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第86話 父母の秘密
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「……はあ」
ということで俺達は貴族の人達に連れられてギルドの一室へとやってきた。
父さんと母さんを知るおじさんは両親を見てため息を吐く。
関係者のみということで、サーナにはプラーボ達の世話をお願いした。
重苦しい雰囲気の中、俺は手を上げておじさんへ問う。
「あの、ウチの両親がなにかやらかしましたか……?」
「君は……ミドリの息子か」
「はい。レンと申します」
「ふむ、私はアオヤ・ヤクリーニン。位は伯爵で、君の母であるミドリの実の兄だ」
「実の兄……兄!?」
「うう……」
母さんが両手で顔を覆って呻いていた。耳まで真っ赤だ。父さんの方はずっと冷や汗をかきっぱなしである。
「いったいどういうことなんだ? フォンダ村出身じゃなかったのか?」
「それは――」
「息子に話していないのか? ……ふう、私から説明しよう」
父さんを手で制してアオヤさんが代弁すると頷いた。
で、話によると父さんは一時的にヤクリーニン家の護衛剣士の仕事をしていたらしい。そこで母さんと恋仲になったわけ。
しかし、平民と結婚はさせないとよくある展開になり、お見合いをすると母さんの親父さんが言い出した際、母さん主導で家から逃げ出したという。
「駆け落ちかあ……」
「そういうことだ。当時は父が激怒し、かなり探したが見つからなかった。ミドリは人に好かれる才能があったから、行く先々で皆が協力したのだろう」
「うふふ」
「うふふじゃないぞ……」
妹が微笑んでいるのを見て呆れて頭を振る。
「ということは母さん貴族だったんだ……」
「今は違うわよ?」
「そんなわけあるか!? お前は出奔したとはいえ父上は勘当していない。肩書きは貴族のままだ。それでカブト、お前は黙ったままか? ん?」
「……」
アオヤおじさんは険しい顔で父さんを糾弾する。そりゃ駆け落ちなんてされた身内としては怒りがあってもおかしくない。20年前くらいの話らしいけど。
どうするのかと思っていたら、父さんは深呼吸をして顔を上げた。
「……駆け落ちについては申し訳ないことをしました。しかし、若気の至りというものではなく、ミドリを愛していたからこその行動です。あのままではアカロウ様に引き離されるのみ。故に行動を起こしました」
「あれは私が考えたのだからあなたは従っただけよ。兄さん、もう昔の話だしそっとしておいてくれると嬉しいわ」
「もし、連れ戻すというのであれば俺は全力で家族を連れて行方をくらまします」
「力の入れどころが!?」
父さんがそう言いきると、アオヤおじさんは目を細めて父さんを見据える。
しばらく無言の時が続くと思われたが――
『おなかすいたおなかすいたおなかすいたプリンプリンプリンプリンプリンプリン』
「うお……!?」
フリンクがその場でバレルロールをしながら歯を鳴らし始めた。どうやら限界らしい。
「ふう……相変わらず覚悟だけはあるなカブト。もういい、俺……私が結婚して、子ができてからお前達のことは言わなくなったからな」
「じゃあ……」
「報告はさせてもらうが、今さら無理やり連れ帰ったところで意味はない」
「良かった……」
フッと笑い、アオヤおじさんはそう語った。言う通り、もはや今さらだろうしな。母さんも40過ぎたし。
「しかし、アレはなんなのだ?」
「ああ、俺から説明しますよ」
そこでフリンクと俺の話をすることにした。神様の加護と精霊である話をすると、目を丸くして驚いていた。
「まさかミドリの子が……」
「でも普通の子だから! 攻撃力は高いけど」
「攻撃……? よく分からんが……」
母さんが意味不明なことを口走ったのでおじさんは困惑していた。まあ、この先も関与してこないと思うしこれくらいの情報はいいだろう。
そう思っていると――
「しかし、父上と母上に顔を見せに帰ってこい。生きていることを報せるのと、ちゃんと許可をもらっておけ」
「うーん、そうねえ。お母さんには会っておきたいかも」
「爺ちゃんはいいのか?」
「過保護すぎて疲れちゃうから、あんまり顔を見たくないわ」
「くく……」
アオヤおじさんはそれを聞いてくっくと笑っていた。ここで父さんを糾弾しないのはどうやら爺さんにも問題があるようだ。
「早い方がいい。一緒に帰ってみないか?」
「分かったわ。あなた、レン、行きましょうか」
「……そうだな」
「やれやれ、外に出るようになってから行動範囲が増えたな……」
「あ、それなら用意ができるまでウチに泊っていって。部屋はたくさんあるから」
「ほう、そんな家に住んでいるのか? 村だと今レンが言っていたようだが……」
というわけで一度、アオヤおじさんを案内するため、両親だけ屋敷へ戻ることになった。
ギルドを出ると、熊と遊んでいたサーナに出くわす。
「はーい、お父さん熊の樽乗りですよー」
『がう』
「おお、すごいバランスだ!」
「図体がでかいのに繊細だな」
「子熊ちゃんこっち向いてー」
『くおん?』
……なんか人だかりができてる。どこから持って来たのか、プラーボが大きな樽に乗って上手くバランスを取っていた。
「あ、レンさん! ではこれにて終了です! 良かったらこちらにお金を入れてくださいねー」
「しっかりしてるな……」
サーナが大道芸を止めると人が散っていく。しばらくかかりそうなのでひとまず両親に声をかけておいた。
「それじゃ先に戻っていてくれ。フリンクが限界だから飯食って帰るよ」
「クレアちゃんにごめんって言っておいて! それじゃ行こうか兄さん」
「あのでかい熊はなんなんだ……!?」
「アオヤ様、こちらへ」
父さんと母さんはおじさんの馬車で去っていった。残された俺達はレストランへと向かう――
ということで俺達は貴族の人達に連れられてギルドの一室へとやってきた。
父さんと母さんを知るおじさんは両親を見てため息を吐く。
関係者のみということで、サーナにはプラーボ達の世話をお願いした。
重苦しい雰囲気の中、俺は手を上げておじさんへ問う。
「あの、ウチの両親がなにかやらかしましたか……?」
「君は……ミドリの息子か」
「はい。レンと申します」
「ふむ、私はアオヤ・ヤクリーニン。位は伯爵で、君の母であるミドリの実の兄だ」
「実の兄……兄!?」
「うう……」
母さんが両手で顔を覆って呻いていた。耳まで真っ赤だ。父さんの方はずっと冷や汗をかきっぱなしである。
「いったいどういうことなんだ? フォンダ村出身じゃなかったのか?」
「それは――」
「息子に話していないのか? ……ふう、私から説明しよう」
父さんを手で制してアオヤさんが代弁すると頷いた。
で、話によると父さんは一時的にヤクリーニン家の護衛剣士の仕事をしていたらしい。そこで母さんと恋仲になったわけ。
しかし、平民と結婚はさせないとよくある展開になり、お見合いをすると母さんの親父さんが言い出した際、母さん主導で家から逃げ出したという。
「駆け落ちかあ……」
「そういうことだ。当時は父が激怒し、かなり探したが見つからなかった。ミドリは人に好かれる才能があったから、行く先々で皆が協力したのだろう」
「うふふ」
「うふふじゃないぞ……」
妹が微笑んでいるのを見て呆れて頭を振る。
「ということは母さん貴族だったんだ……」
「今は違うわよ?」
「そんなわけあるか!? お前は出奔したとはいえ父上は勘当していない。肩書きは貴族のままだ。それでカブト、お前は黙ったままか? ん?」
「……」
アオヤおじさんは険しい顔で父さんを糾弾する。そりゃ駆け落ちなんてされた身内としては怒りがあってもおかしくない。20年前くらいの話らしいけど。
どうするのかと思っていたら、父さんは深呼吸をして顔を上げた。
「……駆け落ちについては申し訳ないことをしました。しかし、若気の至りというものではなく、ミドリを愛していたからこその行動です。あのままではアカロウ様に引き離されるのみ。故に行動を起こしました」
「あれは私が考えたのだからあなたは従っただけよ。兄さん、もう昔の話だしそっとしておいてくれると嬉しいわ」
「もし、連れ戻すというのであれば俺は全力で家族を連れて行方をくらまします」
「力の入れどころが!?」
父さんがそう言いきると、アオヤおじさんは目を細めて父さんを見据える。
しばらく無言の時が続くと思われたが――
『おなかすいたおなかすいたおなかすいたプリンプリンプリンプリンプリンプリン』
「うお……!?」
フリンクがその場でバレルロールをしながら歯を鳴らし始めた。どうやら限界らしい。
「ふう……相変わらず覚悟だけはあるなカブト。もういい、俺……私が結婚して、子ができてからお前達のことは言わなくなったからな」
「じゃあ……」
「報告はさせてもらうが、今さら無理やり連れ帰ったところで意味はない」
「良かった……」
フッと笑い、アオヤおじさんはそう語った。言う通り、もはや今さらだろうしな。母さんも40過ぎたし。
「しかし、アレはなんなのだ?」
「ああ、俺から説明しますよ」
そこでフリンクと俺の話をすることにした。神様の加護と精霊である話をすると、目を丸くして驚いていた。
「まさかミドリの子が……」
「でも普通の子だから! 攻撃力は高いけど」
「攻撃……? よく分からんが……」
母さんが意味不明なことを口走ったのでおじさんは困惑していた。まあ、この先も関与してこないと思うしこれくらいの情報はいいだろう。
そう思っていると――
「しかし、父上と母上に顔を見せに帰ってこい。生きていることを報せるのと、ちゃんと許可をもらっておけ」
「うーん、そうねえ。お母さんには会っておきたいかも」
「爺ちゃんはいいのか?」
「過保護すぎて疲れちゃうから、あんまり顔を見たくないわ」
「くく……」
アオヤおじさんはそれを聞いてくっくと笑っていた。ここで父さんを糾弾しないのはどうやら爺さんにも問題があるようだ。
「早い方がいい。一緒に帰ってみないか?」
「分かったわ。あなた、レン、行きましょうか」
「……そうだな」
「やれやれ、外に出るようになってから行動範囲が増えたな……」
「あ、それなら用意ができるまでウチに泊っていって。部屋はたくさんあるから」
「ほう、そんな家に住んでいるのか? 村だと今レンが言っていたようだが……」
というわけで一度、アオヤおじさんを案内するため、両親だけ屋敷へ戻ることになった。
ギルドを出ると、熊と遊んでいたサーナに出くわす。
「はーい、お父さん熊の樽乗りですよー」
『がう』
「おお、すごいバランスだ!」
「図体がでかいのに繊細だな」
「子熊ちゃんこっち向いてー」
『くおん?』
……なんか人だかりができてる。どこから持って来たのか、プラーボが大きな樽に乗って上手くバランスを取っていた。
「あ、レンさん! ではこれにて終了です! 良かったらこちらにお金を入れてくださいねー」
「しっかりしてるな……」
サーナが大道芸を止めると人が散っていく。しばらくかかりそうなのでひとまず両親に声をかけておいた。
「それじゃ先に戻っていてくれ。フリンクが限界だから飯食って帰るよ」
「クレアちゃんにごめんって言っておいて! それじゃ行こうか兄さん」
「あのでかい熊はなんなんだ……!?」
「アオヤ様、こちらへ」
父さんと母さんはおじさんの馬車で去っていった。残された俺達はレストランへと向かう――
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