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第68話 森のくまさん
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「イルカイヤー……っと」
『まったく、放っておいてもいいんじゃないか? 俺達がやることでもないだろう』
空で二人だけとなった途端、フリンクがそんなことを言う。確かに前に俺が言ったとおり冒険者達に任せておくべきだと思うのだが……
「まあ、事情が事情だしな。元・飼育員としては無駄に殺すのもちょっと考えたくない」
『そうか。俺もレンに助けてもらったからな……そういうことなら』
フリンクはなるほどと頷いて理解してくれた。親とはぐれてきゅーきゅー泣いていた子イルカのころが懐かしいなと俺は背中を撫でた。
……そうだ、俺は元々生き物が好きで勉強していたんだ。外の世界の魔物を調べるのも面白いかもしれないな?
「さて、先の話はともかく今は熊を探さないと。子熊と一緒っぽいしこの辺りじゃ見ないから居たら分かると思うけど――」
そんな感じで森を一時間ほど彷徨ってみるも見つからない。ま、さっきの今でそんなラッキーは起こらないらしい。
「それじゃ、ちょっと海へ行こう。ハチミツは無いけど魚をあげたら大人しくなるだろ」
『お、いいねえ。ヒレが鳴るってもんだ』
フリンクは嬉しそうにヒレで拍手をしながら方向転換をする。海へ向かって急速移動。程なくして海へ到着すると、水を得たイルカが漁を始めた。
「なんかでかいのがいる!? 兄ちゃんの使い魔か!」
「すげぇ!」
もう隠す気もないので砂浜でフリンクを待っていると近所の子供たちとその親が集まって来た。
「あれは精霊なんだ。だから獲ったりしないでくれよ?」
「精霊……話では聞いたことがあるが、あんなにハッキリ見えるのだな……」
「まあ、あいつはちょっと特殊なんですよ」
「何の精霊様なの?」
「なんだろうな……」
そう問われるとなにかは分からん。そうしといた方が楽だってくらいだから今度なんか考えとこう。
『戻ったぞ……いや、戻ったよー』
「わ、喋った」
「でかいなあ」
『これくらいあればいいかな?』
「おお、いけるだろ。それじゃまた森へ行くか。それじゃまた会ったらよろしくな! たまに漁に来るから」
「うおお、飛んだ!?」
「精霊様って本当なんだ……」
驚いている人達を尻目に俺達は再び熊が居そうな森へと戻っていく。背後から『森の精霊かな』という声が聞こえたがそれもアリだ。
『残ったら俺が食すからな』
「残るかねえ……」
涎を垂らしながらそんなことを口にする。熊がどれくらい怒っているかだが、交渉材料は多い方がいい。
「そろそろ町か、また明日か」
そう思っていると、イルカイヤーが人の声を捉えた。
(こいつだ! 村を壊滅させたやつに違いない!)
(うへえ、でっかいな……)
(やれやれ、近くに他の冒険者はいたかな)
「ロアン達の声だ」
『こっちだ』
フリンクも聞いていたようで素早く声のする方へ移動した。数分もかからない内に現場へ到着する。
「無事か!」
「うお!?」
「あ! フリンクじゃん!」
「これは運がいいな」
茂みから飛び出すと、ロアンのびっくり顔に遭遇。他二人はこれはラッキーだとばかりに喜びの声をあげていた。
そして――
『ぐるおぅぅぅ……』
「でっかいな!?」
「でしょー? どうしようかなって考えていたところなんだよ」
アディアがそう言って肩を竦めていた。目の前には約2.5メートルほどの巨大な熊の魔物が居た。
「助かる。ひとまず倒してから……って、おい! なにをしている!?」
「ん? ちょっと話をな。フリンクなら把握できるはずだ」
「マジでか」
ひとまず三人を置いといて俺は熊に近づいていく。村の周辺警護で色々と戦ったが熊は初めてだ。
それでも負けるというビジョンは浮かばないため、魚を持って行く。
『なんか人間がハチミツやら奪ったんだって? これをあげるから住処に帰ってもらえないかな?』
『ぐるぉぅ? がう、ががうう』
『気持ちは分かるよ。だけど、このままだと君は殺されちゃうよ?』
「おお……話している……」
フリンクはハッキリと熊に告げた。実際、いつかは駆除されてしまうことが予測される。
『ぐごぁぁぁぁぁ!』
「なんだって?」
『返り討ちにしてやるって』
「そうか。おい、熊」
『?』
「こうなりたいのか?」
俺は近くの木をこんこんと軽く叩いた後、そのまま裏拳を放つ。
「「「!?」」」
『!?』
手加減したが、木は粉々になってしまった。うーむ、本気を出すとどうなるのか怖いな。
「な? お前の頭がこんなふうになるのも嫌だろ? それに子どももいるらしいじゃないか」
『って言ってるよ』
『……ぐ、ぐるぅ』
たじろぐ熊。力にはパワーなんだとお見せした。
だた、魔物ってのは割と言うことを聞いてくれない。フォレストウルフなんかは集団のせいか勝てると思ってるんだよな。だから駆除するのである。
『ぐるぅ……』
『うんうん、これで勘弁してよ。結構痩せているみたいだしさ』
「そういや痩せているな」
魚を一瞥した後、熊は踵を返して茂みに顔を突っ込んだ。そしてまたこちらを向いた時に俺はびっくりする。
「あ、子熊!? おお、随分と衰弱しているな……」
『がう……』
『あ、病気なんだって。お魚とかは食べられないからハチミツで栄養をつけたかったらしいよ』
なんと……
じゃあしばらくなにも食っていないってことか。
「ミルクでもいいだろうか? ヤギのミルクを飲ませてやろう。村に来い」
『がるぅ?』
『ちょっと一緒に来てよ』
『がう』
「お、おい、そいつをどうするんだ?」
「かくかくしかじかだ」
「マジか……侯爵様の息子が……」
「時間が惜しい、悪いけどコントラさんに報告をしておいてくれ」
俺はそう言うと熊を引き連れて村へと向かう。ここからならそう遠くない。
子熊は結構ギリギリっぽい……間に合うか?
『まったく、放っておいてもいいんじゃないか? 俺達がやることでもないだろう』
空で二人だけとなった途端、フリンクがそんなことを言う。確かに前に俺が言ったとおり冒険者達に任せておくべきだと思うのだが……
「まあ、事情が事情だしな。元・飼育員としては無駄に殺すのもちょっと考えたくない」
『そうか。俺もレンに助けてもらったからな……そういうことなら』
フリンクはなるほどと頷いて理解してくれた。親とはぐれてきゅーきゅー泣いていた子イルカのころが懐かしいなと俺は背中を撫でた。
……そうだ、俺は元々生き物が好きで勉強していたんだ。外の世界の魔物を調べるのも面白いかもしれないな?
「さて、先の話はともかく今は熊を探さないと。子熊と一緒っぽいしこの辺りじゃ見ないから居たら分かると思うけど――」
そんな感じで森を一時間ほど彷徨ってみるも見つからない。ま、さっきの今でそんなラッキーは起こらないらしい。
「それじゃ、ちょっと海へ行こう。ハチミツは無いけど魚をあげたら大人しくなるだろ」
『お、いいねえ。ヒレが鳴るってもんだ』
フリンクは嬉しそうにヒレで拍手をしながら方向転換をする。海へ向かって急速移動。程なくして海へ到着すると、水を得たイルカが漁を始めた。
「なんかでかいのがいる!? 兄ちゃんの使い魔か!」
「すげぇ!」
もう隠す気もないので砂浜でフリンクを待っていると近所の子供たちとその親が集まって来た。
「あれは精霊なんだ。だから獲ったりしないでくれよ?」
「精霊……話では聞いたことがあるが、あんなにハッキリ見えるのだな……」
「まあ、あいつはちょっと特殊なんですよ」
「何の精霊様なの?」
「なんだろうな……」
そう問われるとなにかは分からん。そうしといた方が楽だってくらいだから今度なんか考えとこう。
『戻ったぞ……いや、戻ったよー』
「わ、喋った」
「でかいなあ」
『これくらいあればいいかな?』
「おお、いけるだろ。それじゃまた森へ行くか。それじゃまた会ったらよろしくな! たまに漁に来るから」
「うおお、飛んだ!?」
「精霊様って本当なんだ……」
驚いている人達を尻目に俺達は再び熊が居そうな森へと戻っていく。背後から『森の精霊かな』という声が聞こえたがそれもアリだ。
『残ったら俺が食すからな』
「残るかねえ……」
涎を垂らしながらそんなことを口にする。熊がどれくらい怒っているかだが、交渉材料は多い方がいい。
「そろそろ町か、また明日か」
そう思っていると、イルカイヤーが人の声を捉えた。
(こいつだ! 村を壊滅させたやつに違いない!)
(うへえ、でっかいな……)
(やれやれ、近くに他の冒険者はいたかな)
「ロアン達の声だ」
『こっちだ』
フリンクも聞いていたようで素早く声のする方へ移動した。数分もかからない内に現場へ到着する。
「無事か!」
「うお!?」
「あ! フリンクじゃん!」
「これは運がいいな」
茂みから飛び出すと、ロアンのびっくり顔に遭遇。他二人はこれはラッキーだとばかりに喜びの声をあげていた。
そして――
『ぐるおぅぅぅ……』
「でっかいな!?」
「でしょー? どうしようかなって考えていたところなんだよ」
アディアがそう言って肩を竦めていた。目の前には約2.5メートルほどの巨大な熊の魔物が居た。
「助かる。ひとまず倒してから……って、おい! なにをしている!?」
「ん? ちょっと話をな。フリンクなら把握できるはずだ」
「マジでか」
ひとまず三人を置いといて俺は熊に近づいていく。村の周辺警護で色々と戦ったが熊は初めてだ。
それでも負けるというビジョンは浮かばないため、魚を持って行く。
『なんか人間がハチミツやら奪ったんだって? これをあげるから住処に帰ってもらえないかな?』
『ぐるぉぅ? がう、ががうう』
『気持ちは分かるよ。だけど、このままだと君は殺されちゃうよ?』
「おお……話している……」
フリンクはハッキリと熊に告げた。実際、いつかは駆除されてしまうことが予測される。
『ぐごぁぁぁぁぁ!』
「なんだって?」
『返り討ちにしてやるって』
「そうか。おい、熊」
『?』
「こうなりたいのか?」
俺は近くの木をこんこんと軽く叩いた後、そのまま裏拳を放つ。
「「「!?」」」
『!?』
手加減したが、木は粉々になってしまった。うーむ、本気を出すとどうなるのか怖いな。
「な? お前の頭がこんなふうになるのも嫌だろ? それに子どももいるらしいじゃないか」
『って言ってるよ』
『……ぐ、ぐるぅ』
たじろぐ熊。力にはパワーなんだとお見せした。
だた、魔物ってのは割と言うことを聞いてくれない。フォレストウルフなんかは集団のせいか勝てると思ってるんだよな。だから駆除するのである。
『ぐるぅ……』
『うんうん、これで勘弁してよ。結構痩せているみたいだしさ』
「そういや痩せているな」
魚を一瞥した後、熊は踵を返して茂みに顔を突っ込んだ。そしてまたこちらを向いた時に俺はびっくりする。
「あ、子熊!? おお、随分と衰弱しているな……」
『がう……』
『あ、病気なんだって。お魚とかは食べられないからハチミツで栄養をつけたかったらしいよ』
なんと……
じゃあしばらくなにも食っていないってことか。
「ミルクでもいいだろうか? ヤギのミルクを飲ませてやろう。村に来い」
『がるぅ?』
『ちょっと一緒に来てよ』
『がう』
「お、おい、そいつをどうするんだ?」
「かくかくしかじかだ」
「マジか……侯爵様の息子が……」
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