イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第78話 海だー!

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『ひゃっほぅ!!』
「あはは、フリンク、はしゃぎすぎよー!」
「うほー! これは楽しいですねえぇぇ!」

 あれだけ寄り道をしたのに海へはすんなり到着した。今はクレアとサーナがフリンクの背に乗っており、水上スキーのごとく、滑るように泳いでいた。
 魔法がかかっているので振り落とされることはない。

「楽しそうだしいいか。さて、久しぶりに磯辺の観察でもしよう」

 水族館ではイルカの飼育を主にやっていたけど、ご存じの通り他にも生き物がたくさんいる。体験コーナーでは毒の無い生物を触れるようにしたりと工夫されていた。

「お、こいつはイトマキヒトデか?」

 特徴的な星形に赤い模様がついている生き物を発見した。牛とか馬とかもそうだけど、概ね地球に居た生物がそのままいることが多い。
 ただ、イルカは居ないしシャチもいない。ただ、フリンクが遠泳をした際、クジラは見たそうなので進化の過程がちょっと違うのかもしれないな。

「アオウミウシ……」

 見た目は毒々しいし、体に毒を蓄積するタイプの生き物だな。
 食べる人間はいないと思うけど。
 というかちょっと向こうの世界よりでかい……
 
「ふうむ、こいつが居るとなると……お、いた、ダイダイイソカイメン」

 カイメンの仲間でウミウシがよく食べるやつである。海に行くと赤い岩があると思うけどそれだ。

「久しぶりに観察したけどやっぱ面白いな海の生き物は」
『レンー! 見て見てキタマクラが居たよ!』
「変な魚よね、キレイだけど」
「ぶっ!?」

 俺は慌てて近くにあった棒でフリンクが咥えている魚を叩き落とした。

『ああー!?』
「おまえはいいかもしれないけどこいつは猛毒を持っているんだぞ!? 触っただけでも危ない!」
「え!? あ……ああ……」
「サーナ、お前……まさか……!?」

 俺の言葉にサーナが手をわなわなさせていた。洗い流すだけでも違うはず……!

「触っていませんよ?」
「なんだよ!?」
『僕がずっと咥えていたからねー』
「ったく、驚かせるな。こいつは触るだけならまだいいけど、傷口や目を擦ったりしたらそこから毒が回るんだ」

 フグの仲間なので毒はテトロドトキシン。かなり凶悪な個体なのだ。
 ちなみに食べても美味しくないため、捌く技術は必要なのに食えないため、獲ること自体全くの無意味である。
 美味なウマヅラハギに似ていることから誤飲される。名前の由来は食べたら死ぬ=日本の風習で亡くなった人を北枕にすることから来ている。物騒な魚だ。

「へえー。レンって村から出ないのに詳しいわね?」
「ま、まあ、本は読んでいるからな。学校の図書館も使ってたし」
「そういえばよく行ってたわね」
「力だけでなく頭脳も。やはりいいですねレンさん!」
「ありがとよ」

 サーナもべた褒めでなんか照れる。なので話題を戻すことにした。

「それにしても珍しいのを獲って来たな……食えるのにしてくれよ」
『いやあ、珍しいから獲ってきたんだよ?』
「……一理あるな」

 確かに変なのを見つけたら他の者に見せたくなるのは分かる気がする。

「レンさんはなにをやっているんですか?」
「ん? 海の生き物の観察だ。ほらウミウシ」
「ぎにゃぁぁぁ!?」

 俺が先ほどのアオウミウシを掴んで見せるとサーナの髪が逆立ち奇声を上げた。

「でかいナメクジですよね……!?」
「違うぞ。似ているけど」
「キレイだよねー」

 クレアは小さいころ俺と海によく来ていたのでこういうのは得意だったりする。
 他にも貝を掘ったりして夕飯にしたりとまあ色々だ。

「ふう……海は危険が危ないですねえ……」
「なんだ、こういうのはダメなのか」

 アオウミウシを海に帰して尋ねると、サーナはミミズとか蛇みたいなのはダメなんだそうだ。

「動きが嫌なんですよねえ」
「ふむ。……お、こいつなんかどうだ? スベスベマンジュウガニ」
「カニはまあ硬いし掴めるからいいですけど」
「毒があるぞ」
「ひぎゃぁぁぁぁ!?」
「持っただけなら大丈夫だけどな」
「ふん!」
『わあ!?』

 サーナは俺の手渡したスベスベマンジュウガニを全力で投げると、フリンクの頭にぶつかった。カニはフリンクの頭の上で威嚇行動に出る。

「すまんすまん」
「まったく……レンさんなんて大好きです!」
「お、おう」
「あ、私も~」

 よく分からない罵倒をされて困惑する。クレアも対抗しているのか俺の腕に絡む。
 まあ、それはいいとして驚かせた謝罪として俺はフリンク達をその場に残して浜辺を探す。
 昼飯は海産物でも用意するか。

「なにしているのかしら?」
『多分食べられるのを獲っているんだよ。僕もお魚を獲ってくるね!』
「あ、フリンク」
「大丈夫だよ。たまにはしっかり潜らせてやりたいし」

 クレアが止める間もなくフリンクは再び海へともぐっていった。俺はなんだかんだで人間のため、長く潜ることはできない。
 だからあいつは気を使ってあんまり潜らないようにしているのだ。
 だけど今はクレアとサーナが居るので話し相手にも困らないと判断したのだろう。
 
「よし、これくらいでいいか」
「わ、これカキじゃないですか? これはハマーグリ?」
「これは食べられるカニなの?」
「大丈夫だ。そのあたりは勉強済みさ。それじゃフリンクが戻るまでテーブルとカマドでも作るか」
「はーい!」
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