました」
「案内ご苦労。扉を開けてくれ」
宰相さんがノックをして聞くと、中からくぐもった声で返事があった。厚みのある扉かと分析していると扉が開かれていく。
「よく来てくれた」
ゲームなどでよくある絨毯。その先には三段ほどの階段があり、二つの玉座には厳つい顔の男と、端正な顔立ちの男が座っていた。
アウラ様とシャルが中央付近まで案内されたところで、国王であろう厳つい男が口を開く。
「久しいですな、アウラ王女にシャルル王女。大きくなられた」
「お久しぶりです、ロイッツァ王」
「お久しぶりです」
わずかに微笑む国王に挨拶をする二人。同行している騎士は膝をついて頭を下げていた。そこで国王の隣に座る若い男が喋り出した。
「お二人とも美しくなられましたね! 最後に会ったのは三年前のエトワール王国で行われた舞踏会でしたか」
「ロイード王子も息災でなによりですわ」
「あの時は――」
「ロイード、今は昔を振り返っている場合ではない」
「あ、はい……申し訳ありません父上」
国王に窘められて小さくなるロイード王子。久しぶりの再会ならやや口が軽くなるのもわかるけどな。しかし国王様の言う通り、今はその時じゃない。
「話は少し伺っている。大変なことになってしまったな」
「はい……両親も生死不明で、着の身着のまま脱出してきました」
「うむ。グライアードめ、なにを考えているのか……ともあれ、お二人でも無事でなによりだ」
「ありがとうございます。それで――」
労いは十分受け取り、先の話をしようとするアウラ様。しかしロイッツァ国王はそれを遮り、難しい顔で言う。
「アウラ姫、申し訳ないがヘルブストからの救援は……できない」
「「!?」」
「……」
アウラ様とシャルはその言葉を聞いて驚愕の表情を見せた。俺はというと、有り得なくない話だったため特に気にならない。
だが、どうしてそう結論づけたのかというのは気になるところだ。
「父上! どうしてそのようなことを! エトワール王国とは友好国。こういう時にこそ助け合いをすべきでは?」
そして俺の聞きたいことを王子が口にしてくれた。さて、答えは……どうだ?
すると少し間を置いてからロイッツァ国王は口を開く。
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