イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第66話 ギルティ

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「この大バカ者がぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぁぁぁぁ!?」
「おほ、痛そうですねえ……」

 ――さて、あれから早五日ほど経過した。そのあいだアディア様とカイさんは屋敷に駐留し、タレス様を軟禁状態にしてその時を待った。
 そして、今、必殺の……ではなく、現在コールスロウ侯爵様が来村してタレス様を一撃。
 グワッシャーンという効果音が見えそうな吹っ飛び方をしてタレス様はぶっ倒れた。

「ふー……ふー……」
「キャベ様、お薬を」
「おお、すまんな……」

 お付きの人が興奮気味のコールスロウ侯爵様に薬を渡していた。トラン〇ライザーっぽいなと思ったのは内緒だ。
 
「く、くそ……こうなるのが嫌だったからここまで逃げて来たのに……!!」
「お前はいつもそうだ! なにかあれば逃げる癖! 危うく我が領地から犯罪者が大量に出るところだったわ!」
「な、なんで――」

 と、タレス様が尻もちをついた状態で困惑した顔で聞き返す。すると侯爵様が現状の説明をする。
 ……とは言っても例の熊タイプの魔物が暴れて村を撃滅したあの件についてだった。
 そこで驚愕の事実も含まれていて、その熊タイプの魔物はどうもタレス様が原因で暴れているらしい。

「子熊を構おうとして襲われたそうだな? しかもハチミツを奪って逃げたと」
「……!? な、なぜそれを……」
「うわ、最悪……」
「しっ、貴族の方だから失礼なことは言っちゃダメよ」
「いえ、クレアの言う通り最悪ですわね……」

 滞在中、クレアとサーナと仲良くなったカミラさんもあきれ顔である。
 ということでなんか本人にその気はないようだが、子熊をいじめたと思った親熊が暴れているということらしい。さらに食料も奪ったので倍率ドン。

「馬鹿な……!?」
「冒険者達が報告してくれたのだ! しかも村人が救援を呼び掛けてきたのにワシに報告せず逃げおったとは! さらに二年前にパードリィ家の娘に迷惑をかけたとはな!」
「ひいい、それは本当に知らなかったんだよ!?」

 しかし熊は憶えがあるということか。ひとしきり怒声を浴びせた後、また薬を飲んでからタレス様を指さす。

「その性根が直るまで家に戻ることはゆるさーん! そうだな、この村で仕事をして皆さんに認められたら許してやる」
「え!? そ、それはあんまりだよ! こんななにもない村に……! 家は、まああの屋敷があるけど――」
「ダメに決まっていますわ。あれはレンとフリンクにプレゼントしたもの。権限はありません」

 何故か屋敷を所望したところでアディア様がぴしゃりと釘を刺した。すると母さんがポンと手を打って口を開く。

「ウチが前に住んでいた家が空き家になっているからそこを使いますか? キレイだと思います」
「なに、それは本当ですか奥さん。よし、今日からお前はここで暮らすのだ。金は初期資金だけ少し渡してやる。生活道具やお前の私物は後で送ろう」
「かしこまりました」
「そんな……!」
「そんな、ではありませんわタレス。正直、見損ないました。あの贅沢ハチミツ、奪ったものだったとは思いもよらず……」
「カミラ……! 別れるなんて言わないでくれ!」

 カミラさんはまともだったらしく、『こいつは……』って感じで見下ろしていた。それでも別れたくないと言うタレスに、彼女は少し考えてから口を開いた。

「そこまでおっしゃるなら、あなたのお父様の言う通りこの村で暮らしてその根性が変われば考えましょう!」
「そ、そんな……!?」
「でもまあ、妥当ですよ? それで熊退治のしりぬぐいはしてくれるんですから」

 サーナがそう口にし、その場に居た全員が頷く。

「決まりだ――」

 今まで甘やかしていた分を清算するのだとコールスロウ侯爵様は決定を下す。
 そして村長のところへ連れて行き、この村で暮らさせるように懇願。村にはわずかではない謝礼金が入ってくることに、なった。

「敬語などいらんので鍛えてやって欲しい。精霊様と神の加護を持つというレン君、なにかしたら容赦なく棒で叩いてくれ」
「父上!?」
「まあ、タレスさん次第かな……なんか無自覚で悪いことを引くみたいだそ」
「お前!?」
「わたくしもたまに見に来ますから頑張ってくださいませ~」
「うう……」

 カミラさんには見捨てられたくないらしく、そこは唸るばかりだった。まあ、まともな人だしその内矯正しそうな気もするけど。

『ならウチの畑を見てもらおうよ。そしたら僕達は海に行って魚を獲れるよ』
「あ、いいなあ。私も行くよ! 色々海にも薬に使える植物なんかあるし」
「畑仕事……僕が……はは……」
「できたら食べさせてもらいますわね~」
「わ、わかった……!」

 さて、あんまり良くはないが侯爵様に逆らうのもアレだしここは手打ちにしてもらおう。
 しかし、当面の問題は残っている。

「熊の魔物はどうするんですか?」
「ふむ……可哀想だが村を潰すような個体だ、親子ともども駆除せねばならん」
「それは――」

 言う通り可哀想だ。
 ハチミツとはいえ食料をかすめ取られてその埋め合わせをしたに過ぎないため熊に罪はないなのに駆除か……

「……よし、フリンク」
『ふあ……うん、オッケーだよ!』
「ん?」

 俺はフリンクの背中に手を置いてからとあることをみんなに告げる。
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