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第56話 繋がるもの
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「レンさん!」
「久しぶり……っていうほど前じゃないか」
「そうですねえ。というかセキト様と一緒とはどうしたんです?」
普段なら1日少しかかる道のりだが、フリンクと俺で馬車と人を運ぶことでそれを短縮した。
「ソコチカ町のギルドに二人のことを報せに行った時に出会ったのだサーナ。そこで賊に襲われてな、助けてもらったところだ」
「そうだったの……もう少し護衛をつけるべきでしたね。ごめんなさいセキト」
「いえ、あれは運が悪かったかと。こうして無事に帰りつけたので良しとしましょう」
セキト様はカイさんの言葉に頭を下げていた。
油断をしたというよりは強盗の類が出ることが無いため、今回のは本当にイレギュラーらしい。
「もう捕縛されたので大丈夫とは思いますが、チカクの町へ報告に行きますよ」
「お願いします。セバスと一緒がいいかもしれませんね」
「左様でございますな。物騒な話です」
「おう!?」
いつの間にかギャリソン……もとい、セバスさんが立っていて頷いていた。
気配の消し方がおかしい……イルカイヤーに引っかからないとは……
「では、折角ですし屋敷でお茶でもいかがでしょうか? 助けていただいたお礼をしないと」
「あー、申し訳ない。人を待たせているからすぐ戻るんですよ。掴まえた奴等も気になりますし」
「そうなんですね……」
カイさんはがっかりした表情になる。さすがにクレアとルーたちを待たせてお茶と言う訳にもいかない。
『それじゃ行こうか。クレアが待っているし』
「ほう」
「馬鹿!?」
フリンクが背中に乗れと尾っぽをフリフリしながらそんなことを口にする。そこでサーナの眼鏡が光った。
「前にもその名を耳にしたことがありますねえ。わたしというものがありながら」
「いや、そんなこと言われてもクレアは昔からの幼馴染だからな? 先に会ったのは向こうが先だ」
「ではお付き合いされている、と……?」
「目が怖いよカイさん!? 付き合ってはいないけど」
「詳しく――」
「フリンク、出発だ!」
「あ!? お礼を受け取ってください!」
「別にいりませんよ! それじゃ!」
俺はフリンクの背を軽く叩いて出発を促した。なにかまだ言いたげだったが、逃げることにした。報酬をもらうほどでもない。屋敷の補足分だとでも思ってくれれば。
『ふう……』
「お、どうした?」
『なあに、折角楽しくやっていたところで邪魔が入ったからな。もう少し暴れたい気分だ』
「ガキどもはまだ元気だったし、遊んでやろうぜ」
『そうだな。そういえばそろそろ昼ではないか? 父上のところへ行かないと』
フリンクが派手にお腹を鳴らしながら俺に告げる。確かにコル計を見るとお昼の時間だった。
「よし、とりあえず強盗達が回収されているか確認して町へ戻るか」
『そうだな。フフ、都の魚はどんなものがあるか楽しみだ』
「いや、海に獲りに行った方がいいの食えるぞ?」
涎を出汁ながら目を細めるフリンクだが、この前のキャンプほどいいものは無いと思う。
ちなみに魚を獲って売るという商売を考えたこともあるがフリンクが食いつくしてしまうため断念せざるを得なかったことをお伝えしておこう――
◆ ◇ ◆
「行ってしまいました……」
「気になりますね。幼馴染とはまた強い属性を……!」
残念そうに空を見上げるカイと、悔しがるサーナが謎の言葉を続ける。
そこへセキトが口を開いた。
「クレアという娘なら会いましたぞ」
「「詳しく……!!」」
「うお!? ……ごく普通の村娘でしたぞ。背はカイ様の方が少々高いかと。強いて言えば元気な娘くらいですかな」
「身長はもはや捨てているのでいいです! 可愛いですか!? そこですよ問題は!」
「そうですよ!」
「ちょ、近いですぞ!?」
詰め寄るカイとサーナから離れてセキトは咳ばらいをしてから言う。
「……気になるのであれば見に行くとよろしいのでは? お礼の報酬は私から出すつもりで、村へ足を運ぶ予定です」
「ごほっごほっ……! 元気な子なら、こちらはまだ病弱というのを前面に押し出せば……!」
「それだとレンさんが申し訳ないと身を引くかもしれませんよ。しかし、お嬢様は村人と結婚するわけにもいきませんし、ここはわたしがレンさんを射止めますよ!」
「抜け駆けより酷いことを言っているわね……!?」
だが、二人はすでにレンに対するアプローチを話し合っていた。特にサーナは乗り気である。
「聞いて欲しいですな……!」
「どうした、騒がしいな? おお、セキト戻っていたか」
「旦那様」
そこへ騒ぎを聞きつけたロークが現れ、セキトは言い争いをする二人から離れて彼へと向き直る。
「どうだ、レン君のことは伝えてくれたか?」
「ええ。しかし、帰る途中で強盗に遭遇しまして……」
「なんだと? それは本当か?」
「はい。ちょうどレンが助けてくれたので事なきを得ましたが、あのあたりの冒険者も知らないようでした」
セキトが事情を説明するとロークは顎に手を当てて眉を顰めた。
「賊か……侯爵様が最近『魔物が多い気がする』と言っていたことと関係あるだろうか?」
「あの方の言葉は……失礼、なんでもありません」
「カイの件は断ったし、執着していたのは息子の方だ。悪い方に考えるのはよくない」
「そうですな。では?」
「うむ。侯爵様へ報告をしておこう」
「久しぶり……っていうほど前じゃないか」
「そうですねえ。というかセキト様と一緒とはどうしたんです?」
普段なら1日少しかかる道のりだが、フリンクと俺で馬車と人を運ぶことでそれを短縮した。
「ソコチカ町のギルドに二人のことを報せに行った時に出会ったのだサーナ。そこで賊に襲われてな、助けてもらったところだ」
「そうだったの……もう少し護衛をつけるべきでしたね。ごめんなさいセキト」
「いえ、あれは運が悪かったかと。こうして無事に帰りつけたので良しとしましょう」
セキト様はカイさんの言葉に頭を下げていた。
油断をしたというよりは強盗の類が出ることが無いため、今回のは本当にイレギュラーらしい。
「もう捕縛されたので大丈夫とは思いますが、チカクの町へ報告に行きますよ」
「お願いします。セバスと一緒がいいかもしれませんね」
「左様でございますな。物騒な話です」
「おう!?」
いつの間にかギャリソン……もとい、セバスさんが立っていて頷いていた。
気配の消し方がおかしい……イルカイヤーに引っかからないとは……
「では、折角ですし屋敷でお茶でもいかがでしょうか? 助けていただいたお礼をしないと」
「あー、申し訳ない。人を待たせているからすぐ戻るんですよ。掴まえた奴等も気になりますし」
「そうなんですね……」
カイさんはがっかりした表情になる。さすがにクレアとルーたちを待たせてお茶と言う訳にもいかない。
『それじゃ行こうか。クレアが待っているし』
「ほう」
「馬鹿!?」
フリンクが背中に乗れと尾っぽをフリフリしながらそんなことを口にする。そこでサーナの眼鏡が光った。
「前にもその名を耳にしたことがありますねえ。わたしというものがありながら」
「いや、そんなこと言われてもクレアは昔からの幼馴染だからな? 先に会ったのは向こうが先だ」
「ではお付き合いされている、と……?」
「目が怖いよカイさん!? 付き合ってはいないけど」
「詳しく――」
「フリンク、出発だ!」
「あ!? お礼を受け取ってください!」
「別にいりませんよ! それじゃ!」
俺はフリンクの背を軽く叩いて出発を促した。なにかまだ言いたげだったが、逃げることにした。報酬をもらうほどでもない。屋敷の補足分だとでも思ってくれれば。
『ふう……』
「お、どうした?」
『なあに、折角楽しくやっていたところで邪魔が入ったからな。もう少し暴れたい気分だ』
「ガキどもはまだ元気だったし、遊んでやろうぜ」
『そうだな。そういえばそろそろ昼ではないか? 父上のところへ行かないと』
フリンクが派手にお腹を鳴らしながら俺に告げる。確かにコル計を見るとお昼の時間だった。
「よし、とりあえず強盗達が回収されているか確認して町へ戻るか」
『そうだな。フフ、都の魚はどんなものがあるか楽しみだ』
「いや、海に獲りに行った方がいいの食えるぞ?」
涎を出汁ながら目を細めるフリンクだが、この前のキャンプほどいいものは無いと思う。
ちなみに魚を獲って売るという商売を考えたこともあるがフリンクが食いつくしてしまうため断念せざるを得なかったことをお伝えしておこう――
◆ ◇ ◆
「行ってしまいました……」
「気になりますね。幼馴染とはまた強い属性を……!」
残念そうに空を見上げるカイと、悔しがるサーナが謎の言葉を続ける。
そこへセキトが口を開いた。
「クレアという娘なら会いましたぞ」
「「詳しく……!!」」
「うお!? ……ごく普通の村娘でしたぞ。背はカイ様の方が少々高いかと。強いて言えば元気な娘くらいですかな」
「身長はもはや捨てているのでいいです! 可愛いですか!? そこですよ問題は!」
「そうですよ!」
「ちょ、近いですぞ!?」
詰め寄るカイとサーナから離れてセキトは咳ばらいをしてから言う。
「……気になるのであれば見に行くとよろしいのでは? お礼の報酬は私から出すつもりで、村へ足を運ぶ予定です」
「ごほっごほっ……! 元気な子なら、こちらはまだ病弱というのを前面に押し出せば……!」
「それだとレンさんが申し訳ないと身を引くかもしれませんよ。しかし、お嬢様は村人と結婚するわけにもいきませんし、ここはわたしがレンさんを射止めますよ!」
「抜け駆けより酷いことを言っているわね……!?」
だが、二人はすでにレンに対するアプローチを話し合っていた。特にサーナは乗り気である。
「聞いて欲しいですな……!」
「どうした、騒がしいな? おお、セキト戻っていたか」
「旦那様」
そこへ騒ぎを聞きつけたロークが現れ、セキトは言い争いをする二人から離れて彼へと向き直る。
「どうだ、レン君のことは伝えてくれたか?」
「ええ。しかし、帰る途中で強盗に遭遇しまして……」
「なんだと? それは本当か?」
「はい。ちょうどレンが助けてくれたので事なきを得ましたが、あのあたりの冒険者も知らないようでした」
セキトが事情を説明するとロークは顎に手を当てて眉を顰めた。
「賊か……侯爵様が最近『魔物が多い気がする』と言っていたことと関係あるだろうか?」
「あの方の言葉は……失礼、なんでもありません」
「カイの件は断ったし、執着していたのは息子の方だ。悪い方に考えるのはよくない」
「そうですな。では?」
「うむ。侯爵様へ報告をしておこう」
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