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第90話 町には入れません……?
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「ひぃ!? ま、魔物!?」
「あ、こいつはウチの家族なんですけどやっぱダメですか?」
『ダメなら僕達だけキャンプだね』
日本時間にしてだいたい15時半くらいに山あいにある町に到着した。次の町は半日くらいかかるので早朝出発の予定である。
さて、早速だがプラーボを見て町の入り口に居る自警団らしき人が驚愕していた。
四つん這いとはいえ迫力があるからなあ……
で、フリンクの言う通り熊がダメなら俺とフリンク、熊親子は外でキャンプになる。俺は慣れているからそれでもいい。
「こっちの空飛んでいるのは喋ってるし……あ、いや、待て――」
「?」
もう一人の門番さんがなにかに気付き、驚いていた門番となにやらひそひそと話し始めた。何度か問答を繰り返した後、俺達に向き直った。
「えっと、そちらのブサ……いえ、空を飛んでいるのはもしかして精霊様でしょうか?」
『そうだよ! 今なにか不穏なことを言おうとした?』
「いえ! 滅相もありません! そうなると精霊様は町へ入れますが、そちらの熊はちょっとお招きできませんね」
『えー! 家族なのに』
「まあまあ。確かに気持ちはわかる。父さん、ハリソンと馬車を持って行っていいか? 俺とプラーボ、それとクリンはキャンプをするよ」
いくら大人しいとはいえ、村の近くでもない町は警戒するだろう。当然の判断だと俺はキャンプを決めた。
『僕は?』
「お前は母さん達を守ってくれ。ここは二手に分かれよう」
『オッケー!』
「ええ? なら私もレンに着いていくわよ」
「元々、キャンプだったならいいんだけど宿に泊まれるならそっちで寝ておけよ」
「わたし――」
「お前もだサーナ。メイドなんだから母さん達を頼むよ」
クレアとサーナが不服そうに口を尖らせていたが、こっちはプラーボという強力な熊が居るし魔物は大丈夫だろう。
むしろ変な人がいるかもしれない町の方が危険である。
『それじゃ、後で様子を見に来るよ。まだ陽は高いしね』
「そうしてくれ」
「すまないなレン」
「いいよ。伯父さんも長旅だろうし、ゆっくりして」
俺がそう言うと、アオヤ伯父さんは笑顔で頷き、再度すまないと言って町へと入っていった。
「なにかあったら言いなさいよ!」
「フリンクが気づくと思うからその時は頼むよ」
クレアは俺の言葉に満足したのか、一瞬だけ振り返った後、町の中へ消えて行った。
「さて、それじゃ俺達も行くか」
「悪いな。こっちへ少し歩いたところに開けた場所がある。そこがいいだろう。近くに温泉もあるぞ」
「へえ、いいかもな」
「野生動物なんかも来るけど、そのでかいのが居れば近づいて来ないだろ」
魔物が出るこの世界では迂闊にキャンプはできないが、冒険者達はそうせざるを得ないため確保できる場所を作っているそうだ。
ほんの少し移動すると、確かに開けた場所が目に入った。
「ここは良さそうだな。地面も水平だし。テントは張らずに荷台で寝るか。お前達はハンモックを使うか?」
『がう!? ガウガウ♪』
ハンモックと聞いてまさかあるとは思っていなかったらしい。しかし、準備自体はそれほど難しくないのでもうワンセット作って持って来た。
「こっちの枝は太そうだ。お前の重さにも耐えられるかな」
『がうー』
『くおーん』
熊親子が催促をしてくるので俺は苦笑しながらハンモックを結んでいく。木から木へ上手いこと繋ぐと、ハンモックが完成だ。
「今日はここで頼むぞ」
早速二頭がハンモックに乗って揺られていた。その間に火を熾すかとハリソンを放牧し、桶にたっぷり入れた水を飲ませた。
そこそこ長旅なのでハリソンにもしっかり休んでもらいたい。
「火を熾すとやることが無くなるな……薪でも拾っておこうか。飯はどうするかな」
野生動物でも狩るか、町で買ってくるかの二択だ。
買ってくる方が楽だし、イルカアローを使ってフリンクにでも頼もうか。
そうと決めたら周辺の探索だ。
「プラーボ、ハリソンとクリンを守ってくれるか?」
『がう!』
「ちょっと俺は出てくるから、周辺の警戒を頼むよ」
ハンモックに揺られるプラーボの腹を撫でてやると、気持ちよさそうに鳴いていた。もう野生を忘れてないか? 大丈夫?
ハリソンは荷台の近くに寝そべりあくびをしていた。よほどのことが無い限りプラーボがハリソンを襲うことは無い。むしろ安心だと思う。
「温泉、どんなところだろうな?」
空を見上げると煙が立ち上っているところが見えたのでそれを目標に歩いていく。
武器はもっているけど別にイルカ魔法でなんとかなる。見栄えだな見栄え。
「ほう」
程なくして到着したその場所には天然の温泉があった。誰が作ったのか脱衣所があり、そこで服を脱いではいるのだろう。
ふんどしでもあれば男はいいが、女性はどうしているのやら?
「湯加減は……ちょうどいいな」
透き通っているお湯の底には魔物もおらず、気軽に入れそうだ。湖ほどではないけどまあまあ大きな露天風呂といったところだろう。石垣がそこそこ高いのでこれが目隠しになっているのかね。
「きー」
「しゃああ」
「お」
見れば猿や蛇といった生き物も湯のおこぼれに預かっているようだ。動物が寄ってくるならいい湯なのだろう。
「ちと入ってみるか……? いや、暗くなってからにしよう」
まずは飯の確保からだなと、俺は後ろ髪惹かれながらも温泉を後にした。
「あ、こいつはウチの家族なんですけどやっぱダメですか?」
『ダメなら僕達だけキャンプだね』
日本時間にしてだいたい15時半くらいに山あいにある町に到着した。次の町は半日くらいかかるので早朝出発の予定である。
さて、早速だがプラーボを見て町の入り口に居る自警団らしき人が驚愕していた。
四つん這いとはいえ迫力があるからなあ……
で、フリンクの言う通り熊がダメなら俺とフリンク、熊親子は外でキャンプになる。俺は慣れているからそれでもいい。
「こっちの空飛んでいるのは喋ってるし……あ、いや、待て――」
「?」
もう一人の門番さんがなにかに気付き、驚いていた門番となにやらひそひそと話し始めた。何度か問答を繰り返した後、俺達に向き直った。
「えっと、そちらのブサ……いえ、空を飛んでいるのはもしかして精霊様でしょうか?」
『そうだよ! 今なにか不穏なことを言おうとした?』
「いえ! 滅相もありません! そうなると精霊様は町へ入れますが、そちらの熊はちょっとお招きできませんね」
『えー! 家族なのに』
「まあまあ。確かに気持ちはわかる。父さん、ハリソンと馬車を持って行っていいか? 俺とプラーボ、それとクリンはキャンプをするよ」
いくら大人しいとはいえ、村の近くでもない町は警戒するだろう。当然の判断だと俺はキャンプを決めた。
『僕は?』
「お前は母さん達を守ってくれ。ここは二手に分かれよう」
『オッケー!』
「ええ? なら私もレンに着いていくわよ」
「元々、キャンプだったならいいんだけど宿に泊まれるならそっちで寝ておけよ」
「わたし――」
「お前もだサーナ。メイドなんだから母さん達を頼むよ」
クレアとサーナが不服そうに口を尖らせていたが、こっちはプラーボという強力な熊が居るし魔物は大丈夫だろう。
むしろ変な人がいるかもしれない町の方が危険である。
『それじゃ、後で様子を見に来るよ。まだ陽は高いしね』
「そうしてくれ」
「すまないなレン」
「いいよ。伯父さんも長旅だろうし、ゆっくりして」
俺がそう言うと、アオヤ伯父さんは笑顔で頷き、再度すまないと言って町へと入っていった。
「なにかあったら言いなさいよ!」
「フリンクが気づくと思うからその時は頼むよ」
クレアは俺の言葉に満足したのか、一瞬だけ振り返った後、町の中へ消えて行った。
「さて、それじゃ俺達も行くか」
「悪いな。こっちへ少し歩いたところに開けた場所がある。そこがいいだろう。近くに温泉もあるぞ」
「へえ、いいかもな」
「野生動物なんかも来るけど、そのでかいのが居れば近づいて来ないだろ」
魔物が出るこの世界では迂闊にキャンプはできないが、冒険者達はそうせざるを得ないため確保できる場所を作っているそうだ。
ほんの少し移動すると、確かに開けた場所が目に入った。
「ここは良さそうだな。地面も水平だし。テントは張らずに荷台で寝るか。お前達はハンモックを使うか?」
『がう!? ガウガウ♪』
ハンモックと聞いてまさかあるとは思っていなかったらしい。しかし、準備自体はそれほど難しくないのでもうワンセット作って持って来た。
「こっちの枝は太そうだ。お前の重さにも耐えられるかな」
『がうー』
『くおーん』
熊親子が催促をしてくるので俺は苦笑しながらハンモックを結んでいく。木から木へ上手いこと繋ぐと、ハンモックが完成だ。
「今日はここで頼むぞ」
早速二頭がハンモックに乗って揺られていた。その間に火を熾すかとハリソンを放牧し、桶にたっぷり入れた水を飲ませた。
そこそこ長旅なのでハリソンにもしっかり休んでもらいたい。
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野生動物でも狩るか、町で買ってくるかの二択だ。
買ってくる方が楽だし、イルカアローを使ってフリンクにでも頼もうか。
そうと決めたら周辺の探索だ。
「プラーボ、ハリソンとクリンを守ってくれるか?」
『がう!』
「ちょっと俺は出てくるから、周辺の警戒を頼むよ」
ハンモックに揺られるプラーボの腹を撫でてやると、気持ちよさそうに鳴いていた。もう野生を忘れてないか? 大丈夫?
ハリソンは荷台の近くに寝そべりあくびをしていた。よほどのことが無い限りプラーボがハリソンを襲うことは無い。むしろ安心だと思う。
「温泉、どんなところだろうな?」
空を見上げると煙が立ち上っているところが見えたのでそれを目標に歩いていく。
武器はもっているけど別にイルカ魔法でなんとかなる。見栄えだな見栄え。
「ほう」
程なくして到着したその場所には天然の温泉があった。誰が作ったのか脱衣所があり、そこで服を脱いではいるのだろう。
ふんどしでもあれば男はいいが、女性はどうしているのやら?
「湯加減は……ちょうどいいな」
透き通っているお湯の底には魔物もおらず、気軽に入れそうだ。湖ほどではないけどまあまあ大きな露天風呂といったところだろう。石垣がそこそこ高いのでこれが目隠しになっているのかね。
「きー」
「しゃああ」
「お」
見れば猿や蛇といった生き物も湯のおこぼれに預かっているようだ。動物が寄ってくるならいい湯なのだろう。
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