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第一章

第34話 戦闘開始

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 レーダーを注視しながら待つ。
 予測通り深夜まで奴等は動かず、俺達は静かにその時まで警戒をしていた。

 そして――

<警告。敵部隊の移動を確認>
「……来たか」
「よし、ワシは下で騎士共と遊んでやるわい」
「任せるぜ。死ぬなよ?」
「姫様達を無事にヘルブスト国へ連れて行くまで死ねるものか」

 そういってコクピットから降りると地面に寝かせていた大剣を手に暗闇へと消えていく。崖が多いので月明かりが届かない場所はいくつもあるので待ち伏せには最適だ。

「さて、と」
<どうしますか? 距離、約一万>

 まだ10キロもあるか。
 そう思って俺もレーダーを確認すると進軍スピードが一気に上がっていた。馬の全速力ってところだろう。
 それとでかいマーカーは魔兵機《ゾルダート》で数は3機。先頭を走っているな。

<意外と速いですね。銃火器のない世界であれほどの兵器があるのは少し不自然にも見えますが>
「元々市街地を攻撃する目的より、開けた場所で戦うように作っているんだろうな。それと不自然ってのは俺も同感だ。あれだけ異質なんだよな」

 人のことは言えないが、どうにも技術系等が別だと思う。
 まあ、それを考えても仕方がないので俺は集めていた岩を手に持って前進する。

<距離4千>
「ギリギリまで引き付けるぞ……」

 町へ入るための道は今俺がいる街道一つしかない。幅は機動兵器三機は並んで歩けるほど広いがここを抑えておけば抜けていくやつもわかる。

「……」
<距離千>

 そろそろだな……俺は大きな岩を手を両手に持って立ち上がる。視界を赤外線モードに変えて(やり方を教わった)部隊が見えたところで――

<距離五百>
「行くぜぇぇぇぇぇぇ!!」

 ――岩を投げつけた。

「そらそら! ここから先には行かせねえぜ!」
「チッ、待ち伏せか! 騎士は魔兵機《ゾルダート》の後ろに隠れろ! やり過ごす!」
「うおおお!? な、なんだ!? ぎゃぁ!?」
「い、岩がとんで――」
「は、端に寄れ!」
「おい、ディッター、イラス、並走するぞ」
「オッケーだよ」
「了解」

 先制攻撃はまずまずか。
 魔兵機《ゾルダート》の脇を抜けるように騎士達を狙ってぶん投げたところ、騎士がが馬ごと吹き飛んでいく。二投目で驚いて立ち止まった奴等に直撃し、数十人が落馬していた。
 ただ、意外だったのは二投目の時点で陣形を直し、三機の魔兵機《ゾルダート》が並んで騎士達を護衛するように動いたことだ。

<あの粗暴な男でしょうか?>
「どうかな。こっちとしては誰でも構わねえ。倒すまでだ!」

 さらに投石を進めていく。
 ひと際でかい岩を抱えて今度は魔兵機《ゾルダート》目掛けて投げつけた。

「野郎、見つけたぜ! うお……!?」
「ここは私が!」

 今の声はジョンビエルってやつか。やはり追ってきたな。そして投げた大岩は右端の巨大なハンマー型武器を持った魔兵機《ゾルダート》に粉々にされた。

「わああ!?」
「狼狽えるな。大きいのを食らうよりましだろう? あれがエトワール王国の魔兵機《ゾルダート》か」
「作戦は変えねえぞ」
「ああ」

 騎士達に指示ができるよう声は外に漏れている。よく見れば一機、頭部デザインが違う魔兵機《ゾルダート》が見える。
 そいつから優男って感じの声が聞こえて来た。この前とは違う奴が来たみたいだな?

<なにか企てているようですが>
「気にするな。どうせこっちはこれしかできん! くらえ!」
「おっと」
「受け止めた……!」

 隊長機っぽいので優先的に狙ったが受け止め投げ返してきた。俺はその岩を拳で砕くと迎え撃つためプラズマダガーを抜いた。

「噂の光の剣か。エトワールの魔兵機《ゾルダート》はどうやら私と戦うらしい」
「仕方ねえ、今回は譲るぜ。てめえがやられたら面倒だちゃんと勝てよ」
「はいはい、行ってらっしゃい。……では、グライアード王国『蒼の牙ブルーファング』隊、隊長ディッター・オーメルがお相手させてもらう」
「なに……!?」

 俺が構えた瞬間、頭部の意匠が違う機体が一気に突っ込んで来た。他のと比べて足が速い!

「はぁ!」
「なんの!」

 武器は長剣と盾。騎士らしいといえばその通りか。振り下ろされた一撃を回避し、残り二機に備えようとした俺だが――

「さ、行きたまえ」
「じゃあな、よくわからねえ魔兵機《ゾルダート》」
「なんだと……!? ま、待ちやがれ!」
「君の相手は私だよ」
「チィ……!」

 前回の戦闘で俺に圧倒されたことを考慮して三機ともこっちへくると思ったが、ディッターと名乗った隊長機以外の二機は横を通り抜けて町へと向かった。
 止めようとするがディッターが俺に襲い掛かってくる。
 長剣とプラズマダガーがぶつかりバヂン! と、金属音か電磁音かわからない音と閃光が走る。

「とっとと倒させてもらうぜ」
「できるかな? ……っと」
「よく動く!」
「それはこっちの言葉だけどね……!」

 鍔迫り合い状態でディッターの機体へ膝蹴りを繰り出すとバックステップで回避する。それはそれとして俺は足を戻しながら、足元を抜けようとする騎士をついでに蹴っておく。

「うわぁぁぁぁ!?」
「ぐはっ!?」
「やるね」
「あんたもな。だけど町を守るのが先だ、構っている暇はない!」

 距離を取れたのでバックステップをしてブースターを使ってジョンビエル達を追いかけようとした。するとディッターは一足飛びで攻撃をしてきた。

<足が強化されているタイプのようですね。その代わり装甲が薄いと考えられます>
「邪魔すんな!」
「エトワール王国の民はこちらで管理するんだ、邪魔をしているのはそっちだろうに。負けた国は大人しく従えばいい」
「言ったな? ならここではお前が負ける番だ……! 覚悟しやがれ!」
「うお……」

 勝手に攻撃して負けたなどととぬかしやがったな? メビウスと同じだ。お前達は潰す……!
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