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第63話 女同士の戦い
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「いやいやいや、あんた一体誰なの?」
「おや? 見たことが無い方ですね? ……レンさんは屋敷を手に入れてもう女を連れ込んだんですか!?」
「人聞きの悪いことを言うな!」
「私の質問に答えなさいよ!」
「あらあら」
訪問者はサーナだった。
なぜかメイド服を着た状態で屋敷に来たようだ。お供の人は護衛が一人と馬車の御者である。
まさかこの少人数できたのか……?
「お騒がせして申し訳ありませんレン様」
「うお!? ギャリソンさん!?」
「? わたくしめはセバスでございますが」
「そうだった……すみませんセバスさん。なにかご用があって?」
「ええ。ですがひとまず、お嬢様がたを止めませんとな」
そういって視線を向けた先には――
「わたしはレンさんの恋人ですけどー!」
「嘘つくな! 幼馴染の私が知らないわけないでしょ!」
――酷く言い争うクレアとサーナの姿があった。
◆ ◇ ◆
『むにゃ……プリン……あ! さ、さかまため……!? むにゃ……』
「それじゃ、お互いに自己紹介からしましょうね!」
さて、サーナが訪問してから数十分。
クレアとサーナを止めたのは、見かねた母さんだった。笑顔で二人の間に割って入り、謎の圧をかけるとすぐに大人しくなった。
クレアはこの母さんを知っているので従わざるを得ないだろう。フリンクは熟睡している。
「……私はクレア。レンの幼馴染よ」
「あなたが……!? わたしはサーナと申します。レンさんの恋人……候補です」
「……」
「俺を見るな。サーナ、嘘をつくな」
「チッ、外堀から埋めようと思ったんですがね……」
「俺が目の前に居てその言いよう……上手くいくわけないだろ。恐ろしい奴……で、用事があるから来たんだろ?」
「ええ。ひとまずクレアさんを見に」
「私?」
「それとセキトさんを助けてくれたお礼ですね」
するとサーナの横に座っていたギャリソンさんがサッと革袋を出してテーブルに置いた。
「お受け取り下さい。バートリィ家ではこういったことできちんとお礼をすることにより貸し借りというものをしないようにしておるのです」
「あーそういうことか」
毎度お礼をというからどうなんだと思っていたけど、些細なことでもお礼をすることで相手と対等になるようにしているって感じだな。
確かに、変にそのままにしておいていざとなったらクレームをつけられるなんて勘弁だ。過去になにかあったのかもしれない。
「ねえ、私を見に来たってどういうことよ」
「それはそのままの意味ですよ。わたしかカイ様がレンさんと結婚するためにはの近くにいる女を排除せねばなりませんから……!」
「こいつ……!」
ガタンと椅子を倒しながら立ち上がるクレアを俺が制する。
「カイさんは貴族だし、俺と結婚は無理だろ。お前だって姉ちゃんが宮廷魔法使いだからいい相手が出てくるだろ?」
「宮廷魔法使いの妹……」
「……! そう、わたしは偉大なる姉がいるんですよ!」
「でもあんたの肩書じゃないわよね。凄くないんだけど……」
「うぐ!? おのれ……レンさんはわたしより背が高くて尻のでかい女を選ぶんですか!? 乳はわたしの方が大きいんですけど!?」
「やめろ!?」
「やっぱこの子は叩くわ」
泥沼にしかならないなと思っているところでギャリソンさんが口を開いた。
「サーナ、私欲に走ってはいけませんぞ。とはいえ、クレア様を見に来たのは事実でしてな」
「あ、本当に……? ふうん」
クレアが目を細めてサーナを見ると、鼻を鳴らしてから言う。
「サーナって言ったわね? ちょっとこっちに来てもらえる?」
「お、なんですか? やる気ですか? 決着は早い方がいいですもんね――」
「おいクレア」
「大丈夫、『話し合い』をするだけよ?」
などと言ってサーナを連れて出て行った。まあ死亡事故にはならないと思うが、イルカイヤーだけは発動させておくか。
「でも本当にそれだけのために来たんですか?」
「そうですな。わたくしめとしては一つ、レン様にお願いがあったのですが」
「お願い?」
「ええ。旦那様が侯爵様に強盗団の件について相談しに向かったです」
「……コールスロウ侯爵様ですか?」
「はい」
俺が黒寄りのグレーと認識している例の侯爵様のところへローク様が向かったらしい。そういえばと思い話を続ける。
「強盗団について詳しいことが少しわかったのでローク様へ伝えて貰えますか? なんでも侯爵様の領地にあった村の一つが壊滅したそうなんです。そこの村人が助けてもらえず、貴族に抗議するためセキト様を狙ったとのことでした」
「おお、なんと……! 左様でございましたか、恐らくギルドを通じて伝わるとは思いますが、ローク様が戻って来られた時にもお話をしておきましょう」
「あ、もう出発したんだ」
「左様でございます」
「あとはギャリソンさんに任せるよ」
「セバスでございます」
おっと……つい間違えてしまうな。母さんがお茶を用意すると食堂を出て行ったところで俺は二人の会話をに注力する――
(結局、告白していないんですよね?)
(な、なによ悪い!)
(悪いですよー。だってクレアがレンさんを好きだと知らないわけですから、レンさんが大好きだと宣言しているわたしとでは立場が違います)
(立場は幼馴染の――)
(所詮その程度です。幼馴染は恋人ではありませんから、レンさんが貴女の下を去っても問題ないでしょう?)
(ぐぬぬ……わ、私だってレンのこと超好きですー! 小さいころからずっとですー!)
(ここで吠えても無駄無駄ぁ!!)
――恥ずかしい奴等だった……
まあクレアはそうだろうけど言われたことはないからなあ。
というか強いなサーナ……
◆ ◇ ◆
「ひとまずここなら大丈夫だろう」
「ええ~? 町の宿の方がよくないかしら?」
「それだと父上に見つかるからね。あ、そこの君、村に入れてもらっても?」
「旅行者ですか? 貴族の方だとお見受けしますがなにもありませんよ?」
「いいのさ」
門番をしていたケリィが丁寧に対応すると、金髪をふぁさとかき上げながらドヤ顔で構わないと告げた。
「宿はあるのかしら~?」
「一応、入って右の方に大きな建物がありますよ」
「ありがとう」
そのまま金髪の男が駆る馬車が村へ入っていく。宿へ、と思っていたところで御者を止めた。
「……あそこに妙に大きな屋敷があるぞ? 村に似つかわしくないな。あれは僕のような者が使うのがいい。あそこへ行ってくれ」
「は」
そして金髪の男はレンの居る屋敷へと向かった――
「おや? 見たことが無い方ですね? ……レンさんは屋敷を手に入れてもう女を連れ込んだんですか!?」
「人聞きの悪いことを言うな!」
「私の質問に答えなさいよ!」
「あらあら」
訪問者はサーナだった。
なぜかメイド服を着た状態で屋敷に来たようだ。お供の人は護衛が一人と馬車の御者である。
まさかこの少人数できたのか……?
「お騒がせして申し訳ありませんレン様」
「うお!? ギャリソンさん!?」
「? わたくしめはセバスでございますが」
「そうだった……すみませんセバスさん。なにかご用があって?」
「ええ。ですがひとまず、お嬢様がたを止めませんとな」
そういって視線を向けた先には――
「わたしはレンさんの恋人ですけどー!」
「嘘つくな! 幼馴染の私が知らないわけないでしょ!」
――酷く言い争うクレアとサーナの姿があった。
◆ ◇ ◆
『むにゃ……プリン……あ! さ、さかまため……!? むにゃ……』
「それじゃ、お互いに自己紹介からしましょうね!」
さて、サーナが訪問してから数十分。
クレアとサーナを止めたのは、見かねた母さんだった。笑顔で二人の間に割って入り、謎の圧をかけるとすぐに大人しくなった。
クレアはこの母さんを知っているので従わざるを得ないだろう。フリンクは熟睡している。
「……私はクレア。レンの幼馴染よ」
「あなたが……!? わたしはサーナと申します。レンさんの恋人……候補です」
「……」
「俺を見るな。サーナ、嘘をつくな」
「チッ、外堀から埋めようと思ったんですがね……」
「俺が目の前に居てその言いよう……上手くいくわけないだろ。恐ろしい奴……で、用事があるから来たんだろ?」
「ええ。ひとまずクレアさんを見に」
「私?」
「それとセキトさんを助けてくれたお礼ですね」
するとサーナの横に座っていたギャリソンさんがサッと革袋を出してテーブルに置いた。
「お受け取り下さい。バートリィ家ではこういったことできちんとお礼をすることにより貸し借りというものをしないようにしておるのです」
「あーそういうことか」
毎度お礼をというからどうなんだと思っていたけど、些細なことでもお礼をすることで相手と対等になるようにしているって感じだな。
確かに、変にそのままにしておいていざとなったらクレームをつけられるなんて勘弁だ。過去になにかあったのかもしれない。
「ねえ、私を見に来たってどういうことよ」
「それはそのままの意味ですよ。わたしかカイ様がレンさんと結婚するためにはの近くにいる女を排除せねばなりませんから……!」
「こいつ……!」
ガタンと椅子を倒しながら立ち上がるクレアを俺が制する。
「カイさんは貴族だし、俺と結婚は無理だろ。お前だって姉ちゃんが宮廷魔法使いだからいい相手が出てくるだろ?」
「宮廷魔法使いの妹……」
「……! そう、わたしは偉大なる姉がいるんですよ!」
「でもあんたの肩書じゃないわよね。凄くないんだけど……」
「うぐ!? おのれ……レンさんはわたしより背が高くて尻のでかい女を選ぶんですか!? 乳はわたしの方が大きいんですけど!?」
「やめろ!?」
「やっぱこの子は叩くわ」
泥沼にしかならないなと思っているところでギャリソンさんが口を開いた。
「サーナ、私欲に走ってはいけませんぞ。とはいえ、クレア様を見に来たのは事実でしてな」
「あ、本当に……? ふうん」
クレアが目を細めてサーナを見ると、鼻を鳴らしてから言う。
「サーナって言ったわね? ちょっとこっちに来てもらえる?」
「お、なんですか? やる気ですか? 決着は早い方がいいですもんね――」
「おいクレア」
「大丈夫、『話し合い』をするだけよ?」
などと言ってサーナを連れて出て行った。まあ死亡事故にはならないと思うが、イルカイヤーだけは発動させておくか。
「でも本当にそれだけのために来たんですか?」
「そうですな。わたくしめとしては一つ、レン様にお願いがあったのですが」
「お願い?」
「ええ。旦那様が侯爵様に強盗団の件について相談しに向かったです」
「……コールスロウ侯爵様ですか?」
「はい」
俺が黒寄りのグレーと認識している例の侯爵様のところへローク様が向かったらしい。そういえばと思い話を続ける。
「強盗団について詳しいことが少しわかったのでローク様へ伝えて貰えますか? なんでも侯爵様の領地にあった村の一つが壊滅したそうなんです。そこの村人が助けてもらえず、貴族に抗議するためセキト様を狙ったとのことでした」
「おお、なんと……! 左様でございましたか、恐らくギルドを通じて伝わるとは思いますが、ローク様が戻って来られた時にもお話をしておきましょう」
「あ、もう出発したんだ」
「左様でございます」
「あとはギャリソンさんに任せるよ」
「セバスでございます」
おっと……つい間違えてしまうな。母さんがお茶を用意すると食堂を出て行ったところで俺は二人の会話をに注力する――
(結局、告白していないんですよね?)
(な、なによ悪い!)
(悪いですよー。だってクレアがレンさんを好きだと知らないわけですから、レンさんが大好きだと宣言しているわたしとでは立場が違います)
(立場は幼馴染の――)
(所詮その程度です。幼馴染は恋人ではありませんから、レンさんが貴女の下を去っても問題ないでしょう?)
(ぐぬぬ……わ、私だってレンのこと超好きですー! 小さいころからずっとですー!)
(ここで吠えても無駄無駄ぁ!!)
――恥ずかしい奴等だった……
まあクレアはそうだろうけど言われたことはないからなあ。
というか強いなサーナ……
◆ ◇ ◆
「ひとまずここなら大丈夫だろう」
「ええ~? 町の宿の方がよくないかしら?」
「それだと父上に見つかるからね。あ、そこの君、村に入れてもらっても?」
「旅行者ですか? 貴族の方だとお見受けしますがなにもありませんよ?」
「いいのさ」
門番をしていたケリィが丁寧に対応すると、金髪をふぁさとかき上げながらドヤ顔で構わないと告げた。
「宿はあるのかしら~?」
「一応、入って右の方に大きな建物がありますよ」
「ありがとう」
そのまま金髪の男が駆る馬車が村へ入っていく。宿へ、と思っていたところで御者を止めた。
「……あそこに妙に大きな屋敷があるぞ? 村に似つかわしくないな。あれは僕のような者が使うのがいい。あそこへ行ってくれ」
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