イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
102 / 105

第102話 たまには見栄を張る

しおりを挟む
 一通り儀式みたいなものが終わり、晴れて父さんは貴族となった。
 このままお開きか食事会になるのかと思っていたが、そこで陛下に声をかけられた。

「村には戻るつもりですけど、どうしてそのようなことを?」
「その、その二人と結婚するそうだが……ウチの息子にクレアさん――」
「断る……!」
「これ、レン! 陛下に向かって! 申し訳ありません」

 クレアを差し出せと言おうとしたことを遮って俺は彼女を背後に隠しながら憤慨する。爺様が叱って来たがこればかりは許せない。

 と、思っていると。

「――クレアさんと話をさせて女性に免疫をつけさせてほしいのだ」
「なんだよ!? 城にも女性がいるんじゃないですか? サーラとか」
「馬鹿者……! どこで聞いているかわからないだろう」
「そうですよ……!」
「うおお……!」

 サーナの名を口にした瞬間、陛下とサーラが俺を押さえつけて小声でそんなことを言う。妖怪かなにかの類だろうか?
 そして陛下の言い分としては、城の人間は気心が知れすぎているため意味が無いのだそう。
 その点クレアは平民である。さらに言うと割と気が強いため王族でもハッキリとものを言う性格なのでいいかも。

「そんなに免疫がないのですか?」
「外の人間だとダメなのだ。すぐに緊張するのだ……一体どうしてだろうなあ」
「ふむ」
「お見合いパーティーをしてもその調子では話にならない。なので頼めるか?」
「サーナは?」
「サーラの妹というのは知っているから普通に話せる。駄目だ」
「言い方……!」

 どこから取り出したのか、陛下は『×』と記載された手でもつ看板を掲げて頭を振っていた。

「ごめんなさいね、クレアさん。少しでいいからお話をしてもらっていいかしら?」
「それは大丈夫ですけど……レン、いい?」
「陛下の頼みだから俺も構わない。ヴィリジャもいいんじゃないか?」
「わ、わたくし!?」
「そうだな……アリかもしれない」
「部屋に入るのはライオネスと女の子だけでいいかしら?」

 その辺りはセルリアが難色を示したが、フリンクが一緒ならと承諾した。

『僕?』
「人間じゃないからいいだろうと」
『僕はいいけど、王子様はびっくりしないかな? 昨日も会ってないんだよね』
「あいつは仕事に熱心すぎるのがいかん。ではセッティングをするので少し待っていてくれ」
「そうね」
「王妃様、クリンちゃんは置いて行ってくださいまし」
「ふふ、やるわね」

 陛下が城へ戻った後、王妃様もついていこうとしたが婆様がクリンを連れていることに気づき笑顔で止めた。王妃様も笑顔で婆様にクリンを返すが、ちょっと怖い雰囲気である。

「王子様が女性に免疫が無いなんてなあ。爺ちゃんは知ってたのかい?」
「いや、実は知らなんだ。王都に来ることがそれほどないのもあるが、執政に尽力しているから姿をみることがないのだ」
「まあ、まだ陛下が現役ですからね」

 最後に訪れたのは日本の時にして三年前だったらしい。
 その時にあったパーティの時には普通で、来賓の女性に挨拶をしていたとのこと。

「フリンクが行くなら気にすることも無いし、俺もイルカ魔法があるから聞き耳は立てられるんだよ」
「便利ねえ相変わらず」

 母さんが微笑みながらそんなことを言う。そこでセルリアが不思議な顔で首を傾げていた。

「イルカ魔法とはなんだ?」
「あ、そういえば教える暇が無かったなあ。俺とフリンクは神様から特別な加護をもらっているのは知っているよな? 加えて特殊な魔法を持っているんだ」
「へえ、どんなのですの?」
「例えば攻撃魔法とかだと……あ、すみません騎士さん。なにか壊してもいい岩とかありませんか?」
「ん? ……少し待っていてくれ」

 イルカイヤーとかは地味なので見た目でインパクトのあるイルカアローがいいだろう。近くで待機していた騎士さんに硬いものがないか聞いてみた。
 すると興味があるのか、フッと笑ってからどこかへ行き、戻ってきた時にはいい感じに輝く鎧を持って来た。

「こいつはミスリラという金属で出来ている。俺達が装備している剣や鎧と同じものだな。世界でも有数に硬度があり、軟性も備えていて加工もしやすく、魔法防御も高いんだ」
「私の剣もミスリラだぞ」
「あ、そうなのか」

 貴族の使う装備としてメジャーだけど金属は希少だからあまり通常の冒険者には回らないらしい。

「さて、神様の加護の魔法とやらを見せてもらおう」
「本当なのかな?」

 騎士達が小声でそんなことを言っているのが聞こえてきた。地獄耳だからな俺は。
 目立つのは好きじゃない……と言っていたが、父さんも貴族になったことだし、爺様の侯爵家という後ろ盾もあることが判明した。
 なら、見せつけてやってもいいかもしれない。

「まあ、いい金属みたいだし一割くらいの力でいこう」
「一割? それでいいの? もっと減らした方が……」
「ま、見てなって」

 クレアが逆の心配をしてくれていた。サーナはニヤニヤと笑みを浮かべている。

「イルカアロー」
「え!?」

 俺が手を翳した瞬間、鎧に水のビームが飛んで行った。着弾するとミスリラの鎧は木っ端みじんとなる。

「いや、おかしいだろ!?」
「凄いですわ……」

 セルリアが目を見開いて声をあげ、ヴィリジャが感嘆の声を出す。

『僕も使えるよ!』
「まあ、フリンクも? ミドリの子供は凄いわねえ」
「はっはっは! ウチは安泰だな!」

「なんだあれは……」
「神の加護……本当なのか……これは……」

 騎士達も戦慄していて威厳は保てたと思う。
 場が騒然としているところで、陛下が戻って来た。

「準備ができた。クレアさん、フリンク殿よろしく……ってどうした?」
「い、いえ……後でご報告、いたします……」
「それじゃ行ってくるわ。フリンク、お願いね!」
『うん!』

 ということでちょっとしたパフォーマンスをすることになったけど、本題に入ることになった。さて、王子様はどんな人なのかな?
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...