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第51話 ギルドへ行こう
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「わかった。素直に従おう」
「ふん、当たり前だ。まあ、逆らっても無駄だ。力づくでも連れて行くからな」
少し考えたフリをしてから三人の男達にそう告げた。
別に行くこと自体悪いことではないし、さっきの小柄な奴の言う通り町に説明があったら楽かもしれないのだ。
するとロアンという男が鼻で笑いながら俺を蔑む目で見ていた。
「力づくは……多分無理ですよロアンさん。レンってかなり強いですし」
「え?」
だが、あっさりとクレアがそれを否定した。ロアンはなにを言われたのか分からないという顔で彼女に視線を移す。そこでさらに子供たちが口を開く。
「だな。村に近づく魔物はレン兄ちゃんとフリンクが全部倒しているくらいは強いんだぜ」
「この前もフォレストウルフ3頭から助けてくれたんだ」
「うんうん」
『剣の腕は素人だけど、その分は力と速さで補っているしね』
「へえ、こいつがねえ?」
そこで三人目の男が顎に手を当てて俺を上から下まで見定めていた。タレ目でくせっけの茶髪をしており、ちょっと軽薄そうなイメージがあるな。
「村に依頼が無いのは……」
「そ。レンかフリンクが居ればたいていは倒せるからね。ならギルドにもいこっか。どうせ行くつもりだったし」
「クレア姉ちゃん、選ぶのは?」
「あーそうね。ちょっとだけ待ってもらっていいですか?」
「む……まあ、構わないが。こいつは大丈夫なんですねクレアさん」
「ええ。保証するわ!」
『カッ!』
「うお!?」
「あはは、凄い歯だなあ」
威嚇をするなと俺がフリンクを軽く小突いておいた。小柄な男は恐れることなくフリンクの口に近づいて笑っていた。
「……ついてこい」
ロアンがため息を吐きながら踵を返すとそのまま店を出て行った。それを見守る俺達。
「まだ子供たちが購入している最中なんだけど……」
「くっく、いいじゃないか。こりゃ面白くなるぜ? ボクはアディアだ、よろしくな」
「お、そうだ自己紹介してなかったか。オレはボーリックってんだ」
「よろしく、アディア、ボーリック。俺とこいつは村から初めて出てな。クレアが大丈夫だというからやってきたんだ」
二人はクレアのことが好きじゃないのかな? それほど俺に対して不服そうな印象は受けない。そう思いながら握手をする。
「いきなりはびっくりするよなー。でも可愛い顔しているじゃん」
『ありがとー♪』
「あはは。いいね、君。気に入ったよボク」
アディアはフリンクが気に入ったようで、鼻先を撫でてくれていた。こいつとは仲良くなれそうな気がする。
「あ、それでいいのね。おばさん、これください」
「あいよ」
「俺が出すよ」
「いいの?」
「まあ、これくらいはな」
俺が財布から金を出すとクレアは笑顔で頷いて引いてくれた。元々、子供たちを連れて行くと言ったのは俺でもあるし。
「はは、いい男じゃないか。ロアンに言っておきな、下手なことするんじゃないよって」
「へいへい、わかってますよ。手練れのグレイスさんには逆らえませんって」
「軽口を叩く余裕があるなら大丈夫かねえ?」
支払いをする中で後ろの二人と会話を交わすおばさん。その様子からただの雑貨屋の人じゃないことが伺える。
「よーし! フリンク乗せてー」
『はーい』
「ほら、一人ずつな」
買い物を終えてホクホクの子供たちをフリンクに乗せていく。その様子をみてアディアが口を開く。
「あ、いいなあそれ。ボクも乗っていい?」
「お兄ちゃんは小さいから乗れると思うけど、どうフリンク?」
「ち、小さくない! こいつらがでかすぎるんだ!」
『背びれのところに乗って、モント達は少し下がってもらえるかい?』
「聞いてよ!?」
そういいつつアディアはフリンクにまたがっていた。子供よりはでかいけど、俺やボーリックと比べたらやはり小さいしな。
「しゅっぱーつ!」
「おー!」
「それじゃまたね!」
「ああ、なんかあったらいいな。あたしがとっちめてやるよ」
ルーの言葉にフリンクがゆっくりと動き出す。俺とクレアも苦笑しながら一緒に出ていく。グレイスおばさんの頼もしい言葉と共にてくてくとギルドを目指す。
「おお……こいつ、凄いな全然落ちる気がしない……」
『僕の魔法でバランスをとっているからね。簡単には落ちないよ』
「ちょっと高くしてみてよ」
「すげぇ!」
モントの頼みにすーっと上昇するフリンクにアディアが大興奮だった。
「あれなら障害物に邪魔されずに探索できるな」
「便利なんだよな。かなり速度も出るぞ」
ボーリックが見上げながらそう言い、俺が返すと彼はニヤリと笑って口を開く。
「……なるほど、ただものではないってか」
「なにもしなければ俺もただの村人さ」
「覚えとくよ」
ボーリックが俺の肩を軽く叩いた後、前へ歩き出す。その間、空にいた奴等は楽しそうだった。
おかげであまり注目されずにギルドまで到着することができた。
「遅い……! なにをしていた!」
「いや、買い物と支払いをしていたんですよ? 説明しましたよね」
「ぐぬう……」
『やーい! 怒られてやんの!』
「やーい!」
「うるさいぞブサイクな奴め! アディアも一緒になってるんじゃあない!」
ギルドに到着すると、先に戻っていたロアンに文句を言われた。しかし、怪訝な顔をしたクレアにあっさりと返され、フリンクとアディアに煽られていた。
「お、なんかでかいのが居るな」
「テイムした魔物か?」
そんな様子を興味津々と冒険者と思わしく連中が遠巻きに見てきた。やはり魔物には耐性があるからか、びびっているやつはいないな。
そう思いながら周囲を伺っていると――
「む、レンではないか」
「あれ? セキト様?」
なぜかギルドに居たセキト様に気づいた。
「ふん、当たり前だ。まあ、逆らっても無駄だ。力づくでも連れて行くからな」
少し考えたフリをしてから三人の男達にそう告げた。
別に行くこと自体悪いことではないし、さっきの小柄な奴の言う通り町に説明があったら楽かもしれないのだ。
するとロアンという男が鼻で笑いながら俺を蔑む目で見ていた。
「力づくは……多分無理ですよロアンさん。レンってかなり強いですし」
「え?」
だが、あっさりとクレアがそれを否定した。ロアンはなにを言われたのか分からないという顔で彼女に視線を移す。そこでさらに子供たちが口を開く。
「だな。村に近づく魔物はレン兄ちゃんとフリンクが全部倒しているくらいは強いんだぜ」
「この前もフォレストウルフ3頭から助けてくれたんだ」
「うんうん」
『剣の腕は素人だけど、その分は力と速さで補っているしね』
「へえ、こいつがねえ?」
そこで三人目の男が顎に手を当てて俺を上から下まで見定めていた。タレ目でくせっけの茶髪をしており、ちょっと軽薄そうなイメージがあるな。
「村に依頼が無いのは……」
「そ。レンかフリンクが居ればたいていは倒せるからね。ならギルドにもいこっか。どうせ行くつもりだったし」
「クレア姉ちゃん、選ぶのは?」
「あーそうね。ちょっとだけ待ってもらっていいですか?」
「む……まあ、構わないが。こいつは大丈夫なんですねクレアさん」
「ええ。保証するわ!」
『カッ!』
「うお!?」
「あはは、凄い歯だなあ」
威嚇をするなと俺がフリンクを軽く小突いておいた。小柄な男は恐れることなくフリンクの口に近づいて笑っていた。
「……ついてこい」
ロアンがため息を吐きながら踵を返すとそのまま店を出て行った。それを見守る俺達。
「まだ子供たちが購入している最中なんだけど……」
「くっく、いいじゃないか。こりゃ面白くなるぜ? ボクはアディアだ、よろしくな」
「お、そうだ自己紹介してなかったか。オレはボーリックってんだ」
「よろしく、アディア、ボーリック。俺とこいつは村から初めて出てな。クレアが大丈夫だというからやってきたんだ」
二人はクレアのことが好きじゃないのかな? それほど俺に対して不服そうな印象は受けない。そう思いながら握手をする。
「いきなりはびっくりするよなー。でも可愛い顔しているじゃん」
『ありがとー♪』
「あはは。いいね、君。気に入ったよボク」
アディアはフリンクが気に入ったようで、鼻先を撫でてくれていた。こいつとは仲良くなれそうな気がする。
「あ、それでいいのね。おばさん、これください」
「あいよ」
「俺が出すよ」
「いいの?」
「まあ、これくらいはな」
俺が財布から金を出すとクレアは笑顔で頷いて引いてくれた。元々、子供たちを連れて行くと言ったのは俺でもあるし。
「はは、いい男じゃないか。ロアンに言っておきな、下手なことするんじゃないよって」
「へいへい、わかってますよ。手練れのグレイスさんには逆らえませんって」
「軽口を叩く余裕があるなら大丈夫かねえ?」
支払いをする中で後ろの二人と会話を交わすおばさん。その様子からただの雑貨屋の人じゃないことが伺える。
「よーし! フリンク乗せてー」
『はーい』
「ほら、一人ずつな」
買い物を終えてホクホクの子供たちをフリンクに乗せていく。その様子をみてアディアが口を開く。
「あ、いいなあそれ。ボクも乗っていい?」
「お兄ちゃんは小さいから乗れると思うけど、どうフリンク?」
「ち、小さくない! こいつらがでかすぎるんだ!」
『背びれのところに乗って、モント達は少し下がってもらえるかい?』
「聞いてよ!?」
そういいつつアディアはフリンクにまたがっていた。子供よりはでかいけど、俺やボーリックと比べたらやはり小さいしな。
「しゅっぱーつ!」
「おー!」
「それじゃまたね!」
「ああ、なんかあったらいいな。あたしがとっちめてやるよ」
ルーの言葉にフリンクがゆっくりと動き出す。俺とクレアも苦笑しながら一緒に出ていく。グレイスおばさんの頼もしい言葉と共にてくてくとギルドを目指す。
「おお……こいつ、凄いな全然落ちる気がしない……」
『僕の魔法でバランスをとっているからね。簡単には落ちないよ』
「ちょっと高くしてみてよ」
「すげぇ!」
モントの頼みにすーっと上昇するフリンクにアディアが大興奮だった。
「あれなら障害物に邪魔されずに探索できるな」
「便利なんだよな。かなり速度も出るぞ」
ボーリックが見上げながらそう言い、俺が返すと彼はニヤリと笑って口を開く。
「……なるほど、ただものではないってか」
「なにもしなければ俺もただの村人さ」
「覚えとくよ」
ボーリックが俺の肩を軽く叩いた後、前へ歩き出す。その間、空にいた奴等は楽しそうだった。
おかげであまり注目されずにギルドまで到着することができた。
「遅い……! なにをしていた!」
「いや、買い物と支払いをしていたんですよ? 説明しましたよね」
「ぐぬう……」
『やーい! 怒られてやんの!』
「やーい!」
「うるさいぞブサイクな奴め! アディアも一緒になってるんじゃあない!」
ギルドに到着すると、先に戻っていたロアンに文句を言われた。しかし、怪訝な顔をしたクレアにあっさりと返され、フリンクとアディアに煽られていた。
「お、なんかでかいのが居るな」
「テイムした魔物か?」
そんな様子を興味津々と冒険者と思わしく連中が遠巻きに見てきた。やはり魔物には耐性があるからか、びびっているやつはいないな。
そう思いながら周囲を伺っていると――
「む、レンではないか」
「あれ? セキト様?」
なぜかギルドに居たセキト様に気づいた。
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