イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
78 / 105

第78話 海だー!

しおりを挟む
『ひゃっほぅ!!』
「あはは、フリンク、はしゃぎすぎよー!」
「うほー! これは楽しいですねえぇぇ!」

 あれだけ寄り道をしたのに海へはすんなり到着した。今はクレアとサーナがフリンクの背に乗っており、水上スキーのごとく、滑るように泳いでいた。
 魔法がかかっているので振り落とされることはない。

「楽しそうだしいいか。さて、久しぶりに磯辺の観察でもしよう」

 水族館ではイルカの飼育を主にやっていたけど、ご存じの通り他にも生き物がたくさんいる。体験コーナーでは毒の無い生物を触れるようにしたりと工夫されていた。

「お、こいつはイトマキヒトデか?」

 特徴的な星形に赤い模様がついている生き物を発見した。牛とか馬とかもそうだけど、概ね地球に居た生物がそのままいることが多い。
 ただ、イルカは居ないしシャチもいない。ただ、フリンクが遠泳をした際、クジラは見たそうなので進化の過程がちょっと違うのかもしれないな。

「アオウミウシ……」

 見た目は毒々しいし、体に毒を蓄積するタイプの生き物だな。
 食べる人間はいないと思うけど。
 というかちょっと向こうの世界よりでかい……
 
「ふうむ、こいつが居るとなると……お、いた、ダイダイイソカイメン」

 カイメンの仲間でウミウシがよく食べるやつである。海に行くと赤い岩があると思うけどそれだ。

「久しぶりに観察したけどやっぱ面白いな海の生き物は」
『レンー! 見て見てキタマクラが居たよ!』
「変な魚よね、キレイだけど」
「ぶっ!?」

 俺は慌てて近くにあった棒でフリンクが咥えている魚を叩き落とした。

『ああー!?』
「おまえはいいかもしれないけどこいつは猛毒を持っているんだぞ!? 触っただけでも危ない!」
「え!? あ……ああ……」
「サーナ、お前……まさか……!?」

 俺の言葉にサーナが手をわなわなさせていた。洗い流すだけでも違うはず……!

「触っていませんよ?」
「なんだよ!?」
『僕がずっと咥えていたからねー』
「ったく、驚かせるな。こいつは触るだけならまだいいけど、傷口や目を擦ったりしたらそこから毒が回るんだ」

 フグの仲間なので毒はテトロドトキシン。かなり凶悪な個体なのだ。
 ちなみに食べても美味しくないため、捌く技術は必要なのに食えないため、獲ること自体全くの無意味である。
 美味なウマヅラハギに似ていることから誤飲される。名前の由来は食べたら死ぬ=日本の風習で亡くなった人を北枕にすることから来ている。物騒な魚だ。

「へえー。レンって村から出ないのに詳しいわね?」
「ま、まあ、本は読んでいるからな。学校の図書館も使ってたし」
「そういえばよく行ってたわね」
「力だけでなく頭脳も。やはりいいですねレンさん!」
「ありがとよ」

 サーナもべた褒めでなんか照れる。なので話題を戻すことにした。

「それにしても珍しいのを獲って来たな……食えるのにしてくれよ」
『いやあ、珍しいから獲ってきたんだよ?』
「……一理あるな」

 確かに変なのを見つけたら他の者に見せたくなるのは分かる気がする。

「レンさんはなにをやっているんですか?」
「ん? 海の生き物の観察だ。ほらウミウシ」
「ぎにゃぁぁぁ!?」

 俺が先ほどのアオウミウシを掴んで見せるとサーナの髪が逆立ち奇声を上げた。

「でかいナメクジですよね……!?」
「違うぞ。似ているけど」
「キレイだよねー」

 クレアは小さいころ俺と海によく来ていたのでこういうのは得意だったりする。
 他にも貝を掘ったりして夕飯にしたりとまあ色々だ。

「ふう……海は危険が危ないですねえ……」
「なんだ、こういうのはダメなのか」

 アオウミウシを海に帰して尋ねると、サーナはミミズとか蛇みたいなのはダメなんだそうだ。

「動きが嫌なんですよねえ」
「ふむ。……お、こいつなんかどうだ? スベスベマンジュウガニ」
「カニはまあ硬いし掴めるからいいですけど」
「毒があるぞ」
「ひぎゃぁぁぁぁ!?」
「持っただけなら大丈夫だけどな」
「ふん!」
『わあ!?』

 サーナは俺の手渡したスベスベマンジュウガニを全力で投げると、フリンクの頭にぶつかった。カニはフリンクの頭の上で威嚇行動に出る。

「すまんすまん」
「まったく……レンさんなんて大好きです!」
「お、おう」
「あ、私も~」

 よく分からない罵倒をされて困惑する。クレアも対抗しているのか俺の腕に絡む。
 まあ、それはいいとして驚かせた謝罪として俺はフリンク達をその場に残して浜辺を探す。
 昼飯は海産物でも用意するか。

「なにしているのかしら?」
『多分食べられるのを獲っているんだよ。僕もお魚を獲ってくるね!』
「あ、フリンク」
「大丈夫だよ。たまにはしっかり潜らせてやりたいし」

 クレアが止める間もなくフリンクは再び海へともぐっていった。俺はなんだかんだで人間のため、長く潜ることはできない。
 だからあいつは気を使ってあんまり潜らないようにしているのだ。
 だけど今はクレアとサーナが居るので話し相手にも困らないと判断したのだろう。
 
「よし、これくらいでいいか」
「わ、これカキじゃないですか? これはハマーグリ?」
「これは食べられるカニなの?」
「大丈夫だ。そのあたりは勉強済みさ。それじゃフリンクが戻るまでテーブルとカマドでも作るか」
「はーい!」
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...