イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第79話 お休みを満喫するレン達

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「うまっ!?」
「もう一個ちょうだい!」
『うへへへ……』

 というわけでフリンクが獲って来た魚と俺が拾った貝やカニなどを浜辺で調理してお昼とした。
 ちなみに暇だろうからクレアとサーナにも手伝ってもらい潮干狩り的なことをして牡蠣(カーキ)やハマーグリを獲っている。
 現代の地球なら場所によっては密猟扱いで罰金などが科せられる。だが、異世界はそういうのが無いのでとても楽でいい。乱獲するわけでもないしな。
 フリンクも妙な声を出すくらいはご機嫌で、生魚をこれでもかと腹に入れていた。

『焼いたのも食べたいー』
「そら、熱いから気をつけてな」
『うん』

 串に刺して焚火であぶっていたサンマ(こっちだとサンマーという)を渡すと、器用にヒレで受け取って食べ始める。

「フリンクも魚に似ているけど精霊様なのよね」
『一応ね。この世界じゃ僕と同じ形の生き物を見たことないんだよ。どっかに居ると思うんだけど。……いてっ!?』
「精霊ですし、他にもいそうですね」

 この世界とか言うなと小声でフリンクを小突いておく。二人は気づかったようだけど、余計な詮索をされるのは非常にまずい。

「海の精霊って考えれば森とかいそうだよな」
「水の精霊じゃないんですね……」
『あ、うん、そうそう。スズキ、ウマー』
 
 フリンクがむしゃむしゃと食べながら適当に相槌を打ち、サーナが困った顔で笑っていた。まあ、限定的にしておけば本物の精霊が出ても誤魔化せるという算段だ。
 
「ふう、食べたわね! ありがとうレン、フリンク!」
「俺も久しぶりに観察できたから良かったよ」
「ハマーグリ……また食べたいですねえ……」
「バター焼きがいいんだよな。父さんと母さんに土産としていくつか獲っているから食卓にでるだろ」
『お魚もこんなにあるしね!』

 ブリやイワシ、サンマといった魚を用意していた網に入れている。それを見てフリンクは大興奮だ。しばらく冷凍しておけば食卓に魚が出てくるに違いない。

「それじゃこれからどうするの?」
「まだフリンクが遊び足りないだろうから付き合うつもりだ」
『もうちょっとだけ泳ぐねー!』

 網を海につけながらクレアに返事をすると、フリンクは腹ごなしに海へとまた向かう。

「なにかします?」
「いやあ、昼寝でもしようかなって。メモは結構取ったし」
「砂浜で寝るの?」
「いや、ベッドを作ります」
「なぜ敬語に……!」

 ツッコミを入れて来たサーナは放っておいて、俺は砂をかき集め始めた。
 形を決めたら水の魔法で少しずつ固めていき、やがて立派な寝床が出来上がる。

「わ、いい感じのベッド!」
「これに乾かしておいたワッカメとドコンブを敷いて完成だ」
「おー、いいですねえ」

 さらになるべく大きな流木を立てて葉っぱを乗せてやると、簡素だあビーチパラソルの完成だ。

「ああ……潮風が気持ちいい……」
「って早!?」
「まあ、ウチのメイドとして頑張っているし、構わないよ。俺達の分も作るぞ」
「あ、わかったわ! ふふ、レンと一緒に砂遊びも懐かしいわ」
「わたしも混ぜてくださいよー!」

 そんな調子でサーナも混ざり、昼寝用のベッドを作り始めた。食後の運動としてはまあまあだし、日差しも強くないため気持ちがいい。

「こういうのはどう?」
「お、飲み物置きかいいな。サーナのは斜めになっているな」
「これ、良いと思いません?」
 
 リクライニングみたいなベッドを作っていてなかなかのセンスだと思った。そのまま固めて三つ分が完成だ。

「ふう……自分で作ったけど、こりゃいいな……」
「お仕事休んでだから気が引けるけど、ゆっくりねえ……」

 俺の両脇にクレアとサーナが並んでおり、寝転がった瞬間心地いい疲れがどっときた。

「フリンクは大丈夫ですかね?」
「あー……よほど強い魔物とかならわからないけど、基本的に大丈夫だよ……ふあ……」
「ちょっとお昼寝しましょうか」

 そんなに遠くに行ってはいないと思うけど、たまには遊ばせてやろう――

◆ ◇ ◆

『やはり水の中は気持ちがいいな。レン達も潜れればいい癒しになりそうなんだがな。……カッ!』

 そんなことを呟きながらウツボを威嚇して遊んでいるのは俺ことフリンクだ。
 精霊として存在しているが、元々はただのバンドウイルカなのでやはり海に入るとテンションがあがるものだ。

『イヴァルリヴァイ様に感謝だな』

 日本でのレンとは小さいころからの付き合いだ。水族館では可愛がってくれたので、この状況はとても嬉しいのである。
 
『陸も水も動けるからずっと一緒に居られるしな。まあ、普通に老いてしまうらしいから、一生ってわけにもいかないのが残念だ』

 それでもレンが寿命まで生きてくれれば良いし、子供や孫ができればずっと見守っていられる。

『……そういえば俺は死ぬのだろうか……?』

 ふと、そんなことを考えてしまった。生き物はいずれ死ぬ。もしかしたら俺もそういうタイプなのかもしれないのか。

『ま、今は考えなくてもいいか。水族館では結構歳を食っていたから、この若い身体を楽しもう』

 まあ、向こうでも十年くらいしか経っていなかったが。
 そんなことを考えていると、魚に動きがあった。

『む? 魚群がなにかから逃げるように動いている?』

 視線を別の方に向けると、遠くに黒い大きな影があった。今まで見たことが無いサイズだ。

『クジラ……よりは小さいか? だが、俺と同じくらいか少し大きいな。……確認してみるか』

 もしかしたらホホジロのような奴かもしれない。ここは陸からかなり離れているが、海水浴をする人間がいたらそっちへ行くかもしれない。
 そうなる前に対処するべきだ。

 だが――

『む……行ったか』

 ――俺が移動すると向こうも移動し、沖の方へと消えて行った。ふむ、レンに報告をしておくか
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