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第一章
第26話 指標
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次の町で防衛網を張り足止めをする作戦に難色を示すアウラ様。
そこでガエイン爺さんが手を上げて口を開いた。
「国境まではまだかなりある。魔物の襲撃がないという保証もない。ゲイズタートルクラスが出てくるとも限らんことを考えるとリクの強さは必要だ」
「でも俺が居ないと魔兵機《ゾルダート》の相手は無理だろ?」
「……その通りじゃ。それが出来ていれば逃げる必要もなかった。ワシでも四台しか倒せなかったしのう」
それでも四台墜としたのか……。恐ろしい爺さんだ。それはともかく、それだけ強ければアウラ様の護衛についていてほしい。
「なので、全ての騎士と姫様はヘルブスト国へ。ワシとリクで迎え撃つ。騎士は渓谷で罠を張るのでそう簡単に町へはいけまい。来ることが分かっていれば防衛は可能じゃ」
「……ガエイン殿だけに押し付けるのは……。いえ、恐れながら進言します。むしろガエイン殿が護衛について我々がここの残るべきかと思います」
話に騎士の一人が加わりガエイン爺さんへ告げる。ここは判断が難しいところだ。
敵が先回りしていた場合、守り切れるかという問題がある。
蓋を開けないと分からない部分だが、ガエイン爺さんの強さを考えるとその選択はわかるな。
「んー、でもあたしはみんなで町に残った方がいいと思うなあ」
「む。なぜじゃ、シャル」
「騎士達が弱くないのはあたしも良く知っているわ。だけど、魔兵機《ゾルダート》に追手がどっちに来るかはわからないじゃない?」
だから部隊を分けるよりここで全員協力してでも、撃退しておく方がいいとシャルは言う。
「しかし救援を呼ばないと国はまずいだろ」
「急ぐにしても不安定要素を抱えて移動するよりはいいかなって。今は目の前の敵をなんとかした方が良くない?」
「ふむ」
「そ、そうです! シャルの言う通りです!」
急がば回れ、という感じだな。シャルが考えているのはプランとして悪くないし考えなかったわけじゃない。
「失敗した時は捕まってなにされるか分からないぞ?」
「その時はリクの『こくぴっと』にお姉さまを入れて逃げてよ」
そう来たか。
シャルは思っていたより無理筋を通すつもりだな。
<どうしますか? 一見、無茶な気もしますが>
そこで俺にだけ聞こえるようサクヤが尋ねてきた。
「だな。だけどシャルの考えの根本はあくまでも救援を呼ぶことに特化している。勝てれば良しでそれを確信している。だけど、万が一失敗したら足手まといである自分たちを捨てて救援に走れってことだろう」
<そうですね。彼女の目を見ればそんなことを考えているのだろうと分かります>
不安要素を抱えるよりはいっそ……か。ガエイン爺さんの弟子ならあり得るかもしれん。足止めを俺と二人だけでやろうとしているくらいだしな。
「リク様、ガエイン。シャルの案でいきましょう。私達はここで倒れるわけにはいきませんが、皆が負けるとも思えません。エトワール王国にまだ牙があることを知らしめてやりましょう」
「ま、リクには悪いけどね。元々グライアード王国とは関係ないんだし」
「そう、ですね……」
「なにかの縁だ。それは構わないさ」
ここで見捨てる方が苦しいからな。
そう思っていると、町人達から大きな声が上がった。
「ま、魔物が来ているぞ……!?」
「ポイズンリザードだ! 子供たちを荷車へ!」
「この水辺はあいつらも使っていたか」
見ると3メートルくらいあるトカゲ型の生き物が走り寄ってきていた。毒ってつくくらいだから危険なんだろう。人間を食いそうな口をしていてコモドドラゴンみたいである。
蹴散らしておくかと思った瞬間、騎士達が一斉にポイズンリザード達へ向かっていった。
「はああああ!」
「爪に気をつけろ! 槍で動きを封じて横から叩き斬れ!」
「おお、さすが……!」
「ウチの騎士団は統率が取れているからのう。即座に各自の強みを活かした陣形になっておる」
「俺達もヴァイスでこういうのをやっていたから分かるよ。お、切れ味がいい武器を使ってるな」
「ふふん、ウチはいい鉱石が採れるのよ。だから武器防具の性能は折り紙付きってやつね!」
「じゃが、それを狙っておるのもグライアード王国じゃ。まあ、加工できる職人はそう多くない」
そういえばそんなことを言っていたな。制圧してそれを輸出して金をというなら十分侵略理由になる。問題はその功績を魔兵機《ゾルダート》に使われることだろうな。
「よし、終わりだ。皮と素材は持っていこう、何かに使えるかもしれん」
「扱いには気を付けるんだ。皆さん、もう大丈夫です!」
騎士達が苦戦せずにポイズンリザードを倒し町の人達へ声をかけていた。この短時間でクソでかいトカゲを五体倒しきるとは見事な腕だ。
「騎士のみんな流石だな」
「相手が魔物か人間ならお任せください。ただ、やはり魔兵機《ゾルダート》相手には今のところ対抗策が見つからないですね」
「いきなりは難しいよな。俺達も最初は攻撃されて地球側がほぼ壊滅。反抗作戦で出るまで五年はかかった」
「五年……ですか……」
それを聞いて冷や汗をかきながら首を振る騎士。長いか短いかというのは個人の感覚なのでどう捉えたかは聞かないでおく。
地球側は五年でなんとかなったのはかなり早かったと思う。ヴァッフェリーゼとヴァイスをたった五年で完成にこぎつけのはエルフォルクさんと若菜ちゃんの親父さんの能力は本当に高かったのだ。
「ではそろそろ出発しよう。先はまだ長い」
「そうだな。よし、荷台に乗ってくれ! また移動するぞ」
「「「はーい」」」
「それじゃあまたよろしくね」
「へいへい」
子供たちと女性がローテーションが荷台に乗りこむ中、シャルがまたコクピットに乗せてくれと駆けよって来た。まあ、特に困ることでもないのでしゃがみ込むと――
「待ちなさいシャル! 次は私の番です!」
「え!? お姉ちゃん乗るの?」
「はい。私も姫ですから、乗ってもいいでしょう? 交代です。それにそこだと安全ですし」
「まあ、二人分の猶予はあるけど……」
なぜか不満そうなシャルと嬉しそうなアウラ様。確かにコクピットにいるのは安全かと俺は苦笑しながらコクピットに招き入れるのだった。
そこでガエイン爺さんが手を上げて口を開いた。
「国境まではまだかなりある。魔物の襲撃がないという保証もない。ゲイズタートルクラスが出てくるとも限らんことを考えるとリクの強さは必要だ」
「でも俺が居ないと魔兵機《ゾルダート》の相手は無理だろ?」
「……その通りじゃ。それが出来ていれば逃げる必要もなかった。ワシでも四台しか倒せなかったしのう」
それでも四台墜としたのか……。恐ろしい爺さんだ。それはともかく、それだけ強ければアウラ様の護衛についていてほしい。
「なので、全ての騎士と姫様はヘルブスト国へ。ワシとリクで迎え撃つ。騎士は渓谷で罠を張るのでそう簡単に町へはいけまい。来ることが分かっていれば防衛は可能じゃ」
「……ガエイン殿だけに押し付けるのは……。いえ、恐れながら進言します。むしろガエイン殿が護衛について我々がここの残るべきかと思います」
話に騎士の一人が加わりガエイン爺さんへ告げる。ここは判断が難しいところだ。
敵が先回りしていた場合、守り切れるかという問題がある。
蓋を開けないと分からない部分だが、ガエイン爺さんの強さを考えるとその選択はわかるな。
「んー、でもあたしはみんなで町に残った方がいいと思うなあ」
「む。なぜじゃ、シャル」
「騎士達が弱くないのはあたしも良く知っているわ。だけど、魔兵機《ゾルダート》に追手がどっちに来るかはわからないじゃない?」
だから部隊を分けるよりここで全員協力してでも、撃退しておく方がいいとシャルは言う。
「しかし救援を呼ばないと国はまずいだろ」
「急ぐにしても不安定要素を抱えて移動するよりはいいかなって。今は目の前の敵をなんとかした方が良くない?」
「ふむ」
「そ、そうです! シャルの言う通りです!」
急がば回れ、という感じだな。シャルが考えているのはプランとして悪くないし考えなかったわけじゃない。
「失敗した時は捕まってなにされるか分からないぞ?」
「その時はリクの『こくぴっと』にお姉さまを入れて逃げてよ」
そう来たか。
シャルは思っていたより無理筋を通すつもりだな。
<どうしますか? 一見、無茶な気もしますが>
そこで俺にだけ聞こえるようサクヤが尋ねてきた。
「だな。だけどシャルの考えの根本はあくまでも救援を呼ぶことに特化している。勝てれば良しでそれを確信している。だけど、万が一失敗したら足手まといである自分たちを捨てて救援に走れってことだろう」
<そうですね。彼女の目を見ればそんなことを考えているのだろうと分かります>
不安要素を抱えるよりはいっそ……か。ガエイン爺さんの弟子ならあり得るかもしれん。足止めを俺と二人だけでやろうとしているくらいだしな。
「リク様、ガエイン。シャルの案でいきましょう。私達はここで倒れるわけにはいきませんが、皆が負けるとも思えません。エトワール王国にまだ牙があることを知らしめてやりましょう」
「ま、リクには悪いけどね。元々グライアード王国とは関係ないんだし」
「そう、ですね……」
「なにかの縁だ。それは構わないさ」
ここで見捨てる方が苦しいからな。
そう思っていると、町人達から大きな声が上がった。
「ま、魔物が来ているぞ……!?」
「ポイズンリザードだ! 子供たちを荷車へ!」
「この水辺はあいつらも使っていたか」
見ると3メートルくらいあるトカゲ型の生き物が走り寄ってきていた。毒ってつくくらいだから危険なんだろう。人間を食いそうな口をしていてコモドドラゴンみたいである。
蹴散らしておくかと思った瞬間、騎士達が一斉にポイズンリザード達へ向かっていった。
「はああああ!」
「爪に気をつけろ! 槍で動きを封じて横から叩き斬れ!」
「おお、さすが……!」
「ウチの騎士団は統率が取れているからのう。即座に各自の強みを活かした陣形になっておる」
「俺達もヴァイスでこういうのをやっていたから分かるよ。お、切れ味がいい武器を使ってるな」
「ふふん、ウチはいい鉱石が採れるのよ。だから武器防具の性能は折り紙付きってやつね!」
「じゃが、それを狙っておるのもグライアード王国じゃ。まあ、加工できる職人はそう多くない」
そういえばそんなことを言っていたな。制圧してそれを輸出して金をというなら十分侵略理由になる。問題はその功績を魔兵機《ゾルダート》に使われることだろうな。
「よし、終わりだ。皮と素材は持っていこう、何かに使えるかもしれん」
「扱いには気を付けるんだ。皆さん、もう大丈夫です!」
騎士達が苦戦せずにポイズンリザードを倒し町の人達へ声をかけていた。この短時間でクソでかいトカゲを五体倒しきるとは見事な腕だ。
「騎士のみんな流石だな」
「相手が魔物か人間ならお任せください。ただ、やはり魔兵機《ゾルダート》相手には今のところ対抗策が見つからないですね」
「いきなりは難しいよな。俺達も最初は攻撃されて地球側がほぼ壊滅。反抗作戦で出るまで五年はかかった」
「五年……ですか……」
それを聞いて冷や汗をかきながら首を振る騎士。長いか短いかというのは個人の感覚なのでどう捉えたかは聞かないでおく。
地球側は五年でなんとかなったのはかなり早かったと思う。ヴァッフェリーゼとヴァイスをたった五年で完成にこぎつけのはエルフォルクさんと若菜ちゃんの親父さんの能力は本当に高かったのだ。
「ではそろそろ出発しよう。先はまだ長い」
「そうだな。よし、荷台に乗ってくれ! また移動するぞ」
「「「はーい」」」
「それじゃあまたよろしくね」
「へいへい」
子供たちと女性がローテーションが荷台に乗りこむ中、シャルがまたコクピットに乗せてくれと駆けよって来た。まあ、特に困ることでもないのでしゃがみ込むと――
「待ちなさいシャル! 次は私の番です!」
「え!? お姉ちゃん乗るの?」
「はい。私も姫ですから、乗ってもいいでしょう? 交代です。それにそこだと安全ですし」
「まあ、二人分の猶予はあるけど……」
なぜか不満そうなシャルと嬉しそうなアウラ様。確かにコクピットにいるのは安全かと俺は苦笑しながらコクピットに招き入れるのだった。
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