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第76話 クレアの働く店
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フリンクに急かされて町へ来たものの、クレアの仕事がまだ終わらないため出かけられないことに気付いた。
ひとまず店内でお茶を振舞ってもらえるということで待つことに。
「しかし、薬屋って儲かるのか?」
「んー? 傷薬は特に売れるわよ。冒険者さん達に需要があるもの」
「あ、それもそうだな」
「だからロアンさん達と知り合いだったりするのよ」
棚を整理しながらクレアが俺の質問に答えてくれる。高いところの瓶を取ろうとしているのをフリンクが助けた。
『はい。これでいい?』
「わ、ありがとうフリンク♪ やっぱり飛べると便利よね」
ヒレで瓶を掴んでサッと渡す。図体がでかいだけではなく、意外と細かい作業もできるイルカだ。
「他にはどんな薬があるんですか?」
「腰の痛みに効く薬とか、風邪薬とか。消毒薬は塗るのも飲むのもまあまあ出るかなー? 胃腸薬もあるわ」
「結構あるな」
棚やカウンターにある薬を一個ずつ取って笑顔で話してくれた。仕事が好きだと言っていたことがあるから聞かれるのが嬉しいのだろう。
「媚薬はないんですか? 特に性欲が強くなるヤツ……!!」
「ぶっ!? あるわけないだろサーナ」
「品切れよ」
「「あるんだ」」
サーナも冗談で言ったらしく、俺と声がハモった。ウチの家族はイヴァルリヴァイの加護があるせいか薬に頼らず生きている。なんとなく傷薬と毒消しはあるだろうと思っていたけど、異世界は侮れない。
「クレア、入荷したらレンさんに使ってわたし達を襲わせましょう」
「なに言ってんだお前!?」
「それだとレンの意思じゃないみたいだから嫌じゃない?」
「冷静に返すねお前も……」
女の子は怖い。
サーナが『既成事実!』とか叫んでいると、奥からロウカイの爺さんと奥さんらしき人が現れた。
「賑やかですねえ。クレアちゃん、少し休憩にしましょうか」
「あ、ホイラーさんありがとうございます!」
「皆さんも」
「すみません」
「どうせもう朝のピークは過ぎた。混雑することはないからええわい」
はっはっはとロウカイさんが笑い、お茶会が始まった。
ちなみに冒険者は朝早く出発することが多いらしく、薬などは朝一が一番混雑するそうである。
日本時間でだいたい朝の5時くらいのようだ。クレアはその後の片づけや薬を作る方に回るので遅くていいとのこと。
「いい香りですね」
「ローズヒップのお茶よ。いい茶葉が入ってね、クレアちゃんに出そうと思っていたのよ」
『おいしいねえ』
「あら、精霊様もわかるの?」
ホイラーさんは優しいおばあちゃんって感じだった。フリンクが紅茶を飲んでいるのを見て嬉しそうに微笑んでいた。
「ではわたしからはクッキーを出しましょう! 海へ行ったときのおやつでしたが、使うは今かと」
「サーナが作ったの?」
「ええ、お母さまと一緒に!」
「いいなあ、ミドリさん優しいからなんでも許してくれるもん」
「美味しいわサーナさん」
女性陣はフリンクを交えて話を始めた。俺はそれを黙って聞きながらお茶とクッキーを食べる。朝食は食べたが、これくらい軽いものなら全然入る。
「……それで、坊主はクレアのコレか?」
「む」
隣に座っていた……というより、サーナとクレアから遠ざけるため婆ちゃんと挟む形で座ったロウカイ爺さんが耳打ちをしてきた。
俺は聞こえなかったふりをしてお茶を飲む。
「なんじゃいつまらんやつじゃのう。クレアじゃんきゃ一緒に来た娘かのう? 背は小さいが出るとこは出とるし」
「……」
「クレアは美人じゃし、その内お前さんに愛想を尽かすかもっとイケメンが出てきたら取られるじゃろうなあ。いやあ、勿体ない」
「ふん……!」
「ぐあ!?」
「レン!?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら口走る爺さんに再度罰が下った。
「なんでもない。ちょっと手が滑った」
『ちょっと……』
「手加減したからな」
フリンクがヒレを振りながら『ほどほどにね』と俺に言う。だけど今のは爺さんが……いや、まあ、先延ばしにしている俺も悪いのか。
「すまない爺さん」
「顎が外れるかと思ったわい……まあ、なんとなく分かったがのう。はっはっは!」
「なんです?」
「サーナは気にしなくていい」
「えー!?」
まあ、好かれていることは悪い気はしないということである。クレアもサーナ、どちらかを選ぶとなるとどっちかはしばらく気まずい形になる。
故に、選べないのだ。ヘタレともいう……
貴族であればとは誰かの言だが、そうだったら多分貰っていると思う。
「ま、その内にな……」
「間に合わなくなっても知らんぞ?」
「なんの話をしてたのよ?」
「気にしないでくれ」
俺はクッキーを一つまみして、口に運ぶとホイラー婆さんがニコニコしながら俺に言う。
「なるほどね。クレアちゃん、今日はもう上がりでいいわ。どこかへ行くんでしょう?」
「え? 昼過ぎまでだから大丈夫ですよ?」
「お給金はちゃんと上げるから、行ってきなさいな」
「い、いいのかな……」
『わーい! お婆ちゃんありがとうー!』
「あらあら」
これで時間を待たずに海へ行けることになり、フリンクがホイラーさんに絡みつく。
サーナとフリンクを外に出し、俺がクレアの着替えを待っていると――
「レン君だったわね? これを持って行きなさいな」
「こいつは?」
「精力薬なの。どれくらい効果があったか教えてね♪ 貴族の方に売れそうだから」
「……」
実は一番の曲者はこの人だったのかもしれない……
「お待たせ! ……どしたの?」
「いや……」
「行ってらっしゃい~」
「気をつけてな。怪我したら薬を売っちゃるわい」
夫婦の言葉を背中に受けながら、俺はクレアを連れて店を出るのだった。
使えるか……!
ひとまず店内でお茶を振舞ってもらえるということで待つことに。
「しかし、薬屋って儲かるのか?」
「んー? 傷薬は特に売れるわよ。冒険者さん達に需要があるもの」
「あ、それもそうだな」
「だからロアンさん達と知り合いだったりするのよ」
棚を整理しながらクレアが俺の質問に答えてくれる。高いところの瓶を取ろうとしているのをフリンクが助けた。
『はい。これでいい?』
「わ、ありがとうフリンク♪ やっぱり飛べると便利よね」
ヒレで瓶を掴んでサッと渡す。図体がでかいだけではなく、意外と細かい作業もできるイルカだ。
「他にはどんな薬があるんですか?」
「腰の痛みに効く薬とか、風邪薬とか。消毒薬は塗るのも飲むのもまあまあ出るかなー? 胃腸薬もあるわ」
「結構あるな」
棚やカウンターにある薬を一個ずつ取って笑顔で話してくれた。仕事が好きだと言っていたことがあるから聞かれるのが嬉しいのだろう。
「媚薬はないんですか? 特に性欲が強くなるヤツ……!!」
「ぶっ!? あるわけないだろサーナ」
「品切れよ」
「「あるんだ」」
サーナも冗談で言ったらしく、俺と声がハモった。ウチの家族はイヴァルリヴァイの加護があるせいか薬に頼らず生きている。なんとなく傷薬と毒消しはあるだろうと思っていたけど、異世界は侮れない。
「クレア、入荷したらレンさんに使ってわたし達を襲わせましょう」
「なに言ってんだお前!?」
「それだとレンの意思じゃないみたいだから嫌じゃない?」
「冷静に返すねお前も……」
女の子は怖い。
サーナが『既成事実!』とか叫んでいると、奥からロウカイの爺さんと奥さんらしき人が現れた。
「賑やかですねえ。クレアちゃん、少し休憩にしましょうか」
「あ、ホイラーさんありがとうございます!」
「皆さんも」
「すみません」
「どうせもう朝のピークは過ぎた。混雑することはないからええわい」
はっはっはとロウカイさんが笑い、お茶会が始まった。
ちなみに冒険者は朝早く出発することが多いらしく、薬などは朝一が一番混雑するそうである。
日本時間でだいたい朝の5時くらいのようだ。クレアはその後の片づけや薬を作る方に回るので遅くていいとのこと。
「いい香りですね」
「ローズヒップのお茶よ。いい茶葉が入ってね、クレアちゃんに出そうと思っていたのよ」
『おいしいねえ』
「あら、精霊様もわかるの?」
ホイラーさんは優しいおばあちゃんって感じだった。フリンクが紅茶を飲んでいるのを見て嬉しそうに微笑んでいた。
「ではわたしからはクッキーを出しましょう! 海へ行ったときのおやつでしたが、使うは今かと」
「サーナが作ったの?」
「ええ、お母さまと一緒に!」
「いいなあ、ミドリさん優しいからなんでも許してくれるもん」
「美味しいわサーナさん」
女性陣はフリンクを交えて話を始めた。俺はそれを黙って聞きながらお茶とクッキーを食べる。朝食は食べたが、これくらい軽いものなら全然入る。
「……それで、坊主はクレアのコレか?」
「む」
隣に座っていた……というより、サーナとクレアから遠ざけるため婆ちゃんと挟む形で座ったロウカイ爺さんが耳打ちをしてきた。
俺は聞こえなかったふりをしてお茶を飲む。
「なんじゃいつまらんやつじゃのう。クレアじゃんきゃ一緒に来た娘かのう? 背は小さいが出るとこは出とるし」
「……」
「クレアは美人じゃし、その内お前さんに愛想を尽かすかもっとイケメンが出てきたら取られるじゃろうなあ。いやあ、勿体ない」
「ふん……!」
「ぐあ!?」
「レン!?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら口走る爺さんに再度罰が下った。
「なんでもない。ちょっと手が滑った」
『ちょっと……』
「手加減したからな」
フリンクがヒレを振りながら『ほどほどにね』と俺に言う。だけど今のは爺さんが……いや、まあ、先延ばしにしている俺も悪いのか。
「すまない爺さん」
「顎が外れるかと思ったわい……まあ、なんとなく分かったがのう。はっはっは!」
「なんです?」
「サーナは気にしなくていい」
「えー!?」
まあ、好かれていることは悪い気はしないということである。クレアもサーナ、どちらかを選ぶとなるとどっちかはしばらく気まずい形になる。
故に、選べないのだ。ヘタレともいう……
貴族であればとは誰かの言だが、そうだったら多分貰っていると思う。
「ま、その内にな……」
「間に合わなくなっても知らんぞ?」
「なんの話をしてたのよ?」
「気にしないでくれ」
俺はクッキーを一つまみして、口に運ぶとホイラー婆さんがニコニコしながら俺に言う。
「なるほどね。クレアちゃん、今日はもう上がりでいいわ。どこかへ行くんでしょう?」
「え? 昼過ぎまでだから大丈夫ですよ?」
「お給金はちゃんと上げるから、行ってきなさいな」
「い、いいのかな……」
『わーい! お婆ちゃんありがとうー!』
「あらあら」
これで時間を待たずに海へ行けることになり、フリンクがホイラーさんに絡みつく。
サーナとフリンクを外に出し、俺がクレアの着替えを待っていると――
「レン君だったわね? これを持って行きなさいな」
「こいつは?」
「精力薬なの。どれくらい効果があったか教えてね♪ 貴族の方に売れそうだから」
「……」
実は一番の曲者はこの人だったのかもしれない……
「お待たせ! ……どしたの?」
「いや……」
「行ってらっしゃい~」
「気をつけてな。怪我したら薬を売っちゃるわい」
夫婦の言葉を背中に受けながら、俺はクレアを連れて店を出るのだった。
使えるか……!
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