イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
101 / 105

第101話 爵位、ゲットだぜ!

しおりを挟む
「陛下と王妃様におかれましてはごきげんようございます。私はレンと申します」
『フリンクだよ!』
『がう』
『くおーん』
 
 初のお目見えということで俺は丁寧な挨拶をする。続けてフリンクと熊親子が真似をする。

「まあ、あれが精霊様?」
「そうですぞ王妃様。そしてウチの孫が神の加護を受けております」
「ふむ、それは素晴らしい……!」
「あの、爺ちゃん? それはいいんだけど、どうしてまた庭でやっているんだい?」

 鼻高々に俺を紹介する爺様に、両親含む親族は苦笑いだ。尋ねてみると、なるほどと思う回答が出た。

「熊をどうにかせねばならんからな。流石に城へ入れるわけにはいかんと相談したところ、陛下がここで良いとおっしゃってくれたのだ」
「そういう……陛下、申し訳ございません」
「構わぬよ。私としても喋る精霊様とでかい熊を見たかったからな!」
「子熊ちゃん、愛らしいこと。撫でてもいいかしら?」
「えっと……」

 やはりテンションの高い二人であった。撫でてもいいけど、話が進まないんじゃ? そう思ったところで陛下が口を開く。

「パトリシア、それは後だ。まずは色々とやらねばなるまい」
「わかりました」

 指をわきわきさせているな、王妃様……そんなに?

「さて、ヤクリーニン侯爵家の者達よ」
「「ハッ」」

 そこで厳かな雰囲気に変わった陛下の前で胸に手を置いて頭を下げる。膝はつかないようだ。祖父母を先頭に、背後にいる俺達もそれに倣う。

「話は昨日ある程度聞いたが、帰って来た娘婿に爵位を与えたい、と」
「はい。そこにおる夫のカブトは腕のいい剣士ですが、平民の出でして。別に暮らすとはいえ、娘が平民と一緒となれば色々と面倒なことになるため許可をお願いしたいと参った次第です」

 爺様がスラスラと謁見の理由を語ってくれた。事前に考えていたことだろう。
 陛下は黙って聞き、言い終わった後に小さく頷いた。

「いいよ」
「ありがとうございます。陛下の寛大なお心に敬意を」
『「早いな!?」』
「どうしたのレン、フリンク? 陛下の御前よ?」
「ああ、申し訳ありません……」

 くそ……思わず突っ込んでしまった……!
 俺と同時にツッコミを入れたフリンクと一緒にバツの悪い感じになってしまう。

「昨日、ある程度聞いていたからなあ。これは形式上だけのものなのだよ!」
「お食事会の時にね。レンさんはお外でしたし」
「クレアも知っていたのか?」
「うん、ご一緒させてもらったから知っていたわ。でもここまであっさりとは思わなかったわ……」
「うんうん」

 クレアとサーナは肯定するが、明らかに承認が早いことに驚いていた。

「まあ、無駄にはならんよ。カブトよ、前に」
「ハッ!」
「お」
『お父さんかっこいいー』

 貴族の服を来た父さんが陛下に呼ばれて前へ。そこで爵位章と証明書を貰っていた。

「――ここに、ウラトリア国王トラデールと侯爵アカロウ・ヤクリーニンの名においてカブト・イカルガを男爵として認める」
「ありがたき幸せ」

 そして父さんが膝をつくと、陛下が父さんの肩に剣を乗せて印みたいなものを切った。それを鞘に納める。

「立って良いぞ。……ではこれも受け取れ。儀礼用だが祭事に使うこともある」
「ハッ!」

 そして父さんが一歩下がってもう一度頭を下げた。そういえば苗字にあたる部分が変わったな?

「ウチは別性になるんだ。娘婿って言ってたからてっきりヤクリーニン家かと」
「もう二十年所帯を持っているからそうしようって」

 婆様がうふふと笑いながら答えてくれた。父さんには貴族として、家主としてやってこれから奮闘してもらいたいのだとか。
 
「ではこれにて爵位式を終わりにする! 皆の者、遠路はるばるご苦労であった!」
「お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
「気にするなアカロウ侯爵。手紙も貰っていたので話は早かった」

 そういえば手紙を出していると言っていたっけ。だからここまで早いのか。

「本来なら受付、謁見の空いている時間の予約など諸々の手続きが必要ですものね。さて、終わったのでしたら子熊ちゃんをそろそろ愛でても……?」
「うむ。良いかレンよ」
「え、ええ。クリン、ちょっと撫でられてくるんだ」
『くおん……!』
『僕が連れて行くね』

 フリンクが抱えてクリンを連れて行くと、王妃様が膝に置いて撫で始めた。

「ああ、可愛い……可愛いですわね……」
「クリンはどこでも人気ね」
「いつかこうなるから今の内だけどな」
『がう』
「その熊も大人しいものだ。やはり精霊様の力のおかげかな?」

 王妃様が愛で始めると、緊張が解けたという空気になり各々が息を吐いていた。
 そこで陛下が簡易玉座から立って俺達に尋ねてくる。

「フリンクが意思疎通できますが、レンが助けた形です。息子もプラーボを力で押さえつけているわけではないからでしょう」
「なるほど。神の加護も話は聞いていたが普通の男に見えるな。精霊様は喋るので特別感があるが……」
『レンも凄いんだよ王様? うわあ!?』

 フリンクがそう言う。別に目立たなくてもいいからと尻尾を掴んで引っ込めた。

「とりあえずこれでカブトは晴れて貴族の仲間入りじゃ。後は仕事と屋敷を手配せねばな。どこかの町の長でもしてもらうか」
「い!? いや、それなら農家の方が助かるんですが……」
「はっはっは! まあまあ、後程決めれば良かろう。さて、レンは村へ戻るのだったな?」
「? ええ」

 俺がクレアとサーナに囲まれていると陛下が尋ねてきた。

 そして――
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...