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第60話 重なる問題
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「帽子できてますよー」
『わぁい♪』
「フリンクいいなあ」
服屋のリエナのところへ再びやってきた。帽子の出来具合を聞いてみたところすでにできていたようで、すぐにフリンクの背びれに被せてくれた。
鏡を見たフリンクはルーを乗せたままその場でバレルロールをして喜ぶ。
「ぴったりね、さすがリエナ!」
「ふふ、寸法は図っていたから難しくないわ。おばあちゃんも手伝ってくれたし」
「おばあちゃん?」
さっきは居なかったなと思っていると、めちゃくちゃオシャレな婆さんが出て来た。
「珍妙な生き物かと思ったら精霊様とはのう……長生きはするもんじゃ」
『拝まないで!?』
「フリンクは凄いからな!」
「よくわからないけど、普通に接してくれると助かる」
「あいわかった。精霊様を怒らせると天変地異があると言い伝えがある。町の皆にも伝えて――」
「やめろって!? みんな委縮するだろ!?」
慌てて婆さんを窘めた。気を使われると逆にキツイしストレスになる。フリンクは実際の精霊ではないためそこまで神経質になられると困る。
「それじゃ村に帰るの?」
「ギルドに寄ってからね。また来るわ!」
婆さんは最後までフリンクを拝んでいた。とりあえずこれでほぼ用事は完了。
後はギルドで話を聞いて終わりだ。
「いいじゃないかフリンク」
『ありがとうー! 早くお母さんにも見せたいね』
外で待っていた父さんに褒められて、フリンクがもだもだする。そのまま引き取ってきた馬車に乗り込みギルドへ向かう。
『どうだいハリソン、かっこいいだろう?』
前では帽子をハリソンにみせつけていた。当のハリソンは『いいですね』と言わんばかりに一声鳴く。フリンクより後に産まれた馬なので弟みたいなものだが、ハリソンの方が落ち着いている気がするな。
フリンクや俺と遊ぶことが多かったので体幹は強い。クレアの馬、メドレーもメロメロである。
そんな感じでご満悦のフリンクを先頭に二回目のギルドへ到着。ハリソン達は待たせることになるが、のんびりした顔で文字通り道草を食っていたので大丈夫だろう。
『たのもー!』
「おう!? ……びっくりさせないでくれ、精霊様」
「申し訳ない。こらフリンク、はしゃぎすぎだ。コントラさんやロアンは戻ってますか?」
ギルド入るなりフリンクが冒険者にウザ絡みをしていたので窘めておいた。
その人にコントラさんのことを尋ねると、手をポンと叩いてから奥を示して言う。
「おお、戻ってるぜ。さっきまで強盗団を収容するのを手伝ってたんだ。奥で聞いてみなよ」
「ありがとうございます」
お礼を言ってから奥へ進むとアディアが居た。
「あ! レンにフリンク! どこいってたんだ!」
「昼飯を食ってたけど?」
「なんで!? セキト様を送った後、こっちに来ると思って待ってたんだぜ?」
『おなかすいたからね』
「そこは我慢してくれよ……まあいいや。コントラさんが待っているからこっちへ来て」
アディアはフリンクのヒレを掴んで引っ張ると受付カウンターから右にある通路へと足を運ぶ。
みんなと一緒についていくと、ちょっと広めの部屋に案内された。
「やっと帰って来た!」
「お? おお、レン戻って来たか」
「なにをやっていた……!」
中に入るとコントラさんがこちらに気付き、壁際に背を預けて立っていたロアンが苛立ちながら口を開く。ボーリックは笑いながら手を振っていた。
「いやあ、父さんを待たせていたのでお昼を食ってました。すみません。というかセキト様を送ってからもういいかな、って」
「そ、そうか……いや、まあいいけどな……ならどうして戻って来たんだ?」
コントラさんは困惑したように呟いたあと、質問をしてきた。俺は強盗団のことでなにか聞いたことが無いか尋ねてみる。すると咳ばらいをして話を続ける。
「尋問……とは言っても割と素直に話してくれたからそれほど苦労は無かったが、あいつらについていくつか聞けた」
「お」
そう言って切り出したコントラさんの話はこうだ。
あいつらはどこかの村に住んでいた冒険者や村人だそう。しかし魔物に襲われて村が壊滅し、路頭に迷ったあげくの犯行とのことだ。
幸い死者はそれほどいなかったそうなんだけど、食う物なんかに困っているんだと。
「他の町や村に助けを求められないものなんですか?」
「人数がそれなりに多いと難しいな。君の村でも結いるだろ?」
「あー、確かに……」
クレアが移住はと聞くも、人数の関係で難しいという。今はテント生活でホームレスみたいになっているとのこと。
「領主様に相談は? 補助金は出るでしょう」
「おっしゃる通り、領主様に相談すれば受け入れの采配とお金を手配してくれます。……が、ここで彼等がことを起こした話と繋がるのです」
父さんの言葉にコントラさんが腕組みをしてため息を吐く。
「領主であるコールスロウ侯爵様のところを尋ねたが、忙しいから待てと門前払いを受けたそうなんだ」
「なんですって……!?」
「それが今から20テム前の話だそうだ。そこで傘下の領地にいる貴族を襲って話をする場を作りたかったらしい」
『でもそれだと……』
「言いたいことはわかる。そんなことをすれば話を聞くどころか犯罪者だ、投獄されて終わりになる」
「……でも、追い詰められていたのでしょうな」
「まあ、そうですな。移動するのも大変ですし、近くの町からボランティアはあるようなのでしばらくは大丈夫かと思いますが――」
コントラさんはそう言って首を振る。
なるほど、金持ちの馬車である必要があったのはそういう事情か。そりゃ見たことないわけだ。
「……問題はもう一つある」
「ロアン?」
そこで壁際に背を預けて立っていたロアンが不意に口を開く。
「村を壊滅させた魔物だ。そいつはまだ討伐されていない。早くしなければ他の町や村に被害が出る……!!」
「もしかしたら、オレ達が探しているヤツかもしれないんだよなあ」
「そっちはまた別の事情があるのか」
俺が尋ねるとロアン達は頷き、魔物について語りだした。
『わぁい♪』
「フリンクいいなあ」
服屋のリエナのところへ再びやってきた。帽子の出来具合を聞いてみたところすでにできていたようで、すぐにフリンクの背びれに被せてくれた。
鏡を見たフリンクはルーを乗せたままその場でバレルロールをして喜ぶ。
「ぴったりね、さすがリエナ!」
「ふふ、寸法は図っていたから難しくないわ。おばあちゃんも手伝ってくれたし」
「おばあちゃん?」
さっきは居なかったなと思っていると、めちゃくちゃオシャレな婆さんが出て来た。
「珍妙な生き物かと思ったら精霊様とはのう……長生きはするもんじゃ」
『拝まないで!?』
「フリンクは凄いからな!」
「よくわからないけど、普通に接してくれると助かる」
「あいわかった。精霊様を怒らせると天変地異があると言い伝えがある。町の皆にも伝えて――」
「やめろって!? みんな委縮するだろ!?」
慌てて婆さんを窘めた。気を使われると逆にキツイしストレスになる。フリンクは実際の精霊ではないためそこまで神経質になられると困る。
「それじゃ村に帰るの?」
「ギルドに寄ってからね。また来るわ!」
婆さんは最後までフリンクを拝んでいた。とりあえずこれでほぼ用事は完了。
後はギルドで話を聞いて終わりだ。
「いいじゃないかフリンク」
『ありがとうー! 早くお母さんにも見せたいね』
外で待っていた父さんに褒められて、フリンクがもだもだする。そのまま引き取ってきた馬車に乗り込みギルドへ向かう。
『どうだいハリソン、かっこいいだろう?』
前では帽子をハリソンにみせつけていた。当のハリソンは『いいですね』と言わんばかりに一声鳴く。フリンクより後に産まれた馬なので弟みたいなものだが、ハリソンの方が落ち着いている気がするな。
フリンクや俺と遊ぶことが多かったので体幹は強い。クレアの馬、メドレーもメロメロである。
そんな感じでご満悦のフリンクを先頭に二回目のギルドへ到着。ハリソン達は待たせることになるが、のんびりした顔で文字通り道草を食っていたので大丈夫だろう。
『たのもー!』
「おう!? ……びっくりさせないでくれ、精霊様」
「申し訳ない。こらフリンク、はしゃぎすぎだ。コントラさんやロアンは戻ってますか?」
ギルド入るなりフリンクが冒険者にウザ絡みをしていたので窘めておいた。
その人にコントラさんのことを尋ねると、手をポンと叩いてから奥を示して言う。
「おお、戻ってるぜ。さっきまで強盗団を収容するのを手伝ってたんだ。奥で聞いてみなよ」
「ありがとうございます」
お礼を言ってから奥へ進むとアディアが居た。
「あ! レンにフリンク! どこいってたんだ!」
「昼飯を食ってたけど?」
「なんで!? セキト様を送った後、こっちに来ると思って待ってたんだぜ?」
『おなかすいたからね』
「そこは我慢してくれよ……まあいいや。コントラさんが待っているからこっちへ来て」
アディアはフリンクのヒレを掴んで引っ張ると受付カウンターから右にある通路へと足を運ぶ。
みんなと一緒についていくと、ちょっと広めの部屋に案内された。
「やっと帰って来た!」
「お? おお、レン戻って来たか」
「なにをやっていた……!」
中に入るとコントラさんがこちらに気付き、壁際に背を預けて立っていたロアンが苛立ちながら口を開く。ボーリックは笑いながら手を振っていた。
「いやあ、父さんを待たせていたのでお昼を食ってました。すみません。というかセキト様を送ってからもういいかな、って」
「そ、そうか……いや、まあいいけどな……ならどうして戻って来たんだ?」
コントラさんは困惑したように呟いたあと、質問をしてきた。俺は強盗団のことでなにか聞いたことが無いか尋ねてみる。すると咳ばらいをして話を続ける。
「尋問……とは言っても割と素直に話してくれたからそれほど苦労は無かったが、あいつらについていくつか聞けた」
「お」
そう言って切り出したコントラさんの話はこうだ。
あいつらはどこかの村に住んでいた冒険者や村人だそう。しかし魔物に襲われて村が壊滅し、路頭に迷ったあげくの犯行とのことだ。
幸い死者はそれほどいなかったそうなんだけど、食う物なんかに困っているんだと。
「他の町や村に助けを求められないものなんですか?」
「人数がそれなりに多いと難しいな。君の村でも結いるだろ?」
「あー、確かに……」
クレアが移住はと聞くも、人数の関係で難しいという。今はテント生活でホームレスみたいになっているとのこと。
「領主様に相談は? 補助金は出るでしょう」
「おっしゃる通り、領主様に相談すれば受け入れの采配とお金を手配してくれます。……が、ここで彼等がことを起こした話と繋がるのです」
父さんの言葉にコントラさんが腕組みをしてため息を吐く。
「領主であるコールスロウ侯爵様のところを尋ねたが、忙しいから待てと門前払いを受けたそうなんだ」
「なんですって……!?」
「それが今から20テム前の話だそうだ。そこで傘下の領地にいる貴族を襲って話をする場を作りたかったらしい」
『でもそれだと……』
「言いたいことはわかる。そんなことをすれば話を聞くどころか犯罪者だ、投獄されて終わりになる」
「……でも、追い詰められていたのでしょうな」
「まあ、そうですな。移動するのも大変ですし、近くの町からボランティアはあるようなのでしばらくは大丈夫かと思いますが――」
コントラさんはそう言って首を振る。
なるほど、金持ちの馬車である必要があったのはそういう事情か。そりゃ見たことないわけだ。
「……問題はもう一つある」
「ロアン?」
そこで壁際に背を預けて立っていたロアンが不意に口を開く。
「村を壊滅させた魔物だ。そいつはまだ討伐されていない。早くしなければ他の町や村に被害が出る……!!」
「もしかしたら、オレ達が探しているヤツかもしれないんだよなあ」
「そっちはまた別の事情があるのか」
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