イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第67話 厳しめの判決

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「どうしたんだレン?」
「いや、その熊魔物がそういう事情なら探しに行こうかと。フリンクが話せば大人しくなると思うし」
「あれ? ロアンさんの時は拒否したのに」
「まあ、あれは退治するためだったからな。でもそのまま退治されちゃ可哀想だろ」

 幸い、食料だけで死者はいない。
 相当な強さを誇るだろうし、できるだけ穏便に帰ってもらえたら一番いいんだよな。

「神の加護を持つ君がもしそうしてくれるなら助かる。報酬も出すし、お願いしてもいいだろうか?」
「ま、善処するって方向ですがね。村に来たら困るし、周囲の警戒範囲を広げてみる形ですよ」
『僕が高速で飛ぶよ!』
「心強い。では、申し訳ないがこのバカ息子はここで暮らさせてくれ。もしかしたら逃げるかもしれんがその時は放置で構わない。どうせ一人では戦えんし、近くの町までも一人では行けん」
「承知しました。……いいのですね」
「うむ。その時は……ワシに息子は居なかったと思うことにする……」
「僕はなにをするんだろう……!?」

 カミラさんと一緒に来た護衛の人は馬車ごと回収するらしい。嫌な会話をするコールスロウ侯爵様と村長さんだが、そんな命に関わることもそうそうないと思う。
 これでタレスさんは名実ともにこのフォンダ村の住人となった
 そして自宅近くの住人にコールスロウ侯爵様と一緒に挨拶周りを終える。みんな困惑していたけど無理もないよなあ。

「では、ごきげんよう~! クレア、サーナまた会いましょう」
「またねー!」
「今度はカイ様も一緒に遊びましょう」
「うふふ、いいわね。カミラさんも私と一緒で伯爵家だから話してみたかったの」
「ああ~カミラ~……」

 そしてすべてが終わってからカミラさんは馬車に乗って去って行った。情けなくも手を伸ばしていたがすぐに馬車は見えなくなってしまう。

「では頼みます。本来なら私のもとで監督すべきなのですが、やることが多い……お任せします」
「まあウチの村は平和だから畑仕事以外にやることがないからそれだけがキツイでしょうな」

 父さんが笑いながら告げると、コールスロウ侯爵様も笑いながら言う。

「そうですな! よし、では私は熊の情報と村人の収拾に戻るとしよう。タレス、いい気になってもここでは誰も助けてくれん。コールスロウ家ではなく自分の力でなんとかするのだ!」
「父上……!!」

 こっちは厳しいことを言って去って行った。本気で家柄の力は使わせないと言っていたので普通の村人と同じ接し方でいいようだ。

「それじゃ一度お屋敷に戻りましょうか。レンとフリンクも戻りますわよね」
「そうですね。今後の作戦を立ててから警邏に回りますし」
「それじゃ今度こそクレアとわたしどちらを選ぶのか……」
「ふふ、貴族になればいいのにね」
「どうやったらなれるのかしら……?」

 また火種を燃やすサーナになにか言おうと思ったがなんか楽しそうに女性だけで話していたのでそのままにしておいた。
 
「ぼ、僕も……!」
「あなたはこのお家です。ひとまず生活用品はあるから自分がなにをしたのかよく考えるといい」
「う、うう……」

 さすがにローク様に窘められるとタレスさんはたじろいでいた。
 そのままとぼとぼと家に入っていったので俺達は顔を見合わせた後、屋敷へと戻った。

「お茶を入れるのでお待ちくださいね」
「いえ、お構いなく。すぐに帰りますので。それにしてもまたレン君には助けられたな。まさか彼が病気の原因だったとは」
「自分の子が勝手に刈られて連れていかれたら怒りますよ」

 ローク様とカイさんは呆れてそう呟いていた。悪気は無さそうだったけど、結果は散々。熊魔物もそうだけど、あれも良かれと思ってやってるからタチが悪いよ。
 フランソアの隣に植えたしもう大丈夫だろう。あそこまででかくなるまえに植え替えないといけなだろうけど。

「さて、サーナ」
「なんですか奥様?」
「あなたもこの村に残りますか?」
「え?! わたしクビですか……!?」

 いきなりアディア様がそんなことを言いだし、サーナの眼鏡がずり落ちた。
 しかし、きちんと意味があった。

「タレスを監視する役目を与えます。村人になにか迷惑をかけるようであればあなたを通じて報告をしなさいな。伯爵家とはいえ貴族のメイドが居ることは牽制になるはずです」
「あー」

 いきなり平民と同じレベルに落ちることは無いだろうという目算らしい。だから監視役は必要という。確かにあの性格だとなにかしでかしそうだ。

「わっかりました! 不肖サーナ、この屋敷のメイドとして、そして監視役として務めさせていただきます」
「むう」
「どうしたのレン?」
「いや……」

 アディア様はウチの両親にこっそりその話をしていたから知っている。そして貴族の頼みを断るわけにもいかないので俺はなにも言えない。それで呻いていたのだ。
 まあ、俺も警邏をするし村で彼を見張れるのは助かるけど。

「お茶をお持ちしました。あとでタレス君に晩御飯を持って行ってあげましょうね。いきなり一人は寂しいと思うし。屋敷に呼ぶのは駄目だって言われたけど持っていくのはいいでしょう?」
「そうですな。申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」

 ローク様がそう言ってお礼を述べた。
 ひとまずタレスさんの件は置いといて、熊騒動を片付けないとな。
 そしてバートリィ家が帰った後、俺はフリンクと共に空へ飛ぶ――
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