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第一章
第13話 コクピットの中
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「つぉりゃ!」
「なんの……!!」
爺さんは俺の言葉を聞かず、猶も猛攻を繰り出してくる。その一撃一撃が鋭く速い。くわえてあの亀の頭を割れる威力があるので食らう訳にはいかないのだ。
さらに俺の図体はでかいためブースターを使って距離を取りながら説得を続けるのだが――
「今までのと違うな。強い……! 申し訳ない姫様、ワシはここまでのようです!」
「だから違うって! ちょっと話を聞いてくれ!」
「そんな言葉に騙されるワシではないわぁぁぁぁ!!」
ダメだ、全然聞いてくれない!? ぶっ飛ばすにしてもあの大剣の一撃を食らう訳にはいかないし、どう止めるか。
<分析完了。あの剣自体の切れ味はそれほどでもない鋼です>
「じゃあ、あの一撃は爺さんの技量ってことか……! だけど助かる。それが分かれやりようはある!」
<どうするのですか?>
「振り抜く前に剣を止める!」
「む!? 何のつもりか知らんが足を止めたのなら……!」
一旦その場で立ち止まり、爺さんの突撃を待つ。俺の行動を隙だと判断したらしく一気に突っ込んで来た。
「行くぜ……!」
「突っ込んできおった!? ならば――」
爺さんは一気に詰めようとする。だが、ブーストの加速力を甘く見てもらっては困る。
「なんと!?」
「これなら勢いよく振れないよな!」
爺さんとの距離をさらに詰めて大剣を振れない位置まで接近。勢いのつかない攻撃を足で受けてから俺はかかとを思い切り踏んだ。
「どぅぁぁぁぁ!?」
「よし! 悪いが大剣は預からせてもらうぜ」
<ナイスですマスター>
かかとで砂埃と共に爺さんを舞い上げ、大剣を摘まんで回収する。
で、もう片方の手で彼をキャッチしてからそっと地面に降ろしてやった。
「ぐぬう……剣を奪われてはもはやこれまで……。さあ、好きにしろや!」
降ろした途端にその場で寝転がりヤケクソ気味に怒声を浴びせて来た。なんかよく分からんが俺を敵認定しているらしい。
まあ、武器が無きゃ流石に攻撃もされないだろうし、ちょっと座って話すか。
「よっこらっしょっと……。胡坐は無理か」
<正座しましょう>
「爺さん、さっきも言ったが俺は敵じゃない。というかここはどこなんだ? どうも知らない内に知らないところへ来てしまったらしいんだ」
「なんじゃと?」
倒れている爺さんにそう呼びかけると上半身だけ起こして首を傾げた。ようやく話ができそうな感じになったので顔を近づけて続ける。
「あんなでかい亀が居る時点でここは地球じゃないのは分かっている。とにかく情報が欲しい。ここが地上なら宇宙へ戻らないといけない! 今この時でも仲間は敵に攻撃されているんだ!」
「近いわい!?」
「おっと、すまねえ」
視界が慣れないな。小さく見えるからつい近づいてしまう。俺が少し引くと、爺さんはあぐらをかいて腕組みをする。
「ここはエトワール王国だった場所の一角じゃ。聞いたことは?」
「無いな」
「……そうか。自然豊かな平和な国で誰もが知る国だ。となると、ワシだけでは手に余る。しかしお主が敵でないと確実になったわけでもない」
「だな。どうしたらいいか」
「ま、ワシを殺さなかったことは信用しよう。そのデカブツから降りてくれれば他の者に面通しもさせてやれるが……」
爺さんの言うことはもっともだ。しかし、俺は頭を掻きながら告げる。
「や、その、今はこれが俺の身体、なんだ。降りるとかそういうのができなくて」
「は?」
その反応は正しい。しかし事実なのだから仕方がない。信じてもらうためになにかないかサクヤに相談する。
「コックピットを開けたらどうだろうか」
<あまりオススメはできませんよ。お掃除が出来ていないですし。まあ、身体は医療カプセルに入っていますけど>
「……どういうことだ? ま、まあ、いい。爺さんコクピットに誰も居ないのを確認してくれ」
「ふむ? そこに乗っているのじゃな?」
俺は正座から姿勢を変え、片膝をついて手を出す。爺さんが乗って来たのでコクピットまで腕を動かしハッチを――
「……どうやって開くんだ?」
<なんかこう『ん!』って感じで>
「雑すぎるなAI」
とりあえずコクピットに座っている時にやっているハッチ操作のプロセスを脳裏に浮かべる。すると勝手にスイッチ類が動き出し、ハッチが開いた。
「マジで動いた」
「この匂い……。血か? むう……」
「どうだ爺さん。俺の身体はあったか? 話によるとシートの裏にメディカルルームがあるらしいんだが」
俺がそう言った瞬間、爺さんは口を開く。
「ワシも色々な戦場を見てきたがこいつは酷い。シートっていうのかこの椅子は? とてつもねえ血がついていやがる。まだ乾いていないのう……それに――」
「そんなになっているのか……? それに、なんだよ」
コクピットから出てきた爺さんが顔を顰めて大きく息を吸う。血が乾いていない?
ということは何かで貫かれてからそれほど時間は経っていないってことか……。そ
それに聞いたことがない国の名前。
別の惑星にワープしたって考えるのが今の時代、あり得ると思う。
最後に聞いた『助けて』という言葉も朧げだが関わっているような気もする。
そういやあの時、AIの声を聞いた気がするけど――
<……>
「よし。決めたぞ。お前さん、名前は?」
「え? 俺?」
――爺さんを待っている間に考察していると、不意に声をかけられた。返事をすると俺を見上げてから名前を聞かれた。
「そういや名乗っていなかったっけ。すまない。俺の名前は神代 凌空。リクと呼んでくれ」
「リクか。ワシはガエイン。エトワール王国騎士団の相談役じゃ。気が変わった。お前を我々の仲間のところに連れていく」
「おお、マジか! 助かるぜ、なにか知っている人も――」
「じゃが頼みがある。……我が国の姫を助けてはくれぬか?」
「どういうことだ?」
「実は今、我々はグライアード王国に仕掛けられた戦争に負け、敗走中なのだ」
「なんの……!!」
爺さんは俺の言葉を聞かず、猶も猛攻を繰り出してくる。その一撃一撃が鋭く速い。くわえてあの亀の頭を割れる威力があるので食らう訳にはいかないのだ。
さらに俺の図体はでかいためブースターを使って距離を取りながら説得を続けるのだが――
「今までのと違うな。強い……! 申し訳ない姫様、ワシはここまでのようです!」
「だから違うって! ちょっと話を聞いてくれ!」
「そんな言葉に騙されるワシではないわぁぁぁぁ!!」
ダメだ、全然聞いてくれない!? ぶっ飛ばすにしてもあの大剣の一撃を食らう訳にはいかないし、どう止めるか。
<分析完了。あの剣自体の切れ味はそれほどでもない鋼です>
「じゃあ、あの一撃は爺さんの技量ってことか……! だけど助かる。それが分かれやりようはある!」
<どうするのですか?>
「振り抜く前に剣を止める!」
「む!? 何のつもりか知らんが足を止めたのなら……!」
一旦その場で立ち止まり、爺さんの突撃を待つ。俺の行動を隙だと判断したらしく一気に突っ込んで来た。
「行くぜ……!」
「突っ込んできおった!? ならば――」
爺さんは一気に詰めようとする。だが、ブーストの加速力を甘く見てもらっては困る。
「なんと!?」
「これなら勢いよく振れないよな!」
爺さんとの距離をさらに詰めて大剣を振れない位置まで接近。勢いのつかない攻撃を足で受けてから俺はかかとを思い切り踏んだ。
「どぅぁぁぁぁ!?」
「よし! 悪いが大剣は預からせてもらうぜ」
<ナイスですマスター>
かかとで砂埃と共に爺さんを舞い上げ、大剣を摘まんで回収する。
で、もう片方の手で彼をキャッチしてからそっと地面に降ろしてやった。
「ぐぬう……剣を奪われてはもはやこれまで……。さあ、好きにしろや!」
降ろした途端にその場で寝転がりヤケクソ気味に怒声を浴びせて来た。なんかよく分からんが俺を敵認定しているらしい。
まあ、武器が無きゃ流石に攻撃もされないだろうし、ちょっと座って話すか。
「よっこらっしょっと……。胡坐は無理か」
<正座しましょう>
「爺さん、さっきも言ったが俺は敵じゃない。というかここはどこなんだ? どうも知らない内に知らないところへ来てしまったらしいんだ」
「なんじゃと?」
倒れている爺さんにそう呼びかけると上半身だけ起こして首を傾げた。ようやく話ができそうな感じになったので顔を近づけて続ける。
「あんなでかい亀が居る時点でここは地球じゃないのは分かっている。とにかく情報が欲しい。ここが地上なら宇宙へ戻らないといけない! 今この時でも仲間は敵に攻撃されているんだ!」
「近いわい!?」
「おっと、すまねえ」
視界が慣れないな。小さく見えるからつい近づいてしまう。俺が少し引くと、爺さんはあぐらをかいて腕組みをする。
「ここはエトワール王国だった場所の一角じゃ。聞いたことは?」
「無いな」
「……そうか。自然豊かな平和な国で誰もが知る国だ。となると、ワシだけでは手に余る。しかしお主が敵でないと確実になったわけでもない」
「だな。どうしたらいいか」
「ま、ワシを殺さなかったことは信用しよう。そのデカブツから降りてくれれば他の者に面通しもさせてやれるが……」
爺さんの言うことはもっともだ。しかし、俺は頭を掻きながら告げる。
「や、その、今はこれが俺の身体、なんだ。降りるとかそういうのができなくて」
「は?」
その反応は正しい。しかし事実なのだから仕方がない。信じてもらうためになにかないかサクヤに相談する。
「コックピットを開けたらどうだろうか」
<あまりオススメはできませんよ。お掃除が出来ていないですし。まあ、身体は医療カプセルに入っていますけど>
「……どういうことだ? ま、まあ、いい。爺さんコクピットに誰も居ないのを確認してくれ」
「ふむ? そこに乗っているのじゃな?」
俺は正座から姿勢を変え、片膝をついて手を出す。爺さんが乗って来たのでコクピットまで腕を動かしハッチを――
「……どうやって開くんだ?」
<なんかこう『ん!』って感じで>
「雑すぎるなAI」
とりあえずコクピットに座っている時にやっているハッチ操作のプロセスを脳裏に浮かべる。すると勝手にスイッチ類が動き出し、ハッチが開いた。
「マジで動いた」
「この匂い……。血か? むう……」
「どうだ爺さん。俺の身体はあったか? 話によるとシートの裏にメディカルルームがあるらしいんだが」
俺がそう言った瞬間、爺さんは口を開く。
「ワシも色々な戦場を見てきたがこいつは酷い。シートっていうのかこの椅子は? とてつもねえ血がついていやがる。まだ乾いていないのう……それに――」
「そんなになっているのか……? それに、なんだよ」
コクピットから出てきた爺さんが顔を顰めて大きく息を吸う。血が乾いていない?
ということは何かで貫かれてからそれほど時間は経っていないってことか……。そ
それに聞いたことがない国の名前。
別の惑星にワープしたって考えるのが今の時代、あり得ると思う。
最後に聞いた『助けて』という言葉も朧げだが関わっているような気もする。
そういやあの時、AIの声を聞いた気がするけど――
<……>
「よし。決めたぞ。お前さん、名前は?」
「え? 俺?」
――爺さんを待っている間に考察していると、不意に声をかけられた。返事をすると俺を見上げてから名前を聞かれた。
「そういや名乗っていなかったっけ。すまない。俺の名前は神代 凌空。リクと呼んでくれ」
「リクか。ワシはガエイン。エトワール王国騎士団の相談役じゃ。気が変わった。お前を我々の仲間のところに連れていく」
「おお、マジか! 助かるぜ、なにか知っている人も――」
「じゃが頼みがある。……我が国の姫を助けてはくれぬか?」
「どういうことだ?」
「実は今、我々はグライアード王国に仕掛けられた戦争に負け、敗走中なのだ」
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