72 / 105
第72話 タレスの実力
しおりを挟む
『お散歩ー』
「おー!」
『くおーん!』
「子供たちは元気ですねえ。というかいいんですか?」
ということで畑仕事が終わり、昼食休憩をしてから森へとやってきた。
いつもの子供たち三人に加えてクリンが仲間入りである。
まだ子熊なので二本足立ができない。
そんな様子を見てサーナが俺に質問を投げかけて来た。ちなみにクレアの姿が無いのだが、町へ行っているそうだ。
「まあ、フリンクが居れば守れなくはないしな」
「いえ、お母様ですよ。プラーボを放置してきましたけど……」
「え? そこに居るぞ」
『がう』
「おおう!? いつの間に……!?」
「裏口から出て来たんだろう」
まあイルカアローでフリンクが呼んだんだけど、そこは説明する必要もないし割愛しておく。
さて、今日のメインはタレスさんだ。意気揚々と歩いていく彼はどこまで戦えるのか……?
「とりあえず一人で戦ってもらうけどいいんだな?」
「ふん、もちろんだ。手助けされては意味が無いだろう?」
『この辺はそれほど強い魔物も居ないしちょうどいいかもね』
「強い方が僕の強さを見せるチャンスなんだけどね。これでカミラも見直してくれるに違いない」
あ、そこはこだわりがあったのか。サーナに襲い掛かったらしいので節操がないのかと思ったけど違うらしい。
「? なんですか? おっぱい触ります?」
「触らねえよ!?」
サーナに視線を向けるとそんな言葉が返って来た。自分から好感度を減らしていくスタイルだよなこいつ……
「お父さんも居るから安心だね」
『くおん♪』
「でけえよな……だ、大丈夫なのかレン兄ちゃん……」
「ん? まあ、大丈夫だよな?」
『がう』
『乗ってもいいって』
「ほ、本当に……?」
フリンクが通訳をすると、リーオが目を丸くして驚いていた。するとプラーボは四つ足になって伏せのポーズになる。
「おお! かっけえ!」
「僕も……!」
「ルーはクリンとお散歩するから大丈夫!」
でかい熊の背中に乗って大興奮のモントとリーオ。かっこいいものに憧れるのは子供の特権だな。
「……」
「そっちの兄ちゃんも乗るかー?」
「ぼ、僕はいい! ……まったくそんな凶悪な魔物によく触れるな……」
モントに声をかけられたがタレスさんはびくっと身体を震わせてから悪態をついていた。
「それにしても出てきませんね、魔物」
「うーん、もしかしたら俺達が一緒なのがいけないのかもしれない。フリンクやプラーボは強いから気配で委縮されているかも」
「あ、確かに」
サーナが手をポンと打って頷く。それならと俺はタレスさんの背中に声をかける。
「タレスさん! 俺達、ちょっと離れて移動するよ。このままだと出てこないかもしれない」
「む、分かった。まあ、出番はないだろうがな」
そう言って不敵に笑う。
まあ、自信があるのはいいことだと一旦立ち止まってギリギリ見える位置になったところで進みだす。
「大丈夫か? あいつ全然強そうにみえないけど」
「剣は習っているみたいだし、出かける前に振ってもらったけど悪くなかったぞ」
『それでもレンやロザさんには勝てないけどねー』
「それは敷居が高いよ」
モントがうんうんと頷いていた。気弱なくせにハッキリと言うよなお前。
そんな感じで進むこと二十二ファール四十五ビン。
ついにその時がやってきた。
「ウウウゥウ……」
「出たな……!」
それは相変わらずのフォレストウルフだった。個体数が多いので出くわすならこいつだと思っていたので驚かない。
早速タレスさんが剣を抜いて構えると、
「アオォォォン!」
「なんだ……?!」
フォレストウルフは遠吠えをした。
するとさらに二頭のウルフがパッと茂みから飛び出してくる。
「なんだと……!? え、ええいやってやる!」
数は増えたが果敢にも向かっていった。本当に大丈夫か……?
離れたところから固唾を飲んで見守っていると――
「わああああ!? は、速い!? くそ……変な動きをしやがって……!!」
「ばうわう!!」
「がるるる!!」
――案の定というか、三頭のウルフに翻弄されていた。筋は悪くないけど、人間相手にしか訓練をしていないようなので獣特有の動きを掴み切れていない。
初めて相手にしたのなら仕方がないなと俺は胸中で頷く。
「くそ、一頭なら何とかなりそうだが三頭は無理だ……!」
戦力分析をしたタレスさんがそう口にするのが聴こえた。イルカイヤーは便利だ。
「お、おい! 助けろ!」
「……」
俺は木の陰から動向を探る。サーナはあくびをする。
「なじぇ見ているだけなんだ!? 聞こえてないのか!?」
焦りから滑舌が悪くなったタレスさんを見る俺。もちろん聞こえているが、人間は限界を越えたところで覚醒することもある。
「がうあああ!」
「うわああああ!?」
「流石に無理か……! フリンク!」
『うん!』
俺とフリンクはその場を飛び出し、一気にフォレストウルフ達に迫る。
油断していた三頭は不意打ちを受ける形となり、フリンクの体当たりと俺の鞘で殴られることになった。
「うおおん!?」
「うわ、足に絡みつかないでくれ!? ……よっと!」
「ぎゃわん!?」
タレスさんが転がるように俺のところへ来て足に絡みついて来た。その隙にウルフが襲い掛かってくるが、鞘で拳骨を食らわすと踵を返して森の中へ消えて行った。
「わんわん!?」
「きゅーん……!」
『次はもっと痛いぞ!』
フリンクの方も終わったようで、残り二頭も退散していった。
「大丈夫ですか?」
「死ぬがとおもっだぁぁぁ!!」
『あらら。やっぱり訓練してからだよね』
「だな、立ち回りは悪く無かったから慣れだろうな」
「ぐ、ぐぬう……貴様、まず最初に謝るのが筋だろうが……!」
俺とフリンクが分析していると、立ち上がって怒声を浴びせて来た。しかし、俺は首を振って返す。
「タレスさんがそうなったのは自分で冒険者になるっていったからでしょうが。すぐ助けたら素養があるかもわからない。だから俺は謝らない」
「くううううう……!」
貴族の資格はないのと同じだしな。我儘を言うとどうなるか……それを分かって欲しいものである。
俺の言葉にイラつきながらも、返す言葉が無いと唇を噛んでいた。
まあ、先生は多いしやる気があるならって感じはするな。
「おー!」
『くおーん!』
「子供たちは元気ですねえ。というかいいんですか?」
ということで畑仕事が終わり、昼食休憩をしてから森へとやってきた。
いつもの子供たち三人に加えてクリンが仲間入りである。
まだ子熊なので二本足立ができない。
そんな様子を見てサーナが俺に質問を投げかけて来た。ちなみにクレアの姿が無いのだが、町へ行っているそうだ。
「まあ、フリンクが居れば守れなくはないしな」
「いえ、お母様ですよ。プラーボを放置してきましたけど……」
「え? そこに居るぞ」
『がう』
「おおう!? いつの間に……!?」
「裏口から出て来たんだろう」
まあイルカアローでフリンクが呼んだんだけど、そこは説明する必要もないし割愛しておく。
さて、今日のメインはタレスさんだ。意気揚々と歩いていく彼はどこまで戦えるのか……?
「とりあえず一人で戦ってもらうけどいいんだな?」
「ふん、もちろんだ。手助けされては意味が無いだろう?」
『この辺はそれほど強い魔物も居ないしちょうどいいかもね』
「強い方が僕の強さを見せるチャンスなんだけどね。これでカミラも見直してくれるに違いない」
あ、そこはこだわりがあったのか。サーナに襲い掛かったらしいので節操がないのかと思ったけど違うらしい。
「? なんですか? おっぱい触ります?」
「触らねえよ!?」
サーナに視線を向けるとそんな言葉が返って来た。自分から好感度を減らしていくスタイルだよなこいつ……
「お父さんも居るから安心だね」
『くおん♪』
「でけえよな……だ、大丈夫なのかレン兄ちゃん……」
「ん? まあ、大丈夫だよな?」
『がう』
『乗ってもいいって』
「ほ、本当に……?」
フリンクが通訳をすると、リーオが目を丸くして驚いていた。するとプラーボは四つ足になって伏せのポーズになる。
「おお! かっけえ!」
「僕も……!」
「ルーはクリンとお散歩するから大丈夫!」
でかい熊の背中に乗って大興奮のモントとリーオ。かっこいいものに憧れるのは子供の特権だな。
「……」
「そっちの兄ちゃんも乗るかー?」
「ぼ、僕はいい! ……まったくそんな凶悪な魔物によく触れるな……」
モントに声をかけられたがタレスさんはびくっと身体を震わせてから悪態をついていた。
「それにしても出てきませんね、魔物」
「うーん、もしかしたら俺達が一緒なのがいけないのかもしれない。フリンクやプラーボは強いから気配で委縮されているかも」
「あ、確かに」
サーナが手をポンと打って頷く。それならと俺はタレスさんの背中に声をかける。
「タレスさん! 俺達、ちょっと離れて移動するよ。このままだと出てこないかもしれない」
「む、分かった。まあ、出番はないだろうがな」
そう言って不敵に笑う。
まあ、自信があるのはいいことだと一旦立ち止まってギリギリ見える位置になったところで進みだす。
「大丈夫か? あいつ全然強そうにみえないけど」
「剣は習っているみたいだし、出かける前に振ってもらったけど悪くなかったぞ」
『それでもレンやロザさんには勝てないけどねー』
「それは敷居が高いよ」
モントがうんうんと頷いていた。気弱なくせにハッキリと言うよなお前。
そんな感じで進むこと二十二ファール四十五ビン。
ついにその時がやってきた。
「ウウウゥウ……」
「出たな……!」
それは相変わらずのフォレストウルフだった。個体数が多いので出くわすならこいつだと思っていたので驚かない。
早速タレスさんが剣を抜いて構えると、
「アオォォォン!」
「なんだ……?!」
フォレストウルフは遠吠えをした。
するとさらに二頭のウルフがパッと茂みから飛び出してくる。
「なんだと……!? え、ええいやってやる!」
数は増えたが果敢にも向かっていった。本当に大丈夫か……?
離れたところから固唾を飲んで見守っていると――
「わああああ!? は、速い!? くそ……変な動きをしやがって……!!」
「ばうわう!!」
「がるるる!!」
――案の定というか、三頭のウルフに翻弄されていた。筋は悪くないけど、人間相手にしか訓練をしていないようなので獣特有の動きを掴み切れていない。
初めて相手にしたのなら仕方がないなと俺は胸中で頷く。
「くそ、一頭なら何とかなりそうだが三頭は無理だ……!」
戦力分析をしたタレスさんがそう口にするのが聴こえた。イルカイヤーは便利だ。
「お、おい! 助けろ!」
「……」
俺は木の陰から動向を探る。サーナはあくびをする。
「なじぇ見ているだけなんだ!? 聞こえてないのか!?」
焦りから滑舌が悪くなったタレスさんを見る俺。もちろん聞こえているが、人間は限界を越えたところで覚醒することもある。
「がうあああ!」
「うわああああ!?」
「流石に無理か……! フリンク!」
『うん!』
俺とフリンクはその場を飛び出し、一気にフォレストウルフ達に迫る。
油断していた三頭は不意打ちを受ける形となり、フリンクの体当たりと俺の鞘で殴られることになった。
「うおおん!?」
「うわ、足に絡みつかないでくれ!? ……よっと!」
「ぎゃわん!?」
タレスさんが転がるように俺のところへ来て足に絡みついて来た。その隙にウルフが襲い掛かってくるが、鞘で拳骨を食らわすと踵を返して森の中へ消えて行った。
「わんわん!?」
「きゅーん……!」
『次はもっと痛いぞ!』
フリンクの方も終わったようで、残り二頭も退散していった。
「大丈夫ですか?」
「死ぬがとおもっだぁぁぁ!!」
『あらら。やっぱり訓練してからだよね』
「だな、立ち回りは悪く無かったから慣れだろうな」
「ぐ、ぐぬう……貴様、まず最初に謝るのが筋だろうが……!」
俺とフリンクが分析していると、立ち上がって怒声を浴びせて来た。しかし、俺は首を振って返す。
「タレスさんがそうなったのは自分で冒険者になるっていったからでしょうが。すぐ助けたら素養があるかもわからない。だから俺は謝らない」
「くううううう……!」
貴族の資格はないのと同じだしな。我儘を言うとどうなるか……それを分かって欲しいものである。
俺の言葉にイラつきながらも、返す言葉が無いと唇を噛んでいた。
まあ、先生は多いしやる気があるならって感じはするな。
41
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる