イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
89 / 105

第89話 母方の実家へ

しおりを挟む
「だ、大丈夫ですかね、アオヤ様」
「……まあ、フリンクも居るし……」

 というわけで翌日。
 俺達は昨日の夜に準備を終え、朝から出発することになった。
 ちなみに焦っているのは伯父さんの馬車に乗っている御者だ。その他護衛の戦士も乗っているんだけど、その人達も冷や汗をかいていた。
 なぜならば――

「力強いわねプラーボ!」
『がうがう♪』
『いつでも荷台を引くのを変わるからねハリソン!』

 ――ウチの一家は全員で移動をしていたからである。

「では、プラーボとクリンはわたしと一緒にお留守番ですよ!」
『がう!? がう、がーう!』
『くおんくおん!』
『一緒に行くって』

 という感じであっさりとお留守番を拒否。結局一人で置いておくのも困るかと、サーナも連れて出発した。

「レンが貴族かあ。確かにミドリさんはそういう雰囲気あるかも」
「お母さまとレンさん実家、楽しみですねえ」

 そして出がかりにクレアにも見つかり、着いていくと言い出した。クレアは母親にすぐ旅に出ることを告げ、着の身着のままついてきた。
 仕事は? と尋ねたが、そもそもお金は稼いでいるし、クレアがやる調合はしばらく無いのだとか。
 ちなみにサーナはプラーボ、クレアがフリンクにそれぞれ乗っている。俺と両親、そしてクリンはハリソンの引く馬車である。

 こんな奇怪な行軍があるだろうか……故に伯父さん達は戦慄しているという訳である。

「どれくらいで到着するんですか?」
「ここから王都に行くのと変わらないから、片道二、三日ってところかな? ゆっくり行ってそれくらいだ」

 休憩しつつ、一日で8時間《コル》程度は走るそうなのでまあまあ距離がある。国外だと国境まで行くのに7日以上かかる場合もあるとか。
 ちなみに伯父さんがどうしてこんなところまで来ていたか? 気になるところなので聞いてみると、コールスロウ侯爵様の件で数人の貴族が集まっていたらしい。
 もちろん、壊滅した村の復興についてなどだ。
 原因なども話し合い、色々あったそうだがある程度協力する形になったとのこと。
 あそこの熊がその原因と知って、伯父さんは白目を剥いていたが。

『がう?』
「なんでもない。前を向いて走るんだ」
『くおん!』

 俺の視線に気づいたのか、てくてくと歩くプラーボが振り返った。クリンに『危ないから』と怒られて小さくなっていた。
 するとそこでアオヤ伯父さんが口を開く。

「本当ならバートリィ家にも挨拶をしておこうと思ったんだが、思わぬところでミドリに会ったからな……しかし、プリンという食べ物の噂を聞いて出会えるとは、運命だな」
「そうですね。息子の作った食べ物をアオヤ様が食べ、そこからウチに辿り着いたわけですし」

 父さんもしみじみ口を開く。酒を飲んで腹を割って話していたようで割と普通に話すようになっていた。まあ、仲はそれほど悪くなかったみたいだからこんなものかもしれないけど。

『海、海は近くにあるのかな伯父さん!』
「フリンクに伯父さんと言われるのはちょっと面白いな……残念だがウチの近くは山ばかりだ。魚は鮮度があまり良くないのが来る」
『ええー!?』
「山の幸でもいいじゃないフリンク」

 山が多いのか。
 キャンプ生活をしていたくらいなので、俺もフリンクも別に山が嫌いというわけじゃない。しかしあそこは海が見える山だったからなあ。

「氷漬けにして持ってきたりはしないんですか?」
「ん? そういうのもあるが、海の町からだとどうしても古くなってしまうな」
『水族館のアジと一緒かあ』
「スイゾクカン?」
『んーん、なんでもないよ!』

 新しい土地に行くのにがっかりと尻尾を垂れる。迂闊な単語を出していて少しドキッとしたがまあ分からないだろう。
 
 さて、今はまだ道が広いので馬車が並走できる道だ。だから暇つぶしを兼ねた会話をしつつ先を急ぐ。
 するといつもの町へ行くための分岐路が見えてきた。今日は町とは違う道に向かうのだ。
 ここからもう少し先に行くと、バートリィ家のある町に行くための分岐がまたある。
 そんなことを考えていると、町の方から馬に乗った集団が見えた。あれは――

「お、フリンクー」
『アディアじゃん!』
「よう。……ってクレアさんっ!」
「おはようございますロアンさん!」

 現れたのはロアン達だった。足を止めて挨拶をすることにした。馬達はフリンクを見てびびっているな……

「ふん、どこへ行くのだ? 貴族の護衛でもやるのか? 確かにお前は強いが、一家総出で行く必要はないだろう」
「タレスもいたのか。いやあ、まあ事情があってな」
「タレス……? すると、君がキャベ殿のご子息か」
「ん? そう、コールスロウ侯爵家のタレスとは僕のことさ! なかなか見識の厚い貴族のようですね!」
「ヤクリーニン家の者だ。君の不始末の後片付けに来たのだよ?」
「……!? こ、侯爵家……」

 アオヤ伯父さんが呆れた顔で名乗ると、タレスはその場で固まった。元凶が偉そうな口を利いたんだもんな。後、まずいことをしたという自覚はあったらしい。

「ウチの甥が手助けしなければカイさんも君の父上も危なかったと聞いている。これからは真っ当に生きるのだぞ?」
「う、は……はい……って、甥とは誰のことですか!? 貴族に助けられた覚えは――」
「レンの母親は私の妹でな。だから君とは対等な存在なのだ」
「「「はあ!?」」」
「言わなくてもいいのに……」

 この発言にはタレス以外にも衝撃を与え、その場にいたロアンやボーリック、アディアが目を丸くして驚いていた。

「というわけで少し故郷に帰るのだ。では、冒険者諸君、頑張ってくれ」
「あ、は、はい……」
「ちょっと行ってくるよ。コントラさんによろしく!」
「またねー!」
「うぷぷ、いい顔をしていますねえ」

 俺達は呆然とする彼等を置いて先を急ぐ。まあ、タレスに好き勝手されなくなりそうだからいいかもしれないな。

 そして数時間後、本日の宿へと到着する――
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...