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第58話 迂闊
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「お子様ランチ……?」
「はい! 最近始めたメニューで、量があまり多く無くてお値段も大人用より安くなっております。色々乗っていて大人気ですよ」
「それがいい!」
「俺も!」
そんなこんなでレストランに足を踏み入れた俺達は早速注文に入った。
フリンクが中に入ると、マスターが刃物を持ち、慌てて出てきたが事なきを得た。
そしてこの世界にもお子様ランチというものがあるらしく、ご飯に肉、魚にフルーツが少しずつ食べられると聞いて子供達は乗り気だ。
ウェイトレスの女の子もにこにこと笑顔で説明してくれ空気が良いと感じた。
そこでつい、俺はウェイトレスさんに質問をした。
「なにかおもちゃとかついているのかい?」
「レン?」
「おもちゃ、ですか? いえ、そういうのはついておりませんね」
「そっか」
まあ、お値段据え置きなら問題あるけど、安くなっているみたいだしそういうのもあるかと頷いておく。
するとウェイトレスさんが詰め寄って来た。
「なんですか!? なにか思ったことがありそうなんですけど、聞かせてもらっても?」
「え? ああ、子供用ならなにか子供が好きそうなおまけがあるといいんじゃないかと思ってな。例えば木でできた飾り物とか、アクセサリー、プリンとか」
「なるほどなるほど……」
「そんなことを思いついたの? 今?」
「あ? あー……まあ」
不意に口にしてしまったがあんまりよくなかったな。クレアの言葉を曖昧に流しておく。だが、マスターがそれを許さなかった。
「兄ちゃん、プリンてのはなんだ? そいつも子供が好きなのか?」
「おっと」
厨房に近いから俺達の声が聞こえていたようで、厨房から身を乗り出して声をかけて来たマスター。この世界にはないんだな、プリン。迂闊だったかと俺は口をへの字にする。
「一回だけ作ったことがある料理なんだ。デザートで、砂糖と卵があればできるよ」
「本当か? なにか一工夫したいんだ、もしよかったら作ってくれないか」
「うーん」
「お願いします! お子様ランチ、悪くないんですけど子供感が少ないというか……」
「まあいいけど、ひとまず他のお客さんには出さないでくれよ? 材料はとりあえず卵と砂糖だけあればいい」
俺が腰を上げるとマスターは親指を立ててにこやかに笑った。
「ちょっと行ってくるよ」
「なんだか今日は忙しいわね」
「こうなるからあんまり村から出たくなかったんだよ」
「プリンとやらはお前の言葉だろうに」
父さんがくっくと笑いながら俺の尻を叩いていた。確かに迂闊だった。うーむ、授業と本だけじゃ知識としてはイマイチ足りないな。もっと色々見回って、あるものと無いものの確認は必要かもしれない。
『早くしてねー……』
「うわ!? フリンク、涎が凄いぞ!?」
「とりあえず先に注文品を作ってもらえますか?」
「あ、ああ。でかいくせに可愛いやつだなあ」
マスターはフリンクが気にいったようである。
ちなみに俺はチキンの香草焼きで子供たちはお子様ランチ、クレアはパスタで父さんはシチュー。そしてフリンクはアジフライ単品を十枚にした。
そのまま厨房にお邪魔し、手をしっかり洗ってから卵をもらう。
「こいつがデザートになるのか? 砂糖を入れて美味いのか」
「まあ、見ててくれ。あ、やっぱミルクも少しもらうよ」
「おお、いいぞ」
前の世界で動画サイトを何気なく見ていると割と料理の作り方みたいなのを目にすることがあったので、頭には入っている。
全部混ぜて蒸すだけなのでそんなに難しくないのだ。カラメル? 知らない子ですね……
「後は……この瓶を使うよ」
俺達とマスター、ウェイトレス分の瓶を確保して黄液を流し込む。後は冷蔵の魔動器に入れて冷やすだけだ。
「それだけか……?」
「ええ。後は飯を食っている間にある程度固まればって感じですかね」
「そりゃ楽しみだ」
料理人としてマスターは楽しみだと語る。これくらいなら思いつきそうなものだけどな、確か中世ヨーロッパが発祥だし、プリン。
なんか色々混ぜてたとかそういう記録もあるそうな。よくは知らないけど。
そんな感じで仕込みを終えた俺が席に戻ると、しばらくしてから料理が到着した。
「アジフライ十枚ですー!」
『きたー!』
「おお、なんか俺達のごはん赤いぞ……?」
「お肉が入ってるよ」
「チキンライスってやつだな。ケチャップってのがあるんだ。ウチのトマトを使ってるんだぞ」
父さんが得意げに子供たちへ言う。
ケチャップはあるんだな。というか畑のやつを使っているってことは製造所はこの町にあるってことか。興味あるな。
俺の前にもチキンの香草焼きが置かれてナイフとフォークを手にする。レストランだとパンが主流なようで、お子様ランチのチキンライスは特別なようだ。
「これだけでも結構いい感じだけどな。魚のフライに森林イノシシのハーブ焼き、それに季節のフルーツだ」
「そうなんですけど、もう一つパンチが弱くないですか?」
「子供向けならやはり甘いものかおもちゃだと思うんだよな……」
「ぷりんに期待ですね!」
「ちょっと、レンと近いわよ……!」
クレアがウェイトレスさんに牽制をするなか、子供たちと美味い美味いと料理に舌鼓をうつ。母さんの料理は上手いがこういう料理人が手掛けたってのもたまにはいい。
「お客さんも多いし、そこまで気にすることもないと思うけど?」
「でも変化は必要よ!」
ウェイトレスさんが拳を握って熱弁をふるう。飽きられない工夫は確かに必要だよな。……水族館もイベント考えてたな。
そんなことを思いつつ食事を終え、プリンができる時間までまったりすることになった。
「はい! 最近始めたメニューで、量があまり多く無くてお値段も大人用より安くなっております。色々乗っていて大人気ですよ」
「それがいい!」
「俺も!」
そんなこんなでレストランに足を踏み入れた俺達は早速注文に入った。
フリンクが中に入ると、マスターが刃物を持ち、慌てて出てきたが事なきを得た。
そしてこの世界にもお子様ランチというものがあるらしく、ご飯に肉、魚にフルーツが少しずつ食べられると聞いて子供達は乗り気だ。
ウェイトレスの女の子もにこにこと笑顔で説明してくれ空気が良いと感じた。
そこでつい、俺はウェイトレスさんに質問をした。
「なにかおもちゃとかついているのかい?」
「レン?」
「おもちゃ、ですか? いえ、そういうのはついておりませんね」
「そっか」
まあ、お値段据え置きなら問題あるけど、安くなっているみたいだしそういうのもあるかと頷いておく。
するとウェイトレスさんが詰め寄って来た。
「なんですか!? なにか思ったことがありそうなんですけど、聞かせてもらっても?」
「え? ああ、子供用ならなにか子供が好きそうなおまけがあるといいんじゃないかと思ってな。例えば木でできた飾り物とか、アクセサリー、プリンとか」
「なるほどなるほど……」
「そんなことを思いついたの? 今?」
「あ? あー……まあ」
不意に口にしてしまったがあんまりよくなかったな。クレアの言葉を曖昧に流しておく。だが、マスターがそれを許さなかった。
「兄ちゃん、プリンてのはなんだ? そいつも子供が好きなのか?」
「おっと」
厨房に近いから俺達の声が聞こえていたようで、厨房から身を乗り出して声をかけて来たマスター。この世界にはないんだな、プリン。迂闊だったかと俺は口をへの字にする。
「一回だけ作ったことがある料理なんだ。デザートで、砂糖と卵があればできるよ」
「本当か? なにか一工夫したいんだ、もしよかったら作ってくれないか」
「うーん」
「お願いします! お子様ランチ、悪くないんですけど子供感が少ないというか……」
「まあいいけど、ひとまず他のお客さんには出さないでくれよ? 材料はとりあえず卵と砂糖だけあればいい」
俺が腰を上げるとマスターは親指を立ててにこやかに笑った。
「ちょっと行ってくるよ」
「なんだか今日は忙しいわね」
「こうなるからあんまり村から出たくなかったんだよ」
「プリンとやらはお前の言葉だろうに」
父さんがくっくと笑いながら俺の尻を叩いていた。確かに迂闊だった。うーむ、授業と本だけじゃ知識としてはイマイチ足りないな。もっと色々見回って、あるものと無いものの確認は必要かもしれない。
『早くしてねー……』
「うわ!? フリンク、涎が凄いぞ!?」
「とりあえず先に注文品を作ってもらえますか?」
「あ、ああ。でかいくせに可愛いやつだなあ」
マスターはフリンクが気にいったようである。
ちなみに俺はチキンの香草焼きで子供たちはお子様ランチ、クレアはパスタで父さんはシチュー。そしてフリンクはアジフライ単品を十枚にした。
そのまま厨房にお邪魔し、手をしっかり洗ってから卵をもらう。
「こいつがデザートになるのか? 砂糖を入れて美味いのか」
「まあ、見ててくれ。あ、やっぱミルクも少しもらうよ」
「おお、いいぞ」
前の世界で動画サイトを何気なく見ていると割と料理の作り方みたいなのを目にすることがあったので、頭には入っている。
全部混ぜて蒸すだけなのでそんなに難しくないのだ。カラメル? 知らない子ですね……
「後は……この瓶を使うよ」
俺達とマスター、ウェイトレス分の瓶を確保して黄液を流し込む。後は冷蔵の魔動器に入れて冷やすだけだ。
「それだけか……?」
「ええ。後は飯を食っている間にある程度固まればって感じですかね」
「そりゃ楽しみだ」
料理人としてマスターは楽しみだと語る。これくらいなら思いつきそうなものだけどな、確か中世ヨーロッパが発祥だし、プリン。
なんか色々混ぜてたとかそういう記録もあるそうな。よくは知らないけど。
そんな感じで仕込みを終えた俺が席に戻ると、しばらくしてから料理が到着した。
「アジフライ十枚ですー!」
『きたー!』
「おお、なんか俺達のごはん赤いぞ……?」
「お肉が入ってるよ」
「チキンライスってやつだな。ケチャップってのがあるんだ。ウチのトマトを使ってるんだぞ」
父さんが得意げに子供たちへ言う。
ケチャップはあるんだな。というか畑のやつを使っているってことは製造所はこの町にあるってことか。興味あるな。
俺の前にもチキンの香草焼きが置かれてナイフとフォークを手にする。レストランだとパンが主流なようで、お子様ランチのチキンライスは特別なようだ。
「これだけでも結構いい感じだけどな。魚のフライに森林イノシシのハーブ焼き、それに季節のフルーツだ」
「そうなんですけど、もう一つパンチが弱くないですか?」
「子供向けならやはり甘いものかおもちゃだと思うんだよな……」
「ぷりんに期待ですね!」
「ちょっと、レンと近いわよ……!」
クレアがウェイトレスさんに牽制をするなか、子供たちと美味い美味いと料理に舌鼓をうつ。母さんの料理は上手いがこういう料理人が手掛けたってのもたまにはいい。
「お客さんも多いし、そこまで気にすることもないと思うけど?」
「でも変化は必要よ!」
ウェイトレスさんが拳を握って熱弁をふるう。飽きられない工夫は確かに必要だよな。……水族館もイベント考えてたな。
そんなことを思いつつ食事を終え、プリンができる時間までまったりすることになった。
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