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第102話 たまには見栄を張る
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一通り儀式みたいなものが終わり、晴れて父さんは貴族となった。
このままお開きか食事会になるのかと思っていたが、そこで陛下に声をかけられた。
「村には戻るつもりですけど、どうしてそのようなことを?」
「その、その二人と結婚するそうだが……ウチの息子にクレアさん――」
「断る……!」
「これ、レン! 陛下に向かって! 申し訳ありません」
クレアを差し出せと言おうとしたことを遮って俺は彼女を背後に隠しながら憤慨する。爺様が叱って来たがこればかりは許せない。
と、思っていると。
「――クレアさんと話をさせて女性に免疫をつけさせてほしいのだ」
「なんだよ!? 城にも女性がいるんじゃないですか? サーラとか」
「馬鹿者……! どこで聞いているかわからないだろう」
「そうですよ……!」
「うおお……!」
サーナの名を口にした瞬間、陛下とサーラが俺を押さえつけて小声でそんなことを言う。妖怪かなにかの類だろうか?
そして陛下の言い分としては、城の人間は気心が知れすぎているため意味が無いのだそう。
その点クレアは平民である。さらに言うと割と気が強いため王族でもハッキリとものを言う性格なのでいいかも。
「そんなに免疫がないのですか?」
「外の人間だとダメなのだ。すぐに緊張するのだ……一体どうしてだろうなあ」
「ふむ」
「お見合いパーティーをしてもその調子では話にならない。なので頼めるか?」
「サーナは?」
「サーラの妹というのは知っているから普通に話せる。駄目だ」
「言い方……!」
どこから取り出したのか、陛下は『×』と記載された手でもつ看板を掲げて頭を振っていた。
「ごめんなさいね、クレアさん。少しでいいからお話をしてもらっていいかしら?」
「それは大丈夫ですけど……レン、いい?」
「陛下の頼みだから俺も構わない。ヴィリジャもいいんじゃないか?」
「わ、わたくし!?」
「そうだな……アリかもしれない」
「部屋に入るのはライオネスと女の子だけでいいかしら?」
その辺りはセルリアが難色を示したが、フリンクが一緒ならと承諾した。
『僕?』
「人間じゃないからいいだろうと」
『僕はいいけど、王子様はびっくりしないかな? 昨日も会ってないんだよね』
「あいつは仕事に熱心すぎるのがいかん。ではセッティングをするので少し待っていてくれ」
「そうね」
「王妃様、クリンちゃんは置いて行ってくださいまし」
「ふふ、やるわね」
陛下が城へ戻った後、王妃様もついていこうとしたが婆様がクリンを連れていることに気づき笑顔で止めた。王妃様も笑顔で婆様にクリンを返すが、ちょっと怖い雰囲気である。
「王子様が女性に免疫が無いなんてなあ。爺ちゃんは知ってたのかい?」
「いや、実は知らなんだ。王都に来ることがそれほどないのもあるが、執政に尽力しているから姿をみることがないのだ」
「まあ、まだ陛下が現役ですからね」
最後に訪れたのは日本の時にして三年前だったらしい。
その時にあったパーティの時には普通で、来賓の女性に挨拶をしていたとのこと。
「フリンクが行くなら気にすることも無いし、俺もイルカ魔法があるから聞き耳は立てられるんだよ」
「便利ねえ相変わらず」
母さんが微笑みながらそんなことを言う。そこでセルリアが不思議な顔で首を傾げていた。
「イルカ魔法とはなんだ?」
「あ、そういえば教える暇が無かったなあ。俺とフリンクは神様から特別な加護をもらっているのは知っているよな? 加えて特殊な魔法を持っているんだ」
「へえ、どんなのですの?」
「例えば攻撃魔法とかだと……あ、すみません騎士さん。なにか壊してもいい岩とかありませんか?」
「ん? ……少し待っていてくれ」
イルカイヤーとかは地味なので見た目でインパクトのあるイルカアローがいいだろう。近くで待機していた騎士さんに硬いものがないか聞いてみた。
すると興味があるのか、フッと笑ってからどこかへ行き、戻ってきた時にはいい感じに輝く鎧を持って来た。
「こいつはミスリラという金属で出来ている。俺達が装備している剣や鎧と同じものだな。世界でも有数に硬度があり、軟性も備えていて加工もしやすく、魔法防御も高いんだ」
「私の剣もミスリラだぞ」
「あ、そうなのか」
貴族の使う装備としてメジャーだけど金属は希少だからあまり通常の冒険者には回らないらしい。
「さて、神様の加護の魔法とやらを見せてもらおう」
「本当なのかな?」
騎士達が小声でそんなことを言っているのが聞こえてきた。地獄耳だからな俺は。
目立つのは好きじゃない……と言っていたが、父さんも貴族になったことだし、爺様の侯爵家という後ろ盾もあることが判明した。
なら、見せつけてやってもいいかもしれない。
「まあ、いい金属みたいだし一割くらいの力でいこう」
「一割? それでいいの? もっと減らした方が……」
「ま、見てなって」
クレアが逆の心配をしてくれていた。サーナはニヤニヤと笑みを浮かべている。
「イルカアロー」
「え!?」
俺が手を翳した瞬間、鎧に水のビームが飛んで行った。着弾するとミスリラの鎧は木っ端みじんとなる。
「いや、おかしいだろ!?」
「凄いですわ……」
セルリアが目を見開いて声をあげ、ヴィリジャが感嘆の声を出す。
『僕も使えるよ!』
「まあ、フリンクも? ミドリの子供は凄いわねえ」
「はっはっは! ウチは安泰だな!」
「なんだあれは……」
「神の加護……本当なのか……これは……」
騎士達も戦慄していて威厳は保てたと思う。
場が騒然としているところで、陛下が戻って来た。
「準備ができた。クレアさん、フリンク殿よろしく……ってどうした?」
「い、いえ……後でご報告、いたします……」
「それじゃ行ってくるわ。フリンク、お願いね!」
『うん!』
ということでちょっとしたパフォーマンスをすることになったけど、本題に入ることになった。さて、王子様はどんな人なのかな?
このままお開きか食事会になるのかと思っていたが、そこで陛下に声をかけられた。
「村には戻るつもりですけど、どうしてそのようなことを?」
「その、その二人と結婚するそうだが……ウチの息子にクレアさん――」
「断る……!」
「これ、レン! 陛下に向かって! 申し訳ありません」
クレアを差し出せと言おうとしたことを遮って俺は彼女を背後に隠しながら憤慨する。爺様が叱って来たがこればかりは許せない。
と、思っていると。
「――クレアさんと話をさせて女性に免疫をつけさせてほしいのだ」
「なんだよ!? 城にも女性がいるんじゃないですか? サーラとか」
「馬鹿者……! どこで聞いているかわからないだろう」
「そうですよ……!」
「うおお……!」
サーナの名を口にした瞬間、陛下とサーラが俺を押さえつけて小声でそんなことを言う。妖怪かなにかの類だろうか?
そして陛下の言い分としては、城の人間は気心が知れすぎているため意味が無いのだそう。
その点クレアは平民である。さらに言うと割と気が強いため王族でもハッキリとものを言う性格なのでいいかも。
「そんなに免疫がないのですか?」
「外の人間だとダメなのだ。すぐに緊張するのだ……一体どうしてだろうなあ」
「ふむ」
「お見合いパーティーをしてもその調子では話にならない。なので頼めるか?」
「サーナは?」
「サーラの妹というのは知っているから普通に話せる。駄目だ」
「言い方……!」
どこから取り出したのか、陛下は『×』と記載された手でもつ看板を掲げて頭を振っていた。
「ごめんなさいね、クレアさん。少しでいいからお話をしてもらっていいかしら?」
「それは大丈夫ですけど……レン、いい?」
「陛下の頼みだから俺も構わない。ヴィリジャもいいんじゃないか?」
「わ、わたくし!?」
「そうだな……アリかもしれない」
「部屋に入るのはライオネスと女の子だけでいいかしら?」
その辺りはセルリアが難色を示したが、フリンクが一緒ならと承諾した。
『僕?』
「人間じゃないからいいだろうと」
『僕はいいけど、王子様はびっくりしないかな? 昨日も会ってないんだよね』
「あいつは仕事に熱心すぎるのがいかん。ではセッティングをするので少し待っていてくれ」
「そうね」
「王妃様、クリンちゃんは置いて行ってくださいまし」
「ふふ、やるわね」
陛下が城へ戻った後、王妃様もついていこうとしたが婆様がクリンを連れていることに気づき笑顔で止めた。王妃様も笑顔で婆様にクリンを返すが、ちょっと怖い雰囲気である。
「王子様が女性に免疫が無いなんてなあ。爺ちゃんは知ってたのかい?」
「いや、実は知らなんだ。王都に来ることがそれほどないのもあるが、執政に尽力しているから姿をみることがないのだ」
「まあ、まだ陛下が現役ですからね」
最後に訪れたのは日本の時にして三年前だったらしい。
その時にあったパーティの時には普通で、来賓の女性に挨拶をしていたとのこと。
「フリンクが行くなら気にすることも無いし、俺もイルカ魔法があるから聞き耳は立てられるんだよ」
「便利ねえ相変わらず」
母さんが微笑みながらそんなことを言う。そこでセルリアが不思議な顔で首を傾げていた。
「イルカ魔法とはなんだ?」
「あ、そういえば教える暇が無かったなあ。俺とフリンクは神様から特別な加護をもらっているのは知っているよな? 加えて特殊な魔法を持っているんだ」
「へえ、どんなのですの?」
「例えば攻撃魔法とかだと……あ、すみません騎士さん。なにか壊してもいい岩とかありませんか?」
「ん? ……少し待っていてくれ」
イルカイヤーとかは地味なので見た目でインパクトのあるイルカアローがいいだろう。近くで待機していた騎士さんに硬いものがないか聞いてみた。
すると興味があるのか、フッと笑ってからどこかへ行き、戻ってきた時にはいい感じに輝く鎧を持って来た。
「こいつはミスリラという金属で出来ている。俺達が装備している剣や鎧と同じものだな。世界でも有数に硬度があり、軟性も備えていて加工もしやすく、魔法防御も高いんだ」
「私の剣もミスリラだぞ」
「あ、そうなのか」
貴族の使う装備としてメジャーだけど金属は希少だからあまり通常の冒険者には回らないらしい。
「さて、神様の加護の魔法とやらを見せてもらおう」
「本当なのかな?」
騎士達が小声でそんなことを言っているのが聞こえてきた。地獄耳だからな俺は。
目立つのは好きじゃない……と言っていたが、父さんも貴族になったことだし、爺様の侯爵家という後ろ盾もあることが判明した。
なら、見せつけてやってもいいかもしれない。
「まあ、いい金属みたいだし一割くらいの力でいこう」
「一割? それでいいの? もっと減らした方が……」
「ま、見てなって」
クレアが逆の心配をしてくれていた。サーナはニヤニヤと笑みを浮かべている。
「イルカアロー」
「え!?」
俺が手を翳した瞬間、鎧に水のビームが飛んで行った。着弾するとミスリラの鎧は木っ端みじんとなる。
「いや、おかしいだろ!?」
「凄いですわ……」
セルリアが目を見開いて声をあげ、ヴィリジャが感嘆の声を出す。
『僕も使えるよ!』
「まあ、フリンクも? ミドリの子供は凄いわねえ」
「はっはっは! ウチは安泰だな!」
「なんだあれは……」
「神の加護……本当なのか……これは……」
騎士達も戦慄していて威厳は保てたと思う。
場が騒然としているところで、陛下が戻って来た。
「準備ができた。クレアさん、フリンク殿よろしく……ってどうした?」
「い、いえ……後でご報告、いたします……」
「それじゃ行ってくるわ。フリンク、お願いね!」
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