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第一章
第11話 予測不可
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<起きてください。マスター>
「ん……」
<起きましょうマスター>
どこからか声が聞こえてくる……。
しかも聞いたことがあるような……無いような……。
<起きてください。さもなくば――>
「うおお!?」
なにやら嫌な気配を感じたので俺は意識を覚醒させた。
そこで先ほどから聞こえていた声が話しかけてくる。
<ようやく目覚めましたね。気分はどうでしょう?>
「……? 俺は死んだはずじゃ……」
頭の中に直接語り掛けているという感じの声が気分は、などと言ってくる。
最後の記憶は確か妙な武器に突き刺されて右半分が引き潰れていたような――
「……!? そうだ俺の右腕」
慌てて右手を動かすと『動かせる』感覚があった。そしてAIの答えを返すなら『特に問題はない』となる。
あれだけ血を吐いてどうして――
「え?」
と、右腕を見た瞬間『キュイン』と機械音がした。随分近くに聞こえるなと困惑して改めて右手を見て、俺は驚愕する。
「なんだ、これ……?」
<右腕ですね>
「いや、なんでこんな機械っぽいんだよ!? 指を動かすとキュインって鳴るんだけど!?」
<まあ、仕方ありません。マスターの身体は現在修復中ですので>
「どういう――」
<まずは全身に目を向けてください>
急に真面目な声色になるAI。というかこんなに流暢に話していたか……?
それはともかく指示に従うと、信じられない光景が目に入った。
「な……なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?」
胴体も足も、はたまた頭まで金属……! いや、というかこのフォルムには見覚えがあるぞ!?
「まさかヴァイスか!?」
<ご名答ですマスター。今、あなたの意識はヴァイスと一体化しています>
「俺の……元の身体は……?」
恐る恐るAIに聞いてみると、そら恐ろしいセリフが返って来た。
<現在、瀕死状態で予断を許さぬ状況です>
「あー……」
最後に見た自分の状況を考えると仕方が無い……。ん? まてよ?
「瀕死で予断を許さない? ってことはまだ死んでいないのか?」
<はい。現在メディカルマシンで治療中です>
メディカルマシン……。
そういえば『ヴァイス』のコクピットに宇宙で遭難した時に備えて救急装備がついていると説明があったな。
「あの重傷を治せるのか……?」
<わかりません。ただ、心臓は動いています。それと――>
「それと?」
<……いえ、正確な情報ではないのでハッキリしたらお答えします>
らしい。
とりあえず治療できたとしても今、この意識が体に戻れるのかもわからないし考えても仕方ないか。
それにしても俺の身体……とんでもないことになったな……。まあ『俺』という意識があるだけマシだと思うか。
「ふう……」
<どうしましたか、マスター>
「……」
落ち着いてきたら色々とおかしなことだと思えることが脳裏に浮かぶ。
その一つを口にする。
「というかさっきから喋っているのはAIなのか? 『SAKUYA』だったよな」
<……そうです。それがなにか?>
「いや、お前もっと業務的なことしか言わなかったじゃないか。『接近警戒』とかそういう」
<そこはAIなので、学習をしたのです。他の『ヴァイス』に乗っている方々との会話はいいサンプルでしたね>
「なるほど」
確かに最近の人工知能は受け答えができるようなものがある。例えばレストランのレジなどは殆どAI搭載のロボットに変わっているからな。計算間違いはないしクレームもストレスなく処理してくれる。
「まあ話し相手になるから助かるよサクヤ。一緒に考えてもらえるからな。で、早速だが俺はなんでヴァイスと一体化しているんだろうな」
<その答えについては不明。私からすると『私の空間』にマスターが居ると言えばいいでしょうか? 気づいたらそうなっていました>
「空間……? よく分からないが俺もAIに近い存在ってことか……?」
<その認識でいいと思います>
たまに真面目な口調になるなサクヤ。嘘をつけるとは思えないし、それで良さそうだ。
……さて、分からないことだらけだが、そろそろ一番わからないことを考えるとしよう。
「……ここは、どこだ……?」
<周辺の情報をスキャン中。……データ不明。グレイス内でも地球でも無いようです。一体どういうことなのか>
「マジか」
地球でもない……? なら本当にここはどこだ? 周囲を見れば木々が生い茂っており、俺は崖を背にしていた形だ。
自然がこれだけある惑星は地球以外だとグレイスにしかない。唯一火星にはシェルターのような居住区はあるが――
「空はこんなに澄んでいないんだよな……」
<とりあえず移動しますか? 戦闘前だったのでエネルギーは99%です>
「そうだな……。って、この身体で大丈夫かねえ……。よっと」
立ち上がると一気に視界が高くなる。ヴァイスの全高は16.5メートル。
背の高い木よりは低いがそれでも人間からすればかなりデカい。
ここはどうやら山の中のようで、斜面と崖が目立つ。木は避けて通れるのでうっかり折らないよう慎重に歩を進める。
「お、山を下りれたか」
<そのようですね。……む、生体反応をキャッチ。距離、千五百>
「人間か?」
<マスターもヴァイスの能力で見れるのではないでしょうか? 視覚をズームアップしてみては?>
「できるのか? ……できた」
これは便利だ。自分で倍率を変えられる双眼鏡を持っているようなものだぞ。
で、目標は、と――
「ん……」
<起きましょうマスター>
どこからか声が聞こえてくる……。
しかも聞いたことがあるような……無いような……。
<起きてください。さもなくば――>
「うおお!?」
なにやら嫌な気配を感じたので俺は意識を覚醒させた。
そこで先ほどから聞こえていた声が話しかけてくる。
<ようやく目覚めましたね。気分はどうでしょう?>
「……? 俺は死んだはずじゃ……」
頭の中に直接語り掛けているという感じの声が気分は、などと言ってくる。
最後の記憶は確か妙な武器に突き刺されて右半分が引き潰れていたような――
「……!? そうだ俺の右腕」
慌てて右手を動かすと『動かせる』感覚があった。そしてAIの答えを返すなら『特に問題はない』となる。
あれだけ血を吐いてどうして――
「え?」
と、右腕を見た瞬間『キュイン』と機械音がした。随分近くに聞こえるなと困惑して改めて右手を見て、俺は驚愕する。
「なんだ、これ……?」
<右腕ですね>
「いや、なんでこんな機械っぽいんだよ!? 指を動かすとキュインって鳴るんだけど!?」
<まあ、仕方ありません。マスターの身体は現在修復中ですので>
「どういう――」
<まずは全身に目を向けてください>
急に真面目な声色になるAI。というかこんなに流暢に話していたか……?
それはともかく指示に従うと、信じられない光景が目に入った。
「な……なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?」
胴体も足も、はたまた頭まで金属……! いや、というかこのフォルムには見覚えがあるぞ!?
「まさかヴァイスか!?」
<ご名答ですマスター。今、あなたの意識はヴァイスと一体化しています>
「俺の……元の身体は……?」
恐る恐るAIに聞いてみると、そら恐ろしいセリフが返って来た。
<現在、瀕死状態で予断を許さぬ状況です>
「あー……」
最後に見た自分の状況を考えると仕方が無い……。ん? まてよ?
「瀕死で予断を許さない? ってことはまだ死んでいないのか?」
<はい。現在メディカルマシンで治療中です>
メディカルマシン……。
そういえば『ヴァイス』のコクピットに宇宙で遭難した時に備えて救急装備がついていると説明があったな。
「あの重傷を治せるのか……?」
<わかりません。ただ、心臓は動いています。それと――>
「それと?」
<……いえ、正確な情報ではないのでハッキリしたらお答えします>
らしい。
とりあえず治療できたとしても今、この意識が体に戻れるのかもわからないし考えても仕方ないか。
それにしても俺の身体……とんでもないことになったな……。まあ『俺』という意識があるだけマシだと思うか。
「ふう……」
<どうしましたか、マスター>
「……」
落ち着いてきたら色々とおかしなことだと思えることが脳裏に浮かぶ。
その一つを口にする。
「というかさっきから喋っているのはAIなのか? 『SAKUYA』だったよな」
<……そうです。それがなにか?>
「いや、お前もっと業務的なことしか言わなかったじゃないか。『接近警戒』とかそういう」
<そこはAIなので、学習をしたのです。他の『ヴァイス』に乗っている方々との会話はいいサンプルでしたね>
「なるほど」
確かに最近の人工知能は受け答えができるようなものがある。例えばレストランのレジなどは殆どAI搭載のロボットに変わっているからな。計算間違いはないしクレームもストレスなく処理してくれる。
「まあ話し相手になるから助かるよサクヤ。一緒に考えてもらえるからな。で、早速だが俺はなんでヴァイスと一体化しているんだろうな」
<その答えについては不明。私からすると『私の空間』にマスターが居ると言えばいいでしょうか? 気づいたらそうなっていました>
「空間……? よく分からないが俺もAIに近い存在ってことか……?」
<その認識でいいと思います>
たまに真面目な口調になるなサクヤ。嘘をつけるとは思えないし、それで良さそうだ。
……さて、分からないことだらけだが、そろそろ一番わからないことを考えるとしよう。
「……ここは、どこだ……?」
<周辺の情報をスキャン中。……データ不明。グレイス内でも地球でも無いようです。一体どういうことなのか>
「マジか」
地球でもない……? なら本当にここはどこだ? 周囲を見れば木々が生い茂っており、俺は崖を背にしていた形だ。
自然がこれだけある惑星は地球以外だとグレイスにしかない。唯一火星にはシェルターのような居住区はあるが――
「空はこんなに澄んでいないんだよな……」
<とりあえず移動しますか? 戦闘前だったのでエネルギーは99%です>
「そうだな……。って、この身体で大丈夫かねえ……。よっと」
立ち上がると一気に視界が高くなる。ヴァイスの全高は16.5メートル。
背の高い木よりは低いがそれでも人間からすればかなりデカい。
ここはどうやら山の中のようで、斜面と崖が目立つ。木は避けて通れるのでうっかり折らないよう慎重に歩を進める。
「お、山を下りれたか」
<そのようですね。……む、生体反応をキャッチ。距離、千五百>
「人間か?」
<マスターもヴァイスの能力で見れるのではないでしょうか? 視覚をズームアップしてみては?>
「できるのか? ……できた」
これは便利だ。自分で倍率を変えられる双眼鏡を持っているようなものだぞ。
で、目標は、と――
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